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「社会人基礎力」を巡る議論
Societyhttp://d.hatena.ne.jp/yukihonda/20060207#p1
「社会人基礎力」を巡る議論が興味深い(是非コメント・トラックバックを含めて読んでみて頂ければ)。「社会人基礎力」は、経済産業省で設けられている「社会人基礎力に関する研究会」で提唱されており、「チームで働く力」「前に踏み出す力」「考え抜く力」といった3つの力が挙げられているが、もっと具体的にして頂かない限りは「人間力」より多少マシなレベルでしかない、という話だ。しかし、ふと、自分に引き当てて、自分のチームに入ってきて欲しい人ということを考えてみると、何の事はなく、実務経験以外には「地頭の良さ」「前向きさ」といった何の事はないそれこそ平凡で曖昧な表現しか出てこないのである。それどころか、努力や訓練でどこまで身につけられる能力・スキルであるかすら怪しい。
これは1つには、事業変化が激しくなったり、プロジェクトベースで仕事をする中では、毎回必要となるスキルが変わるから、ということなのだと思う。短期間でクライアントの業界・業務を理解したり、技術・スキルを身につける必要がある中では、「未知なものを吸収する」「変化に対応する」ことが重要になっているから、ととりあえず言い訳してしまうのだが(欧米のようには容易にレイオフできず、ある程度の長期の雇用を前提とすれば尚更)。とりあえず、悪名高い「コミュニケーション能力」以外で、比較的汎用性の高いスキルということであれば、MBA的な知識や論理的思考力、ITを活用する力、語学力の3つが比較的ハズレが少ないように思う(特に語学力は一朝一夕で身に付かないし)。
そもそも、こういった採用基準への不明確さへの不満はどちらかというと、座席数の絶対的な不足によるミスマッチあるいはディスパッチの失敗にあるようにも思える。企業の寿命は30年とされ、将来の可能性が大きい企業を選ぶことが言われているにも関わらず、一部の大企業・優良企業に人気が偏っている実態があるのではないか。大学入試の時点では、出願の時点で比較的分散が効いていたものが、就職時には全く分散しなくなれば、運悪く落ち続けることもあるだろう(グローバル化によって進む非婚化と同じ)。何十倍もの競争率になっている人気企業においては、採りたい人が仮にたくさんいても、選抜せざるを得ないことから、ほんの感覚的なもので天国と地獄が分かれてしまうのも無理がないように思える。
もっとも、少子化による若者の絶対数が減少する中で、応募者が十分に集まらない企業においては、採用基準を明確にしてより応募さが集まりやすくする、ということはあるかもしれない。そこで、各企業にとって必要な「職業能力」とは何かということになるが、ある程度の規模の企業には企業独自の「職業能力評価基準」(pdf)のようなものがあるのではないかと思う。こういった基準は場合によって、企業の戦略そのものでもあるので、公開できない場合も多いかもしれないが、可能な限りでオープンにしていくことも、「ミスマッチ」を防ぐ意味で有効かもしれないというのが素人考えではあるけれども、とりあえず思いつくところである。
【関連url】
[bookmark] 社会人基礎力に関する研究会「中間とりまとめ」報告書の公表について 報道発表(METI/経済産業省)
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コメント先の人事課だけどなんか質問ある?も面白い。
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Googleの募集要項は割と明確かも。
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