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2001年ベスト恋愛ゲーム投票─(3)総括
恋愛ゲーム学補講 第27講

0.概要

 鬱ゲーが「発見」された2001年に見られたのは、顕著になるユーザおよびメーカ双方の世代交代と、セグメント化の一層の進行だった。2002年以降、メーカは「どんなユーザ」に、他社にない「何を」訴求していくのかといったように、適切なターゲッティングとコアコンピタンスの追求を行い、その上で、定番を押さえつつも、新しい領域を開拓していくことが求められている。

2002/07/03初版、2002/07/03最終更新

 2002年も半分過ぎてしまい今更ではあるが、最後に皆さんの声を掲載しつつ2001年の総括と2002年への展望をまとめよう。

※ご意見は原則、そのまま掲載させて頂きますが、ゲーム名や全角・半角の表記ゆれの統一、誤字脱字の訂正が入っている場合があります。

1.進む世代交代

 2001年は、メーカ、ユーザ双方での世代交代が一層進んだように感じられる。1995年、恋愛ゲームを「メジャー」(あくまで2次元産業の中で)に引っ張り挙げた第1世代の「ときめきメモリアル」の最新作が、泣かず飛ばずどころか、本ベストゲーム投票ではワーストゲームに選ばれてしまうという事態は象徴的だ。メーカへのロイアリティが低いため、過去の威光などというものは全く関係なく、メーカの論理主導でユーザの趣向を汲み取ることができなければあっという間に没落してしまう。第2世代と言うべき、LeafやKeyが沈黙していたこともあり、新興メーカや、これまで実力が十分には評価されず辛酸を舐めてきたメーカに、光が当たることになった。

 一方、世代交代はユーザの方にも見られる。標準的なプレーヤにおける、恋愛ゲームの「旬」は1年-3年程度だと見ている。始めた当初は目新しく、魅力的なヒロインたちが登場するゲームに、時に私たちはすっかりハマリ込む。だが、ある時に、どれをやっても同じなんだという夢も希望もない「事実」に気づいてしまう。必然的に熱意は失われる。次第に、惰性でただ買うことだけが目的になり、最後には買う意欲もなくなって、別の興味対象へと移っていく。3年と言えば、LeafやTacticsから入った人がそろそろ抜けていく頃だ。

 そして、ユーザを繋ぎとめていることができないのであれば、恋愛ゲームは少子化に伴って斜陽の一途を辿ることになるだろう。

2.2001年の印象(1)―「小粒」

 「小粒」というのはまさにそうした、刺激への慣れが大きいのではないだろうか(それを、「同じ系統でもう1度ウケるためには3倍の刺激量が必要だ」という言い方をしている)。「シスタープリンセス」から恋愛ゲームに入ったという方がおられたが、そういった新しく入って来た人にとっては確かにどんなゲームをプレイしても、何もかもが新鮮だろう。だが、旧来のプレーヤからすれば、過去の資産の組み換えや焼き直しから、逸脱できているものは限られており、新味に欠ける1年だったに違いない。

 もちろん、個々の作品のクオリティが下がっている訳では決してない。それどころかストーリを除く、グラフィックや音楽、音声、演出といった要素、プレイ支援機能などのシステムは飛躍的に向上している(ストーリはその性質上飛躍的には向上しない…文章力やテキストは改善が可能だが)。しかし肝心のストーリにパワーがなく代わり映えしなくては、大ヒットは到底おぼつかない。「小粒でもピリリと辛」ければよほどいい。よくまとまっているけどそれだけ、というのでは、単に消費財と化しており、その作品をやる(その作品である)意味が全くないのである。

 メーカは作品ができあがった後に(前でもいいが)是非1ユーザの視点で(当然思い入れが入るものなので)眺めてみて頂きたい。「これって、他のとどこが違うんだろうか?」と。

3.2001年の印象(2)―鬱ゲーの「発見」

 そんな中で、2001年のストーリ傾向としては、暗い世相を反映してか、「君が望む永遠」や「Memories Off 2nd」を始めとした「鬱ゲー」と呼ばれる作品が目立った。優柔不断な主人公や複数のヒロインが絡む修羅場といったもの自体はさほど目新しい素材ではないが、メインストリームに恋愛のドロドロを引きずり出したのは見るべきものがある。昨年2000年ベストゲーム投票―(3)総括では、正々堂々「恋愛」で勝負する(心を揺さぶる)恋愛ゲームに期待したい、と書いたが、その意味では一定の期待に答えてくれたと評価する。

4.2001年の印象(3)―進行するセグメント化の中で

 しかし、メインストリームにいられるのは長くはないだろう。「鬱ゲー」は決して全ての恋愛ゲームユーザに受け入れられるものではない。2000年にもKeyの一連の作品の反動として見られたように、2001年もまた「萌え」〜「エロ」方向を重要視したゲームがコンスタントに売れている。ユーザは、自身の嗜好により自覚的になり、求める楽しさ(「鬱」にしろ「泣き」にしろそれが好きな人にとっては快楽だ)を提供してくれるであろう作品をはっきりと選別し、購入している傾向が見受けられる。一方例え評判になっている作品であろうと好みに合わなそうであれば買わない。なぜなら好みに合う作品が他にいくらでもあるから。先ほど新味に欠けるからと書いたが、このような、嗜好の多様化が進行し、それに合わせるように選択肢が増えている以上、「大ヒット」はまず起こりようがないと言ってしまっていい。

5.求められる「社会」との折り合い

 もっとも、そうしたセグメント化の進行はあくまでローカルな、恋愛ゲームの世界内での話であり、その外側にいる人にとってみれば全くもってどうでもいいことだ。2002年以降の話として、法律により恋愛ゲームという存在がおびやかされるのではないかという不安の声が散見された。「言論の自由」「思想の自由」といった大文字の正論は「社会的な『正しさ』」の前ではずいぶん心もとない。場合によっては、自主規制によって表現の幅が一段と狭まる可能性もある。私たちは今、恋愛ゲーム内の「瑣末な」派閥争いに閉じ篭ることなく、社会に対してチャネルを開き自らの立場を明らかにしていく必要に迫られている(注1)。

注1 じゃあお前の立場はどうなんだと言われれば、私は最悪、露骨な性描写ができなくなることまでは止むを得ないと考えている。

6.2002年の展望と今後への期待

 最後に、2002年の展望と今後への期待ということで集めた(記事が遅いためすでに発売されてしまっている作品が多いのは申し訳ない)。感じ方は人様々。求めるゲームも人様々。メーカはニーズ分析を怠ることなく、時には自ら新しいニーズを呼び起こす挑戦もして欲しいところ。ただ新しければいいというものではない。以前に「安心できる」ことが恋愛ゲームの重要な要素だと書いたことがあるかと思うが、余りにも奇抜な作品は恐らく、多くのユーザには受け入れられないだろう。半分ぐらい定番を押さえながらも、歴戦のユーザに新しい驚きをもたらしてくれる素材を盛り込む。常々書いているが、そんなさじ加減の難しい作り方が必要になってくる。

 個人的な希望を書かせて貰うならば、奇を衒うことなく、ストレートにココロにアクセスしてくるような、情動を呼び起こす作品に出会えればと思っている。半分過ぎてしまった2002年だが、楽しくてとんがったゲームライフが送れることを祈りつつ終わりたい。


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