第10講 センチメンタル・グラフティ

〜裏切りの救世主(メシア)〜
98/04/11開講

1、「甘え」と「裏切り」

恋愛ゲーム学各論は基本的にそのゲームの良い点と悪い点を考察し記していくという形式を取っているのですが、今回のセンチメンタル・グラフティ(以下センチ)はすでに恋愛ゲーム学補講第7講の方でその存在意義についてなど、できる限り精一杯の弁護をしていますので(笑)、(補講ではゲームだけ取り出して考えてはいけないと言ってますけど)ここでは敢えてゲームだけを取り上げて徹底的にこき下ろさせて頂くことをご了承下さい。(笑)

一般的にセンチについて語られるとき、「意外と遊べた」「思ったより面白かった」という言葉が発せられることが多いのですが、この評価は当然センチが良いゲームであるということとは全く逆のことです。「意外と」「思ったより」という但し書きからも分かるように、雑誌や人の噂によって人々の間に定着していた「ゲーム本編は駄作だ」という認識に対して、実際はごく普通の出来だった、という感触から出た意見でしかないからです。

しかし、人々がセンチに求めたのは「ごく普通の恋愛ゲーム」だったのでしょうか?違うでしょう。センチの登場がときめき後の空白の時期であったことはすでに述べた通りですが、それだけでなく恋愛ゲームの氾濫・マンネリ化に続く必然的な斜陽、「出せば売れる」恋愛ゲーム神話の崩壊、そういった中で唯一神懸かり的な求心力を手に入れることに成功したセンチだからこそ、誰しもが期待を抱かざるを得なかったのです。

そこで望まれたものはもちろん今までの恋愛ゲームのまとめであることはもちろん、新世代の幕開けに相応しいトップクオリティの作品であったはずです。
しかし、蓋を開けてみれば余りにも平凡なものだった。多くの人々の期待を裏切った責任は重大であると言わなければなりません。

そういった議論の中で一番に槍玉に挙げられるのがビジュアル面であることはもう言うまでもありません。当初から甲斐さんのイメージイラストで人気を獲得したにも関わらずゲーム内のグラフィックの再現性は余りにもお粗末なものです。「甲斐氏の絵の雰囲気を忠実に再現しようとするとあと5年もかかってしまう」ですって?

甘ったれたこと言ってるんじゃありませんよ。(笑)

CGのトッププロ集団であるF&Cのスタッフの方々だったらきっと6ヶ月で仕上げて来ますよ、えぇ。(笑)そのビジュアルが人気の根底にあったのですから、グラフィックのクオリティは最低限それだけでも保証する責務があったはずです。その責務を放棄し、妥協してしまったことは甘えでしかありませんし、またスタッフの能力の至らなさでもあります。

もちろん初めから現在のゲーム画面を出していれば少なくともこのような齟齬はなかったはずです。しかし現実には制作者はまるで甲斐さんのイメージイラストを手にスポンサーを、協賛メーカを、流通を、そしてユーザを騙していたようなものですから、詐欺と言われても文句言えないじゃないですか。(笑)

ビジュアル面だけではありません。声優ファンにも不満を残した制作が伸びることで収録から時間が経ちすぎてしまった音声、ボリューム的にも内容的にも首をひねってしまう文章力を欠いたテキスト(シナリオじゃなくて)、到底練り込んだとは思えないシステム。ごくありがちな恋愛ゲームならば通ってしまう出来だとしても、期待が大きかったセンチにおいては不十分なのだと言うことです。それがセンチの背負うべき宿命(さだめ)であったのですから。

結局、期待されていたクオリティの作品を作るには制作スタッフの力が及ばなかった、センチという企画がスタッフの能力を遙かに超えるほど大きすぎて手に余るものであったことを認めざるを得ないのではないでしょうか。(というよりもこのヒットを初めから予見していたとも考えにくいですし、ユーザの盛り上がりが制作者の意図を遙かに越えて拡大し過ぎてしまったということでしょうね……ユーザというのは気分屋であり勝手なものなのです。(笑))

#せめてもの罪滅ぼしに、センチメンタルジャーニー(アニメね…まぁ、ゲームでもいいんですけど)に頑張って貰うことにしましょう。(笑)

2、それ以後の問題

ユーザの想定した作品からの乖離はもちろんですが、私怨は置いておいたとしても(笑)、センチには純粋に恋愛ゲームという観点から見て考えなければならない部分が存在します。

誰でも気になるのが、「全員同時攻略してナンボ」というデタラメなゲームバランスでしょう。全員と再会しなければいけないのは分からなくもないですが…。これは例えば1人だけと会い続けた場合にそのデートにバリエーションがなさ過ぎて単調になってしまうためなのでしょうけど、それならばもっとバリエーションを増やすべきだったはずです。

そもそも、「あの頃のノートを閉じて胸の奥に仕舞い込む♪真っ白なページにふたりの新しい思い出を書いていこう♪」と歌っているにも関わらず、過去の思い出の回想イベントの方がよっぽど盛り上がるものになっており、全然新しい思い出作りになっていない気がするのですが?思い出探しの旅としては評価できても、恋愛ゲームとしては物足りなさが否めません。もっと現在の輝きを伝える豊富なイベントがあっても良かったと思うのですが。

筆者自身は方言は入れるなと主張し続けて来ましたから(笑)それについては気にはなりませんけど、全国を旅するゲーム、という部分がなくなってしまったことはどうなんでしょうかね。当初は「旅のせつなさを」とか言っていたような?(笑)
それと、「女性にもウけるゲームを」という初期の意気込みも到底目的を達したとは思えませんし。(爆笑)(もっともそんなこと不可能に決まってるのは初めから分かってましたけど。)

あちこちを削っていく妥協の嵐の中で、最終的に残ったのはこじんまりとした平凡な作品。多くの期待を背負った恋愛ゲーム?の、寂し過ぎる幕引きでした。

3、ちょっと主観的な評価

※注:★は5個が最高。1個が最低。
原画★★★
CG★★★
シナリオ★★
キャラが
立っているか
★★★★
システム★★
操作性★★★★
BGM★★★
ゲーム性★★
え○ち度(笑)
どきどき
せつなさ★★★★
恋愛ゲームと
しての完成度
45点

4、キャラクタ各論

ラグナを参照して下さい。m(__)m

5、キャラクタの分布

 活発    ←         →  大人しい
お姉さま系 松岡千恵遠藤晶
  ↑  七瀬優綾崎若菜
森井夏穂山本るりか保坂美由紀
杉原真奈美
  ↓  星野明日香安達妙子沢渡ほのか
子供・ロリ系永倉えみる

各方面をカバーしつつ、ツボ(属性)を押さえた定番でありながら個性的。さすが最強のキャラゲーだけあってキャラメイキングに関してはほとんど文句のつけようがないですね。(笑)

6、センチメンタル・グラフティの恋の「カタチ」

そもそも初めから好かれているのですから緊張感に欠けているのですが。デートを重ねる事で仲良くなるという従来のシステムを継承。必須イベントがあると言っても自発的に起こりますから特にどうということはありません。放っておくとせつなさ度が上がって炸裂するというのはあのゲームの爆弾処理を思い出してしまいます……。


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