X指定小説大賞参加作(オリジナル)

■ライク ア シングル(9)■

作・大場愁一郎さま

 

 

 

「これが…こまざわ、の…」

んくっ…。

 思わず感動の声が漏れる。愁一郎は妄想の中で何度も夢見た智秋への入り口を目の当たりし、息を、生唾を飲んだ。

 眩しいほど鮮やかな桃色をした柔肉は内側から盛り上がり、M字開脚のためにクニュ…と艶めかしく開いている。失禁を重ねたかのように潤っている柔肉の合わせ目には、達したばかりで小さく萎縮しているクリトリスも確認できた。

 換気するように開いた柔肉の奥にはフェロモン・シロップのたっぷり詰まった膣口が呼吸するようにヒュクヒュクしている。指を差し込んで愛撫していた膣口であるが、こうして確認すると驚くほどに径が小さい。透けるような薄い粘膜の縁取りは処女膜の名残であり、亀裂は馴染んできてすでに膣口の一部と化している。異性との交わりを幾度か経験している、こなれた女性の入り口であった。

「…こまざわ、やっぱり…」

 オレの知ってる駒沢じゃなくなってるんだ…。

 智秋がすでに第三者へ処女を捧げてしまっている事実に、理不尽な苛立ちと焦燥感が募ってくる。愁一郎は自分達の親密な関係から、いつのまにか置き去りにされているような気分になってしまった。誰よりも自分が駒沢を知っている、という自負が音を立てて瓦解していき、どうしようもない悔しさに見舞われる。

 この一方的な苛立ちは…やっぱり独占欲…?

 すでに愛する女性を娶っておきながら、なおも駒沢に対してそのような感情を抱いてしまうというのか…。

 愁一郎は自問しながら、惚けたままで裂け目をさらけ出している智秋を見つめた。偏見とも言うべき思い込みが、恥じらいも忘れて何度もエクスタシーに登り詰める彼女を別人であるかのように思わせる。

 駒沢が…ほしい…っ。

 そんな行き過ぎた想いに背中を押されてしまうと愁一郎は、しゃがみ込んだままでころんと仰向けになったような智秋の両脚を両手で押さえ、上から覗き込むようにして…

ぶちゅっ…。

 唇を濡れた裂け目の内に沈めた。鮮桃肉を押し割るよう唇でモグモグし、ぢゅぢゅっと音立てて愛液をすする。妻のものとはまた違う不思議な甘酸っぱさを嚥下すると、愁一郎の鼓動はますます高まっていった。愛液に含まれている濃厚なフェロモンのせいである。媚薬めいた愛液の作用でペニスは痛いほどの勃起をきたし、愁一郎は目眩がするほどに発情した。先程射精したばかりだというのに、もう逸り水が滲んでくる感触がする。

「はあ、はあ…こまざわぁ…!」

 愁一郎は鼻先まで裂け目の中に押しつけると、大きく口を開けて裂け目にむしゃぶりついた。熟れきって弾けた果実をむさぼるように唇でハグハグし…広げた舌を翻して桃肉を分け、膣口から尿道口、そして快復の兆しを見せているクリトリスを舐め上げる。薄い包皮にくるまれているとはいえ、充血している紅玉はいかにも敏感そうだ。

はぐ、ぶぢゅ、ぢゅっ、れるっ、れるっ…ぴちゅ、ぴちゅ…るりっるりゅっ…

「んんっ…駒沢のおまんこ…すごいいやらしい味してる…う、うぷっ…!?」

「んはぁうっ!あ、あああっ…!!」

 愁一郎がわざとらしいほどに音立てて陰部のすべてを愛撫すると、余韻からたちまち回復させられた智秋は彼の頭を両手で押さえ込んでよがり鳴いた。身をよじり、強くのけぞって汗を散らせる。

「はあ、はあ…ううんっ!!んんっ!!ふぁ、ああっ!!」

「れるっ、れるっ、れるっ…うぷ、ぷはっ!く、苦しいよこまざわっ!」

「や、おおばくんっ…やだ、恥ずかしい…恥ずかしいようっ…!」

「恥ずかしいって言いながら…ぢゅぢゅ、ぢゅっ…ぷぁ、しっかり押さえつけてるじゃんかよっ…!」

 悩ましくよがり狂って忘我する智秋。愁一郎は愛しさあまって裂け目に頬摺りし、顔中をベトベトにしてしまう。しかしそうすることが愁一郎の愛欲に消えることのない炎を宿させてしまったらしい。

にちゅ、にぢっ、にぢゅっ…

 愁一郎は唇をすぼめ、膣口から繰り返し愛液をすすりつつ…右手でペニスをしごきはじめた。理性と欲望の板挟みになり、錯乱してしまったのだ。

 智秋をかわいがり、最後まで丁寧に接してあげたいと願う理性。

 また、智秋をいじめ抜き、思い通りに犯したいと願う欲望。

 左手でクリトリスを摘み、指先で押し転がすうちにペニスは右手の筒の中でどんどん固さを、長さを増して濡れた。指とペニスの間で擦れる逸り水の粘つく音が、智秋の愛液をすする音に混じって部屋に響く。

ちゅ、にち、にぢっ…ちゅ、ぶちゅぢゅっ…にち、にちゅ、にちゅっ…

 その淫靡な音と愛撫に、愁一郎も智秋も無我夢中で快感を貪った。

「はあ、はあっ、はああっ!ああ、こまざわっ、こっ、こまざわあっ!!」

「だめだめえっ!やだ、また…っ!きそうっ…!!」

び、びゅっ。

 M字開脚を強いられたまま、智秋は両手で乳房をわしづかみ…息も絶え絶えに絶叫してしおを噴いた。間欠泉のように噴き上がった新鮮な愛液は愁一郎の頬を、あごを濡らしてトロリと伝う。

「こまざわ…こまざわ…ね、もういいだろ…オレが待てなくなっちまったよぉ…」

 愁一郎は智秋への愛撫も忘れ、くつろぎきった裂け目に顔を埋めたまま必死でペニスをしごいた。とがらせた舌を膣内に挿入しながら、苦しげに鼻で深呼吸したりする。

 逸り水をまんべんなく馴染ませた指で、くびれの裏側から表面積の広い表側からを執拗に刺激し…没入の感覚を求め、血管の浮いた幹をも力強く握りしめる。そうするとツヤツヤな先端へ煮立ったような愛欲が殺到し、今までに経験が無いほど漲ってしまった。逸り水が危なっかしく噴き出し、愁一郎の声は次第に上擦って情けないものになってしまう。

 このままでは繋がる前に…射精を迎えてしまいそうであった。

「いいよ、おおばくん…あたしも、もう待てない…!セックスしよう…あたしも、おおばくんが欲しい…!!」

「はあ、はあ…ごめんね、こまざわ…欲張っちゃって…」

 愁一郎は智秋をM字開脚から元の仰向けに戻し、楽にさせた。膝を立てた両脚をゆるやかに開いてもらってその間に割り込み、のしかかって一息つく。智秋も愁一郎の背中に腕をまわしてすがりついてきた。勃起しきったペニスは濃い目の性毛の上で下腹に押しつけられるようにされてしまう。下手に擦れると智秋のへその上に情欲を放ってしまうだろう。

ドキ、ドキ、ドキ…はぁ、はぁ、はぁ…

 早鐘のような鼓動。すっかりあがった息。

 男の、女の汗の匂い。逸り水の匂い。愛液の匂い。

 淫らな要素にまみれていながらも、ぴったり胸を合わせて繰り返す深呼吸で…お互い暴走しかけた感情は幾分和らいできた。それぞれの波がわずかに引いてゆく。

「…おおばくん、あのう…わかってる、とは思うけど…」

「どした?」

「…優しくしてね。できるなら…みさきよりも優しく…。」

「もちろん優しくするよ…。じゃあ今夜は…ホントに特別…もう少し、お互い焦らしあおう…。欲しがる気持ち、いじめぬこうぜ…。」

「あうう、どんな姿を晒しちゃうか、ちょっと怖いなぁ…。」

 穏やかな雰囲気に包み込まれると、徐々に二人は落ち着きを取り戻してきた。欲望の赴くままに求めあうことをやめ、高め合うためのスキンシップを再開する。

 すっかり汗ばんだ身体を抱き締め合うと、二人はベッドの上をごろごろと転げ回った。背中を抱き締め、両脚を絡めて…肌の密着を少しでも増やしながら口づける。口づけてなお右へ左へ転がり、子猫のように一生懸命じゃれあった。

「んっ…む…ちゅ、ちゅっ…こまざわ…」

「はぁ、はぁっ…んっ…名前で呼んでよぉ…」

「ち、あ、きっ…。好きだよ…」

「うんっ…うん…おおばくん、あたしも好き…好きよ…」

 再び智秋が下、愁一郎が上になって一休みする。唇を離して名前を呼び合うと、自然と表情がほころんだ。どれだけ淫らなひとときを過ごしていたのかようやく気付き、ついばむようなキスを重ねてしばしおしゃべりする。

「ははは、駒沢に…じゃない、智秋に吸い付きながら…オレ、オナニーしちゃってたよ…これじゃあヘンタイそのものだよなぁ…。」

「ふふ、おおばくんがヘンタイだってことくらい…高校の時から知ってたわよ?」

「今夜は特別だって…。結婚してからはマジメになったんだかんな…。」

「え、結婚するまえに…もう童貞は卒業してたんだ?」

「…そういうわけじゃないけど…って、これじゃ結婚してから童貞卒業したの、告白してるようなもんじゃないかっ。」

「あははははっ!」

 ささやかに談笑し、愁一郎はベッドサイドから飲みかけのボルヴィックを引き寄せ、一口あおった。だいぶぬるくなってはいたものの、火照りきった身体には十分冷たい。

「んく、んく、んく…」

「ねえ、自分だけ飲んでないで、あたしにも分けてよぉ。」

 喉を鳴らして美味そうに飲んでいると、智秋も下からせがんできた。

「浴びてみる?」

「え?あ、きゃっ!冷たい!もお…ひどぉい…!!」

ぴちゃ、ぴちゃぴちゃ…

 愁一郎がボトルを傾げると、智秋の火照り顔に残りのボルヴィックがすべてこぼれ落ちてしまう。澄んだ清水を顔じゅうに降りかけられた智秋は喫驚とも憤慨ともとれるような声を愁一郎にぶつけたが…その冷たさが意外と心地よかったらしく、それ以上噛みつかないでペロペロと口の周りを舐め始めた。

「…オレも一緒に舐めるよ…。」

「ああん、くすぐったいよぉ…あ、また…もう…」

ぴちゅ、ぺちゃ…ぢゅ、ちゅっ…ちゅっ、にゅむ…

 智秋がするように愁一郎も彼女の頬から額からを舐めるのだが…すぐまた舌を追いかけ、絡まりついてゆく。舌を吸いながら唇を重ね、モゾモゾと身体をずらして肌どうしを擦り合わせた。

 怒張したままのペニスも智秋のへその上に押しつけられ、形に添ってへこませている。愁一郎はゆっくり腰をずらし、先端をへその上で擦らせた。興奮は幾分引いていたが、戦意は少しも損なわれていない。

「ちあき、そろそろしよう?約束したもんな…」

「うん…。あ、ちゃんと避妊はしてよね?」

「わかってる…じゃ、ちょっと準備…」

 唇を離して欲しがるタイミングを探り合う。お互いこれ以上のお預けはごめんであった。

 智秋の当然な願いに応じ、愁一郎はベッドサイドの小さなケースに手を伸ばした。小さな灰皿にも見えるそのケースには一枚の袋が収められている。

『ピンホール確認済みです。』

と書かれた薄紙が巻かれたそれは言うまでもなくコンドームだ。特別凝ったものではなく、オーソドックスなデザインのものである。もっとも、ルームサービスとしてなら数種類のコンドームが用意してあったりするらしい。先程のインフォメーションガイドと備えてあったルームサービス・オーダーリストに記載してあったのを愁一郎は覚えている。

 取りあえず智秋から身体を離して膝立ちになり、薄紙と外袋を指先でちぎった。中からベトベト潤っている円形のものを取り出し、円の中心にある小さな膨らみを人差し指と中指で摘んでツヤツヤの先端にあてがう。精液溜まりにできるだけ空気が入らないようにしないと繋がった内側でずれ動いたりするし、射精した後にも精液の行き場がないためなにかと不都合が生ずるのだ。

しる、しる…

 親指、薬指で丁寧に押し下げてゆき…きちんと根本付近まで薄いヴェールで包み込む。これで装着は完了だ。なんとなく窮屈ではあるが、不必要な妊娠を回避することができるのだからやむを得ないだろう。男として最低限の礼儀だ。

「見たことあるけど、やっぱり付けるの、簡単なもんだね。でも…付けないでするより気持ちよくないって、やっぱホントなの?」

「そりゃあ、じかに触れ合うわけじゃないからね。だから…ちあき、そのぶん頑張って気持ちよくしてくれよ?」

「それはあたしのセリフよ!大場くんも、ね…?」

 おずおずと右手を伸ばし、コンドームを装着した愁一郎のペニスに触れさせてもらう智秋。淡いピンク色のコンドームに包まれたペニスは艶めかしく濡れており、おまけにセックス直前、という意識も働いて一際猥褻に見えてしまう。

 あらためて身体を預けてくる愁一郎の言葉に、智秋も同じく言い返して指先で先端を軽く弾いた。とん、と固い音のする先端はとうの昔に漲り十分だ。

 あらためて緩やかに開いた脚の間に招き入れられると、愁一郎も膝立ちの脚を拡げて高さを調整した。右手で先端をクリトリスに密着させてから、裂け目を押し割るようにしてヌムム…と下げてゆく。わずかに腰を突き出すようにしながら下降すると、縁取りの端に柔らかなくぼみが見つかった。儚げな入り口を探り当てたのである。そこに微かな外圧を与えてやると、もう右手を離しても抜け出ることはなくなった。

「ちあき…」

「うん…」

 そっと身を乗り出し、唇を重ねる愁一郎。左手は智秋の乳房をつかみ、指先で敏感な乳首をつまむ。

 智秋も愁一郎のペニスが逃れないよう、彼に合わせて腰を浮かせてキスに応じた。本能の求めるままに吸い付き、大きな手の平で乳房を包み込まれた興奮を荒い鼻息に変えて狂おしくあえぐ。

「…あの駒沢とセックスできるなんて、わかんないもんだよな。嬉しいよ…。」

「あたしだって…大場くんとこうなれるなんて、憧れてはいたけど思ってなかったな…。ホントに嬉しい…。」

「さっき指、入れてみたけど…駒沢のおまんこ、狭くってプリプリしてて気持ちよさそうだったしな…楽しみだよ!」

「うふふっ、あたしだって大場くんの…おっきいから…。もしかしたら痛いかな?」

「痛かったらいつでも言って。男ってのは痛いこと、ぜんぜんないからな…」

 そうおしゃべりを交わし、唇で吸い付きあう間にもペニスの先端はゆっくり膣内に埋まってゆく。

ぬむ、ぬる…

 ぬかるむ音を立てて、ペニスは膣口を大きくくつろがせていった。心地よい抵抗感が敏感な先端から伝わってくる。

「ふぁ、ふぁっ…あ、おおば、くん…っ!」

「…ゆっくり…ちあきのなか、入ってくよ…?」

 待ち焦がれた瞬間の到来に智秋はだらしない顔で声を上擦らせ、愁一郎の背中を抱いた。愁一郎は智秋の耳元で感触を子細に伝え、感動の嘆息を吐きかける。

ぬる、ぬ、ぷっ…ぬるるっ…ぬ、む、むぬ…

「ふぁ、ふぁあっ…おっきぃ…んあっ、おっきいよお…」

「もう半分ほど入ってるけど…熱いよ、ちあきのおまんこ…さっきよりずうっと熱い…。奥のほう、特にっ…狭くって熱々…。」

むぎ、みゅぎ…にゅむ、ぬむっ…ぬるっ…

 うずいてしおを噴き、収縮しきっていた智秋の花筒をコンドームに覆われたペニスが少しずつ押し広げて満たしてゆく。ヴァギナが異物を締め上げようと生理的に動けば、それが智秋にとっての…そして愁一郎への快感となって息を弾ませた。

 みっちり襞の密生した膣内は汗と愛液でヌルヌルであり、植物性のローションで湿ったコンドームごしのペニスはすこぶる滑らかに挿入されてゆく。こなれた智秋の膣内は固いこともなく、また痛みを覚えることもなく愁一郎を子宮の側に導いていった。

ぬむ、ぬぷっ…ぬ、むっ…。

 そしてペニスはその全長近くを…狭いヴァギナの中に埋没させてしまった。張りつめた先端が智秋の行き止まりを探り当てる。ぐい、ぐい、と腰を突きだしてみてもそれ以上の進行は不可能であることから、恐らく子宮口に到達しているのであろう。

 智秋の瑞々しい膣内は愁一郎のペニスで占拠されてしまった。あらためて愁一郎のサイズが上書きされて、まだ見ぬ感動に本能が身構える。

「…入ったよ…ちあき、ぜんぶ入っちゃった…。」

「うん…うんっ…!おおばくん、入ってるよう…!」

「柔らかいよ…ヒダヒダがおしゃぶりしてくるみたい…。気持ちいい…っ。」

「お、おおばくんのが…あたしの内側をグジグジえぐってるんだよぅ…。」

 愁一郎は智秋に頬摺りするようにしながら快感に眉をしかめ、震える声で感動を露わにした。呼吸なんかはすっかり上擦ってしまっている。

 コンドームごしでありながらも智秋の花筒は狭く、熱くぬめっているのがわかる。背の高い襞のひとつひとつは張りつめた先端やくびれ、ガチガチの幹を丁寧に歓迎するようねちっこくまとわりついてきめ細かに搾り込んできてくれた。深い挿入感、すがりついてくる圧迫感が感覚野に焼き付き、常用性をもたらそうと中枢を冒してくる。

 憧れた智秋との結合は想像以上に感動的なものであった。これでピストン運動を開始したなら、はたしてどれほどの快感が得られるのであろう。

 智秋も智秋で愁一郎に合わせて腰を浮かせ、真っ直ぐに彼を奥まで受け入れていた。

 太く、長く、そして固い異物が腰の中の筒を膨れ上げるように満たしており、わずかに身じろぎしただけでもヴァギナは望む望まないに関わらず繊細に収縮して、愁一郎のたくましい形を教えてくれる。そのいびつな形が襞を細かくえぐるたび、泡立つような暖かな快感が全身に拡がって高揚感を誘った。

 焦れる襞のひとつひとつを心ゆくまでくじってくれるのかと思うと、智秋はたちまち興奮で尻を汗ばませてしまう。たまらない期待で、無意識の内に腰が前後に動いた。

「嬉しいよぅ…ね、動いて…。おおばくん…。」

「オッケー…じゃ、動くよ…。」

ちゅっ…。

 挿入感だけで満足できなくなった智秋が媚びた目でせがむと、愁一郎はしっかとうなづいてから唇を重ねた。智秋に甘えるようにして吸い付いてもらってから彼女の横で両肘をつき、ゆっくりと腰を引いてペニスを戻してゆく。繰り返してしおを噴く智秋のヴァギナはやはり締め付けが強く、ペニスを引き抜くには挿入する以上の力が必要であった。

ぬ、む、るっるる、ぬちゅ…みぎゅ、みきゃ、みゅぎゃ…

 亀頭が抜け出る手前まで引き抜き、また押し込んでゆく。コンドームとヴァギナが擦れる独特の音を立てて深く深く埋没すると、智秋は陶然として愁一郎を見つめてきた。何度も何度も唇をせがみ、キスと結合に酔いしれる。

「はぁ、ちゅちゅっ…はむっ…ふぅ、ふぅ…ちあき、どう…?」

「ちゅぷ、ちゅむっ…ん、んっ…ぷぁ、いいよぉ…すごい、優しいセックスぅ…」

 愁一郎に問いかけられて、すっかりご満悦といった声で答える智秋。欲しがる気持ちを抑えきれないらしく、腰は真上を向くように浮いてしまい、持ち上げた両脚は所在なさげにわたわたしている。時折ピクン、と反応するつま先は足の指がきゅっとグーを作っており、快感の度合いを伝えていた。

 焦れる唇を吸われ、敏感な乳房を揉まれ、うずききったヴァギナをほじくられて感涙が止まらない。大好きな愁一郎にそうされているからこそ、いっそう感じ方は強くなっているようであった。密生した襞がさざめき、膣の奥がどんどん熱くなってゆく。

 もう…ゆっくり、では満足できなくなってしまう。生殺しのように焦れてゆくのみだ。

「お、おおばくん…して、もっと強く…もっと早くうっ!」

「よ、よぉし…じゃあ、いくぞぉ…っ。」

 智秋が半ベソ状態になってねだると、愁一郎もイヤとは言えない。否、むしろそう言ってくれるのを待っていたほどであった。

 コンドームを付けていては、やはりじかに擦れ合うよりも感度は鈍くなってしまう。逆を返せば感じにくいため、射精までの高ぶりも緩慢と言える。

 つまりそのぶん…少々強引なほどに動かないと大きな快感は得られないということなのだ。本能の命じるまま、果敢に動こうと膝をずらして体勢を整える。

もみっ、もみっ、もみっ…みちゅっぎゅ、みっぎゃ、みっぎゃ、みっぎゅ…

 愁一郎は智秋の乳房を強く揉みしだきながら、荒々しく腰を彼女の尻へと打ち付けていった。深々と食い込んだ性器どうしはぬかるむ音をたてながら快感を分かち合い、智秋は新鮮な愛液を精製し、愁一郎はヴェールの中へ逸り水を漏出して行く。

「あっ、あっ!あんっ、ん、んん…!!い、いいっ、いいようっ…!!」

「ちあき…ちあきっ…すごいよ、粘ついて…こ、コンドーム…取れちゃいそ…!」

 淫らに腰を浮かせた正常位で一心不乱に交わる二人。愁一郎は右手でも乳房をつかみ、智秋のあばらの上で上体を支えるようにした。真っ直ぐ伸ばした両腕の先では、大きめで形の良い乳房が柔らかく寄せ上げられ、搾るようにこねられている。

 その間にも腰と尻は乱打を続け、先端はキツツキのように子宮口へのノックを繰り返す。興奮の血がたぎって膨れ上がった先端が花筒の行き止まりを突くたびに智秋は背中をそらせ、髪を振り乱さんばかりにかぶりを振った。大きく開いた口からは鬼気迫るほどの嬌声が止まない。

「あああっ!ぅああぅっ!!いっ、いいのっ!こんな、すごいぃ…!!」

「へへへ、ちあきのおっぱいとおまんこ、独り占め…!えい、えいっ!!」

「ふうんっ!うんんっ!!き、気持ちいいよぉ…すごいいいよおっ!もっとして、もっとしてよおっ!!おちんちん、奥の奥に、なんべんもしてえっ!!」

「もちろんだよ…まだまだこれから…!!」

 もはや別人の色っぽさを呈し、はしたなく哀願する智秋。温泉にでも入ってきたかのように身体中をほんのりと火照らせ、のぼせたような表情になっている。

 実際身体の奥…特に腰の中はとろけそうなほどに熱かった。愁一郎の太いペニスが一往復するたびにぬかるむ襞が蹂躙され、その刺激と摩擦が今までに感じたこともないような愉悦をもたらしてくれる。

 持て余しそうなほどの快感であったが、智秋の女性としての本能は意識に反し、愁一郎を逃すまいと括約筋を駆使して締め上げていった。そうして締め上げれば締め上げるほど花筒は狭まり、内側をどんどん敏感にしてゆく。クリトリスは早くもその役目を没収されてしまったようで、すっかり萎縮しきっていた。

 また、愁一郎の両手の中で柔軟に形を変えている乳房もすっかり過敏になっている。下からすくい上げるようにして握られ、左右を摺り合わせるように揉まれるとそれだけで呼吸が困難になるほど感じてしまう。

 乳房の頂点にある乳首も性感が募ってしこっており、指が触れるだけでもせつない電流が胸いっぱいに走った。ころん、ころん、と転がされたりしようものなら、それこそ声を限りに泣き叫ばずにはいられない。

「いやっ!いやあっ!!お、おっぱい…おっぱい感じるうっ!!」

「ね、ちあき…おっぱいとおまんこ、どっちが感じるの?」

「ど、どっちもおっ…どっちもいいのおっ!!おまんこも感じるのおっ!!」

 愁一郎の淫らな質問にも、智秋は声を衝動にまかせて淫らに答える。きゅっと目を閉じて汗ばんだ身体をヒクンヒクン痙攣させていることから、意識はもはや快感だけをトレースすることに決めたのだろう。智秋は恥じらいや戸惑いを排除し、感情を剥き出しにしてよがるのであった。

 柔らかな乳房を思う様に揉みこね、その感触に浸っていた愁一郎であったが…ぽよん、と乳房を解放すると撫でるようにして脇腹を下り、腰の下に両手を忍ばせる。

 汗ばんだ尻の柔肌に指を食い込ませてつかむと、そのまますくい上げるようにして持ち上げた。智秋は一瞬驚いたように両脚をバタバタさせたが、状況を把握するとブリッジするように両脚を力無く下ろす。今の智秋は肩で上体を支え、膝立ちの愁一郎にブリッジを手伝ってもらっているような体勢になってしまう。

「おおば…くん…?」

「じゃあちあきのおまんこに…集中、攻撃っ…!」

「ふぁ、ふぁうっ!!や、深…ふかいよぉ…!は、激しいって…こんなぁ…!!」

みゅくっ、ぬぶっ、みゃくっ、ぬっぶ、ぬぶんっ…

 乾いた唇を舌で潤してから、愁一郎は抱え上げた智秋の腰に自らの腰を荒々しく突き込んでいった。ぬかるむ膣内へと感じたいままにペニスを差し入れる。真っ直ぐだけでなく、右に左に角度を付けて膣の奥を激しく攻めた。

 滑らかに隆起した恥丘の割れ目、その奥に自らの性器が埋没して出たり入ったりしている光景が丸見えになるのだが…その様子はなんとも淫猥であり、大切な友人に対してとんでもない不埒を働いているように思えてしまう。しかしその意識は躊躇いを生ずるものでは決してなく、逆に愁一郎の嗜虐心に油を注いだように彼を燃えさせた。

べた、べた、べたっ…たぽん、たぽん、たぽんっ…

 間断なく腰が打ち合い、性毛が触れ合っているうちに智秋の愛液は愁一郎のふぐりを濡らし、太ももをもべちょべちょにしてしまう。智秋とて会陰から肛門を通り、尻の頂点からぽたぽた滴らせているほどだ。まるで失禁混じりのように濡れ様は半端ではない。

 すっかり手の後がついた乳房も、愁一郎が突いては引いてするたびに胸の上で音立てて揺さぶられている。左右対称に円を描くように動くため、触れられずとも智秋は十分な性感を得ることができた。

「あ、うんっ…はふぅ、ふうっ!ふぁ、おおば、くぅん…!」

「ちあき…ちあきのおまんこ、みっちり締まってくるよぉ…すっげえ気持ちいいっ…!」

「あ、たしもぉ…!こんな格好、はっ、はじめてだから…奥、ね、奥…もっとこつんこつんしてぇ…!おく、すごい感じるのぉ…!!」

「いいよ…じゃ、いろいろやってみるね…」

 智秋は子宮口をノックされるのがお気に入りらしい。つま先と肩でブリッジするような体勢を強いられたまま、陶然とした面持ちで愁一郎を見上げておねだりする。愁一郎は智秋の腰をつかみなおすよう、もみもみと尻の柔らかみを確かめてからゆっくり腰を引いていった。智秋が不思議そうに両目をしばたかせるのを確認してからいっぺんに深奥まで貫き、子宮口に衝突させる。

「ひぐうっ…!!」

「どう?けっこうキクだろぉ?」

ぬるる、る…づぷんっ、みゅるる、る…のぷんっ、みゃるるる…

「はくっ!!ふぅ、ふぅ…ふううっ!!ひゃ、はぁ…は、あはあんっ!!」

「へへへ、ちあき…メチャクチャ感じてるみたいだね…。」

 ラテックスの表面と群生する襞をぬかるませながら抜け出る寸前まで腰を引き、次の瞬間には強引なほどに全長を埋没させる。動きは緩慢であるが、ストロークの大きいピストン運動である。少しずつタイミングをずらしながら深奥を突くたび、智秋はおとがいをそらせてつらそうにうめく。それが苦痛によるものでないことは、彼女の胸の上でふよふよ揺れている乳房でわかるだろう。呼吸は確実に早く、深くなっている。

 愁一郎とてデリケートな先端が長く擦れるグラインドに、幹全体の漲りを強くしている。いかにコンドームごしであるとはいえ、狭くぬかるむヴァギナで大きくしごかれてはいやがおうにも高ぶってしまうというものだ。まだゆっくり確実に動いているから高ぶりも急峻ではないが、先程までの速さでこれだけのストロークを試みたら数分と持たずに爆ぜてしまうのではないだろうか。

 智秋のヴァギナが素晴らしいことも高ぶりの原因であるが、智秋のよがり鳴く声、しぐさ、匂い、音…それらもまた愁一郎の男としての本能をしたたかに鼓舞して興奮を喚起していた。女性の色気もまた十人十色であり、身も心も解放しきった智秋は最愛のみさきとはまた違う魅力をもって愁一郎を酔わせてくる。

 もっともっと艶めかしい智秋が見たい…。

 そう望んでペニスを突き込んでは、智秋を狂おしく鳴かせる。また引き出しては突き込んで鳴かせ…突き込んでは鳴かせ…。

 智秋はとうとう、ぜはぜはと肩で息をするほどに登り詰めてしまった。口許はだらしなく開いたままで、両目を感涙に潤みきらせてまだ見ぬ大きなエクスタシーに怯えている。

「智秋、少し休もっか?」

「うん…わぁ、なんか頭がぼおっとしてるよぅ…」

「失神しそうなんじゃないかな?ほら、おいで…」

「あん…ん…お座り?」

「そうそう…しばらく智秋もオレも休憩…。」

 智秋の様子に不安を覚えた愁一郎は、とすん、と正座するように腰を落とした。智秋を無理な体勢にしないようすぐさま脚を開き、前方へと投げ出して彼女の腰を少しでも楽にさせる。

 まだ意識の残っている智秋に腕を差し出して引っ張り上げると、彼女は照れくさそうに…しかし嬉しそうに愁一郎の首へと両腕をまわしてすがりついてきた。二人は繋がったまま、体育座りで向かい合っている格好になる。

 そのまま汗ばんだ胸を合わせて抱き合い、懐かしむように微笑んで唇を重ねる。体勢の都合上密着するように抱き締め合うことはできないが、唇の感触を楽しむぶんにはなんの支障もない。荒い息に覆い被せるよう、じゃれあうように小さなキスを繰り返した。

ちゅっ…ちゅ、ちゅぷ…ちゅみ、ちゅっ…ふぅ、ふぅ…ちょぷ…

 二人とも繋がったままということもあってか、唇がやけに焦れていた。そのため角度を付けながら吸い付き合うのがなんとも心地よく、一方で鼓動がより強く刻まれてゆく。

「ちあき…かわいいよ…。おでこにもキスさせて…?」

「あふぅん…あ、おでこ…あ、はぁ…ん、んんっ…」

ちゅぱっ、ちゅぱっ…ちゅ、ちゅっ…

 左手で前髪を退け、舌から先に智秋の額へと口づける。小刻みに吸い付くたび、智秋はきゅっと身をこわばらせて快感に耐えた。額へ口づけられるのに合わせてヴァギナもきゅんきゅん締まってくる。性感帯どうしがリンクしているようだ。

 ひとしきり額にキスしてから、愁一郎はゆっくりと顔を離していった。親指で額から唾液を拭い、智秋の素顔を見つめて愛しげに微笑む。

 きれいな生え際を見せる広めの額。

 甘えかかるように細められた瞳。

 めくるめく恍惚に濡れたまつげ。

 小さく汗の浮いたかわいらしい鼻。

 湯上がり美人然として火照った頬。

 カサつきひとつない、ふっくらした唇。

 智秋の人なつっこさは二十五になった今でも変わらないが、そのうえに成長の証である色っぽさがしっかりと備わっている。激しく睦み合って陶酔した表情にもなんともいえない愛くるしさが漂っていて、愁一郎を思春期のように魅惑してきた。

 だからこそ浮かんだ微笑なのだ。愁一郎が微笑んだのは、なにも愛想を振りまくためではない。かわいらしい智秋を目の当たりにして胸の中が愛しさに満ち、微笑ましくなってしまったのだ。

 智秋も同様、愁一郎の笑顔につられるようにして可憐に微笑む。

 サッカー部の頃よりは長めだが、それでも清潔感の漂う髪。

 感情を隠すのが下手なぶん、ひたむきな光を宿す両目。

 鋭く通った鼻。

 柔らかに笑みをかたどっている頬。

 自分よりも甘えんぼで寂しがりやに思える唇。

 精悍でヤンチャな印象は年齢を重ね、身を固めたことで薄らいだものの…そのぶん笑顔には大人の貫禄とでもいうべきか、暖かな奥行きが感じられるようになっている。

 穏やかに晴れ渡る大洋のような優しさと包容力は、今の智秋がもっとも欲しているものであった。わずかに苦笑しながら視線を落としてつぶやく。

「あたし…ダメな女だよね。」

「…どうして?」

「…みさきが大場くんと結婚したでしょ?それから…あたしも後れをとらないようにって必死になって素敵な彼を捜したんだ。同僚誘って街にもでかけた。コンパなんかも積極的に企画したんだよ?で、そのうち…」

「例の男?」

 押し黙った智秋に代わって愁一郎が問うと、彼女はコクン、とうなづいた。愁一郎は智秋の腰に両手を添えたまま、促すでもなく彼女から話しだすのを待つ。

「…焦ってたんだと思う。アイツとは話も趣味も合ってさ、結構仲良くなって…ヴァージンだってあげちゃった。でも…こう言うと男を利用してるって思われちゃうかもしんないけど…アイツは大場くんみたいに優しくしてくんなかった。付き合ってて楽しくはあったけど…学生時代に大場くんから感じたほどの魅力はなかったんだ。」

「…」

 早口に独白する智秋に、愁一郎はあえて言葉をかけない。言いたいことがあるのなら取りあえずあらいざらい言ってしまった方が心身のためでもあるからだ。ましてや自分が持ち上げられている内容であるならなおのこと、余計な相槌は無用であろう。

「人恋しくなるときってあるでしょ…あたし、そのたびにアイツにすがった。あたしに付き合ってくれてるんだって意識、してたしね。だから寂しいって気持ち、必死にアピールしたんだよ?だけどアイツはいつも求めるだけ求めて…あたしにはなんにもくれなかった。慰めてくれてるって思えなかった。挙げ句にふられちゃって…もう泣いたよ、一晩中泣いた。せめてもの拠り所まで無くなっちゃったんだもん…。」

「智秋…」

「まぁね…ヴァージンあげた後辺りから…感づいてはいたんだ。身体目当てだったんだって。それでも頼りにしたかった。こんなあたしを抱いてくれてるんだからって思って…。でも、思い違いだったのよね。」

 一通り話し終わったのか、はぁ…と溜息を吐いて智秋は頭ごとうつむいた。小さく鼻をすすり、滑らかな撫で肩が微震を始める。寂しさがぶり返してきたのだろう。

 いたたまれなくなった愁一郎は何も言わず、智秋の背中を抱き寄せた。顔を見せるまいというふうに智秋も首にすがりついてくる。

「智秋…。ふられた…というか、そいつとは別れて正解だったと思うよ。」

「…」

 愁一郎の参考意見の前に、今度は智秋が黙り込む。黙り込むとはいえ、微かなすすり泣きはもはや隠し通せてもいない。

「智秋はかわいいし、魅力的な女の子だよ。お世辞なんかじゃない、ホントにそう思う。だから男なんて選り取りみどりだよ。焦る事なんてなにもない、時間をかけて本当に好きな男を見つければいい。もちろんオレなんかより素敵なヤツはごまんといるさ。」

「うん…。」

「みさきがオレと結婚したから焦った、って言ったけど…どっちかというとオレは、みさきが勝負かけるの早すぎたんじゃないか?って思ってるんだ。ま、まぁ…とにかくオレはさ、オレが大好きな智秋には幸せになってほしいんだよ。結果として、ね。結果までの過程や要した時間なんかどうだっていい。最終的に智秋が笑顔でいてくれれば…。」

「うんっ…。」

 子供をあやすよう静かに背中を叩きながら、愁一郎は一言一句を丁寧に吹き込むようにして智秋に語りかける。首にすがりついたままの智秋はその言葉の意味を噛み締めているのか、しっかりした口調でうなづくのみだ。

「…せめて今夜のオレでよければ基準にしてさ、ずっといいヤツを探し出しなって。ほらほら、もう前の男のことなんか忘れるっ!今はオレが抱いてるんだぞ?オレが智秋と繋がってんだぞ?」

「へへへ…うんっ…そうだね、グチっちゃってごめんっ!」

 ぽんぽんっと背中を強めに叩いて智秋を励ますようにしてやると、おどけた口調に気分も和らいだのか智秋は威勢良く身体を離し、涙でびちょびちょの顔を晒した。

 涙で濡れているとはいえ、その顔はずっと晴れ晴れした表情をしていた。それは濃い雨雲が遠のいた後に見える太陽のように爽やかな顔…。むしろ涙を流していることに誇りを持っているかのように自信に満ちた顔…。

 しきりにまぶたをしばたかせてはいるものの、もはや心に迷いは無いようであった。思わず愁一郎まで感動に涙腺を震わせてしまう。

「泣いてるけど…とびきり素敵な顔してるよ、智秋…。」

「…大場くんが大好きだから…なんだか泣き顔見せても恥ずかしくないの…。それに…今の涙は嬉し涙だもん、大場くんに見てもらいたいの…!」

「智秋…よかった。好きだよ…」

「ん…おおばくん…」

ちゅっ…。

 愁一郎がわずかに小首を傾げるだけで、それに応じて智秋も小首を傾げて目を伏せる。愁一郎も合わせて目を閉じるのと同時に、二つの唇は水っぽい音を立てて密着した。飽きもせずに繰り返すうち、もはや阿吽のタイミングでキスができるようになっている。

 ちゅうちゅう吸い付いて…ちゅぱっ、と唇を鳴らして離す。その音と感触がどうにも心地よく、瞳を潤ませた二人は互いの内に情欲の火を灯し直そうと積極的に唇を差し出した。

ちゅぢゅっ…んく、んく…ちゅ、む…ぷぁ、ちゅ、くちゅ…

 唾液が溢れては飲み合い、唇を深く塞いでは密封したまま強引に引き離す。座位で繋がったままついばみあううち、愁一郎は漲りを…智秋は締まりを増して性の悦びへの貪欲さを取り戻していった。頬が火照り、鼻息も荒くなってくる。

「ちあきのくちびる…ふっくらしてて気持ちいい…」

「おおばくんだって…キス、すごい上手だから感じちゃう…」

ちゅちゅう…ちゅぱっ…ちゅ、ぢゅぢゅっ…ちゅ、ぱっ…

 時間を忘れてキスに浸る二人。吸い付き具合も弾力も…そして相手すらもそれぞれの理想であったために飽きることを知らない。きっとこのままでは一晩中でもキスを楽しんでいることだろう。否、この二人だからこそ…キスというスキンシップだけで胸を満たすことができるのだ。

 繰り返して唇を寄せるたび、必然的に上体が、そして下肢がずれ動く。もっともっと深いキスを望もうとすれば、深々と食い込んだ性器はぬめる音を立てて擦れてしまう。

 先に焦れったくなったのは智秋であった。愁一郎のおねだりに待ったをかけて、せつなげに呼吸を整える。座位に至るまでの猛烈なまぐわいが恋しくなってきたのだ。

「おおばくん…そろそろ、続き…。」

「続き?続きってなんだよ?」

「…セックスぅ…。ね、そろそろ動こうよぉ…。」

 愁一郎のいじわるをすねるように、鼻にかかった声を漏らすと智秋は彼の首にまわしていた右手を離し、おずおずと結合部に指を忍ばせた。

 性毛を押し分け、親指と人差し指で自らに埋没している愁一郎の固い幹を摘む。そのままヴァギナの中を攪拌するよう、ぐにぐにと動かしたりした。

「んっ…ん…やっぱり足りないよぉ、続き、ねぇ、続きぃ…!」

「じゃあ…智秋、膝曲げてっ。」

「え、こうでいいの…きゃ、きゃっ…!?」

 体育座りの智秋に正座崩れの座り方になるよう膝を曲げさせると、愁一郎は両手で彼女の背中を引き寄せ、そのまま背後に倒れ込んだ。何の予告もない行動でささやかな悲鳴をあげた智秋は仰向けになった愁一郎の胸にのしかかってしまい、もにゅ、と自らの乳房の上で弾む。

「オレさ、智秋から前の男を忘れさせたい…」

「う、うん…。」

 突然真面目な口調で語り始めた愁一郎に、キョトンとしてうなづく智秋。普段の愁一郎に似合わず表情を引き締めていることからも、なにか大切なことを言おうとしているような予感がする。

「でもね…智秋の方からも積極的に忘れようとする努力も必要だと思うんだ。」

「そ、そりゃあ…まぁ…って、ちょ、なに?」

 神妙な面持ちで相槌を打った矢先、愁一郎の大きな手の平が汗ばんだ尻を撫で回してきたので智秋はくすぐったくて身をよじり、真意を探ろうと見つめ直した。すると先程の真剣な表情はどこへやら、いたずらっぽいほどのニコニコ顔でこちらを見上げているではないか。

「おおば、くん…?」

「ちあきっ。騎乗位…智秋から一生懸命動いて、前の男を忘れちゃおう?」

 

 

 

つづく。

 

 

 

■→次回へ

 

 

 (update 99/04/01)