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恋愛ゲームNextage


第4回 インターネット展示会の作り方

2000/08/11掲載(2000/08/09初筆)

1.インターネット展示会の作り方

 iCS2000が開かれているのはあちこちで宣伝されているからご存知だろう。そもそも全く期待していないというのも否定しないが、実際に覗いてみてそのあまりのつまらなさにびっくりしているのは私だけだろうか。

 理由は単純明解でただ「得るものがない」のである。なるほど、イベントコンテンツはそれなりに努力・工夫の跡が伺えるし、チャットや掲示板のようなコミュニティ機能は一通り揃っている。しかし「メイン」であるはずの企業ブースがまるで活気がないのはどうしたものだろう。今時自前でWebサイトを立てていないところなどないのに、ユーザとスタッフの対話もなく、自サイトと何ら変わらない情報が載っていても全然嬉しくないし、ましてや初期の頃に散見されたように「準備中です」といったメッセージが表示されるブースに至っては問題外。実世界の展示会では考えられない話である。(※1)

 もっとも出展者側の事情も理解できなくもない。つまり「どれだけ金に繋がるのか見えてこない」ということだろう。ただでさえニッチ市場で生き残るために(ゲームなどの)商品開発に忙しいのに金にならないことをやっていられる余裕のあるところなどほとんどない。通信販売もあるにはあるが、比較的大きなところしかやっていないし、限定グッズなら価値を見出せる人はいるかもしれないけれど、定価でゲームソフトを売られてみても全くもって売る気がないとしか言えない。

 主催者側が積極的に広告を打ってビジターを集めるのと同時に出展者からより良いコンテンツを出展して貰えるように努力すべき面もある。どれだけの人がどのページを何回見てくれたか(できれば属性をつけたユーザ情報が関連付けられていて欲しいところ)といった詳細なレポーティングサービスの提供(もしかしたらもうやっているかもしれないが)や、もっとユーザの立場に立った電子決済代行のインフラを揃えて、そこで初めてさぁどうぞと言うべきだろう。ただサイト作ります、何か出してください、ではそれはやってられない。

 だが、それとは別に、こういったWebによる展示会には構造的な弱さがあるのではないだろうか。Webの世界では、1クリックで──ものの1秒で他のサイトに飛べる。メーカブースを集めました、という程度ならわざわざ展示会サイト立ち上げるまでもなく、各メーカサイトへのリンク集で、もちろん恋愛ゲームならば恋愛ゲームZEROでも、事足りてしまう。1秒で行ける「隣」にメーカサイトがあるんだったらそちらをしっかり作ってくれた方がユーザにとってもいいし、メーカにとっても自サイトに来るユーザはもともと興味を持って見に来ているのだから商売に繋がりやすい。

 更に言えば、地理的空間的な場所の制限から解放されているのと引き換えに、その「場」によって得られるものが失われているのではないだろうか。それは例えば会場の熱気、例えば身体的感覚とリンクした高揚感といったものである。ちょうど今日(8/11)から始まるコミックマーケットのような即売会を考えればより実感が湧くかもしれない。こういった即売会に参加されたことのある方で、普段ならば(同人ショップ等では)買わないようなものを知らず知らず買っていたという経験をお持ちの方はいないだろうか。

 実世界の展示会はしばしば「祭り」であり、すなわち身体的強度に基づく「ハレ」の場であったはずだ。しかしWeb上のそれでは、いくら主催者側が同じような場を作ろうとしても、ユーザは普段通り「ケ」のまま、ただ必要な情報のみを求めてピンポイントで閲覧するだけであり(※2)、これであればそれこそメーカサイトで100%済む話である。勢い、この手の展示会はともすると最初の方に書いたように「使える、使えない」というだけの現金な世界になってしまう。(※3)

 なるほど、気楽に「参加」はできる。でも大して楽しくもない。インターネット展示会という試みはまだ始まったばかりだ。
















※1、もっともWebでは更新されないサイトは見向きもされないので、いきなり完全な状態で出したくないというのも分からなくもない。










































※2、普通なら見そうにないブースに行かせる(ページを開かせる)方法として、iCSが実際にやっている宝探しのような企画はアリだ。もっともそういったユーザがそれぞれのページ内容をちゃんと見ているのかや、結果的にメーカにとってプロスペクトとなりえているのかはまた別問題なのだが。いずれにしろキャッチ―なページを作る必要はある。

※3、同じ場所に集まっている、いやメーカサイトではないサイトでやる意義を見出すとしたら、例えば普段なら考えられないメーカ同士が共同で何かやらかしてくれるというのなら楽しいが。