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Columns: Partner Style

「見える化」

Partner Style

まとまった時間が取れなくてどうもタイムリなエントリが書けず申し訳ないですが。

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最近、一部の魅力的な男性でなければセクハラ扱いされるリスクの高い恋愛に関するアドバイスがWebに掲載され、物議を醸していたが、恋愛格差社会化を背景に、近年しばしば見かける女性の恋愛アドバイザから男性への噛み合わない「アドバイス」を巡る問題においては双方の歩み寄りが必要なように思われる。

基本的に、商品スペック(容姿、性格、価値観、カネ、仕事など社会的地位、といった恋愛主体が所有するリソース)や市場環境(学校や職場、その他コミュニティなどの環境。特に年頃の男女比率は大きい)が異なれば適切なマーケティング戦略や営業戦略が異なるのは当たり前である。むしろ誰にでも有効な銀の弾丸的アドバイスを求める方に無理がある。

その意味では読む側が自分に役立たないと思われる記事をスルーする「スルー力」こそが必要なのだが、あとは書く側として、「一定のルックスや性的魅力があることが前提です」とか「恋愛偏差値55以上の人を対象にしています」といったアドバイスの前提条件を記載することが、アドバイスの有効範囲という意味では誠実ではあるかもしれないが、本当に良いのかということである。

だが、より本質的な問題として、そもそも本来恋愛に関するアドバイスを必要としている不可視層へのアドバイスが可能かということがある。特に異性によるものの場合、普段視界に入っていない(物理的にはたまには視野には入っているのかもしれないが全くアテンションが注がれていない)人にアドバイスすることはそれほど容易ではないだろう。そこには想像力の絶対的な欠如がある。

例えば、この1年間、家族や店員、仕事以外の異性とは1回も話したことがない、とか、この30年間誰とも付き合ったことがない魔法使いです、とか、恋愛以前に同性の友人も余りいません、というような状況を果たして想像しきれるか、ということである。得てして、自分の身の回りにいる(一応見えている)異性を想起しながらアドバイスを組み立てるために、本来関心の強い層(「降り」ている層は別だが)には何の役にも立たない頓珍漢で的外れなものになってしまうのである。

ではその想像力を高めるための不可視層の「見える化」とはどのようなものだろうか。ここでは不可視層側の一定の努力も必要そうである。もともと「見える化」はトヨタを初めとして行われており、不確実性や流動性がますます高まる中で、現場の「見える化」や業務の「見える化」が企業において一種の流行言葉にもなっているが、「見える化」というよりも本来「見せる化」が正しいのだという。誰だって悪い情報、興味関心の薄いは見たくないものだが、見たくなくても否応なく目に飛び込んできてしまうような状況を作り上げることこそが「見える化」の本質なのだ。

であるならば、不可視層の「見える化」とは、まさにその「現場」から、生々しいルックス、スペック、境遇などをテキストやグラフィックを駆使してまとめ、一部の人にしか役立たないアドバイスをしている人に恋愛相談として送り続けることではないだろうか。「見えない」のではなく「見せる」のである。もちろん、それは個別のコンサルティング費を頂きますとか、単にスパムやキモメールとしてゴミ箱に直行するだけかもしれないのだけど、あくまでも懲りずに送り続けることである。

アドバイザ側も、プロであるならば、一段と視野を広げて頂くことが期待される。どうも、単に「こうなって欲しい」という、異性に対する要求とか要望にしか読めないテキストが散見されるからだ。「自分と未来は変えられるが、他人と過去は変えられない」のだから、単に他人の努力を期待するだけでは何も変わらない。一般的なコンサルティングの場面にも通じるが、行動を変えるのはあくまでも本人であり、だとしたらアドバイザができることは、気持ちよく行動を起こせるようにし向けることであるはずだ(いくら立派な提言でも何の具体的なアクションにも繋がらないのでは意味がない)。そしてそれは決して反感を買うような挑発的なスタイルではない。

「生理的に受け付けない」層や、普段周囲にはいない(見えていない)層を含めて現場の実態をよく見ること、そこからしかクライアントに届く言葉は生まれないのだと思う。その点、例えば「ひきこもりのための外出マニュアル」は「ゼロベースで考える」ということがどういうことなのか、ということを学ぶ意味でも有用だろうし、「くすぶれ! モテない系」は恋愛格差の「見える化」として成功しているのではないだろうか。

Posted: 2006年11月20日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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