The Five Star DXers Association


FSDXA Rodrigues Is DXpedition
(2004.Mar.19-Apr.12)


3B9C・運用報告
英国のDXグループ、FSDXA(The Five Star DXers Association)が主催する国際チームによる3B9C ロドリゲス島(Rodrigues Is.) のDX-Peditionが2004年3月19日から4月12日に掛けて運用された。
FSDXAによるDX-Peditionは、1999年の9M0C(Spratly Is)、2001年のD68C(Comoros)に続き、 今回で3回目の運用となる。3年前のD68Cの運用では総QSO数168,722のDX-Peditionの歴代最多QSO記録を達成している。

[第1陣メンバー出発]
今回の3B9Cの運用はG(英国)、W(米国)、JA(日本)、DL(ドイツ)、F(フランス)、EI(アイルランド)、GU(ガーンジー)、 3B9(ロドリゲス)など8エンティテー、32局の国際チームで編成された。
3B9Cの設営と、前半に運用する第一陣のメンバー23人は3月15日の夜、モーリシャス航空で英国ロンドン・ヒースロー空港を出発した。
翌16日の午前中にモーリシャス(3B8)に到着した一行は、午後便のロドリゲス島(Rodrigues Is.)行きに乗り換え、1時間40分の飛行後の夕方、 無事ロドリゲス島(Rodrigues Is.)に到着した。


(左)英国ヒースロー空港に三々五々集合するメンバー/出発の最終手続き

[ロドリゲス島]
目的地のロドリゲスはモーリシャスの東方約650Km離れたインド洋上に位置する、 周囲18Km×8Kmのリーフに囲まれた島。人口は約35,000人。
島の海岸沿いに町が点在しているが、島を周回する海岸道路は無く、島内の移動は島の中央の高さ400mほどの山(Mt.Limon)を越える道路で結ばれている。 空港は島の南側にあり、今回の運用地となったCotton Bay Hotel(コットンベイ・ホテル)は、 島の最北端にある。このため、ホテルまでの移動はこのMt.Limonの越えて南北に横切る約25Kmの道のりとなる。 山の裾野から続くMt.Grenadeという高地がホテルの西側の海岸までなだらかに続いている。
Cotton Bay Hotelの東方向(90度)から北西のヨーロッパ方面(300度)までは水平線が続き遮るものは何も無い。 北東方向のJA(55度)に対しては絶好のロケーションとなっている。


(左)モーリシャスで乗り換え/ロドリゲスの空港出口ゲート。

南半球に位置するロドリゲス島は、この季節(3月/4月)は秋。太陽は60度方向から昇り島の北側を通って、290度方向の山の頂上付近に沈んでいった。 ロドリゲス島は晴天でも東方向からの季節風が強く、時々短時間ながら強烈なスコールが襲ってくる。

リーフに囲まれたCotton Bayの海岸(北方向)/ロドリゲスの朝焼け

[運用準備]
2003年の12月中旬にイギリス本国から貨物船で発送された4.5トンの機材を積載したコンテナーは、 われわれより一足早い2月26日にロドリゲス島の西海岸にあるPort Mathurin港に届いていた。
3月16日夕方に到着したメンバーは、翌17日早朝からさっそく通関手続きを終えた機材を港からホテルまで手分けして運搬することになった。 島の西側に位置するPort Mathurin港からホテルまでは約25Km、トラック4台分の機材を山越えで運ぶのは大変な作業だった。


コンテナーを開けるG3NUG(右)とG3WGV/機材は陸路トラックで25Km離れたホテルまで運ばれた。


港のコンテナーからトラックで運ばれた機材はホテルの庭に広げられた


[アンテナ建設]
3月17日から19日の3日間は機器の設置組とアンテナ工事組の4班に分かれ"局造り"の作業に入った。
3B9Cの運用場所は、ホテル本館の建物から独立した最西端の901室、902室の2棟のコテージが使われた。 ここに16局分の運用サイト(Site)が8局づつ分散されて設置された。
各サイトはバンドごとに、YAESUのFT-1000MK5とVL-1000のラインがロギング用のPC(IBM ThinkPad 600E)と共に並べられた。
50MHzのサイトは"Site-7"としてFT-920とVL-1000のラインが901室に設置された。
901室には50MHzのほかに1.8MHz、3.5/3.8MHz(CW)、10MHz、21MHz、28MHz、430MHz(EME用)のサイトも同居した。
"Starlog"の"心臓部"となるStar Server(管理サーバー)やインターネットに接続されるメインのコンピューター等は、 901室の浴室スペースを改造したコンピューター室に置かれた。
902室も同様の配置で、こちらには3.8MHz(SSB)、7MHz、14MHz、18MHz、24MHz、28MHz(SSB)、29MHz(FM)などが設置された。


901号室の50MHzのサイト/3B9Cの運用場所となった2棟のコテージ


[アンテナ・ファーム]
炎天下でのアンテナ建ての作業は17日から19日まで丸々3日間が費やされた。
1.8MHzのTitanex V160S、3.5/3.8MHzのTitanex V80Sが2組、7MHzのfull-size 4-Square、14MHzの3eleなど、 大型アンテナが次々と上がり、コテージの周囲はみるみるうちに"アンテナ・ファーム"と化して行った。 50MHzのアンテナは、出来るだけ同軸ケーブルのロスを軽減するため、901室コテージ脇に建てられることになった。 海岸に近いこの場所は砂地で地盤が弱く、用意していたステーアンカーでは転倒の危険があるため、 120cmの"L型アングル"を地元から調達する事になった。このため6mのアンテナ工事は一番最後に回され、 結局、6ele(Cushcraft A506S)×2のスタック・アンテナが上がったのは運用開始が2時間後に迫った19日の夕方になってからだった。


120cmの"L型アングル"を打ち込む/バーチカルアンテナ用のアースには"金網"が使われた


アンテナは"梃子の原理?"を使い引き上げる/14MHzのアンテナが上がる


[3B9C・運用開始]
FSDXAのDX-Pedition運用は、毎回コンピューターでLOG管理される方式が取られているが、 今回はコンピューター担当のG3WGV・Johnによって開発された「StarLog」と呼ばれるウィンドウズ・ベース方式の新しいプログラムが使われた。
この「StarLog」の使用にあたり、DX-Peditionに参加するメンバーは、事前にG3WGVのサーバーから直接プログラムをダウンロードし、 現地での運用開始までに自宅でプログラムを"習熟"することが義務つけられた。
「StarLog」の説明書もダウンロードして読まなければならず、参加者には出発の"準備"としてかなりのプレッシャーとなった。 実際にサーバーにアクセスしてシュミレーションを行う事う実験も試みられたが、これが上手く動作しなかったため、 メンバーの心配を倍加させてしまった。
本番の運用は予定通り「StarLog」で管理されたが、実際に使用してみると、想像していたよりも使い勝手の良いプログラムだった。
3B9Cの運用は現地時間の3月19日の24:00時(UTC:3月19日20:00z、UTCとの時差4時間)に各バンド一斉にスタートした。 各サイト(Site)間は2.4GHzのLANで接続され、リアルタイムで運用状況を把握出来るのも以前と変わりなかった。
筆者(JA1RJU)が担当となった50MHzは、運用開始直前の夕方にアンテナが立ち上がったばかりで、 事前にバンドの様子を探る事が出来ず、コンデションの予備知識を得る間もなく本番がスタートしてしまった。
しかし、幸か不幸かこの日の深夜の6mバンドは完全に"死んで"いた。
3年前のD68C(Comoros)の経験から、夜間の50MHzバンドは、赤道を隔てた南北の"TEP"のパスの可能性は考えられたものの、 この夜は48MHz帯で聞こえるはずのヨーロッパのTV信号は"カケラ"も聞こえなかった。
時差5時間のJAは、早朝の5時で6mのオープンの可能性はゼロに近いため、アンテナをヨーロッパに向けたまま、 50.102MHzで自動送信される"CQ CQ de 3B9C 3B9C"をセットしたが何の反応も無かった。 今夜はHF帯のパイルアップを横目に、翌朝のオープンを期待して休むことにした。


   【3B9C 運用周波数】

       Band(MHz)    CW      SSB     RTTY     FM    SSTV    PSK
       1.8         1822    1842     --       --     --      --
       3.5         3502    3795     3570     --     --      --
        7          7002    7052     7035     --     --      --
       10.1       10102     --      --       --     --      --
       14         14022    14195   14085     --    14230   14071
       18         18072    18145    --       --     --      --
       21         21022    21295   21085     --     --     21071 
       24.9       24892    24945    --       --     --      --
       28         28022    28495   28075    29580   --     28071
       50         50102    50145    --       --     --      --   
       50(Beacon) 50090
       Satellite  Look for us on OSCAR-40
       M'bounce   70cm & 6m band

[運用スケジュール表]
オペレーター個々の日々の運用スケジュール表の管理は、全てこの「StarLog」のプログラム上で行われた。 今回の運用スケジュールでは1単位が2時間で、平均2単位(4時間)、最長で3単位(6時間)の"勤務"が各オペレーターに割り当てられた。 運用交代時間はPCの画面上で毎日周知された。
筆者(JA1RJU)もさっそく勤務表をチェックして見た。 運用スケジュール表を見てびっくり!。 なんと、今回は帰国までの滞在中の全期間(2.5週)が"50MHzの24時間勤務"に割り振られていた!。
サンスポットの低下時の50MHzではまともなパスは期待出来ないと予想していただけに、 何局QSO出来るのか心配になった。


3B9Cの勤務表


[3B9C・参加メンバー]
3B9C・DXpedition Member and Length of Stay(*印 全期間運用者)

     G3NUG         Eric Neville Cheadle     *(3/16-4/15)  9M0C.D68C 
     G3BJ(exG3OZF) Don Beattie              *(3/16-4/15)  9M0C.D68C
     G3WGV         John R. Linford          *(3/16-4/15)  9M0C.D68C
     G0OPB         Tony James Cannin        *(3/16-4/15)  9M0C.D68C
     DL7AKC        Jens Sperling            *(3/16-4/15)  D68C
     G4JKS         Mary Hilary Claytonsmith *(3/16-4/15)
     G3NHL         Chris D.Lewis            *(3/16-4/15)
     G3IZD         Ivan Esmond Davies       *(3/16-4/15)
     3B9FR         Robert                    (3/16-4/15)
     G3SED         Everad Michael Devereux   (3/16-4/01)  9M0C.D68C
     G3XTT         Donald I.Field            (3/16-4/01)  9M0C.D68C
     JA1RJU        Kazuo Ogasawara           (3/16-4/01)  9M0C.D68C
     GU4YOX        Robert William Beebe      (3/16-4/01)  D68C
     G4KIU         Nigel D.Peacock           (3/16-4/01)  D68C
     G4TSH         Justin M.Snow             (3/16-4/01)  D68C
     N7CQQ         John Paul Kennon          (3/16-4/01)  D68C
     W3EF          Maury Peiperl             (3/16-3/26)  D68C
     EI5DI         Paul Gerard O'kane        (3/16-4/01)
     F5VHN         Robert Thain              (3/16-4/01)
     KF7E          James L.Henderson         (3/16-4/01)
     G4IUF         Michael H.Parker          (3/16-4/01)
     JH4RHF        Junichi Tanaka            (3/16-4/01)
     G3RAU         Derek Moffatt             (3/16-4/01)
     G3WKL         John W.Goyld              (3/16-4/01)
     DK7YY         Falk D.Weinhold           (3/16-4/01)
     K3NA          Eric Lee Scace            (3/16-4/01)
     G0MRF         David Bowman              (3/30-4/15)
     M0GMT         Daniel Clapp              (3/30-4/15)
     G4FRE         David J.Robinson          (3/30-4/15)
     G4VXE         Timothy H.Kriby           (4/02-4/15)  D68C
  (NK7C Pat=中止)


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