Research
2002年ベスト恋愛ゲーム投票─(3)総括
恋愛ゲーム学補講 第32講
2003/07/14初版
1.from 2002...
問、2002年の全体的な印象、2003年の恋愛系ゲームに期待することなどをお書き下さい。
ということで、最後に皆さんのコメントから2002年を振り返り、(すでに半分過ぎてしまったが)2003年を展望しよう。
- 2002はやたらとたくさんのゲームが出ていてチョット、粗製濫造な感じもしました。2003はとりあえず「マヴラヴ」に期待!
- 2002年の全体的な印象としては、システムやグラフィックの全体的水準が向上。DVDの普及もあり、容量が非常に大きくなってきている。また、かなり長いゲームが増えている。シナリオとしては、マンネリを避けるためか、かなりとっぴなファンタジー要素をいれたものが多いが、うまく説明しきれずに最後に唐突感のあるものが少なくない。なお、私の趣味ではないが、「妹属性」がもてはやされ、実際に売上げにも結びつくようになった。2003年の恋愛系ゲームについては、もちろん長いこと待たされた大作がどんな出来になっているかも興味があるが、最初に書いたような好きになる過程の丁寧な描写、「妹属性」以外の「萌え」の追求、プレイヤーが納得できてかつ心温まるようなファンタジーを備えたゲームを期待したい。また、技術的には、ムービー、アニメーション、3Dなどを高品質なグラフィックとシナリオに融合させることができたら素晴らしいと思う。
- 「平均点またはそれ以下」という印象が強かった。特に目立ったものが無い。
- プレイ本数が少なかったので偏った印象になりますが、「何を見せたいのか」といったメーカー側にはっきりとした目的意識のあった作品と、そうでない作品の差が大きかったと思います。
- 2002年は印象に残るゲームは少なかった。
- 大作・話題作が次々延期される中、自分のような「積まない」ゲーマーにとっては非常に買いづらい年だったと思います。今年は全体的に「KID」を初めとする家庭用ゲーム機のギャルゲーに良作が偏ってたと思います。また、全シナリオ30時間オーバーの作品が増えてきたのも特徴といえるかもしれません。1発当てたところは、その資金を元にシナリオ・演出に時間をかけ、そうでないところは、自転車操業的に数を出していく……そのようになると思います。そのような二極化によって駄作の比率が上がってしまわないかが心配ですが……。
- 昨年も大作がない1年だったと思いました。もっともこれだけユーザの嗜好が多様化、細分化された最近では誰もがプレイするような「大作」はもう出てこないのかもしれません。表現の自由などと高邁なお題目を掲げるつもりはありませんが、青環法やら児ポ禁法やらでエロゲーができなくならないよう、少しは行動すべき時期なのかもしれません。とはいえ実際に行動するとしたらエロゲーのためとかいう本音は隠して表現の自由という錦の御旗を掲げることになるんでしょうが(笑)。
- 2002年はどちらかというと新作をじっくりプレイしきったのがなかったので投票パス、というのも考えましたが…。本命候補のKey、対抗候補のアージュ、ねこねこ等有力処の新作がなかったため何かこぢんまりとした印象が強かったです。駄作も少なかったかわりに飛び抜けた秀作もなかったような。市場自体も挑戦的な意欲作というよりは「鬱系」「ロリ」ものに安易に流れてしまって、恋愛系ゲーム崩壊を感じさせるような予兆も見られた気がしなくもない年だったと思います。2003年は冒頭で述べた有力処の新作が出てきますので、これらの中からでもあるいは新興勢力や再編勢力でも構わないので、純粋さあふれる新たな恋愛系ゲームの作品が登場してほしいところですね。
- 2002年全体の印象としては昨年度に比べゲーム業界全体のレベルが上がってきたと思う。2003年度はもっとゲーム業界のレベルが上がっていくと思う。
- 2002年は業界全体の売り上げも大幅に減少したようだが、ゲームの中身だけを見てもそれは頷ける結果に思える。結局最も売れた「D.C.」でさえ、「『水夏』の方が良かった」と言う意見に押されていた。2003年には業界の後退傾向を打ち破る事の出来るゲームを期待したい。「SNOW」や「マヴラヴ」等、今のところは順調に見えるがこのままの勢いが業界全体で続いていってもらえればと思う。ついでに「CLANNAD」の早期の発売を切望。さすがに情報の切り売りも限界に来ているようで、そろそろ発売しないと時期を逃す事になりかねない。
- 今年は例年より小粒だったのではないかな。プレイしていない作品も多いが、自分がプレイしたものの中では飛び抜けた作品がなく選択に苦労した。
- 全体的に良質なゲームが多かったという印象を受けます。2003年に入ってもその流れは続いているように思います。あと、PCゲームからコンシューマーへの移植がかなり多かったという印象を受けます。コンシューマーでの受け皿がXboxでなく、PS2だったのにはある意味驚きですが。Xboxは何か基本的に間違っているような気がするのですが。やはりDCの正当な後継機としては恋愛ゲーム&クソゲーでしょう(^^;
- 全体的なレベルアップは昨年より進んでいると思われるが、「これ」といった大作はなかったように思う。投票したゲーム(「"Hello,world."」「世界ノ全テ」「D.C.〜ダ・カーポ〜」)も特に傑出している訳でもなく、例年の1位に投票したゲームのどれよりも劣る(ちなみにこれまでの投票3回で総合1位に投票したのは全て集計結果でも1位になっています)。2003年は(すでに「SNOW」をプレイ済という要素もあろうが)一部の大作の勝負になると思われ、今から楽しみである。
- 今年のテーマは「友情」「家族愛」の2つではないでしょうか。
2002年の印象も、2001年の印象、すなわち大作不在感を継続しているか、より強くした意見が多くなっている。供給側からは依然として恋愛系ゲームの発売数が増加し続けている。ベスト恋愛ゲーム投票ノミネート作品が51作品(1997)→94作品(1998)→104作品(1999)→131作品(2000)→156作品(2001)→170作品(2002)と5年で3倍以上に膨れ上がっている中で(1997年の段階ですでに「嫌になるほど出て」いるなどというコメントをつけていたものだが…)、1作品辺りの重みがどうしても弱くなってしまう。とりあえずギャルゲー出しとけ的な感覚はとうの昔になくなっているが、恐らく、売れていない作品はとことん売れなくなっているだろう。
合わせてユーザの嗜好も拡散している。図1にベストゲーム1位、ベストゲーム2位、およびベストゲームトップ10の得票シェアの推移を示したが、1999年の「Kanon」や2000年の「AIR」を頂点に、トップクラスの作品ですら求心力が下がる一方になっていることが分かる。
「大作」は決してプレイ時間が長い、ボリュームがあるとか、完成度が高いとかいったことだけで生まれるのではない。ユーザ側の熱狂的なコミットメント、2次創作を含んだ盛り上がりがあって初めて成立する。「大作」はメーカが作るのではない。ユーザが作るのである。トップクラスの得票シェアの低下は「大作」がより生まれにくい状況になりつつあることを示している。
2002年もまた、PCゲームからコンシューマゲームへの移植や、リメイク、続編が多く発売されている。恋愛系ゲームの歴史が年齢を重ねる中で、新たな作品は過去の作品とも比較されることを強いられる。各メーカは「Kanon」や「AIR」といった過去の作品からの卒業と訣別を試みているのだろうし、その1つが2001年の「君が望む永遠」だった訳だが、いわゆる「鬱ゲー」は心理的な負荷が大きいため、結局のところメインストリームにはなれず、2002年は暗中模索の1年だったのではないか。そんな中で2001年後半から少しずつ盛り上がってきた「萌え」と「エロ」への原点回帰が、2002年には花開いたが、比較的作りやすい方向性だけに乱発されることになる。作品数の氾濫による1作品辺りの売上の低下がメーカを安全思考に振っており、強烈な個性を持つ企画・シナリオで引っ張っていくような作品の欠如、「人を選ばない作品」への傾斜をもたらしたのだろう。
- 「バイナリィ・ポット」「Princess Holiday」で、新鋭ながらそのシステムを含めた完成度の高さを見せたオーガスト、「初恋」で意外な一面を見せたRUNEはこれを足がかりに2003年度以降伸びると思う。ただ、オーガストは立ち絵が動くともっと評価が上がるはずなので次回作、次々回作に期待したい。RUNEに関しては野々原氏以外の原画師をいろいろと試しているような節があるが、これはRUNE自身がRUNE=野々原幹の図式から脱却しようとしている証であり、良い傾向であるように思う。2003年の恋愛ゲームに期待することは今までどおり、発売日の延期とプログラムのバグをできるだけなくして欲しいと思っています。現状ではあまりにも多すぎます。
- 新鋭メーカーが光った年だったと思う。その中でもオーガストは群を抜いていたと思う。中でも2作目となった「Princess Holiday」はキャラクター面を始めとし、全般的に楽しめたと思う。2002年は先に述べたように、新鋭メーカーが光っていた。そして、2003年もその新鋭メーカーオーガスト、minoriの躍進を期待したい。
もちろん作品全体の完成度自体は年々向上しており、「合格点」レベルの作品がザクザク出てきているのはひとまず頼もしいことである。かつては絵とか音声とかキャラクタで売っていたこのF&Cの位置にオーガストやRUNE、XUSEといった有力メーカが登場し、もはや完全にお株を奪った形になっている。爆発的なヒットは望みにくいが、堅実な路線と言える。ただし、よりどりみどりなので何で差別化するかというのが問題になってくる。2002年は低年齢「風」のキャラクタ、妹系キャラクタが乱用されたが、極端なそれはユーザを限定し過ぎるし、低年齢志向作品自体が「コモディティ化」してしまうと、差別化ポイントでも何でもなくなってしまう。あくまで他社と違うことをやるという気概が必要だ。
2.to 2003
2003年も作品数の増加は止まらないと思われる。6月までのノミネート候補はすでに96作品。この分であれば1年辺りの発売数の更改はほぼ確実と見ていいだろう。そんな中で2003年にはどんな恋愛ゲームが望まれているのだろうか。
- 義妹ゲー以外の萌え分野の開拓。ソフ倫に負けるな。
- よい絵も当たり前だけど、何より良いシナリオを多く期待したい。
- 期待することは無い、と言うのが正直なところですが、とにかく感動できるゲームを!
- もう少しユーザビリティを考えてほしい…消費者・企業ともに良い結果になるように。
- 最近は音楽にこだわり過ぎてゲーム内容がいまいち…っという感じのゲームが多くなってるので音楽よりゲーム内容を楽しくして欲しい。
- 亜流でもいい、のめり込めるゲーム。主人公に重点を置いたゲームなど。漠然としていますが(^^;
- 「CLANNAD」が出るしいい年になるんじゃない? 去年はいいゲームが少なかった。今年に期待。
- 製作者自身がが心を込めて…ではなく、広い視野を持った上で愛を込めて制作して欲しい。独り善がりにお金を払いたくないです……。
期待されている点は人により様々だが、正直なところ、熱烈な期待感というものがそもそも弱くなっているように思われる。メーカには「なにくそ」という反骨精神を持って貰いたいところだ。
筆者としてはシナリオ/テキストの重要性は当然だが、今後はアニメーションへの取り組みに注目したいと思う。これまでの恋愛ゲームは絶対的に「動きのある演出」が足りていないと感じる。従来の立ち絵切り替えも頑張っているところは頑張っているが、そろそろ物足りなくなってきている。ムービーが多用できればそれに越したことはないが、労働集約的なアニメーションムービーは体力のないメーカには厳しいだろう。限られたリソースでいかに動きをつけるかが課題だ。LittlewitchのFFDはこうした課題への1つの回答である。またかつてコンシューマゲームでポリゴンとレンダリングムービーの連続的な切り替えが行われるようになったと同様に、スプライトベースのアニメーションとムービーが繋がらないだろうか。
- これは、恋愛系ゲームに限らず18禁ゲーム市場全体にも言えますが、2002年は昨年に比べ、メーカーとユーザーの距離がさらに縮まってきたと思われます。雑誌で購入するゲームを決めたり、売り場で直に見たものを選ぶだけでなく、インターネットの発達により、レビューサイトを閲覧し、2ちゃんねる等の掲示板群で、ユーザーとして一意見を吐き出す。こういった購入層が増え、ライトユーザーよりヘビーユーザーが多くなってきたのが、最近顕著に見れる傾向ではないでしょうか。メーカーも、老舗メーカーは安定しているものの新規参入のメーカーは、そういった傾向をとらえ、そのユーザーの傾向を反映しようとするところが伸びてきて、次の波を作りつつあるように思われます。また、恋愛系ゲームの弱点と言われるH薄を補うように回数を増やすゲームが多く見られ、そういったゲームが高く評価されるようになってきているとかと。また、ジャンルに関して挙げると、「単なる学園モノの恋愛ゲーム」だけではユーザーに受け入れられなくなってきている為、ファンタジー・SF・伝奇等の別要素を取り入れたり、学園モノは学園モノでも主人公とヒロインが結ばれてエンディングを迎えるのではなく、結ばれた後に別れ、また結ばれる、等と経緯まで描いたりし、これもまた別要素を加えるようになってきています。最後にこれもまた、18禁ゲームメーカー全体に言えますが、2003年は、昨年によく見られるリメイクや移植を減らして新作をきちんと作る事を望みます。老舗、中堅に関わらずリメイクで売上を伸ばそうとしているメーカーが多いのが気になりますので。18禁ゲーム業界で試作品を出し、リメイクをコンシューマーで出す(+さらにそのリメイク品を18禁ゲーム業界に逆移植)の流れはユーザーが多く発言をするようになってきている現状ではあまりに目に余ると見捨てられる可能性もあるのではないかと。
中高年層などのライトユーザがパッケージ買いするような「アダルトゲーム」とは違い、恋愛系ゲームは若年層が主な購買層であり、ネット感度も高い。2,3日すれば十分な情報が集まるので少し待てば自分に向かなそうな作品を回避できるようになる。このことも「ワーストゲーム」にハマらなくすることを支えているだろう。こうして「賢い消費者」が増えると、単に「人を選ぶが受けるユーザには受ける」作品であればいいが、根本的にダメなメーカには非常に不利な状況になる。何とか発売日買いのような初動の売上を促進するために、従来作品の本質ではなかったマーケティング要素がますます重要になってくることになる。
残念ながら、コンシューマ移植やリメイクが幅を利かしているのは上期を見ても明らかである。特に音声の追加、画質の向上に加えてほぼ完全に普及したDVD化、WindowsXP対応という目玉があり、DOS→Windows3.1やWindows3.1→Windows95時代に見られたリメイクは当面活発になることが予想される。もちろん、そうすることで自ら過去の作品を新作の競合商品にさせてしまっているのだが。
- かつてはノミネートされた殆どのゲームが何となく解ったものですが、今年は既に8割が解らない状況に。ゲームがつまらなくなったのか、私が歳を取ったのか。昨年も『泣けるエロゲー』の波は止まらず、新しい要素は生まれなかった。ELFに続いてLeafまでもが過去の作品の焼き直しを。絵は進化したんだかしないんだか。シナリオも取りたてて変わってなかったし(変えようもないが)。「サクラ4」は焦って早く出し過ぎた感が。もちっと量を増やしても良かったと思う。次作新シリーズがどうなるか期待。ネタと言えば「Tomak」。女神様が首の鉢植えになって……ですか。斬新っちゃー斬新かもしれないが、やはりアジア感覚は違うかな。可愛くないし。唯一ハマったのが「BITTER SWEET FOOLS」。これもPCからの焼き直しだけど、SIMPLEシリーズの値段を考えるとコンシューマとしてはかなりの出来かと。シナリオと絵柄が非常に上手く噛み合っていたと思う。多分来年の今頃は、ノミネートされた作品の9割近くは解らなくなっていると思う。オタク稼業に疲れた感が有るので、今年もやるゲームは少なくなるだろう。全然関係無いが、久々に出た「真・女神転生NINE」が非常に面白い。ゲームらしいゲーム、RPGらしいRPGを久々にやった気がする。私が「女神転生」が好きな理由は、DQ・FFに見られるシナリオの破綻、書く人の低レベル化が少ないからだと思う。しかし、最近友人に勧められた「君が望む永遠」だの「水夏」だのはちっともやる気がしないのは、やはり所詮エロゲーだと思っているからだろうか? かつて初めて「YU-NO」をやった時(エロゲーは「YU-NO」から入りました)、凄く驚いたのが懐かしい。アレ以来、「凄い」と思えるエロゲー、恋愛ゲーには出会っていない。管理人さんは最近のゲームなんて全部把握出来てますか? 総評楽しみにして居ります。
- プレイ本数が少ないので投票権が無いようにも思えますが。2002年の印象としては、ずば抜けた印象のゲームの不在ですか。「腐り姫」は良かったけど、対象外のようですし。あと、一昨年の「君望」は、ゲーム界をわたしの望まぬ方向に導いてくれたな、という印象もあります。2003年は恋愛系のゲームから卒業、とまでは言いませんが、購入本数を減らそうと思っています。現実に減っていますし。そのため、あまり期待というのはなかったり。
恋愛ゲーム離れは、単なる世代交代だけでなく、もしかしたら恋愛ゲームの限界を、ユーザが気づき始めていることの現れかもしれない。「萌え」と「エロ」とは言うが、「萌え」は「エロ」が奇形化したものに過ぎない。詰まるところ性欲に依存した商品なのである。今後の恋愛ゲームが成熟したユーザを繋ぎ止めて置くだけの深度とエンターテイメント性を獲得していかなければ、製作者とユーザを含む限定された恋愛障害者のためのマスタベーションスキームから抜け出すことは不可能だろう。