X指定小説大賞参加作(オリジナル)

■ライク ア シングル(3)■

作・大場愁一郎さま

 

 

 

 湯を張るのはいいが、二人が肩まで浸かって一緒に暖まれるくらいにはまだ十数分ほどの時間が必要と思われる。その間も愁一郎は智秋から離れていたくなかった。

 混浴を許可してもらったことが嬉しかったのもあれば、不倫という関係ながら一度は憧れた女性と情欲を交わし合えるのかと思うと理性が衝動に追随できなくなってしまったのだ。失恋の傷を癒してほしいというのなら、なおのこと離したくなかった。

「こ・ま・ざ・わっ…。」

「あんっ、もう、ビックリするじゃない…」

 浴室ドアの陰に隠れて待ち伏せしていた愁一郎は、入浴準備を整えて出てきた智秋を背後から包み込むようにして抱き締めた。両腕を首に絡め、右手で頬を撫でると智秋はその手を優しく撫で返してくる。ささやかなスキンシップでもたまらなく嬉しい。

「…今のうちに、服、脱いどこうか…?」

「…結局脱がされるまでの猶予は変わんないんだね…。」

「猶予ってのは何だよ?」

「…なんでもなぁい!」

 背中へ届く黒髪に鼻先を埋めながら、愁一郎はスカートのウエストに指をそわせ、ホックを見つけると慣れた手つきで外す。戒めの解かれたスカートは引力に逆らうことなく、たやすく智秋の足元まで脱げ落ちてしまった。上は控えめなフリルをあしらったシャツ、下は白のショーツにストッキングだけという格好になってしまう。

「やだ…大場くん、脱がすの慣れてる…?」

「新婚当時はね、オレ達…帰宅するなり玄関でしたこともあるんだぜ…?」

「…やだ、二人とも…。ヘンタイ夫婦だね…?」

 髪にキスを続ける愁一郎のつぶやきに、智秋は羨望めいた想像を繰り広げた。

 愁一郎とみさきが…玄関先で、誰か来るかも知れない危険を省みずまぐわっていただなんて…。

 智秋は大場家のただれた性生活に微かな嫌悪感を催し…やがてそのマイナスの感情は親友への嫉妬に変質してゆく。

 みさきが羨ましい…。

 憧れていたのは、自分だって同じなのだから…。

 そしてその想像はただれているぶん、ひどく淫らに思えてしまう。

 場所は寝室ではなく、玄関なのだ。にもかかわらず、いやらしく性欲を剥き出しにしてセックスにふけるなんて…。

ゾクゾクッ…。

 自分もしてほしい…。

 微かに覚えた嫌悪感も忘れ、智秋は愁一郎にそう望んでしまった。背筋にくすぐったい悪寒が走り、ヴァギナが人恋しさに泣く。

 割れ目にそって滲む愛液は先程から漏れっぱなしであり、きっとショーツもストッキングも素通っているに違いない。どんどん淫らになってゆく自分が怖かった。

 そう自己診断していると、愁一郎がストッキングに手をかけ、するる、と尻の方からずり下げにかかったではないか。このままでは濡れていることが否応なしにばれてしまう。

「やあっ!ちょっと待って!まだだめえっ!!」

「まだショーツはいてるじゃん…ぜんぶ脱がすわけじゃないよ、大丈夫…」

「だいじょうぶじゃないのっ!お願い、お願いよ、大場くんっ!待って…いや、ストッキング、破けちゃうよぉ…!」

 右手でストッキングとショーツの前をつかみ、ずり下げられないようにギュッと力を込める智秋。唇から髪から胸から…もうかなりの愛撫を施されているのだが、濡れている事実を知られるのはベッドに辿り着いてからにしたい。

 さすがの愁一郎も振り返った狼狽え顔で懇願されては中断せざるをえない。穴を開けたりしないようそっとストッキングを戻し、残念そうに指先で尻を撫でる。

「じゃあ駒沢…壁に両手、ついてくれるか…?」

「つっ、つくけど…約束だよ、まだ下、さげないでよねっ!?」

「わかってるよ…寒くはないよね…?」

「寒くはないけどぉ…」

 愁一郎に言われるまま、智秋はヒタ…と壁に両手をつけた。約束を取り付けはしたものの、一切抵抗ができない体勢は否応なしに不安を増大してくる。

 背後から何をされるかわからないぶん神経が過敏になり…発情した身体じゅうにピリピリと緊張の糸を張り巡らせた。

もみっ。

「あふぅっ!!」

もみっ、もみっ。

「ふぁ、あんっ!!」

「こまざわ…あは、揉み応え最高っ…敏感そうだね…?」

「やだ、だめえっ!んっ!んんっ!!」

 愁一郎はシャツの裾から内側へとおもむろに両手を差し入れ、智秋の乳房を柔らかく包み込んだ。そのまま力を込め、ブラの上からマッサージするように揉む。

 智秋の乳房は広げた手の平にすっぽり収まるサイズであり、汗ばんだブラごしにでもその弾力は素晴らしかった。空気の抜けた軟式テニスボールのように柔らかで、しかし中身はしっかり詰まってそれなりに重たく実り…。女性の柔らかさを代表するかのように絶妙な手応えであった。

 妻であるみさきの乳房に比べると、サイズではいささか劣りはするが…手応えや感度は智秋の方が勝っているように思える。形もなかなか良さそうだ。が、それは慣れない相手でもあり、今夜限りの贔屓目が働いているためでもあるのかもしれない。

「じかに触るぞ…?」

「あ、汗…いっぱいかいてるよ?いいの…?」

「かまうもんか、駒沢の汗なら大歓迎だよ…駒沢のおっぱい…触らせて…。」

「…だったら…背中のホック、外して…。」

「いいぜ…。」

 愁一郎の甘えるようなおねだりに、気持ちよくて、照れくさくてならない智秋も観念してしまう。上気した顔をわずかにうつむかせ、乳房が解放される瞬間を待つ。

 以前の男に外してもらうよりも…愁一郎に外してもらうほうが期待と興奮が強い。いつまでも引きずるように比較してしまうが、それは愁一郎の一挙手一投足すべてが以前の男よりも魅惑的で素敵だからだ。

 愁一郎は智秋の許可を得ると乳房から両手を一旦離し、彼女の背中にあるブラのホックを外しにかかった。小さな金具はメーカーによって形状がまちまちであるが、基本的には単純なカタチをしており、みさき相手で慣れている愁一郎ともなれば片手一本でも外すことができる。

 コツン、という小さな手応えに続き…ふわ、とブラの布地が汗ばんだ乳房から離れる。ぽよん、と乳房が一旦弾むと、智秋は小さく鳴くように吐息した。

「…ブラ、小さいんじゃないの?締め付けてない?」

「そんなことないと思うけど…胸、またおっきくなったのかなぁ?」

「太ったんじゃないの?」

「…うるさいっ!そんなことないもんっ!」

 からかうようなおしゃべりを交わし、愁一郎は生じた隙間に遠慮なく両手を滑り込ませた。智秋の柔肌を、大きく拡げた手の平いっぱいに堪能する。

 暖かな乳房の手触りは予想以上に素晴らしかった。きめ細かな肌は汗ばんでなおすべすべであり、指先から手の平まで、触れているだけで心地よい。

むにょ、むにょっ、むにゅっ…もに、もにっ…

 ちょこんとくっついているような乳首を中指と薬指の間に挟み、そのまま押しこねるよう…柔らかさに浸るよう下から持ち上げて揉み、こねてみた。

 わきからも乳房の端を寄せ上げると、中央で立派な谷間が形作られる。その谷間を摺り合わせるよう、しっかり握りしめたまま上下に揺さぶってもみた。

「あっ、ふ、ふうんっ!!」

「ホント、敏感だなぁ…。オデコとどっちが性感帯なのかな?」

「ど、どっちも性感帯なんかじゃないもんっ…!」

「そぉかな?じゃあ確かめてみよっかなー?どっちがたくさん濡れちゃうか、ショーツ下げて確かめよっと…。」

「だ、だめえっ!!約束したよっ!?」

「そっか、約束だったよな。じゃあもう少しおっぱい…。」

 答えにくい質問に嘘をついてごまかした智秋であったが、愁一郎の立て続けの意地悪に振り返って睨み付ける。それでもその顔は性感帯を愛撫されて悦に入った、だらしのないものであったから少しも迫力がない。両目を真っ赤にして潤ませ、吐息まですっかり上擦っているくらいだ。

 そんな智秋をいたずらな笑みであしらい、愁一郎はさらに乳房への愛撫を続けることにした。柔肌に指を食い込ませるよう強く揉みし抱き、指の狭間で乳首を摘むと、智秋はうつむいたままで艶めかしく鳴いた。ぽた、と唾液がフカフカのカーペットに落ちる。

「気持ちよさそうだね…?だいぶ性感帯になっちゃったのかな?」

「…そ、そうね…なっちゃった…んっ!はあぁ…なっちゃった、みたい…ね…」

 愁一郎の意地悪に強がりで答える智秋。しかしその強がりは感じていることを宣言しているも同じであった。言ってしまってから後悔したが…愁一郎の愛撫に酔いしれている今となっては、もうどうでもよかった。

 このままもっともっと気持ちよくしてもらいたい…。

 密やかに開き直ると、途端に呼吸が弾んでくる。

 愁一郎は乳房を包み込むような持ち方から搾るような持ち方に変え、下向きにされている乳房を文字通り搾ってみた。握りこむよう、縦に力を込める。

ぎゅ、ぎゅ、ぎゅうっ…もぎゅ、もみゅっ…

 柔肌の内に詰まった女性としての弾力が、柔らかみの後に得も言えぬ感触となって手の平に、指に伝わってきた。愁一郎は乳房を揺さぶりながら、感触に浸るよう乳搾りを続ける。無論母乳など出るはずもないのだが、それでもその愛撫は智秋の母性や女性を快く刺激したらしい。

「い、痛いよぉ…!あんっ!あ、だめぇ、カタチ、ヘンになっちゃう…!」

「そのワリに気持ちよさそうじゃん…。いっぱい汗、かいてきてる…。」

「そ、そんなことないよぉ…。」

「そうかな…?シャツの中、もうムンムンしてるんだけどなぁ…?」

 胸元の熱気で、愁一郎の手の平もじっとり汗ばみ始めているほどだ。智秋の乳房は間断なく揉まれ続け、興奮の血が大量に巡って熱を帯びてしまっている。そんなことない、というのは紛れもない嘘であろう。

 愁一郎は乳房を揉む両手を再び包み込むような持ち方に戻して愛撫を続けた。一本一本の指を食い込ませるようしっかり、しかしできるだけ優しくかわいがる。

ぷにゃ、ぷにゃ、ぽにゃ、ぽにゅ、ぷにゃっ…

 そんな擬音がそのまま当てはまるような、女性の胸でなければ堪能することのできない絶妙な感触である。指の隙間から逃げ出しかねないほどの柔らかさは愁一郎に常習性を持たせ、ずっと揉んでいたくなるほどだ。指先がぴっとり吸い付いてしまうような柔肌のきめ細かさも格別である

「やぁらかい…こまざわ、すごいやぁらかいよ…すん、すん…」

「はふ、はふ、ふぁ、はあっ!や、大場くん、あんまり髪、においかがないで…」

「どうして…?」

「あ、汗かいてきてるもん…きっと、イヤな匂いさせちゃう…!」

「駒沢がしっかり新陳代謝してるってことだもん、嬉しい匂いだよ…。」

「ま、またワケのわかんないこと…っ!」

 すっかり上擦り始めた智秋の声を聞きながら、愁一郎は彼女の髪の匂いを確かめ、抱きかかえるようにして乳房をわしづかんだ。乱暴なほどの力に智秋はきゅっとおとがいをそらして小さく鳴く。

 そして愁一郎は親指と中指で乳房の先端にちょこん、とくっついている乳首を摘んだ。それだけで智秋は電流が流れたように肩を弾ませる。

きゅっ、きゅっ、きゅっ…くりくり…ぎゅっ、ぎゅっ…

「はふ、はふ、はふうっ!!そこ、だめ…!!あ、はああ…」

「乳首、勃起しそうだね…?ほぉら、固くなってきた…。」

「だめ、だめっ…!だめなの、大場くん…あたし、乳首って…」

「…もろ、性感帯?」

 言葉にすることなく、コクコクうなづいて愁一郎に答える智秋。

 小さなラムレーズンのようであった乳首は愁一郎に愛撫され、今やツン、と威嚇するようにしこってしまった。力を込めて摘み、ひねるたびに固さは増し、智秋の鳴き声も大きくなってゆく。よほど敏感なようだ。この小さな先端に性感が凝縮されているような感じなのだろう。ここまで高ぶらされたら、もう一度ブラを付けられるだけでも身体がうずいて身動きできなくなってしまうだろう。

 実際そのくらい気持ちよかった。せつなく張りつめた乳首を摘まれ、そして乳輪を指が擦ってゆくたび智秋の意識は波が押し寄せるように真っ白になってゆく。

 乳房と膣が連動しているような具合であった。乳房を愛撫されるだけで、もう性器に触れられているように快感が襲いかかり、ひどく濡れる…。

 動悸が耳元に聞こえるほど、興奮がすごかった。背後から愁一郎に抱き込まれているだけでも興奮するのに、今ではもう彼から心を込めた愛撫を施されているのだ。正気を保てと言う方が酷である。

 頃合いを見計らうように愁一郎の右手は乳房から離れ、白い肌の上を滑ってわきの下へと潜り込んだ。

 壁に両手をつかされて無防備なわきの下は申し開きもできないほどに汗ばんでいた。指先がジットリ濡れてしまうほどである。そのまま指先をもがかせると、智秋はたまらないといった風に身をよじらせ、熱い吐息とともに鳴いた。

こしょこしょこしょ…さわさわ、すりすりすり…

「だ、だめっ!くすぐ、らないでえっ!!そこ、あっ、そこおっ!!」

「駒沢ってくすぐりにも弱いんだっけ…。そぉれ、コチョコチョコチョ…」

「だめっ!だめっ!だめえっ!!あ、あひっ!ひいいっ!!」

 左手で乳房を苛まれ、右手でわきをくすぐられ…智秋はたまらずよがり鳴き、モジモジと膝頭を摺り合わせてしまう。焦れたヴァギナはひっきりなしに愛液を漏出させ、愁一郎が侵入してくるのを待ちわびた。今はまだ理性がとろけきっていないために求めはしないが…身体は無意識に、尻を突き出すような体勢になってしまう。

 ぬむ…とストッキングまで素通った愛液が太ももを流れてゆくのを感知すると、智秋はだらしない表情を一層赤らめて恥じらった。

 今にもバレてしまう…。濡れていることに気付かれてしまう…。

 そう思うだけで肌の敏感さは増し、声はボリュームを、オクターブを高くし…恍惚の身震いは押さえつけることもできなくなってしまう。

「駒沢って…ホント、肌がスベスベだよな…。なにか特別な手入れ、してるの?」

「そ、そんなことないと思うけど…ふふっ、嬉しいな、大場くんにそう言われて…。」

「ずうっとなでなでしていたい…ね、ここなんかも弱かったりする?」

「え…ひゃっ!ひゃあっ!!や、ちょっと止めて!くすぐったいっ!」

こりこり、こりこり…

 左手で身体を抱えたまま、愁一郎は右手で智秋の肋骨に触れ、指の節で意地悪く擦ってみた。男でもくすぐったがる者がいるほどの場所なだけに、やはり智秋にも相応の効果はあるらしい。笑いたいのか泣きたいのかわからないような震えた声で悶え、壁についていた片手を離して愁一郎の悪戯を制止しようとしてくる。

「大場くんっ!もうやめてっ!本気で怒るわよっ!?」

「ありゃりゃ、ちょっとペケだったかな?ごめん…。」

 智秋の口調が今までとは明らかに異なっている。振り向いた顔もだらしないものであることには変わりなかったが、瞳は少しも笑っていない。

 一旦機嫌を損ねると、どんな女の子でも盛り上がってきた興奮は一瞬にして冷めてしまうものだ。ここは愁一郎は素直に引き下がることにし、手の平をいっぱいに開いて脇腹からへそからを撫で回した。こちらは智秋の気に障ることがないようで、心地よさそうな吐息を再開してくれる。

 太ったのでは、と先程からかってみたのだが…ウエストの滑らかなくびれ具合なんかを撫で回しているとまったくの誤解であったことがわかる。

 上下に行ったり来たり…脇腹を暖めるように撫で回しているのだが、胸から腰にかけてのカーブは立派なものであった。学生時代は運動部に在籍していなかったのに、と愁一郎はささやかな疑念を抱いたりする。

 へそをまさぐってみると、腹筋も美しく引き締まっているようであった。へその穴を指先でくすぐると、智秋はやはりくすぐったそうに身をよじり、悩ましく鳴く。同じくすぐったがるのでも、先程の肋骨とは反応が雲泥の差だ。調子に乗ってへそからさらに下降し、ストッキングやショーツに触れるとさすがに厳しい視線で睨み付けてきた。

 それでも身体の火照りは確実に理性をとろけさせつつあるようで、右手で尻に触れたときには拒んだりしなかった。ストッキングとショーツの上からゆっくりゆっくり尻のまろみを確かめてみる。まるで痴漢のような動きであるが、別段智秋は嫌悪したりしない。むしろその動きに合わせるよう、そおっと腰を動かしたりするほどだ。

 きゅっと上向きかげんである尻はヒップラインも美しく、智秋が普段からスポーツに汗を流しているらしいことを裏付けている。先程も言われたとおり、家の中に閉じこもってゲームばかりやっていたのではないらしい。

「駒沢、お前なんかスポーツでもしてるの?おしり、とっても良いカタチしてるぜ…?」

「あ、わかる…?無駄な贅肉を付けるくらいなら、引き締まった筋肉の方が見映えがいいかな、と思ってテニスを少し…。」

「…オレがサッカーやってたのと似たような動機だな。」

「えー、そうだったの…って、まだだめえっ!下げないでっ!は、恥ずかしい…上も脱いでないのにっ!」

 おしゃべりに紛れ込むよう、愁一郎はストッキングとショーツのウエストから内側へ右手の親指を差し込んだ。そのままゆっくり、真っ白な尻を露出させるように下げていくと智秋は焦って愁一郎の右手を制してきた。こつんと額を壁に着け、右手で愁一郎の右手をつかみ、左手でストッキングとショーツを押さえる。愁一郎は脱がされるのを拒み続ける智秋の背中にもたれかかり、なだめるようにささやいた。熱い耳にも舌を這わせる。

ぺろ、ぺろっ…ちょぴ、ちょぷ…れる、れるん…

「頑なに拒むねぇ…もうそろそろいいだろぉ?ハダカになろうよぉ…。」

「いやっ!あ、はぁ…だめぇ、まだ…脱がされたくないの…!」

「…もしかして濡れてるから?」

「まっ、まだ濡れてないもんっ…ひゃあっ!?」

むにっ…。

 言葉をかき消すように、智秋の喉の奥から悲鳴が漏れる。

 愁一郎の言葉に続き、尻の谷間にそって密着してきた固い棒のような感触に…智秋は瞬間湯沸かし器よろしく顔面を紅潮させてしまった。尻にぴったりあてがわれているものが何なのかを悟ってしまったのだ。

 ガッチガチに勃起した…愁一郎のペニス…。

 驚愕と羞恥に見開かれた両目から、思わずぽろっ…と涙が溢れる。智秋の意識はどうしようもないほどに掻き乱されてしまったのだ。

 谷間に沿い、大きく直立していることがわかるほどの長さ…。

 尻の柔肉を押し割ってなおたくましい固さ…。

 そして、その割り込みようがただものではない太さ…。

 スラックスの感触がわかることから、抜き身であてがわれてはいないようである。それでも勃起状態は目を見張るに十分な感触となり、智秋を不安と期待で震えさせた。

「大場くん!大場くんの…あ、あたしのおしりに挟まってるっ!!」

「…駒沢に入りたいってさ。しばらく禁欲してたぶん、自分でも恥ずかしいほど大きくなっちまった…。」

「は、恥ずかしいんなら退けてよおっ!あたしだってこんな、挟まってるなんて恥ずかしいようっ!!」

「恥ずかしいよりも…したい、のほうが勝ってたりするんだよな…。」

「ちょ、ちょっとおっ!やだ、擦れて…!だめえ!いやあっ!!」

のしっ…のしっ…のしっ…

 愁一郎は智秋の拒む声も聞き流すと、彼女の乳房をシャツの上からわしづかみ、ゆっくりと腰を前後させた。布地ごしではあるが、愁一郎のペニスと智秋の尻が真っ直ぐに擦り合わされる。谷間をのこぎりで切り開くような動きに智秋はイヤイヤして涙を床にこぼした。顔から火が出そうなくらいに恥ずかしい。

びゅう…。

「ひっ!ひぎぃ…!あ、あたし…あたしぃ…!!」

 見ため以上に大きなペニスが、上下するよう行ったり来たりして汗ばんだ尻の谷間を刺激してくる。後背位でまぐわっているような錯覚に捕らわれ、智秋はショーツの中で思いきりしおを噴いてしまった。もうショーツもストッキングも替えなければいけないほどに濡れている。しかし、替えの下着など用意があろうはずもない。

 事後をどうするか考えようとしたが…愁一郎のグラインドはそうさせるいとまを与えてはくれなかった。智秋は羞恥しきりでありながらも濡れた中央を晒しかねないほどに尻を突き出し、愁一郎の動きに合わせて腰を振り始める。

「こまざわ…こまざわぁ…!」

「ああん、おおばくん…おおば、くん…っ!!」

 名前を呼び合いながら腰を振る二人。愁一郎は己が性器を真っ直ぐに擦り付けながら智秋のシャツのボタンをひとつひとつ外し…はら、と前をはだけてしまった。すでに戒めが解かれているブラの陰から、形のいい乳房が丸見えになってしまう。

 愁一郎は無遠慮に手を伸ばし、たわわに実った乳房を両手に独占した。しこった乳首を指の間に挟みつつ、手の平いっぱいに包み込んで揉みこねる。

 智秋は智秋で愁一郎のなすががままとなり、はだけられた時も壁に両手をついたまま、夢中で愁一郎のペニスの感触を追いかけた。つま先立ちになり、少しでも敏感な中央が擦れるよう尻を高く持ち上げて突き出し、ゆるやかに上下してくる。

 乳房まで愛撫されると途端に意識から理性が抜け出ていきそうになり、智秋は唇を噛み締めて快感に耐えた。ベッドへ行くまでにせがんだりするような下品な女にはなりたくなかったからだ。そんなことをして、愁一郎に軽蔑されたくない…。

きゅ、きゅっ、くにくにっ…のしっ、のしっ、のしっ…

 それでも…乳首をつままれ、腰の動きを大きくされてしまうと智秋は随喜の涙をこぼし、耐えに耐えていたよがり声を部屋中に響かせてしまった。性の感動に色っぽく潤った女性だけの鳴き声を愁一郎の間近に聞かせてしまう。

「あっ!あああっ!おっ、おおばくうんっ!だめ、だめ、濡れちゃうっ!!べちょべちょになっちゃうよおっ!!」

「駒沢…いつの間にこんな声まで出せるように…あっ、オレまで…濡れるっ…。」

 愁一郎も智秋の鳴き声に打ち震え、汗ばんだ両手にさらなる力を込めていった。

もみっ、もみっ、もみっ…くりくり、ころん、ころん…

 揉みほぐされてすっかり桜餅のようになっている智秋の乳房は、そうなってもなお敏感さを損ねたりはしない。それどころか想いを込めて揉まれれば揉まれるだけ、暖かに拡がる快感の波紋は大きくなってゆくようなのだ。

 充血した乳首も同様で、つねられればもちろんのこと、今では指が触れるだけでも声が出てしまうほど感じやすくなっていた。ましてや指先で押し倒され、ピョコン、と起きあがらされたりしようものなら身体じゅうに激震が走るほど浮かされている。

 そんな智秋の反応すべてが興奮の起爆剤であるかのように、愁一郎は燃えていった。

 あの快活で、元気いっぱいで、ゲームのことばかり考えていた智秋はどこへ行ってしまったのだろう。

 以前付き合っていたという男が智秋をここまで変えてしまったのだろうか。

 そう考えると理不尽な苛立ちがふつふつと沸き上がってきたが、媚びた顔で振り返られるとたちまち余計なことは考えられなくなってしまう。不倫という関係に一際燃える愛欲で、尻を割る腰の動きを次第に早めていくと…ペニスはすっかり交わっているもの、と錯覚を起こしてしまった。パンパンに張りつめたペニスの先端は微震しつつ、トランクスの中でジクン、と逸り水を漏らす。

「こまざわ…気持ちいいよぉ…。おしり、きゅって挟んでくる…!」

「は、挟んでるわけじゃないの、も、求めちゃうのっ…!恥ずかしいのに…あたし、こんなに淫らじゃないのに…!!」

 愁一郎は気持ちよさそうに目を細めつつ、舌を翻して乾いた唇を潤わせた。

 みさきとは最近禁欲生活を過ごしていただけに、逸り水は後から後から止むことなく滲んでくる。よほど射精できる機会を待ち焦がれていたようだ。

 このまま続けていれば、間違いなく尻の谷間で射精することになるだろう。智秋の引き締まったヒップは…谷間で擦れるだけでも十分すぎるほどに心地よかった。

 止むことなく滲むのは、泣くように答える智秋も同じであった。

 脱力寸前といった両脚はすっかり膝頭がくっついてしまっている。そうせずにはいられないほどうずいている女性器は、濡れてすっかり変色したショーツの中心で、にじ…といやらしく腫れ上がっていた。興奮による開花である。

 花開けば開くだけ白の布地はジットリと透け…腫れた桃肉も、固く勃起したクリトリスも目視で確認できるほどになった。ベージュのストッキングにも愛液は素通り、透けて見えるほどべちょべちょに濡れている。

 細い花筒はペニスの愛撫を受けている尻の谷間に不平を言うよう、きゅんきゅん収縮しどおしだ。膣口に耳を当てたら、智秋のヴァギナがすすり鳴いているのがわかるだろう。

「こまざわっ…もう、立ってられないくらい、濡れてるんだろ…?」

「あんっ、やっ!ダメッ!触っちゃ…ひ、くうっ!!ああん、ば、ばれちゃった…濡れてるの、ばれちゃったよう…恥ずかしいようっ…!」

 愁一郎は腰の動きを止めると智秋の制止の声も振り切って、起伏に富んだ彼女の恥丘を右手いっぱいに包み込んだ。ショーツからストッキングからをすっかり素通っている愛液に、愁一郎の指もベットベトに濡れてしまう。智秋は腰をブルブル震わせ、恥じらいいっぱいで嗚咽した。

「こまざわ…もう替えないとダメみたい…。お漏らししたみたいになってるもん…。なんだかんだ言ってたけど、だいぶ前からこうなってたんだろ?」

「はっ…はああ…!!触らないで…いま、そこ…すごい敏感になってるの…んんっ!!」

 拒む声を無視して愁一郎が恥丘を下から持ち上げるようにすると、中心で割れている智秋の隆起はぷにゅっとたわみ、裂け目の奥からさらなる愛液を搾り出してしまう。

ぶにゅっ、ぷにゅっ、ぷにゅっ…

「柔らかぁい…なんか、みさきよりももりもりしてるし…。」

「だめ、だめえっ!!ガマンできなくなるうっ!!」

 智秋の言葉に嘘はないらしく、愁一郎が繰り返して恥丘の柔らかさを確かめると、智秋はのけぞるようにして一オクターブ以上も上擦った悲鳴をあげた。そのたびに愁一郎の指先へ、じゅわ…じゅわ…っと熱い迸りが伝わってくる。

「ここが智秋の…おまんこ、なんだよね?だらしないな、もうこんなにびちょびちょ…。まだまだお漏らしするつもりなの?」

「お、おま…って、そ、そんな下品な言葉っ、嫌いっ!!」

「おまんこってそんな下品な言葉かなぁ…?ほぉら、おまんこぷにゅっ、ぷにゅっ…。」

「いやっ、いやあっ!!お、おおばくん、ひどい…!!」

 反応を楽しむように言葉を選ぶ愁一郎を、智秋はより強く膝を摺り合わせて嫌悪した。しかし、いくらしっかり摺り合わせたとしても智秋の太ももにはかわいらしく隙間ができるため、防護策としては失敗である。

 意味を知っているだけで口にしたこともない淫らな隠語を耳元にささやかれ、羞恥心を煽られた智秋は裂け目を激しくうずかせて泣いた。もう身体じゅうが熱くてならない。

「あ…これ、クリトリス?」

「そ…あんまりいじらないで…あたし、あ、やだっ…もう、いっ、イッ…!!」

 裂け目にそって前後に動かす中指の腹にコリコリ固い物が擦れ、愁一郎は確認するように問いかけた。智秋は息も絶え絶えな声をどうにかこうにか喉の奥から吐き出す。

 様々な愛撫ですっかり勃起しきったクリトリスを刺激されると、腰の中から暖かな浮揚感が身体のすみずみへと拡がってゆく。気を抜けば今にでも達してしまいそうなくらいに気持ちいい。

 しかしエクスタシーに達した姿は、まだ愁一郎に見せたくない…。

 そんな恥ずかしい姿を見せてしまったら…もう正気を保ってはいられないような気がする。必死で顔をしかめ、壁にせつなく爪を立てて…絶頂の訪れを必死で堪えた。

「そっか、イキそうなんだ…。駒沢のイクところ、見てみたいなぁ。」

「やだ…恥ずかしくて死んじゃう…!それだけはやめて…見られたく、ない…!」

「ふふふっ、駒沢、かわいいよ…。」

「やだ、おおばくん…こんなとき、そんなこと言われたら…あ、キス、だ、め…」

ぶぢゅっ…ちゅ、ちゅ…

 困り果てた泣きベソで振り返った智秋の唇を、愁一郎はこみ上げた愛しさに突き動かされて乱暴に奪ってしまう。

 唾液を口移すよう、みっともなく垂らしながら吸い付き…擦れざまに熱い息継ぎを交えては何度も何度も唇を押し当てる。智秋は素直に応じるものの、焦れた唇を吸われるたびに表情を占める狼狽の色は濃くなっていった。

 キスはしたいのだが、愁一郎とこうしているだけで達してしまいそうなほどに身体が危なっかしい。すでにヴァギナは収縮を極めている。とうの昔に達してしまっているのでは、と思えるほど身体は心地よくフワフワしていた。

「おおばくん、ごめん…キスもやめて…キスだけで…イッちゃいそう…!」

 智秋の息も絶え絶えな懇願に、愁一郎は素直に応じて身体を離した。あらためて正面を向かせると、愛しげに見つめてから親指で涙を拭ってやる。

 触れた頬は熱く、微かに震えていた。

 見つめ返す瞳は不安に揺れ、まつげまでかわいらしく濡れていた。

 何度も重ね合った唇は、言葉とは裏腹で媚びるようにうごめいていた。

 智秋はどうやら達してしまうことに備えているらしい。心ここにあらずといった表情のまま、愁一郎を眺めている。もうあと少しでも愛撫を続けられると、まず間違いなく爆ぜてしまいそうな雰囲気を漂わせていた。

 その表情は愛撫の中止を求めているようでもあり、最後まで登り詰めさせて欲しいとねだっているようでもある。意識は快感の前にとろけきってしまったようで、唇の端から少し唾液が漏れていた。必要以上の言葉はもう紡げないだろう。

「駒沢、じゃあ…ベッドでならイクところ、見せてくれるよね?」

「…うん…ベッドでなら、あたし…あたし…」

「わかったよ。じゃあ…そろそろいい頃じゃない?」

「あ…お風呂…?」

「うん。でも…ボルテージ上げるつもりが、これじゃあ一回イキ損なったのと同じだね!ゴメン!」

 背後のドアを親指で示しながら、愁一郎は照れ隠しに笑う。戯れに夢中になっていたが、浴槽にはもう十分に湯が張られている頃だ。

 愁一郎のおどけるような謝辞に微笑むと、智秋は何度か深呼吸して火照りを鎮め…愁一郎に後から入ってくることを約束させてから、浴室へ入っていった。

 

 

 

つづく。

 

 

 

■→次回へ

 

 

 (update 99/04/01)