Back Numbers | Home

Columns: Society

政治におけるインセンティブの設計

Society

急激な景気悪化の中で、定額給付金はようやく決まったものの、今からようやく専門家の意見を聞くといったように、追加の経済対策は遅れている。政府は「100年に1度」の文句を繰り返す割には動きが遅いし、だからといって民主党も政局重視で経済状況が見えているかどうか疑問がある。今は政党を超えて、機能する政策を展開すべき時機だ。

ただ、解散するにせよしないにせよ、選挙が迫る中では、次の自分の選挙のことが気になるばかりになるのも無理もない。じっくり中長期の政策を考えて頂くために、選挙の間隔を長くするのも1つだと思うが、それは別として、どうしたら政治がより生活者のことを考えた方向に向かうだろうか。

政治家はこうあるべきだ、といった、あるべき論や精神論を好まない自分としては、インセンティブ構造の設計によって、上手く動いて頂くことができないかを考えたい。先日も、地方自治体の公務員の給与を、自治体の平均給与や、税収に連動してはどうか、ということを書いたが、政治家についても同様である。

今、日本経済の建て直しが急務なのは確かだが、経済はあくまでも豊かな生活を実現するためのhowであり、それ自体が目的ではない。最終的なゴールを「生活者の幸福度の向上」とすると、そのためには、どんな生活になっていればいいかを3つ程度で考えれば、「便利で豊かな生活」「安定した生活」「持続可能な生活」でどうだろうか。これを実現するために、「経済」「雇用」「社会保障」が必要であり、政策の成功度合いを判断する評価指標として、それぞれ「名目経済成長率」「失業率」「出生率」を挙げてみる。政治は、この指標を達成するために、財源の配分を考え、政治家はその成功度合いで報酬が決まることになる。

政策指標マップ
図 政策指標マップ

もちろん、実際にはこれは物事をシンプルにし過ぎであり、この程度の指標だけで政治家を評価するのは全く現実的ではない。国としては、外交、防衛、環境、資源といった問題も重要だし、運用面でも、まともに政治をしようとしたらカネがかかるのに、政治家の収入が不安定になってしまったり、何らかの評価指標を定めた瞬間にその指標を達成する間違った適応に動いてしまう可能性は高い。

しかし、この政策指標マップを考えること自体に意味がないだろうか。例えば、同じ経済であっても、人によっては、日経平均を指標にした方がいい、と考える人もいるかもしれないし、雇用についても、平均賃金を指標に挙げてもいい。何を指標にするか、ということが、その人が何を重視しているか、どういう日本にしたいと考えているか、を明らかにするからである。

選挙ともなれば、実現できるか実現できないか分からない総花的な公約(マニフェストでも何でもいいが)が掲げられるが、結局その政治家が何を重視しているのかはなかなか見えてこない。課題先進国として、考えなければならないことが多過ぎるからこそ、各候補が(3つ程度の)どの領域を重視するのか、何を指標として挙げるかを示すことによって、政策観がクリアになるのではないだろうか。

Posted: 2009年03月17日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
Amazon Search(関連しているかもしれない商品)
コメント

総論にまったく同意だけど、後半へだんだん行くに従い、方向性に羅針盤が失われ彷徨ってる感じが、今の日本の状況にピッタリって感じですねぇ。感心していても仕方ないんですけど。

Posted by: ト : 2009年03月17日 05:07

今日は~^^またブログ覗かせていただきました。よろしくお願いします。
モンクレール http://www.japan2moncler.com

Posted by: モンクレール : 2013年01月16日 16:46
コメントする









名前、アドレスをブラウザのcookieに登録しますか?