シンジの男性器を目にした第一印象が、それだった。無造作に脱いだ下着の中からぶるんと現れたモノは、こんな状況にも関わらず見事に屹立している。
知識としては知っていても、もちろん目にするのは初めて。
男のモノというものは、もっとごつごつして今にも襲いかかってくるような、それは凶悪なものだと想像していた。実際、少年の毎夜尽きない性欲に触発されて妄想していたのは、まさにそんな感じだった。
だけどこれは……かわいいかもしれない。
少年が聞いたら傷つきそうなことを、無慈悲にも思い浮かべる。
根元の方に申し訳程度に茂る陰毛も、ふわふわと柔らかそうだ。最近、にわかに濃くなってきた気がする自分のアンダーヘアーが密かにコンプレックスになっているアスカは、不条理な嫉妬を覚えた。
さらに目線を下げると、その根元に必死にしがみつくように縮こまった、二つのかたまりが微かに震えている。…これはきっと、陰嚢というやつだ。これも想像と違う。産毛しか生えておらず、つるんとしていた。
これなら愛せるかも…と思考を進めかけて、いやいや何を考えている私、と否定する。
シンジというヤツは、夜な夜な、この欲望の象徴を握り締めては、乱暴に手でしごき上げている(はず)。あろうことか、それを私の膣に見立てて!
そのせいで自分の安眠も連日にわたって脅かされている。許しがたい。
良く言えばまだ幼さの残る、悪く言えば頼りない印象に、騙されてはいけない。
こいつはケダモノ…この私をオカズに“チンポ”をしごくヘンタイ…!
怖じけそうになる心を、普段絶対に使わない下品な言葉で奮い立たせる。
呪文のように言い聞かせている間も、視線はなぜかそこから離れなかった。
同世代の男の子が、ベッドに座って下半身を女子の前で丸出しにしている。
おまけに、その性の象徴を臆面もなく勃起させて…。
このシチュエーションは一体なんだ。あまりに現実離れしている。
自分がそうさせたにも関わらず、アスカは自分が赤面していくのを感じた。
自分はただ、シンジの連日に渡る暴挙に抗議してやろうと思っただけだ。
同級生で同僚の、同居人の女の子の真向かいの部屋で、毎夜、自慰する非常識さを問い詰める必要があった。
信じられない、フツウそんなことする?!
フケツ、フケツ、フケツ…!
そう、これは乙女の聖域を脅かす野獣に対する罰、この私の領界に節度無く性臭を持ち込まんとするオスに対しての制裁なんだ。
ともすれば動揺を始める心に、そんな理論武装を完了して、アスカは無造作にソレに手を伸ばした。
剛直の先端にある「段差」に、わずかに引っかかっているように見える包皮。
これって包茎…? それとも、これで“剥けて”いるの…?
加減も知らない少女の指が、遠慮なしにシャフトを握りしめ、引き下ろした。
瞬間、ぷるんという擬音が聞こえそうな勢いで肉の実──亀頭が姿を現した。
「ぁあっ…!」
突然、少年が発した短い悲鳴に、アスカはビクッと体をすくませた。
えっ、え…何、どうしたの?
身体を二つに折るように、前屈みになってぶるぶると震えているシンジ。
自慰はしても、荒々しく幹をしごくだけの、まだ初心な少年には、他人の手で亀頭をむき出しにされる未知の快感は、あやうく絶頂を迎えそうになるだけの強烈なものであったことを、アスカは理解していなかった。
カハッ…と、喉に何か詰まらせたような呻きを上げるシンジは、何かを堪えるように全身を硬直させている。
彼の体の影になって見えないが、アスカに握られた男性器の感触は固いまま。まさに肉の棒といった感じで、そそり立ったままだ。
そのアスカの指先に、何かぬるりとした感触があった。握りしめた親指の上から垂れてきたような…。
も、もしかして射精し、た…?
ドクン、と正体不明の炎が、体の中心に点るのを感じる。
それまで意識していなかった自らの鼓動が、やけに耳に迫って煩(うるさ)い。
…違う、これ愛液だ。
実際には男性の先走りなのだが、自分の身体になぞらえて、アスカはそう思った。
シンジ、今ので感じたの?
少年の荒い息を聞けば当然わかるのだが、それに思い至れるほどアスカも冷静ではない。
自分の行為が同居人の少年に与えた刺激の強さが、じわじわと実感を伴ってくる。
たったこんなので、気持ち、いいんだ…。
震えるシンジの男性そのものを見つめて、アスカは考えるのをやめた。
「熱い…」
掌にダイレクトに感じられる少年の生々しい体温に導かれるように、ゆっくりとそれを上下させる。
「あっ…く…ま、待って…」
「…気持ちいいの?」
呟く声に艶がある。知らず、シンジの興奮がうつっていた。
それまで無造作に握っていた指を、シャフトに絡めるように握り直す。
シンジが思わずのけぞるのもおかまいなしに、その形を確かめるように撫で回した。
不思議だ…。こんなに固くなっているのに、掌に感じるのは体温をともなった柔らかい肉の感触。少年の意思と関係なく、時折、その表面を這う血管が、ドクドクという生の証を感じさせる。
少女の細い指が這い、上下に遠慮なくしごかれるたびに、幹とともにその付け根にぶら下がった二つのかたまりが、意思を持っているように蠢いている。
玉…金的。ここを蹴り上げれば、男相手なら悶絶する。
格闘戦技も人並み以上にたしなむアスカは、不意にそんな知識を思い出していた。
男の急所。赤ちゃんの種が詰まった貯蔵庫。最もデリケートな場所。
知らず、空いたもう一方の手がそこに伸びていた。
さわり、と考えうる最上の丁寧さで、その表面をなぞる。本当に、中に二つの玉が収まっているのが感じられる。二本の指でそれぞれをなぞりあげるように掬うと、そこだけ別の生き物のように、キュッと収縮した。
シンジが、女の子のような嬌声を上げたのは、同時だった。
「っ…そこはホントにだめ…アスカ…」
少年は、これまで自分が見たことのない顔をしていた。
まるで女の子のような恥じらいの表情。
……。
思わず凝視してしまった。おかしな気分になってくる。
「あ、うん…そ、そう」
本当にここは敏感なのだと悟って、慌てて指を離す。自らが、膣口の上部にある最も敏感な部分、陰核に触れてしまった時のことが思い出されて、思わず閉じていた股間にキュッと力が入った。
その感触を忘れようと、アスカはあらためて彼の男性自身と正面から向き合った。
まだ未熟さを感じさせるピンク色の亀頭。
その先端には、浅い溝のように見える尿道の入り口が、肉色の唇をのぞかせている。
そして、その淫唇から溢れた透明な体液が亀頭全体にこぼれ広がり、ぬらぬらと光らせていた。
まるで女性器のようだ。
見ている間に、亀裂が大きくなり、中から新たな粘液を生み出してはこぼし、また閉じていく。
…このうえなく卑猥。
アスカは、思わず寄り目でガン見していることに気づき、あわてて眼の焦点をずらした。
しかし、シンジの生み出す先走りの汁は、彼の尽きせぬ欲望を表すかのように、ぷくり、ぷくりと溢れては、太い幹を伝って、アスカの手をいやらしくぬめらせていく。
そして、握った手が軽く上下する度に、にちゃにちゃと猥褻な音を立てた。
…この、におい。
ここしばらく、事あるごとに自分を悩ませてきたエッチな芳香。
自分がオナニーの時に発する淫臭とはまた違った、濃厚なオスの香り。
これだ。自分がおかしな気分になるのは、これのせい…。
先走りの絡みついた肉のシャフト…そこを伝ってさらに下、二つのタマが作り出す複雑な陰影のくぼみから匂い立つ、蒸れた空気。
いやらしい。
だが、そのいやらしい匂いに誘惑される。頭の芯が痺れる。理性が薄れる。
ソレ、を直接味わいたい衝動に駆られ、そのまま実行した。
はぷり、と少年のペニスがアスカの唇に飲み込まれた。
粘膜同士のこすれる、ぬるりとした感触に、シンジが声にならない悲鳴を上げてのけぞる。腰から下を持っていかれるような、強烈な感触。全身の快感がそこに吸い取られたように、一点に集中する。
シンジは、自分の排泄器官でもある肉の実が、可憐で繊細な少女の口を犯していくのを、呆然と見下ろしていた。
リップをつけなくても、いつもきらきらとした清楚な唇。
彼女の性格の一面を表すような、明るく溌剌とした声を発する口元。
そんなアスカの口が。性そのものの形をした自分の男根を咥えている。
現実離れ、という言葉をそのまま形にしたような光景に、彼の性的興奮は一瞬にして極まった。
「っああ…んんむ~ぅっ」
自分のものとは思えない、浅ましいあえぎ声がほとばしる。
尿管を伝って快楽の素を引きずり出されそうになる快感に、半ば恐怖して腰を引く。
しかしそれは、より容赦のない快楽を生み出すだけの結果に終わった。
アスカが逃げる陰茎に追いすがり、唇だけで捕らえていた少年の欲望の象徴に、熱く湿った舌を絡みつかせたからだ。
「っひぐ…!」
まるで先端がどろどろに溶かされるような熱くぬめった感触。
アスカの火照った体温をダイレクトに押し付けられたような、めくるめく背徳感。
「っあ…っあ…ぁあっ!」
カリの溝をこそげるように、アスカのトロトロの舌が通過した。
禁断の行為を、いつも近くにいる同い年の少女に強要している、という犯罪めいた慄きが、さらにシンジの汚れた悦びを掘り返す。
口を男性器に占有されたアスカが短い呼吸を繰り返す度に、昂ぶりの根元を囲む陰毛を揺らす鼻息が、みだらな欲望を煽り立てた。
「ダメだよっアスカ…だめ、ぇ…っ」
ダメと口走りつつ、彼の本能は、少女のさらなる奉仕を望んでいた。
もっと気持ちよくなりたい。もっと気持ちよくしてほしい…アスカにしてほしい!
まるでその心の声が届いたかのように、アスカの口内に新たな涎が溢れ、シンジの敏感な部分を、その熱い泉の中にいざなった。
シンジ…きもちいい?
自分でするより、気持ちいい?
オナニーより気持ちいい?
あたしのお口、気持ちいいの…?
シンジの両手の指が、アスカの金色の髪にわずかに潜る。彼女の頭を押さえつけたくなる衝動に対する、それは少年のせめてもの抵抗だった。
限界に張り詰めた男根の先っぽを熱心にねぶる少女に、ぶるりと震えが走った。十本の指の感触が、頭皮の上をかすめるように滑る。それはアスカに、ゾクゾクとする何とも言えない恍惚をもたらした。
欲しい…ほしい…!
何がそんなに欲しいのか、自分でもわからないまま、その情動を口内にある肉の実にぶつけた。つるつるした亀頭に舌の腹を擦り付けるように絡め、なぶり、尿道口の出っ張りを感じると、そこを執拗に行き来させた。
にじみ出る粘液を夢中ですすると、その後に控えたものをねだるように、口をすぼめて強く吸った。
「あぁあっ…!!」
留める数瞬すら許されなかった。
こんなにも強烈な愛撫を、献身的な口腔愛撫を、童貞の、自慰でも亀頭を直接刺激したことすらないナイーブな少年が、受け止めきれるわけもない。
あっという間に、頂きの向こうまで突き上げられた彼は、アスカの口の中にいるまま射精してしまう、という罪悪感を覚える間もなく、陰嚢の中で煮えたぎった精液を撃ち出しはじめた。
びゅるぅっ! という粘り気のある音が聞こえそうなほど密度の濃い、最初のひと撃ちが、アスカの口蓋を直撃した。
「ぶ…ぅっ」
反射的に、アスカは口内の性器を吐き出していた。
喉奥に当たったわけではないので、苦しかったからではない。単純に、その勢いに驚いてしまったのだ。
「っぷ…あ…は…」
呆然と見つめる視線のすぐ先で、シンジのペニスが二度、三度としゃくりあげる。支えを失ったシャフトは暴れまわり、その度に亀頭から噴き出したザーメンが、少女のいたいけな顔に無遠慮に塗りたくられる。
むわっ…と広がる強烈な淫臭。生の、少年の体内から吐き出された体液、オスそのものの匂い。
……うそでしょ。
あまりの出来事と、少年の性そのものを見せつけられたアスカは、痺れる頭の片隅で、その回数だけをカウントしていた。
四度、五度、六度…。
何回出すのよ…どれだけ射精するの。
七度…八度…。
もういいでしょ…これだけ出せたら、満足?
脈動を続ける幹を握ったままのアスカの手は、べったりとした精液にまみれていた。
ハッ…ハッ…ハ…
自分か彼か、どちらのものかもわからない荒い呼吸音。
アスカは、その口元からシンジの性の証が垂れ落ちていることにも気づいていない。
ただひたすら、顔が熱い。
彼女の心に去来するのは、なぜか充足感だけだった。
こんなに生臭い、青臭い、汚らしい粘液なのに、この臭いが頭の芯を、おなかの中心を痺れさせる。
精液…シンジが出した体液。
そんなに気持ちよくて、出したの?
あたしが欲しくて、出したの?
こんなに、いっぱい…。
ねぇ…。
ギュッ、と握った肉の棒から、ゼリーのように白い塊が、未練がましくビュ…と押し出されるのを、熱っぽい視線で見つめていた。
我に返った少年が、さかんに謝りながら、自分の口元をティッシュで拭っている。
体の位置を入れ替え、先程までとは逆に、ベッドに腰掛けさせられる。
されるがままになりながら、アスカは自分の中心が、もうどうしようもなく濡れそぼっているのを感じていた。
(つづく)