Episode-07「Tactics(駆け引き)」


 

 

 

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新横須賀(旧小田原)

 

 

 

 

「また、ハデにやったわねぇ」

 

金髪と白衣を、潮風になぶられながら、リツコが、満身創痍の「オーバー・ザ・レインボウ」を見やる。

 

「仕方ないでしょ。これでも、最善を尽くしたのよ」

 

ミサトが、甲板を見上げながら呟く。その向こうには、動力が着れているので、ワイヤーロープで吊り上げられている弐号機が見える。

二人は並んで歩きながら、その赤いボディを見やった。

 

「これ以上望んだら、アスカとシンちゃんに怒られちゃうわ」

「そうだなぁ。それにしても、良くあの悪条件で勝てたもんだ。大したもんだよ、二人とも」

「あら、加持くん」

「…アンタはいいわね。お気楽で」

 

二人の前方に立ちはだかるように、加持がポケットに手を突っ込んで立っていた。

リツコを見ると、よっ、と片手を上げる。

 

「お久しぶりね」

「や、しばらく。 リッちゃん、少しやせたんじゃないか?」

「そう?」

「…アンタ、同じコトなんで私には言わないワケ?」

「これでも結構、忙しい身なのよ。…ミサトと違ってね。」

「どういう意味よ…」

「ハハハッ、相変わらずだなぁ。こうしてると、三人でつるんでた頃を思い出すよ」

 

リツコは、変わらぬ加持と、自分の周囲に流れる懐かしい空気に、フッ…と柔らかな微笑みを浮かべた。

夏の日差しと、海の匂いが、そんな気分にさせたのかもしれない。

こうして、ゆっくりと外を歩くのも、久しぶりな気がした。

 

だが、それも一瞬のことで、すぐに科学者としての顔に戻って、ミサトを見る。

 

「ところで、一緒に乗ったって聞いたけど…どういうことになってるの?」

「ああ、それね…」

 

ミサトは、持っていたファイルの束を、リツコに渡した。

加持が、リツコの表情を面白そうに見ている。

 

「えっ! ……これ、正確なデータでしょうね」

「弐号機の記録から抽出したんだから間違いないわ。5秒か6秒の、瞬間的なデータだけどね」

 

リツコが目を落としているファイルには、弐号機が使徒の口をこじ開けた時のデータが並んでいる。

その中の、シンクロ率を表す数字は……約186%。

 

「…素晴らしいわ」

 

リツコが、滅多に口にしないセリフを呟いたため、ミサトと加持は、思わず顔を見合わせた。

 

「そうねぇ…うち、シンちゃんが90%としても、アスカも同程度のシンクロ率ってことよねぇ。これまでのアスカのシンクロ率を考えると、確かにとんでもないわね」

「ミサト…」

 

ナハハッ、とお気楽に笑うミサトに、リツコはこめかみに手を当てて首を振った。

 

「これは初級の足し算じゃないわ。個人のシンクロ率を単純加算するなんて、ナンセンスよ」

「へ? じゃあ、なんだっての」

「そうね、相乗効果とでも言うべきかしら。瞬間的な数値だけじゃ、なんとも言えないけれど」

「ふーん……でもさ、そうすっと、前にちらっと出たダブル・エントリーの話、実現できるんじゃないの?」

「…予算が通ればね」

「あら、エントリープラグ周りの再設計だけなら、すぐやれるでしょ」

「そう単純な話じゃないわ。その辺のノウハウがまるで確立されていないんですからね。実戦とテストを兼ねるようなわけにはいかないのよ」

「……それでも、『例のシステム構想』よりは、よっぽどマシだわ」

「………」

 

ミサトが、不快なものでも見たように顔をしかめ、リツコは沈黙する。

 

「…なんの話だい? 興味あるなぁ、俺も混ぜてくれない?」

 

その場の険悪になったムードを、加持のお軽い口調が吹き飛ばす。

 

「部外者には、関係のないはなしですっ」

「あれ、つれないなぁ」

「…大体あんた、用が済んだらさっさと帰んなさいよ!」

「おや、言わなかったっけ?俺、今度、こっちのNERV本部に出向することになったから」

「う…うぞ…」

 

これもまた、加持お得意の話術だ。

わざと焦らして、本題は最後にズバリと突きつける。

 

「ま、ともかくこれで、また三人でつるめるな」

 

加持がパチリ、とウインクすると、ミサトは顔にタテ線を引いて、がっくりと肩を落とす。

リツコは、やれやれと肩をすくめた。

 

 

 

 

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ハッハッハッハ…!

 

うち解けた和やかな笑いが、タラップのかけられた甲板に響いていた。

 

「また、いつでも来たまえ。今度は艦内食くらいはおごるぞ」

「おおっ!太っ腹やのう。ワシ、なんやオッサンのこと誤解してたみたいやわ。気に入ったで!」

「そうかね。どうやら私もだ!」

 

トウジと艦長がバンバン背中を叩き合いながら、笑う。

 

「おお、そっちのキミも、今度は内証で操縦桿ぐらい握らせてやろう」

「ほ、本当ですかっ!いやーっ、艦長は日本一の名艦長ですよっ!にくい!」

「バカ言え、世界一だよ。わははははっ」

「そうでした。あははははっ」

 

「つ、ついてけないわね。これが男同士の友情、とかいうやつ?」

 

すっかりうち解けて、家族…というより兄弟のような「ノリ」の男三人(艦長・トウジ・ケンスケ)を、別の生き物でも見るような目で見て、アスカが呟く。

 

「ま、まあいいじゃない。みんな仲良くなったみたいだし…」

 

言いつつも、自分からその輪の中には入ろうとしないシンジであった。

顔には一筋の汗が伝っていたりする。

実はさっき、感動した艦長にいきなり抱きつかれ、「男の汗と涙」をすでに経験済みだったのだ。

 

「……アホらし。う〜〜〜〜んっ」

 

アスカは、半眼でため息をつくと、未だプラグスーツのままのしなやかな体を、大きく伸ばした。

 

「やっと新横須賀に着いたんだから、さっさとシャワー浴びたいわ。LCLって乾くとサイアク〜。

 …ほら、そんなとこボーッと突っ立ってないで、シンジもさっさと来なさいよ」

「う、うん!」

 

シンジは、アスカに「シンジ」と呼ばれるたびに、まだ少し、どぎまぎしていた。

アスカはまるで、何事もなかったかのように、そう呼ぶのであるが。

 

シンジは、我ながら現金だな、と思いつつ、タラップのオートロードに乗ったアスカの後を、子犬のように付いていった。

 

 

 

オートロードが終点、つまり地上に近づいたとき、アスカは、その脇に一人の人物を見つけて、顔を輝かせた。

 

「加持さ〜ん!(ハートマーク)」

「よっ、アスカ」

「………」

 

シンジは、そのアスカの笑顔を見た瞬間、チクッ、と胸に小さな針が刺さったような、そんな気分に襲われた。

 

あれっ……これって、なんだろう。

なんか…変だ。

 

アスカは、もちろんそんなシンジの小さな変化には気付かずに、加持に甘えるような声を出している。

 

「よう、シンジくん。大変だったな」

 

加持がそう声をかけた時も、しばらくシンジは気付かなかった。

 

「?シンジくん」

「あっ、は、はい、なんですか?」

「ご苦労さん。さっきはお見事だったよ」

「あ、いえ…頑張ったのは、ほとんどアスカですから」

 

頭をかきながら、少し困ったような顔をするシンジを、加持はフッ、と笑って見やった。

 

「そう謙遜しなくてもいいさ。アスカはもちろん、君も頑張ったんだからな」

「はあ…」

 

アスカは、加持がシンジにねぎらいの言葉をかけているのを、一転して不機嫌そうに見ていた。

それを視界の隅に捉えたシンジは、「褒められるのは嬉しいんだけど、あんまりアスカを刺激しないでほしいなぁ…」と思ったりしていた。

 

「さっ、行こうかシンジくん」

「えっ」

 

どこへですか、と聞こうとする前に、予想通りアスカが割り込んだ。

 

「えぇ〜、加持さん、どこ行くんですか。あたしはー?!」

「どこって、シャワーだよ。アスカもだろう?まさか、一緒に入るわけに行かないだろ」

「そ、それはそうですけど…」

「ま、男同士の語らいってやつもあるしな。上がったら、ジュースでもごちそうするよ」

「それって…なんかフケツ」

「おいおい。さっ、シンジくん行こうか」

「えっ、ちょっとあの…」

 

加持は言うなり、シンジの手を取って、さっさと歩き出した。

ちなみに、シンジは未だアスカの予備のプラグスーツ姿なので、見た目はこの上なくあやしい。

 

「ちょっと、加持さーん……ンもうっ!」

 

アスカは腰に手を当てて、ぷくぅっ、と頬を膨らませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの、加持さん?」

 

港湾のNERV直轄施設の中に入った加持とシンジは、そのまま、更衣室へと向かった。

そして、更衣室に入るなり、加持は壁に向かって、なにやらゴソゴソやり始める。

 

「ん?ああ、すまんすまん」

 

いきなり理解不能の行動に走った加持に、シンジがおそるおそる声をかけると、加持は、まるで何もなかったかのようにこちらを振り向いた。

 

「さて、と」

「あの…何か僕にご用ですか?」

 

さりげなく、更衣室に鍵をかけた加持に、シンジはみょ〜な想像をはたらかせて、汗をたらす。

 

「んー、そうだな」

「な、なんですか……うぐぅっ」

 

加持は、ニコニコ笑いながら、ゆっくり近づいてくる。

シンジは引きつったような顔になったが、その直後、急に右肩を掴まれて、苦痛のうめきを上げた。

 

「……やっぱり、か」

 

加持は、真面目な顔になって、シンジの肩から手を離した。

シンジは、肩を押さえて、思わず長椅子に座り込んでしまう。

 

「さっきの使徒にやられた時だな」

「……知ってたんですか?」

 

シンジは、ぶり返した痛みに顔をしかめながら、加持を見た。

 

「まあ、推測だけどな。弐号機にあれだけ傷を負っているのに、アスカは平気なようだった。無理をしているのとも違う。神経接続は、切られていないはずなのにな」

「………」

「それで、もしかしたらシンジくんがそれを肩代わりしてるんじゃないか…ってね」

「………」

「アスカを心配させないためかい?」

「………」

 

答えないシンジを見て、加持は仕方ない、という顔で肩をすくめた。

 

「どれ、肩を見せてごらん」

「え、でも…」

「これでも、一応、応急処置の心得くらいあるんだぜ?」

「はい…」

 

シンジは、プラグスーツを弛緩させると、痛そうに、ゆっくりと肩を抜いた。

 

「あの……アスカには」

「ああ、言わないよ。君がそうしたいのならね」

「…ありがとうございます」

「だが、シンジくん。NERVの医療班は誤魔化せないぞ」

「……外傷はありませんから」

「確かに、外傷はないが…」

 

加持は、シンジの肩を診ながら言う。

シンジの肩に、傷などはみられないが、弐号機が使徒の牙に噛まれたあたりに、へこみのようなものがある。

 

フィードバックによる擬似的な痛覚とはいえ、こんなへこみを生身に残すくらいだ。

…相当の痛みだったろうに。

 

かなり無理をしているな、と加持は感じた。

 

「ほら」

「……なんですか、これ」

 

一通り肩を診た加持が、ポケットから取り出したカプセルをシンジの手に乗せた。

 

「痛み止めさ。ま、気休め程度だが、楽になるだろう」

「ありがとうございます…」

 

加持は、シンジがそれを飲む間に、Yシャツのポケットから取り出したシガレットをくわえた。

ただ、くわえているだけで、火はついていない。

 

「…ここは、禁煙みたいだからな」

「はあ…」

 

シンジが自分を見ているのに気付いた加持は、いつもの調子でそう答えた。

 

「さて、と…

 シンジくんには、聞いてみたいことがいくつかあるんだが…」

 

シンジは、びくっ、と肩を震わせた。

 

来た。

 

ここに誘われた時から、なんとなく、そういう話になるような気がしていた。

すでに、いくつか加持の前でボロを出しているのだ。

シンジは、そのことについて、色々と考えを巡らしていた。

 

加持には話してもいいのではないか。

 

そうも考えた。

加持の能力は卓越しているし、なにより信頼できる人物だ。

また、この人を敵に回してはいけない、とも思った。

 

しかし。

今は、まだ言えない。

 

自分に起こっている、この想像を絶する現象を信じてもらえるか、ということについては、あまり心配していない。

加持ならば、「なるほど、そうか」の一言で、あっさり納得してくれそうな気がする。

そして、おそらく進んで、強い味方になってくれるに違いない。

ゼーレと、父ゲンドウの計画阻止のために。

 

だが、それは、加持の寿命を縮めることになるのではないか?

シンジ一人にできることなど、たかが知れている。

加持ならば、与えられた情報をもとに、シンジが考えつかないような方法で、彼らの計画に楔(くさび)を打ち込むことができるかもしれない。

ただ、それは、より危険な状況に彼の身を投じさせるということでもあるのだ。

 

シンジは、ミサトの顔を思い浮かべる。

布団に顔を埋め、声を押し殺して泣くミサト。

…もう、二度とあんな思いをさせたくない。

 

また、今日の加持とミサトの再会を思い出す。

なんとなくだが、前回よりも二人はうまくいくのではないかと、そう思えた。

二人には、幸せになってもらいたい。

だったら、誰も巻き込むべきではないのではないか。

 

結局、その二律背反に、シンジの思考は堂々めぐりをしてしまう。

 

 

加持は、シンジの瞳の中で、迷いが波のように揺れているのを、じっと見ていた。

どのくらいの時間だったかはわからない。

だが、シンジには、ずいぶん長いことのように思えた。

 

「…やめておこう」

 

唐突に、加持はそう言った。

少し困ったような笑みを浮かべてはいたが。

 

「…え?」

「気にならないといえば嘘になるが……理由なんてのは俺にとっては大したことじゃないのさ、実はね。

 君が話したくないというのなら、それでもいい。何か事情があるんだろうしな」

「………」

 

シンジは、加持の目をじっと見つめた。

何も聞かないでくれる、その心遣いが、どんな言葉よりありがたかった。

 

「俺が興味があるのは、君自身さ」

「え…?」

「そう、例えば…」

 

加持は、部屋の隅に歩いていくと、そこにあらかじめ置いてあった、ごつい作りのトランクを持ち上げて見せた。

 

「……これ、何だか分かるかい?」

「……?」

 

シンジは、旅行カバンにしては大きなそのトランクを見た。

一瞬、何だか分からず…そして、唐突にその正体に思い当たって、アッ、という顔をする。

 

加持は真剣な表情で、くわえたタバコをピクッと動かし、その表情を見逃さない。

 

正直だな、と加持は口元を緩めるが、同時に危険だ、とも思う。

彼に色々と聞かないのは正解かもしれない。

思うところがあるのならば、自由にやらせるのが良いのかもしれなかった。

 

「……分かるようだな」

「えっ、いえ…なにも」

 

シンジは慌てて表情を消し、加持はトランクを置いて立ち上がった。

 

「別に追求しようってわけじゃない。ただ、一応、確認しときたくてね」

「確認…?」

「俺はこれから、コイツを碇司令のもとへ届けることになっている」

「………」

 

加持が一体、何を言いたいのか分からない。

シンジは、探るように加持の目を見たが、力量の差だろう、悪戯っぽい表情の彼からは何も読みとれなかった。

 

「かまわないかな?」

 

その時、ようやくシンジは、加持の意図を知り得た。

つまり、加持はこう言っているのだ。

「これ(アダムの幼生体)を碇司令に届けずに、別の手段を取ることもできる。それは、君次第だ」

…と。

 

「……なんのことだかよく分かりませんが、加持さんのお仕事を邪魔する権利は、僕にはないですよ」

 

考えた末、シンジはそう言った。

この段階で、父の計画を妨げるべきではない。

それは、すでに決めていたことだった。

確かに、かなりの誘惑は存在したが。

 

「分かった。俺は予定通り、自分の仕事を果たそう」

 

加持はニヤリと笑うと、シンジの解答に満足したようにうなずいた。

 

「それから、ここで話したことについては気にしなくていい。監視システムは、張り子の虎になってるからな」

「はあ〜…」

 

シンジは、あらためて加持の配慮と技量に感嘆を覚えていた。

さっき、更衣室に入ったとき、或いはすでにその前から、仕掛けを施していたに違いない。

 

この人を敵に回さなくて良かった。

 

と、心から思うシンジだった。

 

「さて、と。話はこれで終わりだ。さっさと本来の目的を果たしちまおう。…アスカが変に勘ぐるといけないからな」

 

加持はそう言って、今度は悪戯っぽく笑った。

 

 

 

 

 

40

 

 

 

「ただいま」

「ただいまぁ♪」

「......おかえりなさい、碇君。葛城一尉」

 

葛城邸の玄関をくぐったシンジとミサトは、普段の表情よりもわずかに嬉しそうに見える、水色の髪の少女に出迎えられた。

シンジも、そしてミサトも、なんだかくすぐったい気分になった。

レイは、2人が留守にする間、自分の家ではなく、葛城邸にいたいと申し出て、留守番をしていたのだ。

 

「あら〜ン、レイ。冷たいわ。私のことは、何て呼んでって言ったかしら?」

 

ミサトは、人差し指を立てると、片手を仕事着の腰に当てたまま、レイにウインクした。

 

「.........さん」

「ん?なに?」

 

レイが、ぽそぽそと小さい声で言い直したのだが、近くで聞いているシンジにも聞こえない。

 

「......ミサト、さん」

「はい、よくできましたぁ〜」

 

ミサトは満足そうににっこり微笑むと、レイを抱きしめて、その頭をかいぐりかいぐり。

 

「.........」

「ん〜、レイ、留守番ご苦労様。ちゃんとご飯食べた?」

「......はい」

 

シンジは、ミサトに強引に抱きしめられているレイを見た。

レイは、わずかに俯いて、ちょっともじもじしているように見えた。

 

…綾波、もしかして照れてるのかな?

 

シンジは、なんだか嬉しくなった。

 

これが家族っていうものかもしれない。

 

そう思えた。

 

「綾波、今日は何してたの?」

 

ようやっとミサトから解放されたレイは、彼女の足下にじゃれついていたペンペンを抱き上げると、きゅっ、と胸の中に抱きしめた。

 

「.....お昼寝」

「へっ?…ひ、昼寝?」

「ええ......掃除をしたら、やることがなくなったから」

「そ、それでずっと寝てたの?」

 

レイは、こっくりと頷いた。

 

「......ペンペンと、一緒」

 

レイが答えるのと同時に、ペンペンが片手…ではなく片羽を上げて「クエッ」と鳴いた。

 

「......碇君とミサト、さんがいないと、つまらないもの」

 

レイがわずかに目を伏せて、そう呟いた。

 

シンジは胸を打たれた。

レイは、漠然とした寂しさを感じるまで、成長しているのだ。

 

その日の夕食は、シンジが腕によりをかけてごちそうを作り、レイとミサトに振る舞った。

 

シンジとミサト。

三人でする一日ぶりの食事に、レイは幸せそうだった。

 

 


■次回予告 

 

第3新東京市にやってきたアスカ。

シンジとって、ようやく「日常」がはじまる。

はじめてのレイとの対面。

そして、第壱中学校への編入を前に、

アスカが出会った少女とは…。

 

 

次回、新世紀エヴァンゲリオンH Episode-08「アスカのいる風景」。

 

 

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(updete 2000/07/15)