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2002年ベスト恋愛ゲーム投票─(1)部門別
恋愛ゲーム学補講 第30講

2003/05/06初版、2003/06/20最終更新

2002年ベスト恋愛ゲーム投票─(1)部門別

 2002年は有力ブランドKEY、age、ねこねこソフト、D.O.の不在やその他話題作が軒並み延期されたことでインパクトに欠けた1年で、ベスト恋愛ゲーム投票を始めた1997年から「To Heart」「ONE」「Kanon」「AIR」「君が望む永遠」とある意味でカタい作品が選ばれてきた過去5年と比較して、例年になく予想がつかない投票となった。今年も180名を越す多数のご協力に感謝しつつ、2002年を振り返ろう。

 いつものようにまずは部門別投票から。

問、コンシューマ・PCを通じて2002年(1月〜12月)に発売された恋愛系ゲームで、グラフィック(立ち絵、イベント、背景など)、シナリオ(ストーリ、テキストなど)、音楽(SEはこちらに含む)、音声(キャラクタのみ)、えっちシーン(流れが自然、使える、などご自分の基準で)、企画(ゲームデザイン、オリジナリティなど)、演出(キャラクタの立ち回り、グラフィック、シナリオ、音楽の使い方、組み合わせ方、画面効果など)、ゲームシステム(アドベンチャー形式、シミュレーション形式などシナリオを載せるゲームシステム)、キャラクタ(キャラが立っている、お気に入りキャラがいる、萌える、など)、プレイアビリティ(操作の快適さ、プログラム品質など)、の各要素についてそれぞれもっとも良かったゲームを選んで下さい。該当するものがなければ必ずしも選択する必要はありません。

i)グラフィック部門
有効投票: 191(うち無投票: 35)

順位ゲーム名graphpoint
1水月(PC)
19
2D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
14
3それは舞い散る桜のように(PC)
13
3うたわれるもの(PC)
13
5Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
9
6Wind-a breath of heart-(PC)
7
7AIR(PS2)
6
8君が望む永遠(DC)
4
8Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)
4
8想い出にかわる君〜Memories Off〜(PS2/DC)
4
8白詰草話(PC)
4

[11位以下]
3票: シスター・プリンセス(DC)、鬼哭街(PC)、痕 リニューアル(PC)

[投票者コメント]

 ☆画野朗氏、七尾奈留氏、西又葵氏、甘露樹氏といった人気原画家と優れたグラフィックチームを擁する作品がベスト3を占めた。このレベルになると属人性が非常に高い。かつての王国、F&Cの1位奪回は面目躍如といったところだが、数多く出ている他のF&C作品が全く姿を見せていないことからバラつきの大きさが伺われ、本格的な復権はお預け。もちろん、グラフィックの評価はそれ単独ではなく実際は他の演出やシナリオ、キャラクタなどの評価と連動してい(るためグラフィック自体の出来だけによらずバラついてしまってい)るというのもある。

 その意味でグラフィックの出来はスタートラインに立つための「前提」である。全体のレベルが向上したため、相対的な影響力は低下しているというものの、絵は露出されやすいので依然としてブランドや作品の看板であり、作品に興味を持って貰い、更には買ってもらうという「掴み」の効果が非常に高い。だからかもしれないが、ネットや雑誌、あるいはパッケージに出ている絵と、作品内の絵の出来にズレがある作品が未だに出てくるのが気になる。限りあるリソースでやりくりする、という意味では一見正しいように見えるが、要はユーザを騙しているのであって結局はブランドに対する信頼やブランドの価値を自分で貶めることになると思うのだが。

 2001年に一時関心が寄せられたアニメーション重視の作品はなりを潜めた印象。アニメ向きにすると絵柄が限定されてしまったり工数的にボリュームが不足してしまうこともあるかもしれないが、現状のレベルでは「別に動かなくていいよ」「むしろ1毎絵の質・量的充実の方が重要」というのがユーザの受け止め方だった、ということだろうか。その一方でそろそろグラフィック、にまとめてしまうのは乱暴かもしれないが、オープニング(やエンディング、イベント)用の動画は標準装備になりつつある。これは(立ち絵や1枚絵の切り貼りでなく)本格的に力を入れようとすると体力勝負になると思われるので小規模メーカには厳しいかもしれない。また、2003年に入って(ギャグレベルでない)3D恋愛ゲームやトゥーンレンダリングのような技術からのアプローチも出てきており、物珍しさに留まらず今後どれぐらい普及するか見物。

 シンプルな立ち絵については(背景は立ち絵との親和性以外もう心配する段階でなくなったと認識している)、立ち絵の表情/仕草パターンを手抜かず感情表現を豊かにすることにつきる。反面立ち絵をなくして1枚絵だけで表現された作品があってもいいと思うので固定観念に囚われず発想を自由にして頂きたい(すでにあったら失礼。工数的に厳しい?)。1枚絵はそれだけで魅せられる、それだけで引き込めるレベルにまで上げておかないとアニメーションに取って代わられる、という危機感をそろそろ抱いておいていいのではないだろうか。

 なお、その他として「エリュシオン(DC)」「腐り姫(PC)」などに投票されていることを付記する。

ii)シナリオ部門
有効投票: 191(うち無投票: 21)

順位ゲーム名graphpoint
1Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
30
2D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
14
2AIR(PS2)
14
4水月(PC)
11
5うたわれるもの(PC)
10
6僕と、僕らの夏(PC/DC)
7
7君が望む永遠(DC)
6
7鬼哭街(PC)
6
7それは舞い散る桜のように(PC)
6
10痕 リニューアル(PC)
5
10Wind-a breath of heart-(PC)
5

[11位以下]
4票: Kanon(PS2)、ロケットの夏(PC)
3票: "Hello,world."(PC)、LostPassage(PC)、初恋(PC)、シスター・プリンセス(DC)、水夏〜SUIKA〜/Water Summer(DC/PS)、世界ノ全テ(PC)

[投票者コメント]

 作品の中で多くの人が評価の重点に置いていると思われるシナリオへの言及は多いが、単独で切り出せないものについては総合や総括に回す。1点失敗だったのは、ストーリの4レイヤモデルでシナリオとテキストを分けて評価する土壌ができてきていると指摘しておきながら今回の投票では一緒くたにしてしまったところ。実際投票しづらかった方もおられたようで反省。

 投票の方は「Ever17」がダブルスコアをつけてのぶっちぎりで1位。恋愛ゲームの話とは言いにくいが、ゲームのパターンを逆手に取ったトリックや読者を読者のまま取り込む手法が成功していてアイディア勝ちというところ。筆力不足、品質のバラつきや羊頭狗肉で賛否両論ありながらも「D.C.」が2位で続いている。同票2位の「AIR」は2000年1位、2001年2位に引き続いてのシナリオ部門ベスト3入りだが、これはそんな状況を許している他メーカの怠慢に猛省を期すべきだろう。とはいえグラフィックと比較してシナリオ面で全く期待されていなかったF&Cが「水月」で4位につけているのは一定の評価ができるし、5位の「うたわれるもの」もLeafの底力を示した(もっともシナリオライタの腕ひとつで良作にも駄作にもなるので優れたシナリオ/テキストライタだけを継続して採用できない限り解決にならない訳だが…)。

 システム面での目新しさが乏しくなっている以上シナリオやテキストの比重が高くならざるを得ないにも関わらず全体的に改善の余地があるのは指摘されている通り。ゲーム系以外でもいいのでとにかく真剣に人材を発掘していく必要があると思う。それも多数。いつまでも「キャラ萌え」だけで食っていけると思うな。

 割り切って選択肢を取っ払った「鬼哭街」は十分に受け入れられていて、紙芝居でも素材さえ良ければ全然問題ないことを示している。従来の純粋な恋愛ゲーム、という点ではやりにくいが。逆に等身大の恋愛を描ききった「僕と、僕らの夏」はこれぞ真に恋愛エンターテイメントというべき作品でまだまだ恋愛ゲームも捨てたものではないと安心させられた。

iii)音楽部門
有効投票: 191(うち無投票: 31)

順位ゲーム名graphpoint
1AIR(PS2)
16
2Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
13
3それは舞い散る桜のように(PC)
10
3Kanon(PS2)
10
5D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
8
5Wind-a breath of heart-(PC)
8
5水月(PC)
8
5うたわれるもの(PC)
8
9白詰草話(PC)
7
10ONE2〜永遠の約束〜(PC)
5
10鬼哭街(PC)
5
10僕と、僕らの夏(PC/DC)
5

[11位以下]
3票: "Hello,world."(PC)、久遠の絆再臨詔(PS2)、みずいろ(PS2)、世界ノ全テ(PC)

[投票者コメント]

 1人1票制はその仕組上大作、あるいは多くのユーザに遊ばれた作品に有利に働く。「賛否両論」な作品であっても、母集団が大きければ(遊んだユーザ数)x(ヒット率)でかかってくるためだ。特に部門投票では平均的によく出来ている作品よりどこか突き抜けた作品の方が強い。もちろん、かつては全部門に渡って強い作品もあったが。平均的によく出来ている作品、余りメジャーではない秀作などを押さえたり、外れを引きたくない場合はErogameScape様を参考にして頂くのがいいと思う。

 さて、音楽部門。PCゲームがターゲット別に多様に細分化されて1本辺りの影響力が小さくなっているとはいえ、「それは舞い散る桜のように(PC)」以外ベスト3をコンシューマ、しかもそのうち2つを移植作品に持っていかれるのは寂しいと言わざるを得ない。全体のクオリティが向上し、頭打ちになっている部分があるのだろう。歌モノも充実してきている中、音楽が積極的に作品の差別化ポイントとして機能する時代が終わりつつあるのかもしれない。音楽だけで勝負しようという場合は、ライブコンサートに活路を見出すことになるのだろうか。

 「それは舞い散る桜のように(PC)」「D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)」「水月(PC)」「うたわれるもの(PC)」といった常連以外では、「Wind-a breath of heart-(PC)」「白詰草話(PC)」が目に付いた。コメントにもあるように、歌モノのインパクトもあるだろう。部門を独立させるべきというご指摘があったが、そういえばいずれもムービーが話題になった。グラフィック部門とも被るが、ムービーと本体は別モノとはいえ、それだけでも大いにウリになる。グラフィックや音楽が一定の完成を見てしまっている以上、今後の差別化ポイントとしてはこういったムービーに焦点が移ってくるだろう。立ち絵と1枚絵を切り貼りしただけのチープなOPではユーザの心を掴めなくなっている(順にキャラが出てきて名前が表示されるあのパターン、いい加減止めませんか、ということで)。

 音楽だけに絞ると、本質的ではないが臨場感の向上の観点から5.1ch対応に期待、というところだろうか(音声含む)? 対応機器をどれだけのユーザが揃えているかというのはあるが。少なくともそろそろ128kbps mp3は音質面で寂しいと思う。

 なお、その他として「腐り姫(PC)」などに投票されていることを付記する。

iv)音声部門
有効投票: 191(うち無投票: 47)

順位ゲーム名graphpoint
1D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
24
2それは舞い散る桜のように(PC)
12
2Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
12
4AIR(PS2)
7
5シスター・プリンセス(DC)
6
5Kanon(PS2)
6
7君が望む永遠(DC)
4
7僕と、僕らの夏(PC/DC)
4
7Wind-a breath of heart-(PC)
4
10サクラ大戦4〜恋せよ乙女〜(DC)
3
10しすたぁエンジェル(PC)
3
10Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)
3
10想い出にかわる君〜Memories Off〜(PS2/DC)
3
10世界ノ全テ(PC)
3
10水夏〜SUIKA〜/Water Summer(DC/PS)
3

[投票者コメント]

 声優ゲームが叩かれていたのも今は昔。今やどの作品にも音声がついているし、一部を除いてクオリティも文句なく(色んな作品で同じ声優が当てられているのは気になるが)すでに懐かし過ぎる死語である。そういった意味で音楽より何年も前から差別化にならなくなっている。ない場合に逆差別になるが。

 そういった中での音声の評価はそれが当てられるキャラクタ自体の作り、キャラクタの台詞作りの上手さにより深く関連してくることになる。ベスト3の「D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)」「それは舞い散る桜のように(PC)」「Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)」や5位「シスター・プリンセス(DC)」らはいずれもその点で成功している作品である。「D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)」は堂々たるダブルスコア。萌えは強い。

 昨年この部門では

 テキスト回想での音声リプレイなど、親切なシステムがまだ入っていないメーカは入れて欲しいし、演出的には音声の「間」にも気を使う(また、クリック待ちに入ると「会話」のテンポがおかしくなってしまう。これをどう解決するか? 例えばえっちシーンでは音声を上手くループして切れなくしたり、えっちシーンに限ってはアドリブを入れたりするのも良いかもしれない)などのより一層の工夫と洗練が望まれる。

というコメントをつけているが、テキスト回想での音声リプレイはそろそろ標準になっているので、単に上手いだけでない、演出のための音声への注力が期待される。くれぐれもえっちシーンの「効果音」はデフォルトで(…この場合SEになるのか?)。テキストと合っている必要もないので。

 なお、その他として「KISS×200 とある分校の話(PC)」「SinsAbell(PC)」などに投票されていることを付記する。

v)えっちシーン部門
有効投票: 191(うち無投票: 69)

順位ゲーム名graphpoint
1D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
14
2Floralia〜フローラリア〜(PC)
11
3水月(PC)
10
4はじめてのおいしゃさん(PC)
7
4Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)
7
6それは舞い散る桜のように(PC)
5
6Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
5
8先生だ〜いすき(PC)
4
8痕 リニューアル(PC)
4
10初恋(PC)
3
10univ〜愛・おまたせっ〜(PC)
3
10い・け・な・いお仕事(PC)
3
10H〜いつかたどりつけた場所〜(PC)
3

[投票者コメント]

 毎回総合ランキングや他の部門ランキングとは顔ぶれが変わるのがこの部門。今回だと2位「Floralia〜フローラリア〜(PC)」、4位「はじめてのおいしゃさん(PC)」「Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)」、8位「先生だ〜いすき(PC)」辺りが目に付くところ。

 もっとも2001年後半辺りからは恋愛系ゲームでもえっちシーンをより重視するようになり、2002年以降においてはもはや「萌え」+「エロ」が完全に基本形になったため、その差は小さくなっている。具体的には1キャラ辺りえっちシーンが複数回入るのが「標準」になるといった具合である。ストーリの整合上、通常は付き合い始めてからの期間を延ばす必要があるので、シナリオに若干の制約が生まれるが、シナリオや絵の好みが人によって大きく分かれる一方で、えっちシーンは大抵の場合少ないより多い方が好まれるので恐らく正しい選択の結果だ。前回(末尾)「行き詰ったらとりあえずエロくしとけ」なんてことを書いているが、当面はクリエイタのポリシや作品の世界観上の条件がない限り迷ったらとりあえずエロくしとけが有効と考えていいだろう(「萌え」はどこかで行き詰る可能性があるが、3大欲求の1つである「エロ」=性欲が行き詰る可能性は極めて低い)。

 ただし何を持ってエロいか、というのはまだまだ研究の余地があるし、時代とともに変わり得る。恐らくはコンシューマしかプレイできない(またはしない)ユーザの投票だろうが、「Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)」が6位に入っているのは、直接的な絵がなくても十分に示唆できることを示している。えっちシーンのボリュームが当たり前になった次には、シチュエーションの練りこみやフェティッシュの特化、テキスト、音声、効果音、アニメーションといったところで差別化と個々の密度を高める方向に関心が行くのは必然だ。

 その他としては「人形の館〜淫夢に抱かれたメイドたち〜(PC)」。

vi)企画部門
有効投票: 191(うち無投票: 55)

順位ゲーム名graphpoint
1Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
18
2うたわれるもの(PC)
9
3鬼哭街(PC)
7
3水月(PC)
7
5君が望む永遠(DC)
6
5シスター・プリンセス(DC)
6
5D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
6
8白詰草話(PC)
5
9痕 リニューアル(PC)
4
9Wind-a breath of heart-(PC)
4

[11位以下]
3票: あいかぎ−ひだまりと彼女の部屋着−(PC)、Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)、ロケットの夏(PC)、らいむいろ戦奇譚(PC)、僕と、僕らの夏(PC/DC)、水夏〜SUIKA〜/Water Summer(DC/PS)、Milkyway2(PC)

[投票者コメント]

 企画部門、ではあるが今回顔ぶれはシナリオ部門とほとんどがかぶっており異なるのは前回のPS版に続いてのランクインとなる5位「シスター・プリンセス(DC)」と、特徴的なシステムおよびそれによる演出が評価されたと思われる8位「白詰草話(PC)」のみ。順位的に目立つところでは数年来のノベルゲームの中で一応「遊べる」数少ない作品である2位「うたわれるもの(PC)」と、対照的に言葉だけが残っている「ゲーム」であることを完全に放棄した3位「鬼哭街(PC)」ぐらいだろうか。各ユーザが恋愛系ゲームのどこに重点を置いているかを反映した結果と言えそうだ。恋愛系ゲームの「成熟」化の中、全体的な完成度なくして企画だけが突出している、というのでは手にとって貰いにくくなっていると思われ、前回から追加した部門ではあるが、今年の作品状況次第では十分な役目を果たすことなく外すことになるかもしれない。

 その他としては「Revenir(PC)」。

vii)演出部門
有効投票: 191(うち無投票: 50)

順位ゲーム名graphpoint
1Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
15
2白詰草話(PC)
12
3君が望む永遠(DC)
10
4水月(PC)
9
5D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
8
5うたわれるもの(PC)
8
7Wind-a breath of heart-(PC)
7
7AIR(PS2)
7
9鬼哭街(PC)
5
10しすたぁエンジェル(PC)
4
10それは舞い散る桜のように(PC)
4

[11位以下]
3票: シスター・プリンセス(DC)、妹でいこう!(PC)、Milkyway2(PC)、Kanon(PS2)

[投票者コメント]

 これまで恋愛系ゲームの演出と言えば、ストーリ、絵、ムービー、音楽、音声、SEといった素材と、せいぜい画面エフェクトを組み合わせてどれぐらいの効果を引き出せるか、ということに関心があった。逆に言えば「その程度」であり、所詮素材が良くなければどうにもならないところだった訳だ。実際今年も多くの顔ぶれはやはりそういった素材ランキングとかぶっている。その意味で演出については昨年も「まだまだ演出には開拓する余地が多い」と書いているが、2002年はこれについて、一定の前進を見たと言えそうだ。

 具体的には10位の「しすたぁエンジェル(PC)」は、恋愛系ゲームで恐らく初めて、演出のみを取り出して評価を下すことのできる作品だろう。アニメ的、漫画的、TV的、映画的なおよそ考えうる演出手法を積極的に取り込んだそれは、恋愛系ゲームの演出を次のフェーズに進めたと言っても過言ではない…というのは少々持ち上げ過ぎだが、それぐらい従来の演出がまるで演出になっていなかったということである。

 一方2位「白詰草話(PC)」はシステム面からのアプローチを試みた作品だ。FFD(Floating Flame Director)と呼ばれるそのシステムではこれまでの立ち絵の概念がなくなっており、漫画的なコマ絵と吹き出しにより画像素材のコスト増を押さえながらスピード感や動きのある演出を実現しており画期的だ。もっとも、既存のシステムでは一切実現できないかというと多分そんなことはない訳で、これはFFDを生かしきった演出(屋)とスクリプタに惜しみない拍手を送りたい。

 いずれにしても、小手先の画面エフェクトや動きではもう物足りなくなってきており、今後の恋愛系ゲームでは、カメラワークや動きのある演出といった専門の、あるいは専門に近い演出屋が要求されてくる可能性が高いのではないだろうか。こういったスキル・センスを持った人材は立ち絵/イベント絵ベースで発展してきた恋愛系ゲーム業界にはまだ決定的に不足していると思われるので、他業界から引き抜いたりあるいは新たに育てていく必要があるだろう。

viii)ゲームシステム部門
有効投票: 191(うち無投票: 59)

順位ゲーム名graphpoint
1うたわれるもの(PC)
21
2白詰草話(PC)
12
3Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
11
4それは舞い散る桜のように(PC)
8
4水月(PC)
8
6D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
7
7AIR(PS2)
4
7Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)
4
9サクラ大戦4〜恋せよ乙女〜(DC)
3
9想い出にかわる君〜Memories Off〜(PS2/DC)
3
9シスター・プリンセス(DC)
3
9君が望む永遠(DC)
3

[投票者コメント]

 根本的に遊べるゲームが少な過ぎ、変わり映えのしないアドベンチャー/ノベルゲームが大半を占める恋愛系ゲームでは、企画部門と並んで投票しにくいのがこのゲームシステム部門で、やはり削減部門候補の上位に。数少ない多少なりとも「ゲーム性」のある「うたわれるもの(PC)」が1位と、「サクラ大戦4〜恋せよ乙女〜(DC)」が9位にランクイン。演出部門で2位につけた「白詰草話(PC)」がここでも2位につけており、FFDが評価されている。もちろん、これを生かすのには演出力が必要なのは先に書いた通り。3位「Ever17」はあらゆるランキングに顔を出していてもはやお馴染みだが「デュアルサイトシステム」というゲームならではのシステムを逆手にとった傑作。

 その他としては「BALDR FORCE(PC)」。これが選択候補から漏れていなければ順位もまた変わっていたかもしれない。

ix)キャラクタ部門
有効投票: 191(うち無投票: 31)

順位ゲーム名graphpoint
1D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
16
1それは舞い散る桜のように(PC)
16
3水月(PC)
12
3Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
12
5シスター・プリンセス(DC)
7
5Wind-a breath of heart-(PC)
7
5Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)
7
5うたわれるもの(PC)
7
9君が望む永遠(DC)
6
10Kanon(PS2)
4
10AIR(PS2)
4
10痕 リニューアル(PC)
4

[11位以下]
3票: Milkyway2(PC)、My Merry May(DC)、僕と、僕らの夏(PC/DC)、サクラ大戦4〜恋せよ乙女〜(DC)、水夏〜SUIKA〜/Water Summer(DC/PS)

[投票者コメント]

 キャラクタ重視の「萌え+エロ(+ちょっと泣き/鬱)」系恋愛ゲームのメインストリーム化によりもはや百花繚乱。第1グループの「D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)」「それは舞い散る桜のように(PC)」を筆頭に、第2グループの「水月(PC)」「Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)」、第3グループの「シスター・プリンセス(DC)」「Wind-a breath of heart-(PC)」「Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)」「うたわれるもの(PC)」が続く。

 最近の傾向としては、キャラクタに付与された「属性」が次第に多くなっていることに気がつく。例えば「D.C.」「それ散る」とも、キャラクタ1人辺り平均10個以上の属性を備えている(→RagnaNG参照)。もちろんそれまでは「属性」として認識されなかった記号が類型化され、どんどん「属性」として「発掘」されてシステムに組み込まれていくのだから平均的に増えるのはある面では自然ではあるが、それだけではなく、結局のところユーザ自身がそういった「自動化された萌え」を望んでいるということではないだろうか。Webで流行している「擬人化」も、基本的に同じ方向性が背景にあると考える。

 キャラクタの魅力が何か、と考えた時に、まず取っ掛かりになる(関心を持つ)のが「外面」である絵であり、絵師の上手さや人気はダイレクトに響いてくる。絵は常に選ばれるための「前提」だ。一方でキャラクタ「内面」を構成するのがシナリオ、テキスト、音声であり、本来これらによってキャラクタは始めて「魂」が入れられる。脊髄反射的な属性の研究も大いに結構だが、より高いレベルのキャラクタを構築するために一歩踏み込んで属性の組み合わせでは解決できない滲み出る内面の美人さを磨くのが課題である。

x)プレイアビリティ部門
有効投票: 191(うち無投票: 64)

順位ゲーム名graphpoint
1Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)
23
2D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)
9
3水月(PC)
8
4それは舞い散る桜のように(PC)
7
4うたわれるもの(PC)
7
6AIR(PS2)
6
7Wind-a breath of heart-(PC)
4
7"Hello,world."(PC)
4
7白詰草話(PC)
4
10Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(PC)
3
10痕 リニューアル(PC)
3
10想い出にかわる君〜Memories Off〜(PS2/DC)
3
10シスター・プリンセス(DC)
3

[投票者コメント]

 これは従来から定評がありますます充実度に磨きがかかったKIDの「Ever17〜the out of infinity〜(PS2/DC)」が圧勝。2002年のプレイアビリティ基準であるPlayability2002に対する網羅性も極めて高い。というよりむしろPlayability200xの方がこれらの優れたプレイアビリティを持つシナリオエンジンからいい点を取り込んでいる、という方が適切なのだが。1度読んだ文章をあらすじで辿れるというユニークな機能を持つCIRCUSの「D.C.〜ダ・カーポ〜(PC)」、テキストの縦書き・横書き表示切り替えで違う雰囲気を味わえる「水月(PC)」が続く。いずれも細かいところでは課題は残るもののやはり高い網羅率を達成している。アドベンチャーやノベルゲームのシナリオエンジンは特殊な演出が必要な場合を除いて必要な機能が共通であり、便利な機能はどこに入れても便利なのだからどんどん横展開していって頂きたい。(これは業界の発展のため広い心を持って頂き、例えば何らかのシステムで特許を取得して他社を困らせないで、といったことも同時に言っている訳だが。)

 そういった点で歴史のあるメーカでは比較的心配は小さいが、新興ブランドは多少不安なところ。プログラマは要らないは単なる煽りだが、ユーザにとっては誰が開発しようと使えるシステムでありさえすれば全くもって「どうでもいい」ことである。本質でないところで評価を下げるのはもったいない。


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