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恋愛ゲームNextage


第2回 カスタマイズ考(1)

2000/05/25掲載(2000/05/24初筆)

1.Hシーンをカスタマイズしてみる

 18禁ゲームにおける性表現に対するスタンスは人により実に様々だ。「18禁ゲームなのだから何よりもエロを重視すべきだ」という考え方もあれば「性描写も表現の1つとして可能だということだけで表現の幅が広いことこそが重要であり必須ではない」(※1)という考え方もある。そしてそれはどちらもある面において正しいがしかしまた同時に全てではない。主観性の高い問題において自分の考え方を盲目的に他人に押し付けるのは危険だ。

 それについては岸田秀の有名な言葉、「人間は本能の壊れた動物である」というのが的を射ているように思う。セックスに関して言えば、性本能が壊れているというのだ。なるほど、人間はある意味1年中発情していて特に発情期を持たないが、反面時として肝心な時にインポテンスに陥る場合もあるということからも納得させられる。(※2)

 つまり一言で言えば、セックスは「趣味」なのだ。もちろんこれ自体が押し付けになってはならないし、近年問題になっているセックスレスといったことを考えると一言で片づけけていいものかというのもあるが、ここではそう言った面を含めた広い意味での趣味であると考えよう。そして趣味である以上興味の強い人がいれば余り興味を持たない人もいるのも理解できることである。つけ加えれば恋愛も「趣味」であると言えるがこれは更に微妙な問題がありそうである。(※3)

 さて恋愛ゲームに戻ろう。エロゲーであればHシーンを求めるのは当然だが、恋愛ゲームでは求めているのは基本的には恋愛(物語)である。恋愛とセックスは確かに多くの人にとって切り離せないものかもしれないが本来的には別のことである以上「当然」ということは有り得ないので無闇に押し売りになってはならない。

 だが現状を見る限り無自覚的に全キャラに万遍なくHシーンが配置されている場合がほとんどなのはどうだろう。ご丁寧にCG枚数まで揃えてくれているゲームも珍しくない。主人公(を操作するプレーヤ)の意思はもとより、キャラによって個人差があってしかるべき性的嗜好も表現されているとは言い難い(求められると断れないというキャラ付けだったらそこまで考慮した上で)。ましてやどのゲームとは言わないが(言ってるようなものだ)制作側にやる気の感じられないHシーンに至っては問題外である。

 パートナー側の「選択」はシナリオ上で表現することとして、プレーヤ側にどう選択肢を与えるか。従来の数少ない選択の余地が与えられているものとしては1)その場面で正直に「選択肢」が提供されている、というものだが、こちらのスタンスが決まっているとしたらその場になって聞かれるのも間抜けというか興醒めだ。

 恋愛ゲームZEROが1年半ぐらい前に提案した(※4)1つの方法としては、2)「プラグイン方式」がある。ゲーム本体部分を一般向として販売・遊べるようにし、成人向プラグインを別売で提供、それを組み込むことで成人向ゲームとしても遊べるようにするというものである。この方式の明らかなメリットととしてはそのままで18歳未満を含む全ユーザに対応できることだが、余計なプログラミング労力がかかるだろうし、PCでは18禁恋愛ゲームよりも一般向恋愛ゲームの市場の方が小さい現状では余りそのメリットも享受できなそうであり、初めから成人向で遊びたい人にとっては2本買う手間にもなる。

 そこでここではもっとシンプル(?)な3)「カスタマイズ方式」を提案したい。「ヘアの有無」や「精液の量」などアイルのゲームでは昔からカスタマイズできるオプションがあったが徐々に他メーカにも普及し始めていると言っていいだろう。確かに「半脱ぎか全脱ぎか」といった選択なども重要だが(重要だろう?(爆))、だったらそれ以前の「Hシーンの有無」も選択したいというものだ。更にユーザフレンドリーにするならHシーンの濃度をなし〜濃密まで何段階かに選べればなお良く、それとパートナーのキャラ設定の絡みで変化させれば良い。

 もちろん、これはあくまで一般的なアプローチであり、いつも書いているように一番重要なのは「何を伝えたいか」あるいは「何をもってユーザを楽しませるか」だ。ヒロインとの性生活(?)をウリにするゲームにこんなオプションがあっても無意味だし(その場合はそれこそその「中身」をカスタマイズしたいだろう)、また主人公に十分なキャラ付けがされておりそのキャラクタとして伝えたいというしっかりとしたポリシーがあったり、シナリオ上セックスが不可欠という場合もあるだろう。その場合でももし許されるならば(直接的な表現にこそ意味があるというのでなければ)画面をブラックアウトしたり文章表現でそれとなく示唆したりして直接的な描写を回避することはどうにでも可能だが。要は何となくそれが「決まり」だから入れてみました的なHシーンで(それ自体もどうかと思うが)余計なケチがつくのは何とも馬鹿らしいということであり、それがカスタマイザブルであればより多くのユーザにより気分良いゲーム体験を提供できると考えるのである。

 だが安心していい(何がだ)。2年半前のアンケート結果にも表れているが、「オン」か「オフ」かの選択を求められれば、大抵のユーザは「オン」を選ぶのだ。(笑)(※5)






※1、もっとも今のソフ倫の規定を考えると高校生と特定する表現が使えないだけでも恋愛ゲームにとっては致命的で、むしろ(ソフ倫規定に準じた)18禁ゲームの方が表現の幅が狭くなっている気がしないでもない。



※2、もちろん私は完全に「身体」から逃れられるとは考えていない。が、それはまた別の機会の話だ。






※3、そういえば、恋愛ゲームZEROでは従来から折に触れて「恋愛ゲームは宗教だ」なんて言っていたが、小谷野敦は「「恋愛教」は現代最強の宗教である」と書いている。とても偶然とは思えない。(笑)




















※4、このところこの「1年半ぐらい前に」とか「2年ぐらい前に」とかいう昔話をしばしば持ち出しているが、実際のところこの頃に恋愛ゲームZERO内では恋愛ゲームの考えうるあらゆる可能性について議論されてしまっていたりするためである。


































※5、「オフ」を選ぶ価値を提供するために代わりとなるイベントなどを盛り込むといったことも考えられないでもない。だが、そうしたらユーザは恐らく両方のルートを見なければ満足しないだろう。それでは何の意味もなくなってしまう。