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Columns: Society

「閉塞感」の正体

Society

2003年にゴールドマン・サックスが発表したBRICs経済の予測(*1)では、2015年頃に中国のGDPが日本のGDPを抜く、というものであったが、日本の経済成長率が低迷し、金融危機を超えて中国が成長を持続させる中で(大規模な景気対策の底上げ効果を除けば、実態としてどうかということはあるが)、今や2010年にも中国に抜かれようとしている。

(*1)「“BRICs”、“ネクスト11”ってなに?BRICsの基本を学ぼう」など。

[society] 日本が「世界第二」の肩書きを失う時

そのような中で、日本は今や経済成長ではない新しい目標を持つべきだ、という指摘はしばしば見かける訳だが、一方で、「経済的な豊かさ」はもう十分だから、これからは「心の豊かさ」だ、という主張(上記は違うが)は注意してみる必要があるように思われる。

カネから心へ、という考え方はカネが十分であれば正しいのだが、カネが十分でない場合は、「精神論」と表裏である。ここ10年来、日経などでモチベーション論がしきりに取り上げられているのも、企業が賃金を上げ(られ)なくなっている中で、現場で何とか業務をまわして行かなければいけないことが理由の1つだろう。

「貧すれば鈍する」という言葉通りでもあるのだが、世帯収入が減り続け(これは世帯当たりの人数が減っていることが大きいが)、生活保護の世帯の増加(*2)やワーキングプアのような貧困問題に直面している国のどこが経済的にもう十分豊かだと言えるのか、ということである。

(*2)例えば「増加する生活保護世帯」(pdf)。

今の日本に閉塞感が漂っているのだとすれば、それは「心の貧しさ」なるものに原因があるのではなく、単純に「経済的な貧しさ」であり、それに加えて、高齢化による社会保障費負担の増大が確実なように、将来的にも豊かになれる見込みがないことに原因があるのではないか(*3)。だとすれば、つまり、日本がもはや経済的に豊かな国ではないのだとすれば、経済はもう諦めましょうと別の何かを求めるのは、あくまでもオルタナティブな選択肢であるべきと考えるのである。

(*3)企業においても、儲かっていない企業、成長戦略を描けていない企業の職場や社員が元気ということはなく、かなりの確率で閉塞感が漂っているか、殺伐としているだろう。

Posted: 2009年08月19日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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