グリッド配線

真空管とトランスの位置が離れていることが気になります。佐久間さんの作例でもだいたい3センチから7センチpくらいです。
イコライザーアンプの初段などは,入力トランスと5691がくっつくほどの近距離に配置されています。
一方このアンプでは,かなり離れています。とくに,入力トランスとドライバーの真空管は1ミリでも近づけたいところです。このアンプのグリッド配線の長さは,私にはとても恐ろしい距離に見えます。
しかし,今回は,さすがに真空管とドライバートランスの取付変更は,むりなので,とりあえずこのままの配置でレストアして,まだ,アンプが不安定なようなら,シャーシからの作り直しを持ち主に提案することにしました。(幸い,作り直しにはなりませんでした。)

次に,グリッドの配線が他の配線からの影響を受けています。
ドライバーのグリッド配線はヒーター配線と2箇所で交わっていますが,これは大問題です。(下写真赤円)
グリッド配線は,とにかく他の配線から遠ざける必要があり,一方,ヒーター配線はノイズまき散らし配線ですので,これまた他の配線から遠ざける必要があります。これらの2本が交わっているのですから,真空管はたまったものではありません。スピーカーから変な音がするのは,このヒーター配線のノイズを拾っていると思われます。
しかも,このヒーター配線は,入力信号ともくっつき,さらに他の配線ともくっついています。
DCが流れる配線なので,他の線と近づいても大丈夫と考え他のかもしれませんが,改善が必要です。

これらの点を考慮してドライバーのグリッド周りは次の写真のように,まずヒーター配線はセオリー通り,シャーシの隅をはわせます。遠回りになっても問題ありません。(写真,赤線)
次にハムバラをシャーシ前面へ移設し,ヒーター線とほかの線が交わらないようにします。(写真 青矢印)

終段のグリッド配線もドライバートランスは真空管と1ミリでも近づけ,配線もできるだけ短くする箇所ですが,このアンプでは,いったんグリッド抵抗へ接続され,それから終段のグリッドへ配線され,大回りになっています。
また,終段のグリッド抵抗は3Wくらいで十分ですが,大きな物が付けられており,コンパクトにまとめづらくなっています。



また,入力トランスと真空管のグリッド配線もたるみがあります。
とにかく,グリッド配線は,最短で配線すること,これが鉄則ですので,赤い配線にしなおすことにします。
また,ドライバートランスの2,3ピンが細い線で配線されています(青い円内)。最短での接続を意識されたのかもしれませんが,トランス内部では非常に長い線がまかれているので,トランスのピン同士の接続を少しくらい短くしてもまったく影響がありません。
佐久間さんが配線した写真を掲載しておきます。

ハムバラ

今も触れましたがハムバラをシャーシの上面につけたため,ソケットからハムバラへ接続する2本の線が,それぞれ,プレートと,これまたグリッドとクロスしています。
外観の見た目でハムバラを上面に付けたと思われますが,配線からすると百害あって一利なしですので前面に付け替えます。

入力部

入力端子,ボリューム,入力トランスの部分は,ボリュームから入力トランスへの配線が長いように感じます。この配線は長くても大丈夫ですが,他の配線からの影響を考えると,これも短いにこしたことはありません。やはり佐久間さんのデザインのとおり,シャーシの前面に移設します。

出力部

スピーカー端子はアンプの後ろ側についています。
出力が8Ωと16Ωの2回路出ていますので,スピーカーの付け替えやすさを考えて,こちらもシャーシ前面へ移します。
また,整流管が水銀入りの場合は,3分ほどのプレヒートの後,電源トランスのB電源のスイッチをオンにします。その時,スピーカーからは「ボン」という大きな音がします。スピーカーのためにも,精神的にもよくありません。そのため,スピーカーはアンプから外しておき,B電源をオンにしてからスピーカーを端子へ接続します。その利便性を考えてもスピーカー端子は前にあったほうが絶対に便利です。

電源部

電源部は問題のない配置ですが,デカップリングコンデンサーの取付位置が問題です。



このコンデンサー(C-1)は前に説明しましたが,けっこうノイズを発生させます。現実にノイズを出しているのかどうかは不明ですが,経験的に,信号系からは遠ざけたほうがよいコンデンサー,という意味です。
このアンプでは,ヒーターのDC回路のコンデンサー(C-2とC-3)と同じラグ板に付けられています。
DC回路のコンデンサーにしてみれは,煩いのが隣にくっついているのでいい迷惑です。
取り外して,このチョークトランスA-395の近くへ移設し,アース側も最短で電源系のアース母線へ接続することにします。
なお,電源系のアース母線ですが,コンデンサーのシャーシの手前側に付けても,このアンプの例のように後ろに付けても問題はありません。私は,デカップリングコンデンサーのマイナス側を付けやすいように,手前側にアース母線を通すようにしています。

トランスコアのアース

このアンプの持ち主は,佐久間さんと同じように,A-4004やアウトプットトランスの「E」端子をそのままにしていますが,追加しておくことにします。


次ページ 配線要点-4へ
Top Pageへもどる