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2001年ベスト恋愛ゲーム投票─(1)部門別
恋愛ゲーム学補講 第25講

2002/05/05初版、2002/06/07最終更新

 恋ZERO2001年ベスト恋愛ゲーム投票(2001/01/29-2002/05/05)に多数のご協力ありがとうございました。

 まずは部門別集計結果。今回新たに「企画」「プレイアビリティ」の2部門を新設し、合計10部門と個人サイトが開催するベスト投票としては(見返りがない上に)あまりにも投票者の負担が大きいということで、部門別ではこれまでもベスト投票とかぶることが多いという傾向を見越してコピーボタンを設置したため、影響はないとは言えないが、どうだっただろうか。

※ご意見は原則、そのまま掲載させて頂きますが、ゲーム名や全角・半角の表記ゆれの統一、誤字脱字の訂正が入っている場合があります。

問、コンシューマ・PCを通じて2001年(1月〜12月)に発売された恋愛系ゲームで、グラフィック(立ち絵、イベント、背景など)、シナリオ(ストーリ、テキストなど)、音楽(SEはこちらに含む)、音声(キャラクタのみ)、えっちシーン(流れが自然、使える、などご自分の基準で)、企画(ゲームデザイン、オリジナリティなど)、演出(キャラクタの立ち回り、グラフィック、シナリオ、音楽の使い方、組み合わせ方、画面効果など)、ゲームシステム(アドベンチャー形式、シミュレーション形式などシナリオを載せるゲームシステム)、キャラクタ(キャラが立っている、お気に入りキャラがいる、萌える、など)、プレイアビリティ(操作の快適さ、プログラム品質など)、の各要素についてそれぞれもっとも良かったゲームを選んで下さい。該当するものがなければ必ずしも選択する必要はありません。

(i)グラフィック

有効投票数: 262(うち回答なし: 40)

-

ゲーム名

graph

point

1

君が望む永遠(PC)

40

2

Piaキャロットへようこそ!!3(PC)

24

3

AIR(DC/PC全年齢)

16

4

サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)

11

4

水夏〜suika〜(PC)

11

6

月陽炎(PC)

9

7

Memories Off 2nd(PS/DC)

8

8

あしたの雪之丞(PC)

7

8

Canvas〜セピア色のモチーフ〜(DC)

7

8

グリーン・グリーン(PC)

7

8

シスター・プリンセス(PS)

7

8

大悪司(PC)

7

この部門に関するご意見:

 さて今年は上から順番に、グラフィック部門から始めよう。上位には、なるほど総合のベストゲーム投票と比べてみても順当な作品が上がっている。部門投票では1つしか投票できないというのがポイントと言うべきかデメリットというべきか、少数意見を拾いにくい形態であるとは言わざるを得ない。

 とはいえ1999年の「Kanon」や2000年の「AIR」に匹敵するだけの求心力のある作品がなかったためか、投票はばらけたカタチになっており、6票あっても10位に入れない状況になっている。10位以下、6票で「みずいろ(PC)」「こみっくパーティ(DC)」が、4票で「恋愛CHU!〜彼女の秘密はオトコのコ〜(PC)」、3票で「リトルモニカ物語(PC)」「Close to〜祈りの丘〜(DC)」「風雨来記(PS)」「夜が来る!(PC)」「Missing Blue(PS2)」が上がっている。各部門で圧倒的な強さを誇った1位の「君が望む永遠(PC)」を別にすれば、他部門では十分には活躍できていない(それでも十分、かもしれないが)「Piaキャロットへようこそ!!3(PC)」が2位を獲得しているのはかつてのグラフィック王国の意地と見るべきかかろうじて面目を保ったと言うべきか。4位「サクラ大戦3(DC)」も高いが、アニメ絵主体の他の作品と同列に並べるのは少し無理がある感も。

 絵柄が流行りを追従し、「一般受け」を気にし過ぎているのではないかという点は、2000年ベスト恋愛ゲーム投票のグラフィック部門でも同様の指摘を行っているが、状況はどうやら改善しているとは言えないようだ。いや、より適切な言い方をすれば、「良い」か「悪い」かという問題ではないし、私の個人的な希望という形で述べることは可能であっても、あるべき姿を私1人が判断する権利はない。何かを決めることができるとすれば、それは市場以外にはない。言い換えれば私たちユーザがどんな絵を買ったのか、ということであって、どうやら私たちは個性的な絵よりも、クセのない、「一般受け」する絵を選んだということらしい(より多くの人に受けた絵柄が「一般受け」しているということなのだからそもそもがトートロジーなのだが。「新しい風」が吹けばそれが新しい「一般受け」になる訳だ)。

 もちろん、上記のようなご意見は少なくはないだろう。挑戦のないところには停滞と衰退しかないので私も色々やって欲しいとは思う。ただ何かを変えられるとすれば、それはやはり私たちの購買行動(買わない、という選択も含めて)によってでしかないということは、商業作品である以上今後も避けられないと考える。

 古くはすでに3年半前に「次のビジュアル時代に向けて」で指摘し、昨年にも書いたように、グラフィックは依然として作品の重要な要素だが、全体のレベルは、もはやそれが作品の評価を致命的に決定付けるというものからは抜け出していると言っていい。極論すれば、蓋を開けてしまった後はもう余り差がつかない。(もちろん、流行りっぽい絵柄でも実は構図が狂っているなんてこともあるが、シナリオ次第でカバーされうることは、かつての「Kanon」「AIR」を見れば十分だろう。)更には音楽についてもその傾向が強まることで、ますますシナリオや演出の重要性が高まってきている。

 その中で、単純なグラフィックは、原画家買いなどに端的に現れるように、専ら「客を掴む」部分を担うことになるだろう。ちょうど人間の容姿が第一印象に大きく影響するのと同じように。前述のシナリオや演出はどうしても買う前には分かりにくい部分である。「君が望む永遠(PC)」は大胆にも作品の前半部を無償提供することでユーザを掴んだ訳だが、相当な自信がなければできることではない。騙す、と言うと言葉が悪いが、「買って貰わないことには何も始まらない」というのが私の立場なので騙して頂いて大いに結構。是非手に取りたくなるような、個性的で、かつキャッチーな(無茶言う)グラフィックを生み出して頂きたい。

 あえて私の考える2002年以降のポイントを上げるとすれば3点。1つは背景とキャラの調和。外注や別担当といった形で分業化が進んでいるのかもしれないが、塗りの雰囲気がミスマッチしている場合があるのは頂けない。パーツが良くても組み合わせが悪ければ駄作である。もう1つは昔から言われていることだが服装のセンス。気にかけているところは気にかけているのだと思うが、そうでないところは、そろそろ何とかして欲しい。そしてもう1つは小道具。食べ物をおいしそうに描ける人がなかなかいないというのもその1つだし、部屋を殺風景ということにして生活感がないのもどうかと思う。いずれにしろ、単なるキャラ絵の次が差別化のポイントになってくるのではないだろうか。

 なお、ここに来てムービーを含むアニメーションが台頭して来ており、単純に「グラフィック」でまとめてしまって良いものかという感がある。来年はまた、投票部門の見直しが必要になってくるかもしれない。

(ii)シナリオ

有効投票数: 262(うち回答なし: 36)

-

ゲーム名

graph

point

1

君が望む永遠(PC)

48

2

AIR(DC/PC全年齢)

35

3

家族計画(PC)

30

4

水夏〜suika〜(PC)

8

4

Memories Off 2nd(PS/DC)

8

6

秋桜の空に(PC)

7

7

flutter of birds〜鳥達の羽ばたき〜(PC)

6

8

みずいろ(PC)

6

9

グリーン・グリーン(PC)

5

9

PHANTOM OF INFERNO(DVD-PG)

5

この部門に関するご意見:

 以下、「銀色完全版(PC)」「サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)」「あしたの雪之丞(PC)」が4票、「おかえりっ!〜夕凪色の恋物語〜(PC)」「Close to〜祈りの丘〜(DC)」「月陽炎(PC)」「Piaキャロットへようこそ!!3(PC)」「Missing Blue(PS2)」「未来にキスを(PC)」が3票で続く。シナリオについては3強が抜きん出ており、3作品で回答なしを除いて実に5割を占めた。その他では、グラフィック部門の「Piaキャロットへようこそ!!3(PC)」「月陽炎(PC)」に対してシナリオ部門では「秋桜の空に(PC)」「flutter of birds〜鳥達の羽ばたき〜(PC)」がランクインするなど、2001年の代表的な人気作品の中でもそれぞれ強みが分かれているのがはっきりと表われていて面白い。シナリオについては、作品の総評と大きく絡むので例によって総合のベスト投票の方で主に取り上げたいが、何も言わなくてもランキングが十分にモノを言っている気もする。

 すでに私自身最初の部門別ベスト投票の文句からして「シナリオ(ストーリ、テキストなど)」という書き方をしているようにごっちゃになっているし、通常誰でも分かりやすい言葉として「シナリオ」を今後も使うだろうが、より厳密にはストーリ=シナリオ+テキストとするのが適切だと考えており、同じような題材が扱われながら成功するものと失敗するものがあるように、ある面ではテキストの方が重要なのではないかと思っている。「恋愛ゲームはシナリオが重要だ」と言いながら恋ZEROではこれまで全くと言っていいほどシナリオ(ストーリ)を扱って来ていない。一連のベスト投票の集計が終わった後、別にコラムを立て、そこから新しい企画を起こして行こうと考えているところである。

(iii)音楽

有効投票数: 262(うち回答なし: 52)

-

ゲーム名

graph

point

1

AIR(DC/PC全年齢)

58

2

君が望む永遠(PC)

27

3

Memories Off 2nd(PS/DC)

13

4

家族計画(PC)

10

4

水夏〜suika〜(PC)

10

4

みずいろ(PC)

10

7

月陽炎(PC)

9

8

グリーン・グリーン(PC)

6

8

サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)

6

10

Piaキャロットへようこそ!!3(PC)

5

この部門に関するご意見:

 1位から10位まで、すでにグラフィック部門シナリオ部門でお馴染みの顔ぶれ。「君が望む永遠(PC)」は残念ながらグラフィック、シナリオ、音楽の3冠はならず。それにしても「AIR(DC/PC全年齢)」の昨年のPC18禁版と合わせての2年連続1位はどうかしている。しかも2位にダブルスコア。他のメーカは一体何をやっているのか、と言いたくもなる。

 もっとも、分からなくもない。当サイトのベスト投票は、PC18禁ゲームの投票ではなく、あくまで恋愛ゲームの投票なので、コンシューマメイン、コンシューマオンリーユーザも少なくない。一方ここ最近、PCで人気を博した作品が、翌年コンシューマに移植されるパターンが多い。そうなると、特にコンシューマユーザは次の年にそれらの人気作品に投票することがあり、前年のベスト投票が小規模になってそのまま翌年に反映されるようになる。なるほど、昨年2000年の音楽部門では、「AIR(PC)」がもちろん2001年以上の圧倒的な強さを見せていた訳で、翌年にもこれだけの影響として現れたということになる。

 もちろん、一口に恋愛ゲームと言っても趣向が多様化、分散化してきているため、移植元となるPC側の方でも飛び抜けた存在感を発揮する作品が出てきていないのはすでに書いた通りでありこれも一因だろう。2002年は続々と2001年出のPCゲームがコンシューマに移植されており、それらがどう評価されるかも見物。全般的に、2000年の延長として、「悪くはないが印象に残らない」といった音楽が増えてきた感がある。確かに音楽CDではなくゲームなのだから、音楽が主張し過ぎても問題があるので、演出に有効に機能しているのであれば、もしろ良い方向に進んでいると言うべきなのかもしれない。基本的に音楽からゲームに入る私としては、単独でも聴けるものもあって欲しいのだけれど。

 その他PCゲーム、PCから移植されたコンシューマゲームが主流を占める中で、ひとり気を吐く「Memories Off 2nd(PS/DC)」が3位と健闘。なお、10位以下では「恋愛CHU!〜彼女の秘密はオトコのコ〜(PC)」がある意味突き抜けた主題歌で評価されたのか4票、「シスター・プリンセス(PS)」「flutter of birds〜鳥達の羽ばたき〜(PC)」「夜が来る!(PC)」が3票で続いている。

(iv)音声

有効投票数: 262(うち回答なし: 66)

-

ゲーム名

graph

point

1

君が望む永遠(PC)

41

2

AIR(DC/PC全年齢)

17

3

シスター・プリンセス(PS)

10

3

月陽炎(PC)

10

3

Piaキャロットへようこそ!!3(PC)

10

6

みずいろ(PC)

9

6

Memories Off 2nd(PS/DC)

9

8

サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)

8

9

水夏〜suika〜(PC)

6

10

Canvas〜セピア色のモチーフ〜(DC)

5

10

グリーン・グリーン(PC)

5

10

恋愛CHU!〜彼女の秘密はオトコのコ〜(PC)

5

この部門に関するご意見:

 投票のコメントでもほとんど言及されない部門であるのは相変わらず。音声の役目は、一部の声優買いユーザを除いては、演出やキャラクタの魅力を支えることにあり、恋愛ゲームの構成要素の中では補助的なものだが、その重要度はむしろ、「入っていて当たり前」から「キャラクタに合っていて当たり前」「上手くて当たり前」という段階に移りつつあるとさえ言える。

 音声入れない積極的なメリットとして思いつく唯一の、しかし大きなものは、マスターアップの前までテキストを推敲できることだ。音声を入れる場合、収録した後に、テキストをいじるのが容易でないことは想像がつく。それもあって2000年には投資効果を考えてなどと言っているが、現状ではもはや音声がなくてユーザに逃げられる機会損失の方が深刻と思われる。よほどテキストに絶対的な自信があるか、プアなプロジェクトでない限り、音声を入れないという選択は今後にはありえないだろう。

 ただ、実際にユーザが音声を聴くかどうかはまた別問題で、文字を読むよりもはるかにプレイ時間が延びてしまため、「特定のシーン」を除いて私も大概スキップしてしまう1人だったりする。

 今後の課題としては、テキストの自動送りモードや、テキスト回想での音声リプレイなど、親切なシステムがまだ入っていないメーカは入れて欲しいし、演出的には音声の「間」にも気を使う(また、クリック待ちに入ると「会話」のテンポがおかしくなってしまう。これをどう解決するか? 例えばえっちシーンでは音声を上手くループして切れなくしたり、えっちシーンに限ってはアドリブを入れたりするのも良いかもしれない)などのより一層の工夫と洗練が望まれる。

 1位「君が望む永遠(PC)」はさすがの強さ。2位「AIR(DC/PC全年齢)」(※PC全年齢版は音声なし)もイメージをそれほど損なわなかったようだ。他には補助的な部門だけに、メインな部門では登場しない「シスター・プリンセス(PS)」が3位に上がっているのが目に付く。なお10位以下では、「こみっくパーティ(DC)」「とらいあんぐるハート3リリカルおもちゃ箱(PC)」「ねがぽじ〜お兄ちゃんと呼ばないでっ!!〜(PC)」「はじめてのおるすばん(PC)」「flutter of birds〜鳥達の羽ばたき〜(PC)」が4票。「あしたの雪之丞(PC)」「Missing Blue(PS2)」が3票。

(v)えっちシーン

有効投票数: 262(うち回答なし: 102)

-

ゲーム名

graph

point

1

大悪司(PC)

29

2

はじめてのおるすばん(PC)

22

3

君が望む永遠(PC)

19

4

みずいろ(PC)

12

5

月陽炎(PC)

9

5

Piaキャロットへようこそ!!3(PC)

9

5

恋愛CHU!〜彼女の秘密はオトコのコ〜(PC)

9

8

あしたの雪之丞(PC)

4

8

家族計画(PC)

4

10

Crescendo 永遠だと思っていたあの頃(PC)

3

10

Private Emotion(PC)

3

10

リトルモニカ物語(PC)

3

この部門に関するご意見:

 コンシューマしかプレイされていない方は原則的に回答のしようがないため、例年「回答なし」が最も多い部門。2001年も例外ではない。

 従来、恋愛系の作品では、えっちシーンが他のゲームに比べて薄いという非難を受け続けてきたが、2001年には恋愛系であっても、比較的ボリュームのあるものも目に付くようになってきた。私は18禁だからどうこう、という気はさらさらない。ただ、えっちシーンが薄いから買わないという人はいても、濃いから買わないという人は少ないということで、より購買層を広げる意味では自然な選択だろう(グラフィック部門で書いたように決めるのはあくまで「市場」だ)。

 またその内容も、申し訳程度にとってつけたようなものでなく、3位「君が望む永遠(PC)」のようにある意味リアルなもの、4位「みずいろ(PC)」、5位「月陽炎」のようにサービス精神旺盛なものが登場するなど、選択の幅が広がったことは好ましい。

 ただしランクインしている顔ぶれは依然として他の部門とはかなり異なる。トップの「大悪司(PC)」「はじめてのおるすばん(PC)」は恋愛系、というにはやや微妙。18禁ゲーム全体としては(キャラクタは多いものの)むしろえっちシーンが薄いとさえ言われる「大悪司(PC)」の1位は、まだまだ恋愛系ゲームが十分とは言えないということを示しているかもしれない。「はじめてのおるすばん(PC)」についてはストレートな「それゲー」で言うことはないだろう。コンセプト勝ち。

(vi)企画

有効投票数: 262(うち回答なし: 76)

-

ゲーム名

graph

point

1

君が望む永遠(PC)

30

2

大悪司(PC)

21

3

はじめてのおるすばん(PC)

12

4

シスター・プリンセス(PS)

10

5

こみっくパーティ(DC)

9

5

家族計画(PC)

9

7

Memories Off 2nd(PS/DC)

8

8

AIR(DC/PC全年齢版)

6

8

風雨来記(PS)

6

10

グリーン・グリーン(PC)

5

10

水夏〜suika〜(PC)

5

10

PHANTOM OF INFERNO(DVD-PG)

5

10

みずいろ(PC)

5

この部門に関するご意見:

 10位以下では、「Piaキャロットへようこそ!!3(PC)」「未来にキスを(PC)」が3票。企画部門は、素材が必ずしも上手くないかもしれないが、アイディアやコンセプトは買い、という作品を拾い上げるために、今回新設したものだが、ランクインしているものは、何かしら他の部門でも名前の挙がっているものばかりだった。この部門で、ということでは8位「風雨来記(PS)」ぐらいだろうか。

 コンセプト、ということで分かりやすいのは3位「はじめてのおるすばん(PC)」、4位「シスター・プリンセス(PS)」だ。ユーザの好みが分散し(ユーザが自らの嗜好に自覚的になり)、大作が生まれにくい土壌の中で、採算が合うだけの本数を捌くのには2つあって、1つはできるだけ母集団を増やす作り方であり、もう1つは対象を絞ってその対象に強く訴求する作り方である訳だが、この2つの作品は後者を選択し、かつターゲットとしたユーザ層が十分に厚かったために成功したと言える。ただコンセプト重視のものは基本的に一発モノであり、シナリオやゲーム性と違って再生産が効かないだけに、そう何度もは同じ手は通用しない。

 好みの分散という点では、後述するゲームシステム部門にも通じる話だが、人によってはっきり分かれるもののに「遊べる」ことを重視するかどうかというのがある。恋愛系ゲームの大きな流れとして、遊べない(攻略要素が薄い)が、代わりにお話で読ませる、という方向にあることは否定できないが、そうなると恋愛系ゲームとてビデオゲームの1つであって「ゲーム性」を求めるユーザには不満が一杯で、大勢を占めるアドベンチャーゲームやノベルゲームは退屈で仕方がないだろう。2位「大悪司(PC)」は、そういったニーズを満たすのに十分な成功を収めたようだ。

 そしてそれらを押さえて1位となったのがここでも「君が望む永遠(PC)」。3流メロドラマと揶揄する向きもある。何流かどうかは人それぞれなので何とも言えないが、恋愛系ゲームでメロドラマを表現できたというのは、可能性を広げたことには違いない。むしろ嫌になるぐらいに徹底して恋愛を描ききったことは、従来恋愛系ゲームと言っても、恋愛の光の部分、ピュアな部分だけを抽出した純愛ゲームばかりだったものから、影の部分にも目を背けることのない真に恋愛ゲームへと一歩を踏み出したという意味で、恋愛系ゲームの1つのマイルストーンであると言っていいのではないだろうか。

(vii)演出

有効投票数: 262(うち回答なし: 72)

-

ゲーム名

graph

point

1

君が望む永遠(PC)

66

2

AIR(DC/PC全年齢)

16

3

家族計画(PC)

10

3

Memories Off 2nd(PS/DC)

10

5

サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)

7

6

みずいろ(PC)

6

7

水夏〜suika〜(PC)

5

7

大悪司(PC)

5

7

月陽炎(PC)

5

10

Piaキャロットへようこそ!!3(PC)

4

この部門に関するご意見:

 10位以下では「グリーン・グリーン(PC)」「こみっくパーティ(DC)」「てんたま 1st Sunny Side(DC)」「未来にキスを(PC)」「夜が来る!(PC)」「恋愛CHU!〜彼女の秘密はオトコのコ〜(PC)」とばらけて各々3票ずつ獲得。

 今回の部門別投票では10部門もあるが、素材であるグラフィック、シナリオ、音楽、音声、それとえっちシーン、を素材とするかが微妙だが、と他の部門は若干性格が異なる。演出部門は、例年シナリオや音楽と関連が深く、それは今回も例外ではない。そして、比較的直交するキャラクタ部門(上位に来るものはどちらも頑張っているものが多いが)と合わせて見れば総合ランキングの見当がつくような感じだ。

 素材をどれだけ生かせているかが問われる演出部門では素材が一定水準以上にあることはほぼ前提。素材は酷いが演出だけは高い評価を得ているというのはあまり聞いたことがない(演出の技術が飛躍的に伸びれば話も変わるだろうが)。逆に、素材部門では評価されているにもかかわらず、演出部門ではぱっとしないものは十分には生かしきれていないということであり、猛省を求めたい。その点、1位「君が望む永遠(PC)」はもちろん各部門でもトップクラスだが、全部門の中で演出部門の得票数が1番多いことは注目すべきだろう。相乗効果を上手く引き出せたようだ。

 恋愛系ゲームでも、従来一枚絵メイン、せいぜい目パチ口パク程度な中で、アニメ的な動きのあるものも出始めている。絵に常に動きがあれば今度は止めた時の効果が際立つ(逆に、静止絵だけでも使い方次第では動きを感じさせることもできるはず。プアならプアなりに努力して欲しい)。その一枚絵にしても、あるシーンでここは当然絵が必要だろうというところで、何故か立ち絵のままだったりブラックアウトしていたらがっかりだ。(もちろん、絵描きが必要な構図を描けないなどというのは問題外だが。)頭打ち気味の素材らとは違い、まだまだ演出には開拓する余地が多いので、今後が楽しみなところだ。

(viii)ゲームシステム

有効投票数: 262(うち回答なし: 78)

-

ゲーム名

graph

point

1

大悪司(PC)

38

2

君が望む永遠(PC)

33

3

Memories Off 2nd(PS/DC)

14

4

サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)

10

5

AIR(DC/PC全年齢)

6

5

水夏〜suika〜(PC)

6

5

Piaキャロットへようこそ!!3(PC)

6

8

夜が来る!(PC)

5

9

Canvas〜セピア色のモチーフ〜(DC)

4

9

月陽炎(PC)

4

9

みずいろ(PC)

4

この部門に関するご意見:

 10位以下では「IZUMO(PC)」「家族計画(PC)」「21-Two One-(PC)」「とらいあんぐるハート3リリカルおもちゃ箱(PC)」「風雨来記(PS)」「Missing Blue(PS2)」が3票。

 毎年、存続が危ぶまれる部門だが、率直に言って、2001年もゲームシステム部門で見るべきものはなかった。遊べる、ということでは「大悪司(PC)」「サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)」「夜が来る!(PC)」「IZUMO(PC)」辺りだが、「サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)」「夜が来る!(PC)」はやや微妙。ゲーム性を求める人には選択の余地がなさ過ぎる。

 加えて、溢れているアドベンチャーゲーム、ノベルゲームも工夫に乏しい。ぶっちゃけた話、垂れ流しだろうがストーリと演出さえ良ければいい、と言ってしまえばそれまでなのだが。考えることをやめた瞬間に衰退が始まってしまうので、新しい可能性にも頭を巡らせて欲しいところ。

 その中で、2位「君が望む永遠(PC)」は何故か高いが、特にコメント欄で言及されておらず理由はよく分からない。rUGPの評価がこちらに入っているとしたら「ゲームシステム」という部門名が悪い(ここでいうrUGPのようなゲームシステムは本投票では「プレイアビリティ」部門に入る)。敢えて挙げるなら期間をおいた2部構成は興味深い。「トラウマ」属性でも書いているように、キャラクタに厚みを持たせるために過去の話を出すことが日常的に行われるが、プレーヤの知らない、主人公やヒロインの過去話が後付けで次から次へと出てくるのはしばしばプレーヤを置き去りにしてしまいどうかと思う。それを2部構成にすることで、1つの作品で過去もしっかりとプレーヤに体験させるというのは悪くない。

(ix)キャラクタ

有効投票数: 262(うち回答なし: 52)

-

ゲーム名

graph

point

1

君が望む永遠(PC)

25

2

みずいろ(PC)

16

3

シスタープリンセス(PS)

15

4

家族計画(PC)

14

5

秋桜の空に(PC)

12

5

大悪司(PC)

12

7

AIR(DC/PC全年齢)

11

8

月陽炎(PC)

10

9

Piaキャロットへようこそ!!3(PC)

9

10

Memories Off 2nd(PS/DC)

8

この部門に関するご意見:

 今回8票でも10位と、グラフィック部門以上に分かれた。投票は10位以下、「グリーン・グリーン(PC)」が6票、「水夏〜suika〜(PC)」5票、「あしたの雪之丞(PC)」「Canvas〜セピア色のモチーフ〜(DC)」「こみっくパーティ(DC)」「サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜(DC)」が4票、「とらいあんぐるハート3リリカルおもちゃ箱(PC)」「はじめてのおるすばん(PC)」「flutter of birds〜鳥達の羽ばたき〜(PC)」「Missing Blue(PS2)」「恋愛CHU!〜彼女の秘密はオトコのコ〜(PC)」が3票、と顔ぶれはすでにいずれかの部門でお馴染みながら、多彩。

 キャラクタ部門は人によって評価が作品単位ではなく、キャラクタ単位になりうるため、より分散しやすい部門だが、2001年に至っては上位の顔ぶれを見る限り、キャラクタ部門と言えども、単に設定(あるいは属性)だけで押し切っているのは「シスタープリンセス」ぐらいのもので、もはやキャラクタも、シナリオの出来抜きでは成功し得ないことが伺える。キャラクタの評価は従来その設定、グラフィックや音声、と言った要素と関連が深いが、もはや萌える絵や設定の組み合わせの妙、程度ではなかなかユーザを掴めない。「みずいろ(PC)」「秋桜の空に(PC)」「月陽炎(PC)」はシナリオによってキャラクタをより魅せるという点で成功している。

 あるいはユーザの想像力が貧困になったのかもしれないし、それ以上に、1つの作品の消費サイクルが極端に短くなったことも大きいだろう。恋愛ゲームの黎明期に見られたように、1つの作品から、あるいは「センチメンタルグラフィティ」現象で見られたように設定だけからでも続々と2次創作が生まれるような消費の仕方、広くファンページが作られるような状況は、(年2,3本程度のごく一部の作品を除いて)見られなくなっている。ユーザは、辛うじて「レビュー」と自称する短い感想文によって、作品を消費するのみである。

 そういった状況にあっては、「不完全」な作品よりも、1つの作品内でも十分に完結するように、シナリオ、あるいはテキストが充実している方が都合がいい。一時キャラクタミックス的なビジネスが持てはやされたが、まず最初にゲーム(なりアニメなり漫画なり)で成功する方がよほど無難な戦略だろう。もう、キャラクタは溢れ返っているのだから。

(ix)プレイアビリティ

有効投票数: 262(うち回答なし: 100)

-

ゲーム名

graph

point

1

君が望む永遠(PC)

30

2

大悪司(PC)

26

3

Memories Off 2nd(PS/DC)

16

4

水夏〜suika〜(PC)

7

5

AIR(DC/PC全年齢)

6

5

Piaキャロットへようこそ!!3(PC)

6

5

みずいろ(PC)

6

8

家族計画(PC)

5

8

夜が来る!(PC)

5

10

あしたの雪之丞(PC)

4

10

Canvas〜セピア色のモチーフ〜(DC)

4

10

THE 恋愛シミュレーション2〜ふれあい〜(PS)

4

10

とらいあんぐるハート3リリカルおもちゃ箱(PC)

4

この部門に関するご意見:

 10位以下では「恋愛CHU!〜彼女の秘密はオトコのコ〜(PC)」が3票。オプションやプレイを助ける機能が充実した「君が望む永遠(PC)」「Memories Off 2nd(PS/DC)」や、バグが少ないという点で品質が全般的に高い老舗の作品がランクインした。

 しつこく書くように、恋愛系に限らずビデオゲームでは、ストーリやゲーム性こそが価値であって、プレイアビリティの高さは出来て当然の要件だが、現状は必ずしもそうはなっておらず、状況を改善するためにはユーザからも行動を起こしていく必要があると考える。これについては別の機会に取り上げたい。

付録: 相関係数

 以上の文章では、ある部門とある部門が「関連が深」いといった書き方をしているが、これを統計的に確かめるため、あるゲームがそれぞれの部門で何ポイントを獲得したかを集計して、各部門間の相関係数を調べた(表1)。

相関係数 表1: 部門間の相関係数

 対象となった151作品のうち61作品までが部門別投票で1票も入っていないため、(0,0)のデータが多いこともあり、全体的に強い正の相関になってしまっているが、それぞれ特徴は出ているのではないだろうか。例えば「演出」は、「シナリオ」や「音声」と高い相関にあるといったことが伺えて興味深い。ただし、相関係数が高いというのは、あくまである部門で高く評価されたものが、別の部門でも高く評価されているということを言っているだけであり、例えば「音声」が良ければ「キャラクタ」の評価も高くなる、といった短絡的な原因と結果にはならないことには注意したい。


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