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恋愛ゲームヒロイン学


第1講 恋愛ゲームヒロイン概観

99/03/05開講(99/03/05初筆)

1.前書き

 恋愛ゲームは、恐らく究極的なキャラクタゲームである。確かに、「ONE」等いわゆるシナリオ系ゲームの登場によって、(バックグラウンドとなる)シナリオの中でキャラクタが配置されることもあるかもしれないが、基本的に恋愛ゲームはキャラクタが生きてこそであることには変わりはない。まず、キャラクタが先にありきなのである(※1)。

 とすると、言うまでもなく恋愛ゲームの善し悪しはいかに魅力的なキャラクタを作るかに大きく左右される。恋愛ゲームヒロイン学では、この恋愛ゲームに登場する女の子キャラクタ(以下恋愛ゲームヒロイン)のあり方について考えていきたいと思う。

2.最近の動向

 さて、恋愛ゲームの歴史の流れの中で、ヒロインの動向をみると、次のようなことに気づく。
  1. 1ゲームのヒロイン数の減少
  2. ヒロインの低年齢化
  3. ヒロインのステレオタイプ化
順に考えてみる。

 まず、1ゲームのヒロインの人数だが、もちろん、昔でも人数の少ないゲームはあったが、人気が出たゲームで考えると、特にこの最近減ってきている傾向が伺われる(※2)。これには色々な理由が考えられるが、共通して言えることは、ヒロイン数の多さがゲームの魅力としてユーザに受け取られなくなったということだろう。結果(例えば昔の美少女ゲームのえっちシーンのようなもの)ではなく、恋愛のプロセスをどのように描いているかが重要視され、あるいは結論に辿り着くまでのルートが複数用意されているようなものが求められ始めると、ヒロインはたくさんいるけど1人1人はあっさり、というゲームよりヒロイン数は少なくても1人1人がしっかり描き込まれている方が受けがいいのは当然である。

 また、ユーザの方も、社会人ともなると時間的な制約が大きいこと、世に出る恋愛ゲームが多くなっていることから、1ゲームにかけられる時間は短くなる一方である。とすると、なかなか「お気に入りではない」ヒロインの相手をしている時間がないのも仕方のないことだろう。(笑)そうなると、むしろ大切なのは、1ゲームにヒロインが何人いるかということではなく、1ゲームに「お気に入りの」ヒロインが何人いるかということになる。超大作恋愛ゲームと呼ばれるものは消え、お手軽に、かつお気に入りのキャラクタは丁寧に描かれているゲームが受け入れられていくだろう。

 次に、ヒロインの低年齢化(もちろん同時に主人公も低年齢化するのが一般的だが)は、一番大きいのはいわゆるナンパゲームから恋愛ゲームへの移行、そしてコンシューマ恋愛ゲームの普及とそのPCゲームへの影響返しに従って起きている。今でも成人向け恋愛ゲームの中のえっちシーンの扱いはしばしば議論になる。それが良いことなのかどうかはまた別の話になるが、多くのユーザの求める恋愛物語がますますピュア化することで、そこに大人のドロドロした恋愛を持ち込むことは難しくなり、結果的に登場させるキャラクタの低年齢化に繋がっていると考えられる。もちろんユーザの嗜好の偏りもあるのかもしれないが。(笑)実際に、これまでほぼ高校1年生が最低ラインと思われていたが(一部にはそれより低いヒロインもいる)、「ファーストKiss☆物語」では3人も中学生が登場するし、今後も中学生が登場する恋愛ゲームが出てくるだろう。ヒロインの低年齢化は嗜好云々を別にすればそれ自体問題がある訳ではない。制作者が伝えたいテーマ、伝えたいメッセージに合ったヒロインの年代を選んでいけば良い。

 しかし、ひとつ問題がある。それはもちろん現在審議中の児童買春規制法の関係である(これについては別に補講で取り上げる予定)。コンシューマを初めとする一般向恋愛ゲームならば良いが、成人向恋愛ゲームではメーカが遠慮して18歳未満のヒロインが扱いにくくなることが考えられるので、これからは年齢や学校・学年を特定しないパターンが多くなることが予想される。これは残念なことだろうか?(笑)

 最後に、ヒロインのステレオタイプ化、すなわちどの恋愛ゲームでも似通った、お約束的な分かりやすいキャラクタが登場する傾向があることである。上の2つと比べると、恋愛ゲームの質的な健全なる発展を考えるに、本来本質ではない部分でゲームが評価されていく恐れがあるヒロインのステレオタイプ化は必ずしも好ましいことではない。いや、もしかしたら恋愛ゲームZEROの恋愛ゲームヒロインナビゲータ「Ragna」や属性encycropediaがそれを助長しているかもしれないのだが。(笑)

 しかし、これは、結局はユーザの嗜好の偏り、フェチ化、マニア化の進行によるものではないのか。2次元(恋愛ゲーム)依存度が高い人たちには特定属性への拘りが強く、その分かりやすいキャラクタを好むという傾向がある。そして、同時に彼らは良きスポンサーであるのである。(笑)恋愛ゲームもまたビジネスとして作られる訳だから、彼らコアユーザの望みが反映されてしまうのはまた仕方がないことなのかもしれない。更に最近では1ゲームの登場ヒロインが皆同じ属性を持つゲームも続々登場している(※3)。そして制作者も制作者の方でフェチ化が進行している(というか、特に美少女ゲームの場合はユーザと制作者が同じタイプの人間であることが多いからだが…)。制作者が自分の好きなキャラクタを出し、それをユーザが受け入れていく。すなわち、これは、「彼らの望んだ世界」であったのだ。(笑)……と笑い事で済ませてしまってはいけないのだが、ヒロインのステレオタイプ化は今後ますます進行する恐れがある。属性では表しきれないシナリオでいかにヒロインに「深み」を与えていくかということと、何事もバランス感覚を大切にしていくことが必要だろう。


※1、例えば、LeafのVNシリーズが、「雫」がストーリー、「痕」が世界観、「ToHeart」がキャラクタから作った、という所にもはっきりと表れているだろう。





















※2、代表的な恋愛系ゲームの、1ゲームの(攻略可能)ヒロイン数

ゲーム名人数
1992きゃんバニプルミ7
同級生14
1993きゃんバニエクストラ8
1994ときめきメモリアル13
1995同級生215
バーチャコール29
1996下級生13
NOeL3
Pia☆キャロ9
同窓会8
TLS9
放課後恋愛クラブ12
きゃんバニプルミ26
1997ToHeart9
バーチャコール36
Pia☆キャロ210
1998センチ12
ラブエスカレーター3
Natural4
ファーストKiss☆物語12
WHITE ALBUM6
ONE6
WithYou2
PALETTE6
久遠の絆3























※3、1ゲーム全員が同属性を持つ恋愛系ゲームとしては、「朱鷺色の末裔」(巫女)、「リトルMyメイド」(メイド)、「終末の過ごし方」(眼鏡っ娘)、「おにいちゃんといっしょ」(お兄ちゃん←厳密には違うが)などが挙げられる。世も末という気がする。(笑)