04/01/31(土) 国会議員の経歴詐称、格闘技界の身長詐称、芸能界の年齢詐称 04/01/30(金) 貴腐/夜食 04/01/21(水) ブルー・ドラゴン・スープレックス 04/01/18(日) 赤松麟作展/妖人白山伯 04/01/16(金) 芥川賞美少女vs直木賞美男美女 04/01/10(土) 私的年間ベスト10【2003】 04/01/05(月) 猿の惑星 |
04/01/04(日) 高畑華宵展 04/01/03(土) 博物館に初もうで 03/12/23(火) 高畑華宵と歌川国貞 03/12/20(土) ロボコンへの道 03/12/14(日) ダイヤモンドは目に優しくない 03/12/10(水) 小津安二郎の『晩春』 03/12/09(火) キリストの生涯は結構エロかった? |
2004/01/31(土)[時]国会議員の経歴詐称、格闘技界の身長詐称、芸能界の年齢詐称
学歴詐称疑惑で民主党を離党した古賀潤一郎衆院議員(45)への対応をめぐり、菅直人代表ら執行部が窮地に立たされている。古賀氏の離党で早期収拾を図りたい意向の菅氏らに対し、党内から「辞職させるべきだ」と反発する声が噴出しているのだ。こうしたなか、同党は留学経験を発表している他党議員について、その真偽を調査する作業を開始。学歴をめぐる掟(おきて)破りの撃ち合いが始まりそうだ。
常識では経歴詐称の議員がそうそういるとは思えないが、永田町有力筋はこう打ち明ける。
「古賀氏の疑惑が表面化した際、某政党の中で大々的に民主党議員の学歴を徹底調査しようとする動きが出た。ところが、自分の所にも危ない議員がいるかもしれないと、結局、立ち消えになったんです」
これはあれだ、K1やプロレスで身長をサバよみするのと同じだね。ボブ・サップが2m175kgって、そんなにあるわけない。NFLの公式記録が193cmだというのは有名な話。これはボブ・サップだけが悪いのではなく、他のK1選手のプロフィルがみんな水増し身長なので「相対的に」ボブ・サップも「拡大」する必要があったのだろう。
逆に大相撲では、身長体重とも少なめにいう風潮があるらしく(入門試験時のサバ読みは別)、横綱双羽黒は公称199cmだったが、プロレスラー北尾になった途端203cmになっていた。(靴底の厚み分?)
芸能人も身長のサバを読む。スマップ中居メンバーはTVで「167cm、一時は173cmって嘘ついてました」と告白?していた。まあ、女性タレントの年齢サバ読みにくらべればかわいいものかもしれない。磯野貴理子は明石屋さんまに「妹を紹介してくれたが、妹さんの方が歳が上だった」とばらされていた。
業界によっては年齢は若い方が価値があるとは限らない。手塚治虫先生は編集者になめられないためなのか4歳くらい上にサバをよんでいた。訃報がでたときにはずいぶん若いのに驚いたし、早逝をいたむ気持ちもひとしおだった。
古賀議員の詐称問題からすると、政治家にとって重要なのは年齢や身長より学歴ということなのだろう。しかし、投票するときこの人は高卒だからこっちのペパーなんとか大卒の人にいれようなんて考えるものだろうか。ペパーダイン大卒と詐称することによって得票はどのくらい変わったのだろうか。調査はできないだろうが、おおいに興味はある。これからは政治家には国際感覚が大事らしいからペパーなんとか大卒なら英語できそうだし、とか真面目に考えた人はいそうである。そう考えるとやはり古賀議員は辞めるべきだろうな。
ライバルのエロ…じゃなかった山拓先生は早稲田大卒なんだね。それより柔道六段、囲碁五段てのがすごい。愛人とばかり乱取りしてないで、柔道好きのロシアのブーチン大統領が来日した時お相手してあげればよかったのに。ブーチンも山拓より井上康生あたりと稽古したいだろうけど。
なんにしても、くだらない抗争はいいかげんにして議員先生には本来の「国政」をしてほしいものである。民間企業で幹部が仕事そっちのけで社内抗争にあけくれていたらどうなるかは自明のことだ。
2004/01/30(金)[本]貴腐/夜食
フランス革命の激動のなか、頽廃の極みにあった貴族社会でくりひろげられる性の宴。狂乱の果てに辿りついた真実の愛とは、人生とは。夫がいながら生娘のままでいる純真な令夫人を、官能の罠へ誘い込もうと企む侯爵夫人を描いた「貴腐」。性にめざめた老修道女の歓びと、快楽の奈落に沈む若き未亡人を描いた「夜食(スペ)」を収める。
一時期、英国王室の恋愛騒動はマスコミに格好の話題を提供した。ダイアナ妃が夫君チャールズ皇太子の愛人の存在にきれたということのようだが、どうもこれは、貴族としてはダイアナ妃の方が心得違いのようだ。
表題作『貴腐』の女主人公オディールも侯爵家に嫁に行く。歳のはなれた夫は愛人べったりで彼女は孤閨の淋しさを親族や両親に訴える。しかし、誰も相手にしてくれない。「妻が夫の恋愛に嫉妬するとはなんてはしたない」「あなたも恋をすればよいのです。そうすれば家庭は円満です」などと言われてしまう。かくしてヒロインは次々と恋をし男を誘惑し夫の愛人とも平然と談笑する、いっぱしの「大人の貴婦人」に成長する。
そんなオディールの前に同い年の美貌の社交界一年生が現われる。彼女は平民出身で既婚だが処女ではないかと噂される純粋無垢な女性だ。そんな彼女にオディールは悪戯を思いつく。
美女が美女を罠にはめていく手際の緻密な描写が面白い。さすがに著者はストーリーテラーである。あとのどんでん返しも予想のうちだが、さらにラストには皮肉なしかけがある。
*
併載の「夜食」にも二人の貴族階級の女性が登場する。こちらは14歳の淫蕩な未亡人と56歳の修道女というえぐい組み合わせである。物語も描写も表題作よりさらに過激でエロティックだ。革命や聖職者への皮肉な視線も心地よい。物語の聞き手があのサド侯爵だというのも藤本ひとみの読者には嬉しい。革命に忠誠を誓って告発審査委員なんかをやっているちゃっかりしたサドという珍しい役柄だ。そしてサド侯爵、この小説では結構いい人のキャラなのである。
題名の「夜食」は人生を一日にたとえたときの夜食という意味。カニバルな話ではないのでご安心を。
◇
ブルガーコフ『悪魔物語・運命の卵』(水野忠夫訳/岩波文庫)、シェークスピア『アントニーとクレオパトラ』(福田恆存訳/新潮文庫)読了。
マルキ・ド・サド『ジェローム神父』(澁澤龍彦:訳/会田誠:絵/平凡社)、澁澤龍彦『菊燈台』(山口晃:絵/平凡社)購入。
2004/01/21(水)[闘]ブルー・ドラゴン・スープレックス
テレビ朝日がやめた大相撲ダイジェストをNHKが再開してくれたおかげで、また平日も相撲が見られるようになった。
それにしても昨日の朝青龍の吊落としはすごかった。バックドロップというかスープレックス崩れといおうか。モンゴル相撲にもある技らしいが、相撲の格闘技らしい原初の姿をかいまみせてくれたような気がした。
昔、貴ノ浪が貴乃花を破ったように、河津掛けであの朝青龍スペシャルを返せるのではないかとVTRで確認してみたが、どうも無理のようだ。さすがに朝青龍の足は相手に足をからめられるような位置には置いていない。素人考えのプロレス技(昔、力道山がルー・テーズのバックドロップを河津掛けで防いだように)は通用しないようだ。
あの一番は十分に金を払う価値がある。少々素行が悪かろうと(無邪気なだけでたいして悪いとは思えないが)あれだけ強けりゃ文句はない。ナベツネや内館牧子が見当違いの文句をつけてるが、猪木ボンバイエや石井館長にかっさらわれても知らないぞ。
朝青龍の戦慄的勝ち方の影に隠れてしまったけど、魁皇vs栃乃洋戦も豪快だった。決め手の上手投げが派手だったが、それより立会いのかちあげが強烈。肘から上腕部がまともに栃乃洋の顔面に当たって、アゴが跳ね上がっていた。おそらくあれで栃乃洋の意識がとんで荷物のように投げられてしまったのではなかろうか。
貴乃花が引退してちょっと気が抜けてしまったが、やっと面白くなってきた。若手でも垣添のような活きのいいのが出てきた。本日の朝青龍の相手はその垣添だ。こいつは面白そう。今場所の朝青龍が負けるとすれば意外とこういう相手かもしれない。
2004/01/18(日)[美]赤松麟作展/妖人白山伯
東京藝術大学美術館『赤松麟作とその周辺』。
明治という時代を思いっきり感じさせる名作「夜汽車」他を堪能しましたが、それにもましてよかったのが、晩年の自伝絵巻「やっとこどっこい」。
生い立ちやら、画家となってからの愉快なエピソードなどを洒脱な水彩でさらりと描いた挿画と、読みやすい達筆で書かれた絵巻物。画家は五尺(150cm)そこそこの背丈だったらしく、教師になって教壇に上がっても生徒に見下げられてる図などを屈託なく描いていて、なかなか見ていて楽しい。こういうのをさらりと描いて人生を終えられたら、最高だね。
同工の作品で漱石の「吾輩は猫である」や「虞美人草」を絵巻物にしたものが展示されていたが、どれも素晴らしい。
入館料300円と安価だし空いているし、上野近辺に来ることがあればおすすめ。
◇
幕末から明治維新にかけて日本とフランスを手玉にとった実在の怪人白山(モンブラン)伯。仏文学の泰斗鹿島茂がその妖人ぶりを活写、知的興奮尽きない歴史長編小説。
登場する歴史上の有名人、大久保利通、伊藤博文、井上馨、五大友厚、後藤象二郎、原敬、黒田清輝、高橋是清、ロートレック、ボードレール、ヴェルレーヌ、パスツール。サラ・ベルナール、アナトール・フランス。「妖人」
該博な知識に裏打ちされた幕末裏面史は抜群に面白い。前述したような多彩な(実在の)登場人物。スーパー娼婦「ふらんすお政」の活躍でエロチシズムも十分、留学少年の猟奇殺人事件があってミステリ要素もある。(意外な犯人は歴史上の有名人)
しかし、残念ながらキャラが立ってこない。モンブラン伯をこれほど奇矯に描いていても、その人間性(悪魔性でもいいけど)が迫ってこないのだよなあ。文章はうまいのだが、ラスト近くで説明的会話が多すぎたりと構成に難があるので、ストーリー展開がわくわくしない。小説家というより学者のてすさび的印象がつきまとう。
明治物の名手、山田風太郎が書いたら十倍は面白かっただろうと思ってしまうのは、山風ファンの不幸なのかもしれないが、しかたがない。
◇
ブルガーコフ『悪魔物語・運命の卵』(水野忠夫訳/岩波文庫)、シェークスピア『アントニーとクレオパトラ』(福田恆存訳/新潮文庫)、京極夏彦『塗仏の宴―宴の支度』(講談社文庫)購入。
2004/01/16(金)[本]芥川賞美少女vs直木賞美男美女
出版不況救う“女神”は19歳と20歳
白のカーディガンにグレーのスカートという、お嬢様女子大生風の姿で会見場に現れた綿矢さんは、関西交じりのアクセントそのままに、素直に喜びを語った。
今回の受賞作「蹴りたい背中」は2作目。すでに13万部が売れた。クラスからはみ出た主人公の女子高生と、そのクラスメートの「モデルおたく」の男子高校生との微妙な関係を描いたもの。
一方、金原さんの受賞作「蛇にピアス」は、主人公の19歳フリーター少女ルイが、舌にピアスを入れるなど、身体改造で生の実感を得ようとする話。
綿矢さんとは対照的に、肩口の大きく開いた黒のニットに、フレアタイプの超ミニスカート姿。ピアスは両耳に計6個。さらにグレーのカラーコンタクトといういでたちで登場。
やはり、こういう取り上げ方されちゃうよなあ。そりゃあ、マスコミは大喜びだろう。もともと芥川賞は「新星」を登場させて脚光を浴びさせるという営業的性格もあるのだから、人選は妥当だといえるでしょう。
しかし、中堅作家対象の直木賞の方も、今回は江國香織さんと京極夏彦さんという、なかなかヴィジュアル的にも作風の華やかさでもおいしい人たちなのに、口惜しや、完全に割を食いましたな。
そのうえ江國香織さんの受賞作『号泣する準備はできていた』は、NHKアナウンサーに「ごううするじゅんび」などと読まれて、踏んだり蹴ったり。早速ニュースステーションで「NHKのアナウンサーはごうきゅうが読めないんですね」とつっこまれていた。さすが久米っち((c)宇宙人新庄)、NHKには容赦ない。
そういえば、受賞作4冊とも読んでないなあ。読む予定なのも『後巷説百物語』だけである。ごたくを並べる資格はないって? ごもっとも。
◇
スタニスワフ・レム 『完全な真空』(沼野充義訳/国書刊行会)、ゲルト・ギーゲレンツァー『数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活』(吉田利子訳/早川書房)購入。
2004/01/10(土)[本]私的年間ベスト10【2003】
後ればせながら昨年読了本のベスト10です。まだ、半分もレビューを書いてないので恥ずかしい限りですが。
銃・病原菌・鉄(上下) ジャレッド・ダイアモンド
チンパンジーの心 松沢哲郎
ダークライン ジョー・R・ランズディール
ボーン・コレクター ジェフリー・ディーヴァー
からだを読む 養老孟司
死神 篠田節子
ぼんくら 宮部みゆき
コンクリート・アイランド J・G・バラード
第三の時効 横山秀夫
きみの血を シオドア・スタージョン
順番は全く関係ありません。昨年、一冊もなかったノンフィクションが3冊入っているのが特徴と言えば特徴。以下は惜しくも表彰台を逃した6冊。
東海道四谷怪談 鶴屋南北
あかんべえ 宮部みゆき
<癒し>のナショナリズム 小熊英二
エンガッツィオ司令塔 筒井康隆
スーパー・カンヌ バラード
エドウィン・マルハウス スティーブン・ミルハウザー
がんばってレビュー書かねば。書くぞ。書きます。
2004/01/05(月)[映]猿の惑星
昨日は干支にちなんでということか、『猿の惑星』をTVでやっていた。ティム・バートンのではなく、元祖チャールトン・ヘストン主演の方だ。リアルタイムではないが昔一回(TVで)見たことがある。今回はデジタルリマスター版とやらで映像は一応綺麗にはなっているようだけど、地上派放送なのでびっくりするほどではない。できれば、CMなしの衛星放送で見たかった。
おどろいたのは、猿の特殊メークがほぼ完璧だったこと。十分に個性や表情が出ているし、猿らしいリアルさではリメーク版が上だが、ユーモラスな感じや雌猿の素朴なかわいさなどはこちらの方がよかった。特殊メーク以外のSFXや美術はもちろんリメーク版が上だが。
脚本も、有名な衝撃のラストはもちろん登場する猿たちの動機付け、心理描写なども旧版の方に軍配があがる。やはりこの第一作は名作であるね。
とはいうものの、チャールトン・ヘストンの主人公が、猿たちが「英語」を話してることになんの疑問も持たないのは、やはり変だ。この一点だけでしらけてしまうことは確かである。それとも公開当時のアメリカ人は英語が宇宙共通語だとでも思っていて違和感は感じなかったのだろうか。
原作のピエール・ブールはイギリス人だが、日本軍の捕虜になった経験が「猿の惑星」の発想の元になったそうだ。「なんで人間である我輩がこんなイエローモンキーに捕虜にされているのだ」と不条理感に悩まされていたのだろう。ご愁傷様。
2004/01/04(日)[美]高畑華宵展
本日は二つ前で書いた『高畠華宵展』に行ってまいりました。さすがに弥生美術館のメインだけに充実した内容。混んでいるというほどではないが、結構人は入っていた。若い女性が目立つが、お年を召した方が連れ立って、懐かしそうにうんちくを傾けているのも微笑ましい。
ここをお読みの方はご存じだろうが、弥生美術館の展示はいささかマニアックである。「江戸川乱歩の少年探偵団展」や「伊藤彦造展」は私の、「内藤ルネ展」や「田村セツコ&水森亜土展」は妻の、ツボをつかれてつい足を運んでしまう。今年は「長沢節展」に「石原豪人展」だ。これはどうにも行かねばなるまい。
2004/01/03(土)[美]博物館に初もうで
去年の初詣は籔内佐斗司の四天王像を見に行ったのだが、今年は東京国立博物館の『博物館に初もうで』にした。
猿をテーマにした作品ばかりを集めた特別展示『申・猿・さる』や、和太鼓御響の野外演奏などのイベントがてんこ盛りで420円は安い。上野の雑踏が嘘のように空いていて、暖かな休日をゆっくり絵を見たり芝生にすわって和太鼓の響きを聞いたり、まったりと過ごす。
ミュージアムショップでは、つれあいが鳥獣戯画の布バッグとブックカバーを買っとりました。私は菩薩像の絵葉書を一枚。福引で風神雷神図の絵葉書をゲット、といってもこれが末等だな。
常設展示の方も、さりげなく新春らしいめでたいものをテーマにした作品に展示替えされてたりするので飽きません。正月、行くところに窮したらおすすめ。本館2回の江戸時代室の一つには伊藤若沖の鶴図が展示されていた。デフォルメされた線は必見。
◇
J・G・バラード『コンクリート・アイランド』(太田出版)読了。
さて、まだ昨年の読了本ベストも書いてないし、正月休み中になんとかしなくてはいけませんな。
2003/12/23(火)[美]高畑華宵と歌川国貞
日曜日の『新日曜美術館』は高畠華宵の特集でありました。
名高い美少年絵にはあまり興味はないのだが、あらためて見てみると美人画、美少女画がなかなか色っぽくていい。デッサンのたしかさ色彩や描線のセンスは後続の伊藤彦造や山口将吉郎等とくらべても一線を画している。美少女の顔は少女漫画の一方のルーツでありますな。美少年の顔はさすがにすたれてしまったが、いまだ丸尾末広あたりに片鱗をうかがうことができる。
来年早々「高畠華宵展」をやるので興味がある人はここで堪能するのがよろしかろう。。弥生美術館は元々華宵が晩年住んでいた家で、常設コーナーもある。
ゲスト解説者は美輪明宏だったが、他には考えられない究めつけの人選。思想教養も含めたさすがのキャラクタがかもし出す濃厚かつきらびやかなオーラが、番組を美輪明宏色に染めていく。見終ったあとの印象は、華宵より美輪明宏の方が圧倒的でした。「私が川端康成さんから三島由紀夫さんに紹介されたとき『君は華宵描くところの美少年だ』と言われましたの、フフフ
」なんてことをのたまっても、『黒蜥蜴』に主演したころの艶姿が記憶に残っているだけにうなずくしかない。
*
番組の中で華宵がいかに人気があったかという事例として、当時の歌謡曲にまで華宵が歌われたことを紹介していた。こんな歌詞である。
国貞描く乙女も往けば
華宵好みの君も往く
なかなか粋な歌詞だが、興味深いのは「国貞」が美人画の代名詞になっていることだ。
刷り数が多かったからだろう、残ってる絵も数多い。縞や格子で渋い粋好みの国芳とは対象的である。華麗な衣装が特徴で、浮世絵はファッション画でもあったのだということがよくわかる。
あまりネットでも国貞の絵を見かけることも少ないので、私好みのを紹介してみる。浮世絵美人の顔をつっつくと全体が見られます。
結局、国貞は何か新境地とか新技法とかを切り開いた人ではないんだね。先にあげたような人々が開拓し確立した技法・ジャンルの中で、最も洗練された作品を生みだし人気を得たけど、新味も独創性も感じられない。だけど、それは時を隔てて浮世絵全体のロケーションを見られる今だからわかることで、当時は見えないわからない。国貞は幸福な画家人生をまっとうしたことだろう。
同じように一時人気の絶頂をきわめた華宵は、国貞のように人気画家のまま人生を終えるとはいかなかったようだ。しかし華宵は国貞と違って新しいジャンルを切り開いた人だ。だから再評価される時代もやってきた。もって暝すべし。
2003/12/20(土)[科]ロボコンへの道
地元の高専が、NHK主催のロボコン全国大会で準優勝、そして最高の栄誉「ロボコン大賞」を受賞した記念の講演会があったので、つれあいと行ってきました。
大賞マシンの実演や若者たちの苦労話もなかなか楽しかったけど、技術的にも面白い話がいろいろ。
試合はTVスタジオが会場なので、電波が使えない。必然的に赤外線操縦になるのだけど、いつもテストしている体育館と違って照明が強い。その強い光にセンサーが感応して誤動作しやすいらしい。よく見る試合中のマシントラブルは調整不足だけでなく、そんな理由があったのだ。
今日の講演でも、来場の中学生を壇上にあげて体験操縦をさせていたのだが、パフォーマンスの途中で突然マシンが逆走、暴走して壇上から飛び出しそうになるハプニングが発生。ホールの強い光に感応してしまったらしいのだ。パルプSFではおなじみの「狂って暴れるロボット」を見られて、B級SFファンとしては嬉しいかぎりである。
最後は実際に番組で使用したバレーボール大の球形オブジェを、マシンで客席めがて次々と打ち出すという大盤振る舞い。オフジェクトをゲットしたかわいい女子中学生は同好会部員にサインをたのんでいた。たのまれた部員の男の子たちは照れながら発泡スチロール製のオブジェにサインしてました。
見ていた顧問の先生が一言「自分の名前だけじゃなくて、校名も書くんだぞ」
航空高専ロボット研究同好会、大賞おめでとう、来年こそは優勝だ。(大賞連覇も)
◇
横山秀夫『影踏み』読了。
2003/12/14(日)[美]ダイヤモンドは目に優しくない
12日の金曜日は18:00に妻と娘と上野で待ち合わせ、東京国立博物館の『煌きのダイヤモンド〜ヨーロッパの宝飾400年』を見に行った。
会社帰りらしい女性グループが多く、混んでいたが、さすがに目の保養。なのだが、あまりの煌めき輝きに見応えありすぎて逆に目が疲れてくる。途中で、会場の表敬館の丸天井のステンドグラスの柔らかい光を見上げて、ほっとしたりした。
図録は2,500円とちょいと高かったが、本物を買うことを思えば安すぎて気絶しそうなほどだ。躊躇せずに購入。輝きが強すぎてわからなかった細部が確認できる。こんなすごいのをジャラジャラつけて似合うゴージャスな人を描いてみたいものです。もちろん、叶姉妹みたいな方々ではなく、原節子みたいな麗人をである。宝石も人工より天然でしょう。
*
宝石に目がくらんだあとだからか、『フィギュアススケート・グランプリファイナル』をTV観戦していて気がついたことがある。
リンクの内側の壁の広告の色がアイスカラーなのだ。ブルー系とグレー系しか使っていないので氷とマッチしていて目に優しい。選手たちのコスチュームも良く映える。
今までのグランプリシリーズの会場では、赤や黄色やこれでもかという派手な色のロゴがべったり貼られていたものだが、さすが今回の開催地はフランス。どの会社の広告のロゴも、コーポレートカラー?それがどうしたとばかり、モノトーンにさせられている。日本航空の真っ赤な鶴のマークがパリの景観に合わないので許可されなかったという都市伝説(?)があるだけのことはある。
核実験はするし、誤審で柔道の金メダルは持っていくし、最近フランスにいい印象はなかったが、こういうところは日本はちょっとかなわない。
◇
『ナンバ走り』(光文社新書)読了。
2003/12/10(水)[映]小津安二郎の『晩春』
BS2で小津安二郎監督(生誕100年だそうな)の『晩春』を見る。
父と娘のいい話なのだが、事件も騒動も何も起らない。一見平穏な日常を撮ってちゃんとドラマになっているのが不思議な映画。私と妻は大好きなのに、わがやの娘は「こんな映画を映画館で見てたら私寝ちゃう」などと言ってました。「ばーか、世界の小津だよ。こういう映画の方がちゃんと見るとはまるんだよ」などとむなしい反論をしてやったが、実際、歳食ってくるとこういう映画の良さがよくわかるようになるんだよねえ。数少ない歳取ってよいことの一つである。
まあ、内容はネットで調べてもらうか、このへんを見てもらうこととしてて(不精)、やはり原節子ですなあ。美人であるのはもちろんだが、特筆すべきはその気品。今の若い女優はもちろん、岩下志麻も吉永小百合も、さすがにこの気品は持ち合わせてはいない。
この映画ではきちっとした洋装が多いので、家に帰ってきてちょっと普段着になるだけで、下手なヌードがでるよりどきっとします。そして、笑顔を見せると、モノクロームの画面に濃厚なフェロモンがたちこめるのを感じるのは、私の錯覚であろうか。フェロモンといっても、語義矛盾かもしれないが上品なフェロモンなのだ、これが。色気の方のフェロモンは、共演の月丘夢路が過剰なほどふりまいていました。昔の日本女優さんは本当に綺麗である。
小津監督は自分の分身のような笠智衆が若い娘にもてもての映画を撮りたかったのだ、と言った人がいたが、当たっていそうだ。
*
なんと、この『晩春』を市川崑がリメークしたそうだ(14日WOWWOW)。もう、やめてくれよ。主演は鈴木京香と長塚京三。たしかに今の人の中からといったら、鈴木京香はベストな選択だろうが、原節子とはもちろん比ぶべくもない。まして長塚京三では生臭すぎるだろう。せめて徳井優(引越しのサカイの人)にやらせてほしかったな。
2003/12/09(火)[時]キリストの生涯は結構エロかった?
ビデオを配ったシュヴェージッヒ牧師によると、ビデオのコピーを依頼したミュンヘンの業者が、誤ってポルノ映画をコピーしたらしい。依頼した300本のうち、200本がポルノだったという。
今回の間違いにひるまず、シュヴェージッヒ牧師は、改めて「キリストの生涯」に関するビデオを配布する予定だという。同牧師は「神は神秘的な方法で福音を伝えるものだ。何より、ポルノを注文した人々が我々が注文した宗教映画を持っているかもしれない」と述べた。
うーん、牧師さん、さすがにポジティブ・シンキング。どんな事実をつきつけられても信仰心はゆるがない(耳を貸さないともいう)ものですなあ。
しかし、「キリストの生涯」を見ようと思ってポルノを見てしまった善男善女はびっくりしたろうな。それがきっかけで夫婦仲が良くなったりしたら、それも信仰のおかげに間違いない。
逆にポルノを見ようと思って「キリストの生涯」を見てしまった人は……悔い改めたのだろうか。これをきっかけに仲がしっくりいかなくなったりしたカップルはいなかったのだろうか?「なんて罪深い私たち!」
そんな奴は「キリストの生涯」が始まったらすぐ見るのやめるだろうって?いやいや、エロいシーンはいつ始まるのだろうと思って最後まで見た人も少なくないに違いない。最初は「お、獣姦ものか?」なんて思ったりしたのだろうか?
◇
そんなエロいことばかり考えたり面白がったりしている私ですが、今日の千夜千冊は、私のセクシュアリティにピーンとくるものがありました。短小包茎のくだりではないよ。
それよりも意識がそもそも両性具有であろうとおもう。しかし、これをもって「男っぽい」と「女っぽい」の両方がぼくの中に共存していたなどと単純に平和的に考えてもらっては困る。そうではなくて、とりあえず前夜「千夜千冊」の“国家と賭博と男と女”のデンをひいていうなら、たしかに両極には男性性と女性性はあるのだろうが、そのあいだが何通りもグラデーションになっているという、そういう両性具有なのである。しかも、そのグラデーションの目盛たるや、時と場合と気分によって、どこにでも動く。
なにか、琴線に響くものがありました。
◇
スパークル・ヘイター『ボンデージ』(新潮文庫)読了、J.G.バラード『コンクリート・アイランド』(大和田始訳/太田出版)購入