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企業の意思決定スピードはどうすれば上がるのか

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日本の企業の問題として、「意思決定スピードの遅さ」がしばしば挙げられます。

「日本の企業を相手に商談をすると、必ず最後に『持ち帰ります』と言う。社内で何個もハンコをもらって決裁してからじゃなきゃビジネスが進められない。中国や台湾、韓国のメーカーは違う。プライベートジェットでトップが世界を飛び回って、トップ同士で直接交渉する。その場で納品の量から価格、時期まで社長がすべて決定するのだからスピード感が違う。 第3部 日本企業 われわれはどうしたらいいのか 中国・韓国にもう勝てない 置いていかれたニッポン 世界の経済はルールが変わっていた! | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

その理由として、創業社長ではなく、サラリーマン社長だからとか、トップダウン型マネジメントではなくボトムアップ型マネジメントだからとか、日本では失敗を許容する文化がないために、責任の所在を曖昧にしたがり、合議制で決めるから、といったものがありますが、それだけではないと考えます。つまり、「マネジメント層の勉強不足」です。

決断力を身に付けたいなら、まずは現場へ足を運び、実態を把握すること。なかなか決定できないのは、確証を持って判断を下せるだけの材料がそろっていないからです。 社内諜報力 凝った社内資料はリーダーの無知を表す:日経ビジネスオンライン

これは社内の業務情報だけではありません。電機・情報通信産業のような技術革新の激しい業界では、マーケットや技術の進化・変化についても、把握している必要があります。意思決定を行う上で、マーケットや技術の理解が不足しているがために、社内会議が、偉い人の「勉強会」になってしまっていることがないでしょうか。本来の戦略策定やブレストのための会議ができないだけではなく、現場は「勉強会」のための資料作成にも時間がかかってしまい、顧客に価値を提供することに十分な時間が割けなくなってしまいます。

顧客やビジネスパートナーとの交渉の場面でも同様です。「持ち帰って検討します」ということが多いのは、意思決定の権限がある人はその場で自分だけで判断を行うことができず、技術面を含めた突っ込んだ議論ができる人は、意思決定の権限がないからです。

そもそも顧客の日本企業トップは米国からCEOが来ることを表敬訪問としか受けとめていないことが多い。米企業のCEOが日本の顧客や取引先の社長に会い、社長室を出てエレベータに乗った瞬間、同行した日本法人の責任者に「今の人物は本当にトップなのか。あんな無能な人物でいいのか」と思わず聞いたという話を時折耳にする。顧客の社長に会ったCEOはここぞとばかりに自社製品の優位点を強調して迫るわけだが、表敬訪問だと思っている日本企業の社長はジャパニーズスマイルで応じ、込み入った話になると同席している部下を振り返り、「どうなっている」と聞いたりする。 トップがセールスする米国、表敬訪問する日本:日経ビジネスオンライン

もちろん、大企業になればなるほど、全く畑違いの事業を多数抱えていますので、全てを現場のエンジニアのレベルで理解することは現実的には困難です。しかし、勉強する努力はできるはずです。

エンジニアの適性として1つだけ挙げるとすれば、「生涯勉強し続けられること」だと考えていますが、マネジメント層もまた、生涯勉強し続けることで、社内会議を減らし、社内資料をスリム化し、顧客やビジネスパートナーとの交渉をスピードアップすることに繋がり、それはひいては、日本の企業が良くなって行くことに繋がるものと思います。

Posted: 2012年11月21日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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