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恋愛ゲーム学補講


第20講 2000年ベスト恋愛ゲーム投票─(1)部門別

2001/04/21開講、2001/05/30最終更新

 毎年恋愛ゲームの発売数は右肩上がりになっており、市場の停滞を考えれば2000年はそろそろ頭打ちか減少に転じるだろうという予想を余裕で裏切る結果となった。やはり、みんな恋愛に興味があるのだ(そりゃそうか)。今年(昨年)も皆様の投票で1年を振り返る恋愛ゲームZERO恒例のベスト恋愛ゲーム投票の結果をもとに見ていくことにしたい。

問、コンシューマ・PCを通じて2000年(1月〜12月)に発売された恋愛系ゲームで、グラフィック、シナリオ、音楽、音声、ゲームシステム(操作性等のプレイアビリティではなく、アドベンチャー形式、シミュレーション形式などシナリオを載せるゲームシステム)、キャラクター(キャラが立っている、お気に入りキャラがいるなど)、演出(グラフィック、シナリオ、音楽の使い方、組み合わせ方、画面効果など)、えっちシーン(流れが自然、使える(笑)などご自分の基準で)の各要素についてそれぞれもっとも良かったゲームを選んで下さい。該当するものがなければ必ずしも選択する必要はありません。

(i)グラフィック

有効投票数:270(うち無投票:61)

1AIR
62
2Canvas〜セピア色のモチーフ〜
34
3久遠の絆再臨詔
15
4とらいあんぐるハート3
8
5Kanon(PC一般/DC版)
6
6Natural2-DUO-
果てしなく青い、この空の下で…。
まじかる☆アンティーク
5
9下級生(Win版)
絆という名のペンダント
SeeIn青
ピュアメール
Bless
夢のつばさ
4
-(ref.)無投票
61
  • グラフィックについて言うと、『CARNELIAN』稼ぎまくりの一年でした。無理な事はするなっちゅーねん。毎月GAMEが出てましたね。(「レンズの向こう側……」)
  • 最近はグラフィックを前面に押し出してるソフトが少ないせいか、この部門にノミネートするほどの作品がないですね。性能面では横一列といった感じになってしまいましたし。(無投票)
 10位以下では「恋ごころ」「好きだよっ!」「センチメンタルグラフティ2」「Rainy Blue〜6月の雨〜」「レンズの向こう側……」が3票。みつみ美里・甘露樹両氏のような大御所の作品がリリースされなかった(「猪名川でいこう!!」があるにはあるが)こともあるのか、グラフィックの全体的なレベルが上がる一方で、ユーザの印象には残っていないことがグラフィックへの言及のされなさからも伺われる。

 それに、「全体のレベルが上がった」とは言うが、画風を人気作家に似せようというのが少々目に付き過ぎているのはどうか。ある程度は流行を追うのも守りに入らざるを得ない現状では仕方がないとしても、ファンアートではなく、プロの作品なのだからもっと自分の絵ということを考えてもいいと思うのだが。もちろん、一方では優れた画力を持ちながら、シナリオなど他の部分に恵まれず報われていない人もいる訳で勿体ない。

 その中で「AIR」の1位はついに来たかという感じか。ここまで来たらもはや背景うんぬんではなく
  • やっぱり樋上いたるさんの絵はよいです。
といったご意見もあるように、いわゆる「いたる絵」がすでにユーザにしっかりと受け入れられていることを認めない訳にはいかないだろう。絵の魅力は技術だけではないから、相変わらず構図が狂っていようとユーザの心を掴められればOKだ。次回以降の作品で、「いたる絵」でなければKeyじゃないという意見が出てきてもおかしくない。

 2位「Canvas」はキャラの魅力の援護も受けて健闘。一時はF&Cのグラフィック王国の凋落ぶりが激しかったが(少なくともメインラインに関しては)十分復興した感がある。ようやくスタッフを大事にすることの重要性に気づいたのだろうか。「久遠の絆再臨詔」はPCゲームが分散している中でコンシューマユーザの支持を得て3位に。DC移植でもここまでやればちゃんと評価される。

(ii)シナリオ

有効投票数:270(うち無投票:37)

1AIR
87
2Kanon(PC一般/DC版)
28
3銀色
11
4久遠の絆再臨詔
sense off
10
6加奈〜いもうと〜(Mac版)
果てしなく青い、この空の下で…。
8
8Never7〜the end of infinity〜
6
9星空☆ぷらねっと
Lien〜おわらないきみのうた〜
5
-(ref.)無投票
37
  • 絶対"そう来る"と分かっていても、やっぱり泣かされたので。次点「恋ごころ」: 終盤にかけての展開が完璧に出来ていれば、さらに良くなっていたかも。(「AIR」)
  • 普通だったら「AIR」でしょうが、あえて、「Lien」にします。ここはゲームプレー中にどれだけ泣けたか、で決めました。恋愛ゲームにあって親子の会話で泣けたのはこのゲームくらいですから。(「Lien」)
 方向性はともかく、シナリオがいいと言われた定番作がずらりと並んだ。「AIR」については総合ランキングでも嫌というほど言及されるので置いておくが、「Kanon」にかなり喰われているのが目に付く(割合的にはキャラクタ部門の喰われ方の方が高いが)。「Kanon」の流れを期待した向きには酷なのは無理もないか。

  • 1位、シナリオ、演出の「その他」はすべて「Portrait」です。ハッピーエンドルートは恋愛系といって大丈夫でしょう。主人公と一緒に「ヒロインを好きになる」ことができる丁寧なシナリオです。
  • 1位、シナリオ、演出、「その他」は「Phantom of Inferno」(ニトロプラス)。
 重ね重ね選択肢漏れは申し訳ない。偶然という訳でもないだろうが、総合ランキング、シナリオ、演出の相関は高く、少数の作品が上位を独占するという格好になっている(他の部門でもそうといえばそうだが)。もっとも、いくらシナリオ重視と言っても総合ではシナリオに加えてキャラクタの評価が入るので上下の変動があり、実質新作では2位につけている「銀色」も総合ではやや伸び悩んでいる。(それをちゃんと認識して次に生かしてくるところはさすが。)

 シナリオ部門で健闘しているものとしては「Never7」「星空☆ぷらねっと」
  • シナリオ秀作と言われる作品を積んだまま(「青空」、「Sence Off」等)にしているのでシナリオについては保留させていただきました。(「特になし」)
 なお、当サイトでは急かさずご自分のペースで楽しんで頂きたい思いからできるだけ遅くまで投票を受け付けているが、この手の投票ではいずれ見切りをつけなければならないのが辛いところ。今頃集計しているのも時期遅れも甚だしい。

 しかしシナリオ重視な作品であれば、本来はもっと1つの作品にじっくり浸っていたいものだ。今の大量消費・高速回転の状況はどう考えても「シナリオ系」に向いているとは言えない。時に「難解な」作品が切って捨てられているのを見かけるが、1つ間違えばそれは読み込もうとしていない思考停止と隣り合わせだ。シナリオの進歩がないと言った時、半分以上はユーザの責任であり、ユーザが望んだ結果であることを認識する必要がある。

 10位以下では「Canvas」「Aries」「恋ごころ」が4票、「ピュアメール」「SeeIn青」が3票。

(iii)音楽

有効投票数:270(うち無投票:51)

1AIR
135
2Kanon(PC一般/DC版)
13
3果てしなく青い、この空の下で…。
11
4久遠の絆再臨詔
とらいあんぐるハート3
5
6加奈〜いもうと〜(Mac版)
sense off
まじかる☆アンティーク
4
9カナリア
ゴーゴー・アイ・ランド
サクラ大戦2(DC版)
3
-(ref.)無投票
51
  • PCゲームでここまで音楽がいいと思ったのは初めて。(「AIR」)
  • シナリオ、音楽共に「Kanon」以上のモノは無かった。個人的に「恋ようび」のエンディングは音楽としてどうかと思う。これで自信が有るのか……。絵だけゲー。(「Kanon」)
  • 各キャラに合わせたエンディングの歌を用意しているところ。しかもイメージぴったりで出来がいい。I'veミュージック全盛の中、引けを取らない。次点「AIR」: 演出どおりの音楽という点で最高の出来。(「カナリア」)
  • あえて「AIR」を外しました。ゲームの持つ雰囲気にあっていたのは「銀色」かなと。(「銀色」)
 数字だけ見れば、「AIR」の圧勝。全体の50.0%、無投票を除くと61.6%というのは1999年の「Kanon」には及ばないものの、依然として驚異的な支持率である。しかし、実際のところどうだろう?「鳥の詩」のような歌モノは別として、正直なところ「AIR」の曲は印象が薄いと感じているのは私だけだろうか。

  • 音楽が音楽でなく「背景」の一部になっている。これは本当はすごいことなのだけどでも私の好みには合いませんでした。
 こういったご意見にも見られるように、今回音楽としてインパクトはかなり落ちているように思われる。音楽が自己主張し過ぎるのがどうかというのは総合娯楽であるゲームでは音楽がまともに聴けるようになって以来ずっと議論されてきたことだが、これ(音楽が主張しないこと)はこれで1つの考え方である。そういう意味では3位の「青空」もアプローチは違うが、考え方は似ているのではないだろうか。演出部門でも書いているように、「青空」は普段はSEを活用して雰囲気を作る一方延々と音楽を垂れ流しせず、ここぞという時に使うことで効果を上げている。昨年は音声の方でSEの重要性について触れたが、SEはむしろ音楽の方に含めるのが自然で、それをしっかりと実践してきたことは高く評価したい。

 一方個々の曲のクオリティでは、昨年ここで「単独で『聴ける』ことはもう前提な時代になってきている」と書いたが、
  • 最近、一部のエロゲーの曲のレベルが著しく向上してるような気がします。(「果てしなく青い、この空の下で…。」)
というご意見もあるように、その傾向は全体として少しずついい方に進んでいる。その意味では、他と比べて「AIR」の曲がそれほど抜けているとは言えない。にも関わらずこれほど高い支持率を集めているのは、

  • Keyの作品のシナリオと音楽の調和には脱帽です。音楽だけ聴いていても楽しめます。「鳥の詩」と「Last regrets」、毎日聴いてます。(「Kanon」)
といったご意見に見られるように、美少女ゲームの音楽の評価がシナリオと不可分だからだろう。美少女ゲームは、その性質上グラフィックが一番先に進歩し、次にここに来てようやく音楽が揃い始めてきた。しかし現状シナリオがそれに追いついているとはとても言えない。その中で、まだ頑張っている方の作品が音楽でも高い評価を得ていると言える。実際1位「AIR」から6位「sense off」に至るまで、7作品ともシナリオ部門でもランクインしている。逆に言えば、その他はランクインしていないし、もっと言えば残る6位の「まじかる☆アンティーク」はシナリオ部門では1票も入っていない。この状況をかつてノベルゲームを切り拓いたLeafはどう受け止めているのだろうか。  

(iv)音声

有効投票数:270(うち無投票:113)

1とらいあんぐるハート3
26
2Kanon(PC一般/DC版)
16
3Canvas〜セピア色のモチーフ〜
15
4真・瑠璃色の雪
Natural2-DUO-
7
6センチメンタルグラフティ2
6
7カナリア
ときメモ2 Substories〜Dancing…
ピュアメール
5
10AIR
サクラ大戦2(DC版)
4
-(ref.)無投票
113
  • 自然体なセリフまわしと演技に。前作と比べると、ほとんどキャラとの声のギャップがなくなってきた。(「とらいあんぐるハート3」
  • ホントは声いらない派なので該当無しにしようかと思ったが、「久美子さん」ボイスに。(「Natural2-DUO-」
 10位以下で「Aries」「銀色」「恋ごころ」「サクラ大戦」「Natural Zero+」「Never7」「Pure Heart」が3票獲得しており、キャラゲーとして成功している「とらいあんぐるハート3」「Kanon」「Canvas」がここでも相関性の高さを示して上位3位で比較的抜けているものの、全体としてはばらけている。また無投票も多く、音声はあくまでゲームの魅力として副次的なものであることを確認させる。演技が下手だったりキャラと合っていないと酷評される一方、上手くて良く合っていてもそれだけで作品の評価がずっと上がる訳でもないというのは、プログラマの報われなさにも通じるものがある。音声に関してはあくまで投資効果を考えた上で導入の検討が必要だ。

 他と比較して音声部門で健闘しているものとしては「センチメンタルグラフティ2」「カナリア」「ときめきメモリアル2 Substories〜Dancing Summer Vacation〜」。「副次的な」部門で健闘しているというのも複雑な気分で、「カナリア」は音楽部門でもランクインしているので、音周りにこだわった作品として評価されうるものの、「センチメンタルグラフティ2」「ときめきメモリアル2 Substories〜Dancing Summer Vacation〜」は哀愁が漂っている。

 えっちシーン部門でもランクインを果たした「AIR」だが何故かここでも登場。えっちシーンはともかく、音声は入っていないはずなのだが。卓越した2次元人の中には見えないものが見えてくる「心眼」を備えた人がいるが、ついに我々は聞こえないものが聞こえてくる心耳まで獲得したのだ。

(v)ゲームシステム

有効投票数:270(うち無投票:119)

1まじかる☆アンティーク
26
2とらいあんぐるハート3
16
3AIR
14
4ピュアメール
8
5果てしなく青い、この空の下で…。
7
6キャッスルファンタジアエレンシア戦記
サクラ大戦2(DC版)
6
8あいたくて…
SeeIn青
プリズムハート
4
-(ref.)無投票
119
  • ちゃんとゲームとして成り立っているのは今年はこれぐらい。アイテムを集めて売るという昔ながらのシステムではあるけど結構楽しんだ。(「まじかる☆アンティーク」
  • ゲームシステムはどうあがいても「バルドバレッド」の一本勝ちですが、あれは恋げーでは無いのですか。(「キャッスルファンタジア〜エレンシア戦記〜」
  • 『大神さん』のかばうコマンド3回化に。18禁は進展無し。elfの「BE-YOND」位か。恋愛ゲーは殆どシステム死んでますな。(「サクラ大戦2」
  • どうってことのないADV形式のシステムですが、キャラ萌えするには一番安定したいいシステムではないかと。(「Canvas〜セピア色のモチーフ〜」
 質問の中でゲームシステムはプレイアビリティではなく、と明記しているように、恋ZEROの投票では既読スキップや読み返し、シーン回想のような補助機能、バグがないこと、アプリケーションの安定性やレスポンスといったプレイアビリティに関する項目は一切ない。これは言い換えれば、そういったプレイアビリティの高さはできて当たり前であって、評価する対象にはなり得ないということである。こういった受け止め方はプログラマにとっては厳しいかもしれない。高い水準でできても全く評価されることもなく、ひとたび足りないモノを作ればこっぴどく叩かれるのではやってられない(仕事柄プログラマの報われなさは痛い程分かる)。

 しかし、あくまでコンテンツを売る恋愛ゲームにとって、よほど高度なことをやろうというのでもなければ、それは全くコアコンピタンスから外れているのであって、初めから人的リソースを割くところではない。自社開発では不十分ならばガンガンアウトソースしていい、むしろするべき部分である。そういう意味ではある程度融通の利く、オープンソースなAVGエンジンがあってメーカによらず技術が共有されるのが作り手にとっても受け手にとっても理想の形かもしれないと思うのだがじゃあ作れよと言われても困るので強くは言えない。

 さて、ゲームシステムに戻ろう。この部門のランキングでは他のそれとは毛色の異なる、「遊べる」ゲームを見つけることができる。軒並みランキング上位から忘れ去られている「まじかる☆アンティーク」もようやくここで1位を確保してかろうじて面目を保っている。一方、アドベンチャーゲームやノベルゲームのゲームシステムは、完成されているというべきか、ずっと行き詰まったままで、それどころか選択肢におけるヒント表示などに見られるように、擬似一本道化がますます進行しており、ユーザのヌルさも行き着くところまで行き着いた感がある。

 それは44.1%の無投票率の高さという結果としても表れている(ちなみに昨年は39.0%)。これはシステム面での工夫が見られないことに対する厳しい評価ということもできるが、もとよりゲームでない「ゲーム」のシステムに対する関心の低さの表れという面も強いだろう。システム面での工夫への要求が高まれば作る方も対応せざるを得ないのであって、今の状況は多くのユーザが望んだものに他ならない。

 とは言え歩みを止めれば後は死ぬだけだ。2000年は残念ながら1999年の「Prismaticallization」のような実験作も見られなかったが、余力があるメーカ(ほとんどないだろうが)は新しい試みにもチャレンジしていって欲しいと思う。

 なお、
  • 「ガンバレードマーチ」に投票したかったんですが項目になかったんで(何故?)その他で投票させて頂きました。それと2000年を振り返るとシナリオにウエートが占める作品ばかり目立った気がします。そんな中ではGPMは異彩を放っていたしこう言った作品ももっとやりたいですがPCのソフトハウスさんでは難しそうですね。
と言ったご意見を頂いているように、「ガンバレードマーチ」は投票ページの選択肢になかったため、今回余り票も入らなかったが、入っていればランキングを大きく動かしていた可能性がある。

 10以下では「Kanon」「Canvas〜セピア色のモチーフ〜」「久遠の絆再臨詔」「ゴーゴー・アイ・ランド」「真・瑠璃色の雪」「好きだよっ!」「Natural2-DUO-」「Natural Zero+」が3票獲得。ばらけている。

(vi)キャラクタ

有効投票数:270(うち無投票:56)

1AIR
40
2とらいあんぐるハート3
28
3Kanon(PC一般/DC版)
21
4Canvas〜セピア色のモチーフ〜
13
5果てしなく青い、この空の下で…。
10
6久遠の絆再臨詔
sense off
8
8Milkyway
6
9ピュアメール
まじかる☆アンティーク
5
-(ref.)無投票
56
  • 恋ちゃん最高!藍ちゃんも可愛い!(「Canvas」
  • 特にお気に入りというのは無いけど、個性の強さは飛びぬけてる。全身着ぐるみって初じゃないです?(^_^;)(「恋ごころ」
  • 「うぐぅ」だか「にょ」だか「がおぉ」だか知らんが、パッとしない。男がこの言葉を吐くのもどうかと思う。(無投票)
(その他キャラクタに関しては多く言及されていますが、総合の方で作品ごとにまとめます。)

 ここでも「AIR」が1位だが、他の部門での飛び抜け方からすると精彩を欠いている。昨年の作品(の移植)である「Kanon」に喰われているところにも表れているように、得票数を全体の投票率で割った支持率で計算すると、昨年の総合1位「Kanon」のそれと比較して多くの部門で支持率を落としているが、中でもキャラクタ部門の落ち込みは-23.2%と他部門に比べて激しい。実際のところ、佳乃と美凪が単なる物語の道具と化し(他もそうだが)、観鈴が(筆者のようにすっかりツボにハマってしまうのもいるが)基本的にニッチキャラとくれば、少なくともキャラクタの構築に関しては「AIR」は失敗だったと言わざるを得ないだろう。やはり久弥氏抜きでは厳しいか。

 2位以降ではさすがにキャラ萌えゲー本家の「とらハ3」「Canvas」が強い。「Canvas」はシナリオがもう少しマシならもっと稼げたと思うのだが。以前から言っているようにシナリオとキャラは不可分であってキャラだけで走るのは辛い。その点「とらハ3」はバランス良く票を集めているし、隠れ萌えゲーの「青空」もしっかり5位にランクインしている。

 その他キャラクタ部門で目に付くものとしてはオーバーアクションが楽しい「Milkyway」。これもシナリオは要努力か。意外なところでは派手さはないが「sense off」が健闘。一方今までことごとくキャラをヒットさせてきたLeafの「まじかる☆アンティーク」は辛うじてランクインする程度のお粗末な結果。

 なお、キャラクタ部門は票がばらけやすい部門であり、10位以降も「恋ごころ」が4票、「夢のつばさ」「真・瑠璃色の雪」「センチメンタルグラフティ2」「加奈」「Rainy Blue」が3票獲得している。

(vii)演出

有効投票数:270(うち無投票:82)

1AIR
92
2Kanon(PC一般/DC版)
果てしなく青い、この空の下で…。
11
4銀色
9
5とらいあんぐるハート3
6
6加奈〜いもうと〜(Mac版)
Lien〜おわらないきみのうた〜
4
8Canvas〜セピア色のモチーフ〜
久遠の絆再臨詔
恋ごころ
SeeIn青
sense off
まじかる☆アンティーク
3
-(ref.)無投票
82
  • あのシーンの音楽のタイミングは絶妙だった。まるで「ここで泣きなさい」という合図のように…。(「AIR」
  • 画面の見せ方は新鮮味があった。各章ごとにヒロインがおり、ヒロインしか音声がないというのもよかった。英語版もあって字幕付というのも映画を意識したゲーム作りを反映していた。(「銀色」
  • 「Kanon」越えは無し。(「Kanon」
  • アニメーションのなめらかな動きや、作りこみの細かさにLeafのパワーを感じたんですが、まさかそれがLeaf崩壊の引き金になっていたとわ。(ぉ(「まじかる☆アンティーク」
 感動系大活躍。何も演出は感動系に限らず萌え系でも重要なはずだが、ユーザの印象の残り方にはかなり差があるようだ(そもそも「Kanon」「青空(果てしなく青い、この空の下で…。)」は萌え系でもある訳でこういう分け方はなげやりだ)。相変わらずシナリオや音楽のランキングとよく連動しており、素材レベルでまだ演出うんぬんを語る段階にまで達していない作品の多さを伺わせる。

 元より音楽と演出が身上のKey(特に麻枝)作品はさすがに高い。「AIR」に至ってはシステムごと載せてしまう周到さ。狙い済ました音楽の使い方も人によっては鼻につくかもしれないほど。他では「青空」がいい。ただ延々音楽を垂れ流すのではなく、SEを大いに活用しポイントを絞った音楽の導入は雰囲気のある絵と相まって独特の世界観の構築に成功している。全ての作品に有効とは言えないが、こういった固定観念に囚われない柔軟な発想は他メーカも見習うべきところが多いのではないだろうか。

 演出部門で健闘しているのは「銀色」(シナリオ部門も高い)や「Lien」。ビデオゲームでは、「映画を意識する」というのはすでにスクウェアの失敗例が示しているように「やってはいけない」典型的パターンであり「映画」を口にしたかどうかがハズレかどうかを判断する指標にすらなっていたことがあって、「銀色」も発売前にはそういった危惧を抱いていたが、言葉は同じ「ゲーム」であっても求められているものが違ってくるノベルゲームでは話は別なようだ。

(viii)えっちシーン

有効投票数:270(うち無投票:139)

1Natural2-DUO-
21
2とらいあんぐるハート3
17
3ピュアメール
8
4まじかる☆アンティーク
7
5AIR
6
6MoonLight〜おもいでのはじまり〜
檸檬〜影絵亭ノスタルジヤ〜
5
8下級生(Win版)
4
9eye's ONLY
Canvas〜セピア色のモチーフ〜
真・瑠璃色の雪
すいすいSweet
3
-(ref.)無投票
139
  • 回数、シチュエーション、エロ度など一番良かったかなと。「とらハ3」「PureHeart」もなかなか良かったと思いますが。(「Natural2-DUO-」
  • 「真・瑠璃色の雪」: 自然な展開でH度高い。しかもシーン再生もあり。…そう、自然な展開でもH度は上げれるんだ!純愛系だから軽くというカタチに囚われていてはっ!!(ぉ)次点「とらハ3」: ほぼ同上。しかしH度で負け。
  • 「Natural2」のくーちゃんに。千沙都の毎回キッチンでHはちょっと…。私はもっと他の所でもしたいぞ。
  • 2000年11月ごろから、どのメーカーに限らず、Hシーンがえぐくなっている気がする。やはり、「AIR」の反動で市場そのものが落ち込んだ反動からだろうか。
 従来恋愛ゲームにおいてはえっちシーンがおざなりだという批判が大きかったが、このところようやく作り手側にもえっちシーン満足度への意識が持たれるようになってきている印象があり、2000年はそれが徐々に現れてきた年と言える。恋愛ゲームでえっちシーンの満足度を上げるアプローチとしては、主に(i)純愛・鬼畜両モードを搭載するものと、(ii)純愛だけどしっかりH、という2つがあり、今回は、1位「Natural2」、3位「ピュアメール」が前者で、2位「とらいあんぐるハート3」が後者のアプローチで成功している。それぞれ「Natural2」は(i)タイプの走りである「Natural」シリーズ、「とらハ3」は(ii)タイプの走りである「とらハ」シリーズ最新作で面目躍如。

 他部門と比較して特にこの部門で健闘しているものとしては「檸檬」。恋愛ゲームというかそもそもヤリゲーだと言ってしまえばそれまでなのだが。音声が下手という訳ではないのだけどあまりに声質が絵と合っていないのが惜しい。

 昨年の1位「GREEN」に見られるように、えっちシーンはアニメーションや3D(3Dではまずキャラ萌えのハードルが高くなるが…)が大いに活躍できる部分だが、今回はかろうじて「eye's ONLY」がランクインしているのみで、その点に関しては不作と言えるかもしれない。2001年の頑張りに期待したいところだ。

 一方、ユーザの反応としては無投票が全体の半数以上を占め、他部門に対して無投票率のダントツな高さは相変わらずである。また、「パンパンパン」で笑いすら誘った「まじかる☆アンティーク」や、穿った見方をすれば「いい加減エロゲーやめようぜ」というメッセージすら読み取れる「AIR」(昨年の「Kanon」の0票からは大躍進であり、いたる絵がすでにユーザに使えるレベルまで受け入れられていることが伺える)がしっかり4位、5位に入っているのを見ると恋愛ゲームに求められているえっちシーンとは何なのだろうと頭を抱え再考せざるを得ない。
※1、2000/12/27〜2001/04/15頃当サイトにて実施させて頂きました。ご協力ありがとうございます。なお、今回全恋愛系ゲームを拾い上げられず「その他」で回答せざるを得ない方が多く申し訳ありませんでした。