決別 |
夕闇が迫る時刻、ビルの谷間で一人の少年が数人の男達によって暴行を受けていた。「どうしたの、男の子でしょ?・・・秋津マサトくん」少年を静かに見下ろす少女。名を呼ばれた少年は驚き、立ち上がる。「ゼオライマーが覚醒するのよ・・・」少女の言葉に秋津マサトは動揺する。「ゼオライマー!!」
その頃、全世界の70%のシェアを持つ多国籍企業『国際電脳』の本社ビルが、一体のロボットによって破壊された。そして地底より砂塵を巻き上げ、その姿を現す巨大要塞。これこそ、今まで『国際電脳』を隠れ蓑にしてた秘密結社『鉄甲龍』復活の瞬間であった。要塞内の謁見の間で、鉄甲龍復活を宣言する幽羅帝。だがしかし、鉄甲龍の誇る8体の巨大ロボットの内、『点のゼオライマー』と呼ばれるロボットだけは、日本政府の管理下に置かれていた。幽羅帝は、鉄甲龍の最強の戦士達、八卦衆にゼオライマー奪還を命じた・・・。
幽羅帝の命令に次々に名乗りを上げる八卦衆。その内の一人、『風のランスター』を操る、耐爬が愛の篭もった視線で幽羅帝を見る。一瞬、悲しそうな顔をした幽羅帝であったが、厳粛な態度で耐爬を指名し、ゼオライマー奪還の任を与えた。
一方、暴漢達に連行されたマサトは、独房に監禁されていた。そこでマサトは、自分の両親と出会う。両親はトランクケースに収められた札束をマサトに見せた。「僕を・・・売った?」「バカを言うな・・・これは養育料さ・・・元から俺達は他人なんだ、それがまた他人に戻っただけだよ・・・」両親の言葉に愕然とするマサト。そして、それを静かに見つめる沖と美久。
鉄甲龍要塞内では、耐爬と幽羅帝が愛を交わしあっていた。「鉄甲龍に長を愛するに足る男かどうか、身を持って証明せよと・・・」しかし、そんな耐爬を、冷たく突き放す幽羅帝。「八卦衆は我が手足・・・我の命に従っておればよい!」
「御覧あれ、八卦衆がうち最高の戦士は誰かを・・・」ランスターに乗って発進していく耐爬。だが彼は知らなかった。幽羅帝が、部屋で声を殺して泣いているのを・・・。
マサトは独房から解放されたが、それも沖の計略だった。護送中の車から隙をみて脱出するマサト。だがマサトが降り立った場所は、青木ヶ原の樹海、そしてそこは日本政府の秘密基地『ラストガーディアン』がある所でもあった。ラストガーディアンに連れてこられた昌人は、沖と美久、そして鉄甲龍から盗み出された八卦ロボ『天のゼオライマー』を見る。驚くのも束の間、ランスターがラストガーディアンに向け攻撃を開始。その時、ゼオライマーのエネルギー球がマサトを包み込んだ。「ゼオライマーがマサトくんに感応したわ」「ついに目覚めの時は来た!」うなづきあう沖と美久。ついに、15年の時を経て、天のゼオライマーが覚醒する。
ランスターの繰り出す攻撃がゼオライマーを苦しめる。だが、マサトは無意識の内にゼオライマーのレバーを引いた。「何故だ・・・僕はコレを操縦したことがある・・・いつか」自分の中の知らない自分に恐怖するマサト。一方、耐爬も圧倒的なゼオライマーのパワーに驚きを覚える。「負ける訳にはいかん、退く訳にはいかん・・・我が愛のため・・・」最大級の竜巻(デッドロンフローン)をゼオライマーにぶつけるランスター。その時、マサトの人格が変貌した。「勝てる・・・」素早くスイッチを動かしていくマサト。「メイオウ!!」ゼオライマーの球体から光が溢れ、押し寄せてくるランスターの機体を覆う。光に包まれたランスターは電子分解を起こし始める。
「負けられない・・・この戦だけは!!」なおもゼオライマーに突進するランスター。しかし、ゼオライマーに達する前に朽ち果て、大爆発を起こす。「勝ったぞ・・・勝った・・・」マサトの凶悪な人格が勝利の笑みを浮かべていた・・・。そして、その光景を見ていた沖は狂喜する。「我が国は最強の兵器を手に入れた」と・・・。
瞬時に凶悪な人格から元に戻るマサト。「教えてくれ・・・ゼオライマーとは何だーーッ!?」マサトの絶叫が闇に谺する。
鉄甲龍要塞の耐爬のゲートが消えた。次なる出撃に名乗りを上げる八卦衆達・・・。だが、幽羅帝は宣言した。「我が参る!」耐爬を失った幽羅帝の悲しみが、謁見の間を震撼させる。
己の意思とは関わりなく、秋津マサトは狂気の戦いに身を投じた。ゼオライマーとマサトを結ぶ因縁とは・・・?