◆ まみむめも - 魔魅夢MEMO ◆ HOME
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『砂の魔術師アリジゴク』読了。→レビュー。
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現在オリンピックが行われている国オーストラリアは、言わずと知れた有袋類の国だが、乾燥地帯であるがゆえにアリジゴクの王国でもあるらしい。後半著者、が自説の実証を求めて訪れたオーストラリアでの研究滞在記が面白い。五輪中継や観光案内とは一味も二味も違ったオセアニア大陸の自然風土を紹介してくれる。
思えばオーストラリアはイギリスから流刑者の送られる辺境の島であったのだね。江戸時代の八丈島みたいな位置付けだ。もちろん入植者の方が多かったのだろう。先住民アボリジニの部族は、土地を求めるヨーロッパ人に殺されたり、彼らが持ち込んだ天然痘・麻疹・結核などに抵抗力を持たないためこれらの疫病にやられたり、多くが絶滅に追いやられた。先進国=人道的で清潔、後進国=蒙昧で不潔、という図式が幻想であり、むしろ逆であることが良くわかる。キリスト教の神の愛とやらは異教徒のアボリジニには及ばなかったらしい。現代のオーストラリアはどうか。聖火最終ランナーにアボリジニが選ばれたことに根強い反感があることが報道されている。根強いのは白人の差別意識か。自分たちだけが神の子であるか、少なくとも神の長子であると思っている白人が多いのだろうなあ。自分の国だけが「神の国」と思ってる指導者を持つ国も一緒だって?まさしく。
この岩壁画を見てアボリジニの5万年の歴史と文化に思いをはせる。
しかし、この絵、「籠を背負う女性」というより「人間の足を持つカマキリ」に見えるのだが。
◇
高橋尚子のあだ名「Qちゃん」の由来諸説紛々
- キューリのQちゃんが好きだから
- 訳のわからない行動をするのでQuestionのQちゃん
- アルバイトでダイアルQ2の仕事をしていた
- 九官鳥の九ちゃんを飼っていた
- 本籍がキューバらしい
- スタートする前に、いつも坂本九の「上を向いて歩こう」を聴きながら踊るから
- 年齢が9才だから
- バストがQカップ
- お灸好き
スレッドはまだ続いているようだが、さすがにネタぎれかな。笑わせてもらいました。
だれか、意外性のメダルはいないかと思っていたが、でたね。レスリングの永田選手。ノーマークで銀メダルは凄い。日本人はグレコローマンスタイルは元々弱いんだよね。フリースタイルはどうだろう。高田裕二や富山がいたころは他国の選手が恐れて他の階級へ逃げると言われたくらい強かったのだが。彼らもモスクワオリンピックボイコットの被害者。
ドーピングで女子体操の金メダルを剥奪されたルーマニアは、2、3位までも返上する上、剥奪された当の選手は体操やめるそうな。温厚な日本人としては、そこまでしなくてもと思うけど、柔道の例の大誤審などはこのくらい(ポーズでも)怒っても良いのかもしれない。歯切れの悪い男性役員にくらべ、女子の山口香コーチの抗議の声はガンガン響いてたなあ。もともと美声だが夫君は英国人だし英語での喧嘩には慣れてるのだろう。頼もしい。
田村亮子バッシングがYahoo掲示板などで起きている。色々言われる要因はたしかにあるのだろうが、容貌をあげつらうとはひどい話だ。「やわらちゃん」と呼ばれたのがまずかったのかもしれない。本人が言い出したわけでもないのに、漫画の猪熊柔と比べてどうだこうだなどといういかにもオタクな輩が世の中にはいるのだねえ。なんとも非生産的なことだ。
そこへいくと高橋尚子は「Qちゃん」=オバQだから、安心だ。あだ名の由来には諸説あるけど、一番まゆつばで一番面白かったのは、尚子の「尚」の字が毛が3本のオバQに見える、というもの。う〜む、たしかに見える。
高橋の金メダルは米国でもかなり話題になっているらしい。米国選手の最高は48位だというし、陸上王国アメリカとしては気になるところだろう。
金沢イボンヌを見ていると、日本人は白人や黒人には勝てないなんて言ってるのが馬鹿馬鹿しくなってくる。「日本人」という人種はいないのだから、どんどん白人や黒人や混血の日本人が増えてくればそんな問題自体が存在しなくなってしまう。クリスティン・ヤマグチやミッシェル・クワンも米国人だし。
一番いいのは世界中で混血が進み、人種的特長と国や地域が一致しなくなってしまえば、現代の争い事のいくつかはなくなってしまうことだろう。もちろん簡単にはいかない。「人種のるつぼ」と言われる米国も全然「るつぼ:melting pot」ではない。なぜなら全然melt:溶けあっていないから、という話も聞いたことがある。
◇
京極夏彦『狂骨の夢』(講談社文庫)、谷川健一『日本の神々』(岩波新書)購入。
だって可愛いじゃん。
女子マラソンの表彰台、笑顔を見ながら「う、か、かわいい・・」。それはともかく、黄白黒と綺麗に三人種が並んだ表彰台だった。IOCは五輪を象徴する映像として、この表彰シーンを使うのがよろしかろう。
しかし、スポーツ新聞の一面がのきなみ「巨人優勝」なのはどういうわけだ?かと思うと何年か前のヤクルト優勝の翌日の一面は「貴ノ花宮沢りえ婚約」だったし。新聞社のマーケティングが良くわからん。読者をなめてるのだろうか。
関西のスポーツ紙(もちろん報知を除く)はマラソンが1面だそうな。これも阪神が優勝だったらそうはいかなかったろう。ん、陸上の金メダルって、阪神優勝よりひさしぶりなんだ。やはり凄いことだと、また実感。
当日のテレビ朝日の中継はCMのあまりの多さに抗議電話殺到だそうな。民放だから仕方がないが、競技の性格上CM挿入ポイントの難しいマラソンは、NHKが担当するべきですな。
私はいつも通り泥のように寝坊したので、結果はわからないようにしてNHK衛星の録画中継(もちろんノンCMの完全放映)でじっくり観た。大正解。NHKハイビジョン放送は情報量も多くて(アップダウンの数値なども出たらしい)もっと良かったらしいが、これは仕方がない。
増田明美のきれいな声の解説も、ツボを抑えた出しゃばりすぎない、いつもながら好感のもてるものだった。(もちろんアトランタの宮原解説者と比較してるわけだが)
一度あの松野明美の、スーパーハイテンションな解説というのも聞いてみたいような気がするが、しかし、すごいだろうな。もしも実現するなら高橋尚子の出ていないレースにしてもらいたいものだ。
ライブ感覚はこの
Yahooの掲示板のチャットと化した実況中継を読むと、不思議と臨場感が味わえる。ゴールの瞬間の大量の書き込みのところにくると、感動がよみがえってじわっときたりする。う〜む、高橋ファンは多いのだね。
Yahooの掲示板からちょっと面白いのを転載。(トピック「高橋尚子は金メダルとれる?」 のメッセージ113)
TBSに出るらしいが・・・
モーニング娘がとぼけた質問するんだろうな・・・やめてもらいたい、つーか同じ空気吸ってもらいたくない。
ククク、同感。
◇
昨日のミス五輪、シンクロダイブのスイスの選手と書いたのは、三段飛びの金銅の選手を見たら、ちょっと勇み足だったようだ。もう、どうでもよいけど。
◇
さて、そろそろオリンピックネタも終わりにしよう・・・・と思ってはいるが、はたして。
高橋尚子は今回のオリンピックで私がひそかに一番応援していた選手。(二番はビーチバレーの佐伯美香さん)なぜ自分が走っていないのに心臓がバクバクするんだと思いながら見ていたが、終わり良ければすべて良し。笑顔も見られ嬉しそうな声(好みの声質)も聞け、余は満足である。
サングラスをかなぐり捨てて一気にスパートし相手を引き離したところなんて、ぞくぞくしてしまった。だいたい日本の女子陸上陣のコスチュームの地味さというかダサさというか気に入らないのだが、そのハンディにもかかわらず、高橋の胸を反らした腰高のフォームには官能性を感じる。汗臭さや暑苦しさと違う、肌の香りや息づかいが伝わってるような気がするのだ。助平な妄想であることはその通りだが、レース後のインタビューで本人が「自分の体と対話しながら機をうかがっていました」と語っていたのを聞いて納得した。42.195kmを走りぬく過酷な肉体の内側に潜む繊細な精神。それが精密機械のような走りの外側に滲出して、ある風情となって私に伝わってきたのだろう。(妄想妄想)
◇
そろそろ私的ミス五輪が気になってきたが、美貌はシンクロナイズド・ダイビングのスイスの代表がとんでもない美人であった。モデル顔なので魅力を感じるというわけではないのだが、美人度は抜群。成績もあまり良くなかったので、もうTVに映ることもないだろうと思われるのが残念。
スタイルというかナイスバディ度は、陸上100m4位のオッティ選手の素晴らしい肉体がわたし的には一番。なんと4度目のオリンピックで40歳だというのだから驚きだ。
女子百景で描いているブラックビューティなシリーズはこの人が一つの理想である。
柔道の誤審は悪意というより審判の能力の低さが原因らしいが、ひどいものである。思い出すのはボクシングで見たあまりにひどい二人の審判。
ガッツ石松が世界ライト級に挑んだ試合。チャンピオン、ロドルフォ・ゴンザレスに見事な右を当ててダウンさせた。これをレフェリーはスリップと宣言し、グロッギーで立ち上がれないゴンザレスの両手を持って無理矢理に引きずり起こしたのである。もちろん石松は続くラウンドできれいにKOしてベルトを奪取した。そのあと解説席に現れた石松の奥さんは、その別嬪ぶりでわれらを瞠目させた(美女と野獣!)のだが、それは別の話。
二人めは審判というより運営スタッフだが、世界フライ級チャンピオンだったユーリ・アルバチャコフがタイで行った防衛戦。ユーリは現地の挑戦者を得意のピンポイント・クロスでダウンさせたが、かろうじて挑戦者が立ち上がった途端、ラウンド時間は30秒も残っているのにゴングがなってインターバルになってしまった。その上通常1分のインターバルが今度は1分30秒もある。差し引き、開始時間は一致したわけだが、あきらかに挑戦者のダメージの回復を狙ったあからさまなインチキ行為だ。そんな妨害をものともせず、ユーリは着々とパンチを当てて結局KO勝ちで敵地での防衛に成功した。
石松の奥さんになぜ驚いたかというと、彼がチャンピオンになってからのいわゆる「トロフィーワイフ」ではなく、無名時代にしっかり美人をゲットしてたというその手腕というかマジックというか、とにかく感心してしまったのだ。奥さんの方に見る目があったということか。
◇
インドアバレーからビーチバレーへ転向した佐伯美香選手の心境は、大企業をリストラされてベンチャー企業に入り、世界中に出張してがんばってたら会社は上場ボーナス十倍、元いた会社はバブルがはじけて倒産寸前、ああ良かった、ってなとこだろうか。
佐伯選手の試合ぶりは今回の日本選手の中ではビジュアル的には一番。もちろん極私的意見。
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『江戸バレ句戀の色直し』読了。→レビュー。
尻で書く のの字は 筆の遣ひやう
柔道100kg級、井上康生、たたずまいやエピソード(涙の父母物語)とか、まあ、なんというか、見てる方聞いてる方が気恥ずかしくなるような旧態依然たるテイストで、困ったもんですが、強いのはめちゃくちゃ強いなあ。文句のつけようがない。
すべて一本勝ちで、しかも決勝で一番見事に内股を決めるなんてのは、並みの役者ではありません。あのシーンは何回見てもエクタシーを感じるほど小気味よい。これぞ柔道。
3回戦の相手などは、引き手を取られるのを嫌がって自分で自分の襟を持って遠ざけてた。まるでわざと胸を見せてるようで気色悪かったけど、それほど怖かったと言うことだろう。
たたずまいといえば競泳銀メダルの中村真衣選手はいいです。浅香光代を若くして大きくしたようで、豪快でかっこいい。快進撃のソフトボールの抑えの投手、高山選手もすごい。プロレスの橋本真也の妹だといっても通用しそうな風貌は、威圧感たっぷりで女性版大魔神の称号が似つかわしい。
う〜む。開幕する前はさほど興味なかったけど、いざ始まると観ちゃいますなあ。長野のときもそうだったけど。
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『デモンシード』読了。→レビュー。
昨日の柔道、吉田秀彦の試合。投げられたのを防ごうとしてついた肘が逆に曲がるシーンはさすがに目をそむけてしまった。かわいそうに。どんな関節技より、ああいう事故がこわい。田村亮子も泣いただろうなあ。
私が数年前肩の骨折で入院したときも、同室に脱臼の患者さんは結構多かった。脱臼自体はすぐ直っても、傷つけた筋肉や神経の回復に時間がかかる。一番重症だったのは股関節脱臼の若いあんちゃん。彼女と歩いていたところ数人の男と喧嘩になり、投げられそうになったのでふんばったら抜けてしまった(!)ということだが、自由度の高い肩関節と違って、股関節は骨頭が腰骨に3分の2以上しっかり嵌まっているのでそう簡単に外れるものではない。レントゲン写真を見せてもらうと、骨が細く骨頭も小さい。「ふんばっただけで抜けちまうんなんて情けない」と言っていたが、若い人は背の高くてかっこいい反面、骨が細い人が多いようだ。
なにしろ命にかかわる病気ではないので、笑いの絶えない明るい病室で、それぞれのレントゲン写真もベッド脇に置かれていて自由に見ることができた。肩や鎖骨の患者同士で写真を見せ合って、手術のビスの頭がプラスなのを発見したりして大笑いしたものだ。そのときの20代前半の若い人の骨は、みな私の4分の3位の太さしかないように見えた。別に自分の骨太自慢をしてるわけではなく(骨折するくらいだから同世代ではたいしたことないのだろう)世代で確実に肉体が変化してることを実感したということである。
骨は栄養や日光浴も大切だが、肉体労働などで負荷がかからないと太くはならない。柔らかく脂っこいものばかり食べて、交通機関の発達した環境では、骨太の底力のある肉体にはなりにくい。今後ますます日本のメダル獲得は難しくなりそうな気がするが、間違いだといいなあ。
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『デモンシード完全版』読了。→レビュー。
オリンピック(国際試合)の柔道は、日本国内の試合と違って、あまり柔道らしくない技が見られるのも楽しい。裏投げ、すくい投げ、諸手刈り、関節技。田村亮子が金メダルを獲った日、別の女子選手の戦いで珍しいシーンを見た。
完璧に腕十字固めが決まったが、解説の方が「女子は柔らかいので決まらないかも」と言ったとおり、決められた方が自分の肩を中心にグルグルまわって外そうとする。外すまでは至らなかったが、結局「待て」の声まで粘りぬいてしまった。ちょっと肘を確認しただけで戦いはじめたから、たいしたダメージではなかったようだ。
「サル手」の持ち主がいるとか、グレイシー柔術のだれそれがそうだ、とかは聞くけど、実戦で見たのは初めて。ああいうのはトレーニングより持って生まれた体質なんだろうなあ。女子の柔道選手では珍しくないのだろうか。
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日曜日に見た京劇の『
孫悟空』で、悟空が術をかける前に、必ず「
アマミフ!」と呪文?を唱える。「カメハメハ」みたいな感じだが、はじめて聞いた。漢字はアは「阿」フは「呼」。あとはJISになくて表示できないけど、マは女偏の難しい字、ミは「口」偏に「米」だ。
岩波文庫の『
西遊記』でも読んだ覚えないし(それとも出てるのだろうか?)どんな意味なんだろう。気になる。知っている方がいらっしゃったら、教えてください。
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『影が行く』読了。→レビュー。
大崎茂芳『クモの糸のミステリー』(中公新書)、渡辺信一郎『江戸バレ句戀の色直し』(集英社新書)購入。
田村亮子の決勝戦。もちろん金メダルはめでたいが、見る側としては全盛期を思わせる切れ味の業を見せてもらえたのが嬉しい。相手が仕掛けてくる組みぎわの内股といういかにも田村らしい技。はじめて注目された十年前の福岡国際女子の「内股すかし」を思い出してしまった。
60kg以下級優勝の野村選手の「隅落とし」もこれぞ「やわら」という見事さ。相撲だと下手ひねりか上手ひねりか。
いやあ、いい仕事見せてもらいました。
◇
池袋の東京芸術劇場に京劇『
孫悟空/大鬧天宮』を見に行く。中国湖北省京劇院の公演。と言うより、主役の程和平の見事な演技と信じられないような体技のワンマンショーと言っていい。どんなに凄いか表現のしようがないが、ジャッキー・チェンと池谷幸雄と染之助染太郎(の肉体労働担当の方)を足して3で割って2掛けたような体技に、唄と演技も半端じゃなく出来るのだから、錦織健と勘九郎を足したようなものか。
中ホールだったので、大道具などはかなり手抜き気味だったが、衣装のビジュアル面の鮮やかさは素晴らしい。如意棒一つも黒と銀のスタイリッシュなのと銀一色のとを場面に応じて使い分けたり芸が細かい。天女役の女性が京劇では珍しく脚線美を披露してくれたのも得した気分。
いやあ、いい仕事見せてもらいました。
シドニーオリンピックの開会式。マシントラブルにハラハラさせられたけど、水の中から聖火が灯る演出は秀逸だった。それでもバルセロナの、火箭という原点に還ったような素朴な感動はなかった。最後まで隠された最終ランナーの正体(アボリジニ女性選手)も、アトランタのモハメド・アリの感動にはさすがに及ばない。
そのアリの姿は観客席にあった。傍らには幼なじみだった4人目の伴侶がよりそい、20世紀最大(最強かどうかは知らない)のアスリートは平穏な時をすごしているように見える。静かに観戦するという状態だったこともあるだろうが、パーキンソン病特有の体のふるえも見られないようだ。不治の病とされていたが、近年随分治療法も進歩したと聞くし、アリの肉体が良い状態にあるなら結構なことだ。
こちらも心がそこはかとなく暖かくなり、気持ち良くTVをオフにすることができた。アリに何度目かのありがとうを言おう。
それにしてもオリヴィア・ニュートン・ジョンはなんであんなに若いのだ。
東海地方の水害は一段落ついたのだろうか。水はひいても、亡くなった方はもちろん、失われた財産生活手段はもどってこない。こちらの公共事業なんぞ少々やめても大規模な救済予算を組んだり、こういうことに税金を使ってもらいたい。もちろん三宅島にも。
たかが水害なのにと思う。不謹慎な意味ではない。もうすぐ21世紀なのに、と思うのである。巨大なロボットが現れ吸水マシンを駆使してあふれた水をあっと言う間に処理してもよさそうなものではないか。台風の進路ぐらい制御できても罰は当たらない。
しかし現実の、20世紀末の日本の、人類の科学力はこんなものだ。素人が簡単に言うんじゃない、と笑われるかもしれない。でも、人間は月に行ったこともあるんだよ。しかも30年以上昔のことだ。今の若者が生まれてもいない頃である。当時、1970年より早く人類が月に到達すると予想する科学者やマスコミはほとんどいなかった。しかし、アメリカが(ソ連との競争という要素もあり)富と力を結集してやりとげたのだ。この科学技術の進歩のスピードに人々は驚き、21世紀にはどんな予想もつかない技術が花開き、ばら色の未来が待っているかと夢想したものだ。
そして今、21世紀目前である。身の回りの21世紀らしいものと言えば、インターネットと携帯電話、後はカーナビくらいのものか。カー本体は化石燃料を燃やして21世紀も走り続けるらしい。月到達のときと逆の意味で全く予想ははずれたわけである。
人類の潜在能力は本当はもっとあったのだと思う。世界がもっとその気になっていれば、30年前に夢見た21世紀を実現することも可能だったろう。宇宙旅行も災害復旧も交通手段もそうだし、世界中の貧困や病苦もいささかなりと解決できたかもしれない。しかし、そうはならなかった。人々のエネルギー・富・能力は違う方向に使われたのだ。
アポロ以後、世界経済の牽引車たるアメリカの国力はベトナム戦争や冷戦に費やされた。ソ連を始めとする共産圏崩壊以後も、民族戦争や宗教戦争は終わらずむしろ激しくなっている。失われた30年はもう返ってこない。「人類の進歩」は21世紀から22世紀に先送りされたようだ。
それとも、「人類の進歩」という考え方自体、幻想だったのかもしれない。
◇
『悪への招待状』読了。→レビュー。
最近読んだ中では出色の面白さ。
と言っても可愛い夢ではない。書くのに躊躇するような馬鹿馬鹿しい夢であるが、書かないのももったいないので書いてしまおう。
一人ベランダに立って外を見ている。抜けるような気持ち良い青空である。なんだか股間が涼しいのでたしかめてみると、フクロというか玉というか、はみ出している。夢の中でなにを思ったのか、右足をあげて足の指でフクロの皮をはさんで足をおろすと、はさまれた皮膚は下まで伸びるではないか。左足でも同じことをすると痛みもなく素直に伸び、股間から二等辺三角形状に広がった。次に、足ではさんでいるのはそのままにして、両手で上側をつかんで上に引っ張ってみる。これも難なく伸びてシーツのような長方形を形づくる。今度はその態勢のままベランダから外へ飛び出してみる。2、3階分落ちたところで、風にふわりと乗り、ゆるやかに飛び始める。いつのまにか周りは何十階もある高層マンションだらけになっている。それらの建物のたくさんのベランダから、大勢の男たちが次々と私と同じように空中に飛び出してくる。青空を背景にファンタジックな光景だが、まるで大きな油揚げが何枚も飛んでるようで、間抜けな光景でもある。夢の中では別に間抜けともなんとも感じていない。
それだけである。夢分析などしてはいけない。寝る前に息子と娘相手にしゃべった下らない冗談をそのまま夢に見ただけなのだ。子供たちはお説教よりこの類の禄でもない馬鹿話に迷惑しているかもしれない。まあ、許せ。
TVは良く見てるが「ドラマ」というのはほとんど見ない。古畑任三郎の再放送も終わってしまったし。かかさず見ているのは『
ERV〜緊急救命室』と『
二人は最高!ダーマ&グレッグ』の二つだけ。
『ダーマ&グレッグ』は、ギャグのたびににゲラ笑いが入るタイプのコメディで、ヒッピー娘とヤッピー青年というアンバランスな夫婦の話。ダーマ役のちょっとシャーリー・マクレーンに似たベリベリキュートな(身長180cmの)ジェナ・エルフマンは、エミー賞ノミネート&ゴールデングローブ賞受賞のバリバリのコメディエンヌだ。
何週か前にダーマがお店をはじめるという話があった。ヒッピーの友人と内装外装楽しく準備を進めるのだが、肝心の「何を売るのか」は決めていないし、決めようとする気配もない。エリート検事で常識人の夫グレッグは理解できず必死に忠告するが、ダーマも友人も耳を貸さず、そのまま開店の日を迎えてしまう。売るものは何もないが、それでも近くの駅の時間待ちに使ったりする客などが入ってくる。だれかが新聞を注文するとダーマが「誰か新聞持ってる人いない?」と声をかけ、持ってる客(?)は心よく欲しい人にあげるというシステム(?)。
数日のうちに満員の盛況になるが、売上はもちろんゼロ。グレッグはあきれかえるが、ある日ダーマが「お店はやめたよ」と言う。やっとあきらめたかと思ったら「(有名な)チェーン店があそこの権利を売ってくれっていうから売ったの。儲かっちゃった」。言葉のないグレッグ。「ビジネスって面白いねえ」というダーマのセリフで落ち。
これで連想したのが、ネット上の個人のサイトに「おたくのページにバナーを貼ってくれたら売上のン%を進呈」なんてDMが舞い込むケース。ちょっと違うかな。しかし、だれでもTV番組のようなコンテンツが作れて人気が出れば広告の対象になる、というのはいい時代ではある。広告を断る楽しみもあるし。
『ダーマ〜』に話をもどすと、「ヒッピー」という言葉はまだ死語ではないのだね。日本の新宿界隈に昔「フーテン」という「族」がいたのを、どのくらいの人が知っているだろうか。寅さんではないよ。
昨日は防災という名の軍事訓練でやかましいことこのうえなかった。石原大将軍の「自分の国は自分で護る」はいいけどさ、潜水艦沈んでも「わが国だけで救助できる」とつっぱったどこやらのプーチンと言い草や発想が似ているね。三宅島被害を尻目にバカンスというのも一緒だし。阪神大震災の時に検疫を理由に救助専門犬の入国に足止めを食わせた輩もお友達だな。
なんでもいいが、護るべき対象は「国の民の生命生活」であって「国の誇り」とか「国の面子」とかではないということを「日本軍」に徹底させてもらいたいものだ。
◇
「フジっ子煮」に青カビで回収だそうだが、「青カビ」や「黄色ブドウ球菌」は回収はもちろんシステムの徹底検査までやらねばならないだろうけど、「虫」や「ボルト」の一匹二匹で全面回収までする必要があるのだろうか。
この前の続きになってしまうが、私の嫌いな言葉に「
あってはならないこと」というのがある。「あってはならない」って言ったって、人間間違うときは間違うものだ。それを「間違ってはならない」とするから、間違いを隠す隠蔽体質が直らない。「原発は絶対安全」と言い張るものだから、「事故のときの対策」を事前に考えておくことができない。住民も「事故のとき」という前提に拒否反応を示すだろう。「絶対安全って言ったじゃないか」と言ったって原爆コンロが絶対安全のはずがない。
例えば、
この程度のことで一々クレームをつけてはいけない。
逆に、
こんなことがあったら勇気を出してクレームをつけよう。
映画『
ホワイトアウト』は出足好調らしいが、出来もまずまずのようだ。早速観てきた妹に聞くと、原作に忠実なのはいいが時間の制約からどうしても説明不足の部分が多いらしい。原作を読んでから観るのが吉ということですな。原作は間違いなく傑作です。
私が最も信頼する映画評サイト「
m@stervision」で『ホワイトアウト』を「クリフハンガーなダイハード」と評していた。これは私の読了記の
原作の方のレビューと同意見です。なんだか、ちょっと嬉しい。
◇
BS2『
大船撮影所の64年』。要するに松竹映画史。これが東宝だと黒澤明、ゴジラ、とわかりやすいが、松竹なので小津安二郎、木下恵介、大島渚、山田洋次というラインナップ。
「寅さん」で終わるかと思ったら、ラストは吉原公三郎監督新藤兼人脚本の名作『
安城家の舞踏会』に戻って終わるという渋い構成。戦後没落してゆく華族の一家が最後に開いた舞踏会というロマンティシズム。父親役の瀧沢修と娘役の原節子のダンスシーンはヴィスコンティの『
山猫』のバート・ランカスターとクラウディア・カルディナーレのダンスシーンに匹敵する。考えて見れば『山猫』も滅びゆく貴族の話であった。
「伝説の女優」原節子の主演映画は、昔名画座で小津や黒澤の監督のを何本か見たことがある。若いときはわからなかったが、ひさしぶりに原節子を見ると、実に大女優のオーラを発している。その輝きは日本女優史上でもたぶん一番だろう。いまどきのタレントさんはもちろん及ぶべくもない。
うむ、なんとも爺むさい意見であるな。自分がこんなことを書くようになるとは昔は思わなかった。まあいいけど。
◇
井波律子『
中国のグロテスク・リアリズム』(中公文庫)読了。
小林恭二『悪への招待状』(集英社新書)、古典SFホラーアンソロジー『影が行く』(創元SF文庫)購入。
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