サービス業を始めとして、製造業でも(ISO9000シリーズの取得志向の高まりなどにも見られる)、今やビジネス(だけではなく教育や医療にも広がり始めている…いや、これらもビジネスなのだろうが)の世界ではCSということが当たり前の考え方になっている。CS=Customer Satisfaction、すなわち顧客満足ということだが、恋愛ゲーム(あるいは美少女ゲーム)の世界で一体どれだけこのことが考慮されているのか、今回はまず前書き的に(1)美少女ゲームのCS、そして次回以降(2)CSと作品性、(3)CSとプロ意識、ということで1ユーザの立場でつらつらと考えていることを書いてみようと思う(あくまで予定)。
CSでは、顧客が何であれその「商品」の価値や品質を決める。商品の客観的な、あるいは製作者側からみた出来とは関係なく、顧客が満足すればその商品は出来が良く、満足しなければ出来が悪いということである。これをゲームの世界に当てはめてみよう。CSこそが作品の評価を決定するという考え方のもとでは、もはや、メーカが何か制作したものをユーザが購入する、という受動的な形はありえない。ユーザが望むものをメーカが作るという「ユーザが先にありき」が基本なのであり、どんなに制作者にとって自信作であろうと、ユーザがそれを善しとすればアリで、駄目とすればナシという(メーカにとって)シビアな世界なのである。
実際、これだけ美少女ゲームが溢れ、消費され続けている現状では、「そのゲームを敢えて選ぶ」意味というのはほとんど(のゲームでは)見あたらないのではないか。ユーザはそろそろどれをやっても変わらない、いやそれ以前に買っても買わなくても変わりがないのではないかとさえ気づき始めているのではないか。その中で商売をしていくためには、やはりブランド、グラフィック、シナリオ、音楽、その他何であってもいいが(いや、とりあえずユーザが今求めているのはシナリオか)、他とは差別化した形でユーザに「満足」を提供していかなければならないということなのだろう。
更に、CSが向上するのは、製品が顧客が期待するレベルに対してそれを越えているか下回っているかに大きく左右される。本来そのゲームの出来に見合っただけの対価が支払われるのが原則のはずなのだが、美少女ゲームユーザは、必要以上に高くない限りそこまで値段にこだわることはない(ゲームが趣味の一環として消費されるため…いや、独身貴族が多いためか?(苦笑))。むしろ大切なのは、「ユーザがそのゲームに期待したレベル」に対して、それをクリアしているか、それに届いていないかなのだ。少々こじつけかも知れないが、具体的な例を挙げると、例えばあるユーザが先の「こみっくパーティ」を6477円(笑)出して買ったとして、別の2流メーカ(他意はないです(笑))のゲームXを同じ値段を出して買ったとして、客観的に見たゲームの出来は同程度であっても、彼の「こみパ」とゲームXに対する主観的な「満足」度は恐らく違ったものとなるだろう(※2)。(笑)CSはある意味恐ろしい。
しかし、そうなってくると、少なくない人が疑問を抱くかも知れない。CSは言うまでもなく、最終的に私が繰り返し書いている「ビジネス」として成功するためのキーワードであるが、「ユーザが求めているもの」を突き詰めていった場合、ゲームの「作品性」はどこへ行ってしまうのか、ということだ。これも私がしばしば挙げる「媚び」という問題もある。そこで次回はその「CSと作品性」について考えたいと思う。
#…余談になるが、美少女ゲームの場合はそれほど余談でも済まされないのが品質やCSの最低限度の条件でもある「バグ」と「納期」の問題だ。何もISOを取れとまで言っていないし、むしろなじまないかもしれないが、ソフトウェアプロダクトであることに変わりはない。良いものを創るために時間をかける事はユーザにとってみれば全然構わないことなのだが、いい加減確実に出せるようになってから(あるいはしっかりとした計画を立てた上で)発売日を発表するようにならないものだろうか。発表した時点でメーカとユーザの「約束」が取り交わされたということではないのか。(通常のビジネスならば交渉が持たれるのだろうが、ゲームの発売日はまるで一方的な「通告」である。)またゲームの進行に致命的な問題を起こすようなソフトウェアのバグ(※3)などはお話にならず、CSはもとよりすでに「作品性」うんぬんを主張する以前の問題だろう。ユーザはもっと怒っていいのだから。
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※1、すみません、ネタ切れのため苦し紛れな話題になりました。(笑)
※2、別に「こみパ」が駄目ということではなく責任は果たしていると思うのだが、Leafぐらいになってくると如何せん期待されているものが違い過ぎるので…。(笑)
※3、もっとも、ゲームの存在自体がバグのようなのが溢れている現状では可愛いものなのだが。(笑)
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