山本 :『MJ無線と実験』の話なんですが、ああいう記事を毎回毎回書くとなると、なかなかご 苦労もあると思うんですが…あれはやはりアンプができてからこれを発表しようと決めて、それからどう序章、終章を書こうかと考えるんですか。
佐久間:ううん、まずね、序章と終章を作るの。
山本 :はあ、それからアンプですか?
佐久間:あの、アンプはまあできて、それを記事にしようとする場合には、一番最 初に序章と終章を書くの。だからあの序章と終章に2週間くらいかかることもあるわけ。それでアンプの記事は、ちょっと夜を徹してやったりすれば3日ぐらいで内容は書ける。だから序章と終章できないとアンプの記事もできない。
山本 :本当に文学的なんですね。
佐久間:そう、自分の納得する序章と終章ができると、じゃあまん中へんのとこを ちょっとお茶を濁して…
山本 :序章と終章が書けなかったという苦しみもあるでしょう?
佐久間:ありますよ。一ヶ月くらい。
山本 :そういう時はアンプがもうできているのに序章と終章が書けないから…?
佐久間:待っている。たいがいね、ハンバーグを焼いているときなんかに浮かぶの。
山本 :ハンバーグ焼いているときとか、釣りのこませをまいているときとか?
佐久間:あのねやっぱり、なんかああいうものって構えてさ、机の上で鉛筆持って 「さぁ」って、できるもんじゃないんだよ。まあ、あと子供が何か不祥事起こしたとかね。(笑)わが家におけるちょっと小さな波紋があったりすると書けるわけ。こういうあんまり外に出られない商売でしょ、女房と二人でやってるから、常にこの店の中に閉じ込もって書いたり作ったりしてるから外から吸収してくるものってないんだよね。例えば外に行って何か見つけてくるとかってういうのないんだよ。つねに自分でこの小っちゃな世界の中から何かを見つけなければならないんだ。
山本 :前に佐久間さんが、ここでなきゃ俺の音作りはできないとおっしゃってたんですが、まぁ、館山に住んでる人に悪いですけど、ここ日本から隔離されてますね。ここにいたってことがやはり大きなことですね。
佐久間:そりゃそうですよ。やっぱりここでのんびり暮らせたから。だから一番思 うのは、やはり平和だったからだよ日本が。僕なんかが育つ頃に。だから今度の1月に出る単行本の終章にもそれをちょっと書いたんだけど、日本が僕が育つ頃に平和だったから、好きな音作りと釣りに人生の半ばを費やし得たと。それが実感だね。だからねぇ、やっぱり色々キナ臭い話もいっぱいあるけど、僕が一番願うのは日本の今、この平和っていうのは絶対に守らなきゃいけないと思う。
7/10