HOME STUDY DATA GALLERY LINK BBS SEARCH MAIL

恋愛ゲーム学補講


第15講 ネットワーク恋愛ゲームの展望と現状

99/11/04開講(99/11/03初筆)

1.ネットワーク恋愛ゲームの可能性

 昔話で恐縮だが、2年ほど前、「Vircuacall3」(以下「VC3」)の完成度に驚いた私は、これ以上の新しいものを作るとしたら、ということで「VC4」ではLIPSを拡張した完全リアルタイム対話の適用を、そして「VC5」ではネットワークへの対応を唱えたことを記憶している。もちろん実際にはその後「VC」シリーズは音沙汰がなくなってしまったし、今の低落したF&Cにそれを求めることも出来なくなってしまったが、当時は「VC」シリーズは世界観的にもネットワークゲームとの親和性が極めて高いような気がしていたため非常に期待していたものだった。

 しかし、それから2年経ってもネットワーク恋愛ゲームは現れていない(※1)し、またそれを巡る状況もほとんど変わっていない。つまり、タイトルには「展望」などと書いているが、恋愛ゲームをネットワークに対応させるのには、余りにも問題が山積みで実現には程遠いという現実である。

 まず存在する問題は課金システムをどうするのかということであり、かなり重大なものだが、これは別に恋愛ゲームに限ったことではないから、ここでは恋愛ゲーム固有の問題を考える方が適切だろう。

2.ネットワーク恋愛ゲームへのアプローチ

 ただ流行りだからネットワーク対応すればいいというものではないから、それによって何をやりたいのか、要はネットワークに何を乗せるのかということを考えなければならない。常識的なネットワーク恋愛ゲームへのアプローチとしては3つが考えられるだろう。そして、それぞれがそれぞれの問題を抱えており、以下にそれらを確認していく。

1)コンテンツをサーバ上に置く場合。
 まず1つは、厳密に言えばネットワークゲームからは少々ずれるかもしれないが、ベースシステムなりをパッケージ等で販売し、コンテンツをサーバに置く方法である。個人的には非常に興味深いと思っている。ベースシステムにはヒロインがいない。ヒロインはサーバに存在し、必要に応じてダウンロードして遊ぶ。これの面白いところは必要なヒロインだけを選択できることである(※2)。恋愛ゲームは抱き合わせ商法だ、などと暴言を吐いているぐらいだから、要らないヒロインはゲームに出てきもしないのが都合良いというのが正直なところだったりする。もちろんどんなヒロインが人気があるのかといった情報の収集も簡単だ。

 また、これの派生としてシステムごとサーバに置いてしまうというのも考えられる。ビジネスの世界では今ブレイク寸前のASP(Application Service Provider)というヤツだ。システムごと修正が効くのでバグ対応も容易と思われる。当然24時間体制のサーバの保守は面倒だろうが…。

 このアプローチの問題点は先ほど挙げた課金システムの重要性が極端に高いということだろう。コンテンツごとに課金できなければこの方法は破綻する。更に帯域の絶対的な小ささは現状でのこのアプローチを問題外のものにしている。画像だけでも重いのに、音声を入れようものならモデムでダイアルアップしているようなユーザがついてくるとは思えない。また、昨今の恋愛ゲームの消費期間が短くなっていることも不利な要素だ。同じゲームを長い間遊ぶということがなくなっているから、次から次へと魅力あるコンテンツを提供できなければ早々に飽きられてしまう可能性が高い。それよりはむしろパッケージで小粒な作品を出していった方が売れそうな気もする。あくまでゲームではなく、ヒロインを1つの単位とした作り方が良いのではないかとも思うが、ヒロインごとの舞台を共通にするのか、あるいはそれも変えていくのか色々と考えることがありそうだ。

2)ユーザ同士に恋愛(ゲーム)をさせる場合。
 もう1つは、一番現実味に欠けるが、1人のユーザをヒーロー、もう1人のユーザをヒロインとしてリアルタイムなりで恋愛ゲーム(的対話)をさせるという方法であるが、これも現状では根本的に破綻している。男性ユーザが圧倒的多数を占めている恋愛ゲームの世界でこれをやろうとすると、まるで男子校でフォークダンスをやろうとしているようなもので、全然楽しくないということになるのは火を見るより明らかだ(※3)。

 また、仮に男性と女性が存在したとして、それぞれがどういう存在として「恋愛ゲーム」を行うのかというのも問題だ。2人が現実の、あるいはネットワーク上の実体である本人として対話を行うとするとそれはもう恋愛ゲームというより、普通の出逢いサイトと変わらないものになってしまうし、片方が実体で片方が仮想の2次元キャラを演じるとしたら実体をやっている方が自分は一体何をやっているのかと自問することになりそうだ。かと言ってお互いに用意された仮想の2次元キャラを演じれば良いのかというと果たしてそこに繰り広げられる「恋愛」というものが楽しいのかというのはかなり微妙な気がする。いずれにしてもこの方法は既存の恋愛ゲーム観や恋愛観、性別観といったものを問い直して行かないことには普及し得ないだろう。

3)ネットワーク対戦に持ち込む場合。
 現時点で一番やりやすそうなのが、プレーヤが共通のヒロインを取り合うような(必ずしも同じヒロインを取り合わなくてもよいが)ネットワーク対戦に持ち込む方法である。「ネクストキング」「センチメンタルジャーニー」「リトルラバーズシーソーゲーム」のように、すでにボードゲーム型の対戦恋愛ゲームはあるのだから、それをネットワークに乗せることはごく自然な考え方であり、他の方法よりも遙かに馴染みやすいものである。

 この方法に問題があるとすれば、「(現実世界においての)恋愛敗者がゲームでも競争してどうするの?」という直球の問いに対して有効な反論を容易には用意できないことだろうか。そのため、このアプローチにおいては、恋愛(物語)の楽しさというより、あくまで「ゲーム的な」楽しさにいかに落とし込むかというところに尽きる。先に名前を挙げたゲーム群はその辺りを割と分かっているのではないだろうか。ネットワーク品質がより安定し、1ゲームのプレイ時間を短縮して行けば、比較的現実味を帯びたアプローチだろうが、シナリオ主導の昨今の恋愛ゲームとは反対方向を向いているとも言える。

3.恋愛ゲームであるということ

 こう考えてくると、恋愛ゲームというのは実はビデオゲームの中で最もネットワークと相性の悪いゲームなのではないかとさえ思えてくる。恋愛やセックス自体は関係なのだが、恋愛ゲームヒロインとの間に構築される「関係」(※4)というのは自己内に形成される小さな閉じた世界であって、そこは他者の介在を許容しない場所であると言っていい。

 それでもなお、私はドラスティックな発想の転換によって、思いもつかないようなネットワーク恋愛ゲームが出てくる可能性を否定したくないのだ。そしてそれが登場した時には、もしかしたら恋愛ゲームということ自体を大きく揺るがすものになるのかもしれない。












※1、そのF&Cは「FCN」を出してたりするが、もちろん恋愛ゲームではないし、ゲーム自体にはオリジナリティが欠如しているので何の魅力も感じられない。






















※2、何だかある意味風俗のようなものが想起されてしまうが…。

































※3、もちろん男性の方が好みの男性なら問題ないが、既存の恋愛ゲームユーザでは少数だと思われる…。







































※4、ここで「」付きで書いているのは、恋愛ゲームヒロインに対する一方的な「関係」は現実世界における関係とは異質のものである(もはや関係ですらない)という指摘もあることから。