部品のレイアウト

1 部品レイアウトの重要性

この章では,トランスや真空管をシャーシ上にどのようにレイアウト(レイアウト)すればよいのかを説明します。
部品は,製作者の感性でアンプが綺麗にみえるように並べればよい,というものではありません。
回路図に従って配線しやすいように,また,部品と部品が近づきすぎてトラブルなどが起きないよう,理にかなった部品レイアウトにする必要があります。

個々の部品の特性,配線時の注意をよく考えてデザインした部品レイアウトでは,トラブルは,まず発生しません。このようなアンプでトラブルがおきた時は,真空管の不具合ではないか,また,半田づけが不十分なのではないか,とトラブルの原因が絞り込みやすくなります。
部品レイアウトが理にかなっていないアンプは,もともと,アンプの仕組みについて理解が不十分なケースがほとんどですので,トラブルになった場合,どこに問題があるのかわかりませんし,また,複数の原因がトラブルをおこしているケースがほとんどです。
また,MJ無線と実験に掲載された写真をもとにシャーシを作成した人も,なぜそういう部品レイアウトになっているのか理解していないことも多く,これもトラブルの原因となっています。
佐久間さんのアンプは,MJ無線と実験の発表までに改造などが行われることもあり,最初からそのアンプを作成したのなら部品レイアウトは異なった物になっていた,というケースがいくつかあります。回路図を元に,自分で最適な部品レイアウトを決めることが大切です。

佐久間アンプでトラブらないためには,まず,佐久間さんが使っている部品を使うこと,そして,個々の部品の役割や,配線作業の決まり事を理解したうえで部品レイアウトをよく考えること,この2点がきわめて重要です。

2 部品レイアウトを考えるときに注意すべき点

入力と出力は遠ざける

信号はアンプを正面から見て,左から入って,トランスと真空管で増幅されながら右へ流れていきます。
真空管の足も,そのように配線すれば便利なように作られています。
信号部は左に入力部,右に出力部がくるようにレイアウトします。このようにレイアウトすると入力と出力は左端と右端にレイアウトされます。
入力と出力は近づけてはいけません。
これはアンプ全体だけでなく,初段,ドライバー,終段でも同じことが言えます。配線は,必ず左から右へ,途中で戻るような配線はありえません。

電源部と信号部は離す

すでに説明しましたが,アンプ内の回路は,働きによって信号部と電源部に分けられます。
電源部はノイズを発生する傾向にあるので,信号部からはできるだけ離してください。
特に,信号部はシャーシの前に,電源部は後ろにまとまるようにレイアウトします。
佐久間アンプを見ると,入力トランスと電源トランスがシャーシの対角線にレイアウトされていますが,これは,信号でも特に信号が小さい入力部を電源部から遠ざけるための配慮です。
電源部は,入力部,グリッドや,イコライザー素子に近づけてはいけません。

関係する信号部と電源部はまとめて考える

初段の真空管やドライバーの真空管へのプレート電源に,チョークトランスが用いられている場合には,この図のように,真空管の負荷になるトランスの近くに,その真空管へプレート電源を供給しているチョークトランスをレイアウトし,電源供給の配線が最短距離になるようします。しかし,信号の線と電源の線が交わったり,平行に配線させることは厳禁なので,左から右へ流れている信号に直行するような形で電源の供給がされるように注意します。
回路をみると,電源ラインが下から上に伸びていますが,実際のアンプも,このような配線になるように部品をレイアウトします。

なお,ドライバートランスの近くにチョークトランスを近づけても問題ないのは,タムラ製作所製の高性能のトランスを使用しているから可能であって,他のメーカーでは,ドライバトランスとチョークトランスを近づけるとノイズが出る場合があります。
以下の説明も,タムラ製作所のトランスを使用を大前提にしている説明となります。
プリアンプの初段のプレート電源にチョークトランスが使用されている場合は,少し離すなどの注意が必要です。ただ,そのようなアンプは,製作するのに難易度の高いアンプですので,いろいろな問題がケースバイケースで発生することが予想されます。

入力部は,小さくまとめる

入力部でノイズをひらうと,そのノイズも信号といっしょに増幅されます。
入力端子,入力トランス,初段はできる限り近づけて,配線を短くし,すこしでもノイズの影響をうけないように注意します。
なお,アンプ内でのノイズ発生源は,電源トランスから整流管,電源のオイルコンデンサー,電源チョーク,真空管のプレートに繋がる配線や電解コンデンサーです。
信号のライン,とくに初段は,これらから遠く離れれば離れるほど安全です。

イコライザー素子は他の配線,トランスから遠ざける

イコライザーアンプの場合はイコライザー素子を取り付ける場所を広くとってください。 なお,VLシリーズやVL−SSももイコライザー素子に含まれます。VLにチョークトランスや他のトランスが近づくとトラブルの原因となります。
イコライザー素子は完成後,位置を変えると,雑音が少なくなることがありますので,しっかり固定されたラグ板(2Lタイプのように2個所でシャーシに止められている物)に組んでしまうと,完成後調整ができなくなりますので,アース母線へ空中配線します。詳しくは配線のところで説明します。
部品レイアウトを考える場合は,とにかく,イコライザー素子の周りには他の部品を近づけないこと,これを守ってください。

グリッドは他の配線から遠ざける

トランスと真空管のグリッドをつなぐ線は,他の配線,トランスから遠ざけてください。また,最短距離での配線が重要です。
図7-1でも,真空管はグリッド側のトランスに近づくようにレイアウトしてあります。
なお,4P55などの5極管や,ビーム管のアンプを作るときは,スクリーングリッドの線も,他の配線やトランスからはなしてください。
なお,グリッド抵抗(500KΩや250KΩの抵抗)は真空管のソケットに近づけるほどよいのですが,それほど神経質になる必要はありません。
ソケットか,ドライバトランスにハンダづけしても大丈夫です。
グリッドのまわりも,イコライザー素子とおなじように他の部品をレイアウトしないようにしてください。佐久間さんのアンプをみると配線がごちゃごちゃしているように見えても,グリッドの周りだけは,ぽかりと広場のようになっています。

トランスの1次側と2次側を正しく取り付ける

回路図で見て,トランスの左を1次側,右を2次側といいます。
たとえば,タムラTKS-27は300Ω:100kですので,1次側のインピーダンスは300Ω,2次側は100kΩです。
回路図をよく見て,トランスの取り付け向きに注意してください。
また,入力トランスやドライバートランスで,1次側と2次側の配線が交差すると,トラブルの原因です。これも先ほど説明した,入力と出力を近づけない,ということです。


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