Columns: Partner Style
恋愛におけるセールス・マーケティング・バランス
Partner Style前回は重い話だったので今回は軽い(?)、loveless zeroっぽい話で。
ネットでは、いつも「モテ/非モテ」の話題に事欠くことがないが、個人的にはしっくりこないものを感じることが少なくない。というのも、いわゆる「非モテ」に属する人の多くは、モテ(*1)たいというよりも、大切なパートナが1人いればそれでいいと考えているのではないか、そしてその大切な1人が見つけられないことに悩んでいるのではないか、と思うからである(*2)。考えるに、後者は「モテ/非モテ」の水準ではなく、むしろ「可恋愛/不可恋愛」の水準なのではないだろうか。
(*1)ここでは「モテ」の定義は、「特に積極的にアプローチしなくても、皆(あるいは意中の相手)から好かれる状態」としているので、もしこれがズレていたら、もちろん話は違う。恐らく、世間で使われている「(広義)モテ」は「可恋愛」のことを指していると思われる。
(*2)って小谷野敦も同じこと言ってなかったか。
女性が積極的になった時代にあっても、(カルい人間に見られることを避けるという)戦略的なものか、女性から男性にアプローチするよりも男性から女性にアプローチする場合の方が、今なお多い。こうした状況では、この「モテ/非モテ」と「可恋愛/不可恋愛」の水準は、男女で非対称的な様相を示すことが、容易に想像される(図1)。つまり、女性においては「モテ/非モテ」と「可恋愛/不可恋愛」は比較的近い水準にあるが、男性の場合は、大きく異なる水準なのだと考えられる。
ここで、おもむろにタイトルの「セールス・マーケティング・バランス」の話になるが、
「マーケティング」=見込み客を集めること。
「セールス」=見込み客との商談をまとめること。
と考えると、「モテ」と「恋愛(成就)」の関係は、「マーケティング」と「セールス」の関係に対応しているということが言える。世間では、営業活動と恋愛活動の類似性がしばしば指摘されているが、上記の基本定義に照らし合わせれば、「見込み客」を集めることが目的の「恋愛マーケティング(=モテマーケティング)」と、「商談」をクロージングに持って行くことが目的の「恋愛セールス」とでは、違う次元の話であることが分かる。
もう少し掘り下げてみよう。ある人からある人への気持ちを全く知らない状態から、恋人状態まで段階的に示したのが図2である。
図2 恋愛関係の発展段階とマーケティング/セールスの役割
「恋愛マーケティング」では、まず、「見込み客(=恋人候補)」そのものを探すことから始まる。職場・学校のような身の回りに加えて、昔であれば地域や結婚相談所、今なら出会いサイトやその他のネット、出会いパーティなど出会いの場所は増えている。次は、知って貰う段階(電話番号やメールアドレスの交換)、それと並行してファッションやコスメのような身だしなみや、普段の会話や振る舞いを磨くことで好感を持って貰うことがある。ターゲットは次第に絞り込まれて行くにせよ、基本的に「1対多」の活動である(*3)。「恋愛マーケティング」は、大体、最初のデートに誘ってOKを貰うところまでが対応すると考えられる(*4)。
(*3)最近は「ワントゥワン・マーケティング」なんてのも重視されているが、これも何気に恋愛に適用可能か。
(*4)ただ、前述のように「口説く側」「口説かれる側」の非対称性ゆえに、この時点で男性→女性の好感度はそれなりに高くなっていることが多いが、女性→男性はとりあえず乗ってみる、というフェーズであってそこまで好感度が上がっていないこともあるだろう。それでも、好感度がマイナスに振れていたらOKは貰いにくいと思われる。
一方、「恋愛セールス」は、デート以後口説いてOKを貰うところまでなので、ほぼ「1対1」の活動となり、言語的・非言語的なコミュニケーションの中でお互いの理解を深め、感性や趣味、あるいは性的な相性を確認しながら、自分とつきあうことが相手にとっても良いことであることを納得して貰うことが目的となる。「仮説営業」の重要性も共通している。
この、恋愛における「マーケティング」と「セールス」はどちらが欠けても成果に結びつかないが、図1の非対称性から、女性と男性とでは、「マーケティング」と「セールス」とでの重視すべきバランスに違いが生じてくることが想像される。(もともとの「商材が強い」場合と、「商材が弱い」場合では、必要な「マーケティング」や「セールス」の活動量に大きな差があることは、恐らく性別に依らないだろうが。)
すなわち、女性においては、「マーケティング」の重要性が非常に高いので、いつの時代もファッションやコスメに関する関心が強いのもうなづける。一方、男性においては、「マーケティング」も必要だが、「セールス」の重要性がより高くなっていると考えられる。「オシャレな何とか、目指します」、とか言ったような話は、もちろんお洒落であることは前提であって、「マーケティング」のフェーズで大事なことではあるが、それだけでは次のフェーズに進めないことには気をつけておく必要があると思われる。
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