配線要点

写真のアンプは300Bドライブ300Bシングルパワーアンプです。真空管ははずしてあります。
50ドライブ50シングルパワーアンプを参考に,ある方が製作したものです。
サン・オーディオのキットを製作し,その次に製作されたのがこのアンプです。

鳴らしてみるとノイズがひどいらしく,私が点検することになりました。
この方はコンコルドへも何度も出かけ,また,配線の注意点等もよく勉強され製作されたのですが,誤解もあり,このアンプは配線等に問題を抱えてしまいました。
しかし,この方の間違いは,誰しも間違いそうなことばかりなので,このアンプのレストアの様子はみなさんの参考になると確信し,持ち主の了承のもと紹介することにしました。

外観(部品のレイアウト)チェック

まずは,外観の点検から。
この「作り方」で説明したとおり,電源部と信号部を分けてトランス類が配置されています。
この配置だと,まず,問題ありませんが,すこし佐久間さんのアンプと異なっている点もいくつかあります。何度も言いますが,こういった,佐久間さんと違う点がトラブルの原因となります。

整流管のソケット

整流管は5R4と83を差し替えて音色の違いを楽しむようになっています。5R4と83はソケットの形状が異なっているので,整流管用ソケットは2個ついています。
アイデアは面白物ですが,このアンプのように何かトラブルが生じた場合,このようなイレギュラーなことをしていると,ここが原因ではないかと,疑ってしまいます。
かといって,完成後,ノントラブルで動作することを確認してから,ソケットを増設するのもたいへんです。

上面の入力端子等

このアンプでは,入力端子,電源スイッチ,ハムバラがすべてシャーシの上面についています。
なぜか,佐久間アンプでトラブル方の多くがこのような配置を好まれるようです。もしかすると,側面への穴あけ加工が難しいと感じるのかもしれませんが,配線のことを考えると,じつに問題が大きいと言えます。このへんは,アンプ裏側の配線を見ればわかると思います。

配線

アンプを裏返して配線を見てみると,問題が山積みです。これは大仕事になりそうです。



とりあえず,我が家までの輸送でハンダが外れた配線がないか目視で確認して,怪しげなところは,ちょっとひっぱったりして確認をしました。

ヒーター電圧

まずはヒーター電圧のチェックからです。
整流管を付けずに,DC点火しているドライバーの300Bのみを差してフィラメント電圧を測定します。製作者は関東の方なので,奈良県の我が家では電圧も少し高めに出ていますが,まず問題なしです。 終段と整流管の電圧はAC点火で,こちらも規定の電圧になっています。

カソード,プレート電圧

次に整流管5R4を指してカソード電圧,プレート電圧を測定しました。
これらも問題なしです。
なお,スピーカー端子のマイナス側アースがうまくとれていれば,シャーシと電気的につながっているはずです。電圧を測定する時は,テスターのマイナス(黒)側をそこへ差し込み締め付けてから,プラス側を各測定点にあてて測定します。

スピーカー端子の電圧

製作者が困っているハムや残留ノイズがどの位出ているのか測定してみます。
入力をアースするために,ボリュームを最少にします。入力をアースしていないと,なにかのはずみでアンプが発振したりします。プリアンプはボリュームがついていないので,安物のRCAケーブルでマイナスとプラスの線を繋いだショートピンを作成し,それを差して残留ノイズを確認します(写真右)。

さて,テスターをAC(交流)モードにして,スピーカー端子間のAC電圧を測定します。
すると,数十ボルトの電圧が出ています。異常値です。ボリュームまわりで問題があるかもしれませんでの,入力端子にショートピンを差し込んで測定しても,やはり数十ボルト出てしまいます。

終段のグリッドとシャーシをクリップ付のコード(写真左)でつないでみます。こうするとスピーカー端子からは,終段からの出力のみが出てきます。ドライバー管などでトラブッていても,終段のグリッドでショートしていますので,終段へは流れてきません。
さて,終段のグリッドをショートすると,スピーカー端子間の電圧は数ミリボルトへ下がりました,終段のハムのレベルです。
これで終段への配線は問題なしとわかります。
次にドライバーのグリッドとシャーシをクリップ付のコードでつないでみると,スピーカー端子間の電圧は数ミリボルトへ下がりました。

アンプのノイズ原因は,入力端子からドライバーのグリッドまでの間が,怪しいということがわかりました。
しかし,持ち主はこのアンプで音楽を聞いていたとのことなので,恐る恐る試験用のフルレンジスピーカー(ジャンク)をつないでみました。
スピーカーをつなぐとスピーカー端子間の電圧はかなり下がります。
しかし,スピーカーからはハムのブーンという音のほかに,キューンやガガガといった音も聞こえています。
どうやらこのアンプは発振しながらも,なんとかスピーカーを鳴らしていたようです。
このまま使っていると何かのきっかけでスピーカーを壊していたかもしれせん。また,音色にも少なからず悪影響が出ているはずです。
おそらく持ち主も,なんとなく違和感を感じており,私への相談となったのだと思います。

アンプが発振した場合は,終段のドライバートランスの2次側を反対にします。 アース母線へ接続されている線を真空管のグリッドへ,グリッドへの配線をアース母線への配線へ交換することで発振がおさまります。
しかし,今回のような単純な回路のパワーアンプが発振するということは,よほどの原因があるはずで,それをつきとめ,安心して聴けるアンプにリストアします。


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