Back Numbers | Home

Columns: Business

同質化戦略と乗り換えコスト

Business | Technology

最近、Linuxクライアントの普及の話がまた挙がってきているようだ。Ubuntuもいいし別にどちらでもいいのでは(好きなのを選べば、ただ一般の人にはVistaかMac、企業ならVistaを薦めるが)、というのが正直なところだが、「どちらでもよ」くなっているのにはいくつかの要因がある。

「どちらでもよ」くなった最大の理由が、WebメールやブログのようなWebアプリケーションや、日常的にアクセスするコミュニティWebサイトの普及と充実にあることはしばしば指摘されているが、そもそものUIの類似性もユーザの乗り換えコストを低減している1つの要因だと思われる。

もともと、WindowsはMacのデスクトップのメタファやルック&フィールを度々パクっているところが多々ある(FlyakiteOSXのように極限までMacに近づけようとする狂信的なUI拡張も3rdパーティから提供されている)が、これは、リーダ企業のやり方としてはごく自然でもある。チャレンジャー(というほどシェアがあるかどうかは別として)が差別化(この場合はUI体験で)しようとし、トップが潤沢な経営資源を活用して同質化しチャレンジャーの差別化要素をなくそうとするのは、いたってベーシックな戦略だろう。Netscapeに対するInternet Explorerの投入も、それによってOSのシェアがひっくり返るという訳ではないが、同様である。

しかし、UIの場合、差別化性をなくそうとして、デスクトップのメタファやルック&フィールを同質化した結果、かえって乗り換えコストが下がってしまった部分があるような気がする。Macのシェアが上がっているというニュースが出てきているのは、Macを持つことの喜び・満足感やiPod/iPhoneとの連携に、Webアプリケーションの普及が追い風だが、心理的な乗り換えコストの低さも広がりを後押しした可能性がある。想像がつかないが、Windowsが、Macと全く異なるUIを発展させてきたとしたらどうなっただろうか。

オンライン調査会社の米Net Applicationsが7月2日に公開した2008年6月の調査結果によれば、デスクトップPCにおけるMac OSのシェアが7.94%と、ほぼ8%となった。過去数カ月で急激な伸びを示したものではないが、ちょうど1年前の2007年6月に6.03%、2年前に4.29%、3年前に3.42%となっていたことを考えるとコンスタントな伸びだ。
Macの推定シェアが約8%に躍進 - @IT

さて、冒頭のLinuxはどうか。やはり乗り換えコストを減らそうとして、UIをMacやWindowsに似せようとしているのは、フォロワーがリーダやチャレンジャーを模倣しつつ、低価格(無料)で対抗するという意味では定番ではあるが、トラブル対応やアプリケーションの互換性を含めてユーザ体験が依然として劣るし、メーカのサポートがないことを考えれば、OSなどどうでもいい一般ユーザにはほぼ絶望的であり、とても模倣しきれておらず、本楽獲得すべきWindowsと親和性の低いユーザ数からすれば、むしろ、チャレンジャー(Mac)がフォロワー(Linux)を食っている面の方が強い。SONYがネットワーク対応デジタルフォトフレームでLinuxを採用しているように、全く別の領域を狙うか、PCなら仮にサポート面が解決したとして、昔から言われているように、それでなければと感じるキラー要素が他に必要だろう。

参考: [business] 草莽塾:七人の仕事人: コトラーの4つの競争地位戦略

Posted: 2008年08月16日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
Amazon Search(関連しているかもしれない商品)
コメント
コメントする









名前、アドレスをブラウザのcookieに登録しますか?