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Columns: Society

「どうなる」ではなく「どうする」

Society

野田首相は来週にもTPP参加を表明することになりそうです。

[society] TPP参加問題、首相10日にも決断 「国益を実現」  :日本経済新聞

TPP参加で、日本がどうなるか、という議論が各所で起きていますが、賛否のそれぞれの立場から極端な解釈、陰謀論を含めてあまりにも多くの意見があり、ますます分からなくなってきます。しかし、具体的な条件が交渉可能なものであるのであれば、「どうなる」ではなく「どうする」を政府は説明すべきでしょう。つまり、

1)TPP参加によって何を実現したいのか? (目標)
2)それを実現するための、産業ごと・領域ごとの勝ち取るべき具体的な交渉条件項目は何か? 達成できない場合離脱するということで良いか?
3)原則関税撤廃によりマイナスの影響の出る産業への具体的な支援策はどうするのか?

といったことです。こうした主体的に目指す具体的な内容が明らかでないまま、バスに乗り遅れてはいけない、だけでは国民的議論も何もありません。具体的に説明されてこそ、その目標は広く合意できるものなのか、交渉条件は納得できるものなのか、支援策は有効なのか、財源は十分か、ということが議論できます。「関税撤廃に例外が認められるかもしれない」といった曖昧な観測を示すのではなく、「認めさせる」とコミットメントを示すべきです。関税撤廃以外にも、公的医療保険(*1)や雇用・労働への影響は多くの国民にとって重要な関心事です。

[society] はてなブックマーク - 日本農業新聞 e農ネット - 医療自由化目標 「入手していた」 米国文書で厚労相

米国政府がTPP交渉で、公的医療保険の運用で自由化を求める文書を公表していたにもかかわらず、日本政府が「公的医療保険制度は交渉の対象外」と国民に説明していた

(*1)各省庁でまとめられたTPP協定交渉の分野別状況 (pdf)では、21の分野が挙げられていますが、公的医療保険制度は含まれていないとしています。

交渉ごとは手の内を晒さないというのが基本ですが、今回の場合はむしろ逆です。すでに参加している国の間で協議されている条件が不透明な中では、日本国内でコミットメントを示すことで、牽制する効果が多少なりとも生まれるはずです。

ただし、すでに日本にメリットのある条件を盛り込む時期にはない、という指摘もあります。もし、すでに他国間で決められた条件を丸呑みするかどうかだけ、という段階に来ているとすれば、それこそ「どうする」ではなく「どうなる」にしかならず、交渉上極めて不利な立場に置かれることになります。当初、民主党の交渉力に不安はありつつも、どちらかというと好意的に見ていましたが、こうなると考え直す必要がありそうです。

[society] はてなブックマーク - 東京新聞:TPPルール 主張困難 米「参加承認に半年」:経済(TOKYO Web)
[society] はてなブックマーク - 「TPP」とは一体何か?国家戦略室の資料を読めば問題点がわかる - GIGAZINE

企業の6重苦の1つにも挙げられる自由貿易協定の遅れが問題であることは確かであり、消費者の利益にもなることから、自由貿易自体は推進すべきですが、TPPに条件交渉の余地がもうないのだとすれば、今回の参加には疑問符がつきます。他人が作ったルールに乗るのではなく、自分がルールを決められる(少なくとも交渉できる)土俵を選ぶべきです。日本の場合、TPPに参加しない中国との関係も重要になります。米国を含めて個別のFTA/EPA交渉を目指していくこととのメリット・デメリットを含めて考えるべきではないでしょうか。

Posted: 2011年11月04日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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