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センタリング・テクニック(松原 彪)

以下の文章は、松原さんが、メーリングリストに寄稿されたものをUDOさんこと瀬川さんが、松原さんの許可を得て、ホームページに転載されたものです。私も、松原さんの許可を戴き、アップしました。この分かり易い説明を良く勉強してひとりでも多くの方がセンタリング・テクニックをマスターされる事を願って。松原さんに感謝致します。 1998.03.11

 センタリングの技術は言うまでもなく、パラグライダーのフライト技術の中でもっとも重要でまた難しい部分でしょう。
 フライトするには、ソアリングの基本であるセンタリング技術と、サーマルに対する知識とが必要です。そしてある部分ではそれらは切り離すことの出来ないところもあります。つまりサーマルをより深く知ることで、センタリング技術も変わってくるのです。 旋回そのものについても、体重移動とブレークコードの使い方、バンクの付け方などいろいろ意見の別れるところでもあります。
 トップフライヤー10人に各自のセンタリング方法を聞いてみれば、十人十色というごとくそれぞれ違ったことをいうに違いありません。他のスポーツ分野でも言えることですが、その分野でトップレベルに達した人たちは、皆それぞれに自分なりの意見や考え方を持っているものです。私は私なりの考えを持っていて、それは他の人と違う場合もあるでしょう。普遍的な技術や、どのような場面でも、あらゆる人に共通するようなセンタリング方法はむしろ無いといえるでしょう。
 ハンググライダーの世界チャンピオンのトーマス・スカネックは、我々が経験するレベルのサーマルソアリングについて、世界でもっとも優れた技術と知識を持っていると思われますが、彼は雑誌のインタビューにおいて、「私はいかなるサーマルでも、もっとも適したセンタリング方法を会得した。それは30度のバンクを付けてセンタリングすることだ。」と述べていました。
 ハンググライダーとパラグライダーでは、スピードの範囲、操縦方法、機体の構造などが大きく違うためパラグライダーでも同じ考えが通用するとは思えませんが、いずれにしろ適切なバンクを付けて旋回することが基本であることは否めないでしょう。
 しかし、その適切なということがもっとも難しくさまざまな条件で変わってくるので、より難しくしているのです。
 上達の道は、さまざまな意見や考え方を理解し、実践してみて自分なりのセンタリング技術を磨き上げる以外ありません。 私の基本的な考えは、センタリングとは、リフトのもっとも強いコアを出来る限り素早く探し、留まることだと考えています。 ブレークコードと体重移動とか、バンクを付けるとかフラットに回すとか、手の位置、上体の姿勢など細かく言う人も居ますが、私はすべて些細なことであまり問題にしません。コアを掴み留まっているのなら、それで良いのです。とにかくサーマルエネルギーの1ダインも余さずキャノピーに与えようとする気持ちが大切です。
 その様なことを理解した上で以下の文をご覧ください。

・ サーマルの強弱

 強いサーマルと弱いサーマルのどちらが重要かといえば、弱いサーマルで上げ切る方がより大切といえます。それは弱いサーマルで粘るようなときが競技や、クロスカントリーフライトにおける正念場となるからです。弱いサーマルというのは、上昇率が毎秒0.1m/秒〜1.0m/秒程度のものを想定します。 弱いサーマルでの考え方は、例えわずかな上昇率でも、それは自分の機体の沈下率を加えただけの上昇エネルギーを持っていると思うことです。 つまり、バリオが表示する上昇率が+0.1m/秒なら、機体の平均沈下率−1.2m/秒(上級機の例)を加えて+1.3m/秒のリフトが有るということなのです。 貴方が今旋回しているところは、必ずしもそのリフトのもっとも強いところではないはずですから(最初から一番強いところへ入ることはごくまれでしょう)、どこかその周辺に、もっと強いところがあるはずだと考えなければなりません。このような時は出来る限り沈下率を押さえた、バンクも余りつけない旋回を維持し、サージ法や、ベストヘディング法、ワーストヘディング法などのコア探索法(コア探索法については、別の機会に譲ります。注1)を駆使してコアを探さなければなりません。そしてもっとも強いと思われるコアに入ったと感じたときは、バンクとスピードを付けて、コアの中心に留まる旋回にします。ブレークコードと体重移動と、どちらをどうすべきかなどは些細なことで、コアを外さないように旋回できればそれで良いのです。弱いサーマルほどコアも小さいのですから、思い切った小さな旋回半径と、それを維持するバンクが大切です。小さく旋回するには、スピードが遅い方が良いのですが、あまり遅くしすぎるとアクシデントに陥りやすいので、ある程度のスピードが必要です。 センタリング技術とは、安全に、より早くより高くへ上昇することに尽きるわけですから、形や理論にとらわれず、より多くのサーマルを経験し、自分なりの旋回技術を身につけることに他なりません。
 強いサーマル程、技術と経験の差がハッキリ出るものです。強いサーマルでは弾かれたり、潰されたりして、せっかくの良いリフトを使いこなせないのを見受けます。 上昇率が毎秒+3m以上にもなるような強いサーマルに入ったら、しっかりした体重移動で、十分にバンクを付けた旋回を維持し、強い上昇風帯から外れないように一定スピードで、旋回中心をずらさないようにします。強いサーマルほど発生源から、ほぼ垂直に上がっているものですから、地上に目標を置くのもよい方法です。ただ風が強かったり、ある高度から風向きが変わるような場合はコアを外さないように風上側へ意識的に旋回の中心をズラすことも必要になります。強いサーマルでコアに入ったときは、ハッキリ風速が増すのが分りますから、その変化を見逃さないで下さい。 強いサーマルへ入るときは、グライダーが弾かれそうになる事があります。このような時は、旋回したい方へ体をねじ込むようにして弾かれないようにすることもあります。そして、強い上昇率のコアへ入ったと思われるときは、スパイラルに近い急旋回でコアに留まらなければならない場合もあります。 これまでに何度も苦しい状況から、ほんの僅かなチャンスを捕らえ息を吹き返した事がありますが、その様なときのセンタリングは形に囚われず、「絶対に上げ切ってやる!」という気迫と根性が、最良のセンタリングテクニックであったといえるかもしれません。
 それから、次の格言をいつも忘れずに。
1. 回せるときは、回せ。(リッジソアリングでも旋回出来るときは回す)
2. 回すやつ程よく上がる。

・ センタリング開始高度

 センタリングを開始する高度によっても旋回方法や、考え方は変わります。高度が十分あって、余裕があるときは全てのサーマルで律義にセンタリングして高度を稼ぐのではなく、次へ移動する前にセンタリングするだけの価値があるサーマルか見極めてから、上昇率も良くて、サーマルのトップも十分高そうなものだけを選んでセンタリングすべきです。しかし移動距離の少ないパラグライダーでは、どんな僅かな高度でも稼ぎたくなるのですが、それをこらえて良いサーマルだけをしっかり上げ切るフライトが出来れば、競技で好成績を収められるようになるでしょう。
 高度が低い場合は地面が足に付くまで粘り抜き、どんなかすかなサーマルでも見逃さずに掴み、上げ切る技術が必要になります。高度が低いサーマルはコアもハッキリせず、上昇と下降が入り交じっていて、センタリングが難しいのがほとんどです。いわゆるブリュームといわれるサーマルの卵のようなもので、一回の旋回の全てが上昇風帯に入っていることはまず無いといってよいでしょう。このような時は、強い部分にだけ留まれるような、クイックなターンが素早くできなければ上げ切ることは出来ません。低高度のサーマルでは、とにかくリフトを感じたらすぐ回すのが先決です。
 日頃から、ローリングを十分練習しておき、素早くターンが出来るようにしておかなければ、このようなサーマルを捕まえることはできないでしょう。

注1 コア探索法
注2 この文章は松原 彪さんがメーリングリストに出されたのを転載の許可を得て掲載してあります。

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