Research | Character | Attribute

Research

Research

続CS―(3)誰がゲームをダメにした
恋愛ゲームNextage 第16回

0.概要

 顧客はいつも正しい。しかし顧客の声はいつも正しいとは限らない。この違いを理解しなければ恋愛ゲーム産業は自ら閉塞化を加速させることになる。

2003/04/30初版

1.誰がゲームをダメにした

 このところ、恋愛ビデオゲーム(以下単に恋愛ゲーム)に驚きとかワクワク感とかいったものが少なくなった、という感覚がますます強くなってきた気がする。「良く出来ているが、ただそれだけ」といった印象を持たれたことがある人も多いのではないだろうか。もちろん、受け手側の変化は大きいだろう。多くの作品を経験することで慣れっこになってしまったり、歳を取ることによって感じ方が変わったりといった具合に。しかし、代わり映えのしないストーリやシステム、そして何よりあるコンセプトなり属性なりがひとたび「ブーム」になると多くのメーカが同じ方向にドッと流れ込む風潮は疑問だ。1つ2つはいいが3つも同じものは要らない。

 一体、誰が(あるいは何が)恋愛ゲームをダメにしたのか。鋭い方ならもうお気づきだろうが、恋愛ゲームをダメにした犯人、それこそが「顧客満足(CS)」とか「顧客志向」とかいったものではないか、と考えるのである。

 CSが恋愛ゲームをダメにするとはどういうことか。散々CSの重要性を謳いながら何だそれは、と思われるかもしれないが、CSは無論重要だ。間違いない。しかしCSのための活動が間違っているのではないか、ということである。顧客はいつも正しい。しかし顧客の声はいつも正しいとは限らない。

2.マーケットインとプロダクトアウト

 「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という古典的なマーケティングの言葉がある。商品開発の際に、顧客の声をヒアリングし、徹底的にニーズを分析することによってマーケット・ニーズ主導で市場の求めるモノを開発、生産、販売するのが「マーケットイン」、逆に企業・シーズ主導で商品開発を進めるのが「プロダクトアウト」である。モノ余りで消費が低迷する現代、多くの産業では成功する企業は圧倒的に「マーケットイン」の方に偏っている。技術者が新しいコンセプトを創出しマーケットを開拓する「プロダクトアウト」傾向が強いSONYが苦戦を強いられるなど、「プロダクトアウト」型商品開発が難しくなってきていることは否定できない。

 にもかかわらず、恋愛ゲームは依然として「プロダクトアウト」を重視すべき商品ではないかと思う。ユーザは「レビュー」とか「批評」とかいった形で、あるいは「ここがこうだったらいいのに」といったように作品に対して意見や感想を述べる。それはもちろん100%正しい。しかしここでのユーザの声はあくまで作品の改善提案レベルであり、作品の延長線上にあるものである。その意味で、他のプラットホームへの移植や、リメイクに当たってユーザの声を反映させるのは極めて正しい。

 しかし全く新しい作品をゼロベースで作る場合、話はまるで違う。これはメーカとクリエイタの仕事である。なぜなら、ユーザは既存の作品を大きく超えて何かを想像することはできないか、少なくともゼロベースで全く新しい作品を創造することに時間をかけていられないからである。ユーザの仕事は優れた作品に適切な対価を支払うことによって、恋愛ゲーム産業を支えることにある。作品、すなわち新しい世界観を創出するに当たっては、安易にユーザに迎合するのは単なる怠慢に過ぎないし、そうしたユーザの声に革新的なアイディアを期待する方が無理である。「ただユーザの声を聞けばいいというものではない」という以前の私の発言の根っこはここにある。ユーザの声からはまだ経験したことのないニーズは出てこない。CS向上のつもりでヒアリングしたユーザの声を反映させればさせるほど、出来てくる作品は凡庸に留まる可能性が高い。

 市場が伸びないにも関わらずメーカが乱立し、最低限の販売数を確保するためにとりあえずユーザに迎合したくなるのは理解できなくもない。しかしそこからはイノベーションは生まれてこず、ユーザの飽き・恋愛ゲーム離れが進行し、結局は産業自体の縮小化を招くことになる。流行を追うのではなく、自ら流行を生み出さなければならない。商品開発に数ヶ月以上かかる恋愛ゲームの場合、他所のを見てから作っていては遅過ぎる。

 ターゲットの明確化やニーズの分析が要らないのではない。「マーケットイン」はもはや前提である。その上で、ユーザを驚かせてくれるようなコンセプト、ストーリ、あるいは新たな属性や「萌え」といったニーズの発見、すなわち「マーケットイン」を内包するより高いレベルの「プロダクトアウト」に期待したいし、またそうでなければ恋愛ゲーム産業は自ら閉塞化を加速させることになるだろう。思わず引き込まれてしまうようなクリエイタの「マスタベーション」であればこちらとしても大歓迎である。


このページの内容はいかがでしたか?
大変良い 良い まあまあ 改善の余地あり 不充分・不完全である

コメント(感想、意見、反論、今後扱って欲しいテーマ、etc./記入は必須ではありません):