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属性とエゴグラム

Communication | Subculture

かつて何度もネットで話題になったことのある「エゴグラム」と恋愛系ゲームのキャラクタの属性には何らかの関係があるのではないか。そんな着想から、交流分析について軽く考えてみる。心理学については(というか何についてもだが)素人なのでトンチンカンなことを書いていたら遠慮なくご指摘頂ければ幸いである。

交流分析についてはTAネットワークが詳しい。その中によれば、

交流分析(Transactional Analysis:TA)は、1957年アメリカの精神科医エリック・バーンによって創られた人間の交流や行動に関する理論体系で、同時にそれに基づいて行われる治療技法です。

ということである。また、

「過去と他人は変えられない。変えうるのは自分だけである。」

ということをポリシとしている。

「エゴグラム」は交流分析の成果を分かりやすくしたものであり、心のエネルギーを5つに分類してその強さを判定する。その5つとは、CP(Critical Parent; 父親的で批判的な親の心)、NP(Nurturing Parent; 母親的で養育的な親の心)、A(Adult; 大人の心)、FC(Free Child; 自由な子供の心)、AC(Adapted Child; 順応な子供の心)である(エゴグラムとはも参照)。これらに対して従来属性データベースに抽出してきたキャラクタの属性は、以下のようにマッピングされると考えられる。

CP…(多少ズレがあるが)「真面目(155人)」
NP…「お姉さん系(44人)」「世話焼き(6人)」「家庭的(206人)」「姉御肌(24人)」
A…「大人(116人)」「クール(131人)」「頭脳明晰(40人)」
FC…「子供系(129人)」「お姉さま系(121人)」「元気系(287人)」
AC…「お子様(82人)」「内気(183人)」「大和撫子系(60人)」

※()内は2004/05/08現在における当サイトのキャラクタデータベースに登録された各属性の数。

実際の1人のキャラクタは、ただ1つの心によって成り立っている訳ではなく、エゴグラムのそれぞれの心のエネルギーがあるバランスで構成された形で(ライタによって記述され)ストーリに登場する。そのもっとも特徴的な性質が、「属性」としてユーザに認識される訳である。属性数としてはCPが少ない傾向が見られるが、これは父性の欠如が度々指摘される恋愛系ゲームのキャラクタ傾向を反映していると言える(そもそもこのデータベースには女性キャラクタしか登録していないので無理もないが)。

また、あるエゴグラムの状態と、あるエゴグラムの状態には相性の善し悪しが存在する。恋愛系ゲームをプレイして「快」を感じるためには、こうしたエゴグラムの相性が重要であることは容易に想像される。このことから、恋愛系ゲームで人気のあるキャラクタのエゴグラムを分析することによって、主要ユーザ層のエゴグラムを推定することもできそうである。

ところで、「エゴグラム」は交流分析の成果の一部であると書いたように、交流分析ではこのPACを適切なタイミングで相手に出すことによりスムーズなコミュニケーションが可能になるとしているが、その最も標準的なパターンは以下の図1のように、やりとりが平行に行われる場合(交流分析の言葉では「相補交流」と言う)であるとされている。

相補交流
図1 交流パターン (c)TAネットワーク

これは恋愛系ゲームのシーンでは、「C(主人公)←→C(ヒロイン): バカップる(ベタベタする)」「P(主人公)←→C(ヒロイン): 慈しむ、傷を癒す」「C(主人公)←→P(ヒロイン): 甘える、癒される」「A(主人公)←→A(ヒロイン): 理性的/知性的な会話(恋愛系ゲームでは余り見られない)」といった関係として捉えられる。自分がどんなエゴグラムを持っているかによって、どの種類のコミュニケーションが最も「自然」であり、「快」と感じるかも当然変わってくるだろう。

恋愛系ゲームの実装にあたって、こういった心理学の成果を企画・マーケティングに生かして、ユーザ層を想定し、どういった性格要素を持ったキャラクタを出すか、あるいはどういったストーリを提供するか考えてみるのも面白いかもしれない。

【参考文献】
TAネットワーク
エゴグラムって何?

Posted: 2004年05月08日 14:18 このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント

えーと。エゴグラムは交流分析の結果ではなく、
スタートとして臨床では用いられています。
エゴグラムそのものは所詮はアンケート、また
意図的に答えを変えることもできます(フロイト的
表現を使わせて頂くなら、防衛機制が働いて
それとは知らずに本来とは異なる答えをクライアント
が書くことがあるわけです。統計学的にはこの
ような事例はあまり多くなく無視して良いですが、
一対一の臨床では、このような状況も無視できません)。
 エゴグラムは交流分析の成果、ではなく出発点の
ひとつと考えたほうが適当かと思います。そして
出てきたエゴグラムパターンを前に、セラピストと
クライアントが話をしていくという事になってます。
その際の交流分析の理想的な手法は、ご指摘の
通りかと思います。
 ちなみに、エゴグラムを用いない方法
(例えばタロット占いや民俗的宗教的相談)で
あっても、しばしば交流分析的手法が用いられて
いる事が見受けられます。この場合にも、交流分析
の理想的手法に類似したものは存在するように
思えます。上から宣告するだけの手法は、たぶん
最悪と言えるでしょう。discussionm、が最も妥当で、
それを通してセラピストはクライアントに防衛機制が
働いているかをチェックしたり、或いはエゴグラムに
対するクライアントの感想からさらに新しい着眼点を
発見することができますし、クライアント自身も
自分自身の特徴についてより理解を深めるチャンスを
得ることができるように思えます。
(薬理専門の俺がここまで書いていいのかな?
 でも、こうやって俺や俺まわりの臨床ではこんな感じ)

 以上、交流分析とエゴグラムについてのつっこみでした。理論はどーだかおいといて、臨床ではこんな
塩梅でやってます。正直、ネットのエゴグラムは、
一人でやってるわけですから交流分析の名に値
しませんし、あれは所詮お遊びだと思っています。
プロでなくてもいいから、友達でもいいから、出た
結果について様々なdiscussionを行うところにこそ
エゴグラムを用いた交流分析の妙味があると
愚考いたします。

※そっち系専門の先生に突っ込まれたらゴメン

Posted by: シロクマ : 2004年05月12日 11:58

追記:萌え属性とエゴグラムには、確かに何らかの
相関があるかもしれませんが、「属性」というもの
よりも「コンテクスト」というもののほうにむしろ
相関があるかもしれないとも思います(このことは、
属性からコンテクストに恋愛ゲームの人気のキモが
幾らかうつっているという、ベスト恋愛ゲーム投票の
結果を見ての個人的感想ですが)。

 私としては、どのような萌え属性にどの形の
エゴグラムが相関しているのかと同じくらい、
どのようなエゴグラムの人が(停滞気味の)
萌えゲームを未だにせこせこやっているのかという
所に一層興味があります。やっぱりNCが高いの
でしょうか?はっきり言って、ACが高い人は
(少なくとも心療内科・精神科領域では)対人適応が
良くない傾向にあります。
そのような結果が出なければ良いのですが、
秋風さんが関連してそうな属性を見る限り、
今萌えゲームのヘビーユーザーをまだ続けている
人達はACが高いんじゃないかと勘ぐってしまいます。

(この他、AやFCなどの属性分けについてもなんとなく
違和感がなくもないですが、代案も見つからず、
属性で絞るならこれが一番近いのかなーとは
思ってます)
さらなるご研究と考察を、お待ちしております。

Posted by: シロクマ : 2004年05月12日 12:05

うわ、誤字脱字多いや。NC→AC 
秋風さんが関係してそうな属性→秋風さんがACに
関連して提案した属性

あまりにでかい間違いなので、敢えてかきこみました。
ごめんなさいー

Posted by: シロクマ : 2004年05月12日 12:09

学際的に見せかけて単なるハッタリサイトなのでお手柔らかにお願いします。(笑)

「成果」という言葉が紛らわしいですかね。交流分析を用いた診療/治療の成果、という意味ではなく、交流分析という学問/研究のアウトプットの一部という意味合いで使っています。

エゴグラムについてはアンケートをとってみるのも面白いかもしれません。

---

ところで「属性からコンテクストに恋愛ゲームの人気のキモが幾らかうつっている」というのは非常に興味深いご指摘なのですが、恋愛ゲームにおける「コンテクスト」とは何を意味されているのでしょうか?

Posted by: 秋風 : 2004年05月16日 07:28

ここでは、「文脈」「状況」の両方いっぺんに意図して
わざと英語のコンテクストという単語をあてました
(曖昧ですね、すいません)。

まず、いわゆる属性なるものが出尽くしたこと、多彩で
細分化の進んだニッチがものすごくいっぱい出てきて
しまっていてそれ自体は作品の人気のキモとして
強烈な求心力をたくさんのユーザーに発揮することって
難しくなっていると思ったわけです。最早、属性そのものを
特別な売り物にするには属性は出尽くされており、
なおかつユーザーの嗜好ごとに細分化されすぎていて、
それゆえにこそ新鮮味と幅広い求心力を失っていると愚考しました。

 一方、コンテクストと表現したものの前者はビジュアルノベル
全盛期以降に連綿となおも受け継がれるものであり、
それにユーザーが群がる(群がった)というものを指摘した
ものです。泣きゲー的文脈なのか、Airのようなタイプなのか、
等等ですが、このような文脈としてのコンテクストの差別化の
時代は終わりに差し掛かっているのかな、とも思います
(keyの新作はどうなんでしょう?やってみようとは思ってます)。

 後者は秋風さんがご指摘したように、「単なる文脈」
を超えて、ビジュアルノベルというよりはより総合的・統合的
恋愛娯楽としてこのジャンルが発展する可能性を考えて
書きました。最早、いわゆる文章を読ませる・立ち絵や
エロシーンを定期的に見せるというビジュアルノベル以上に、
「文脈というよりは文脈を含めた状況」で魅せることに
主眼が移ってきてるのかな、と感じるのです。文脈以外の
コンテクスト的状況をプレゼントするものとしては、
アニメーション、音楽、(当然ながら)キャラ絵や背景、
などなどいろいろあるかと思います。
このような見方は、「君が望む永遠」の年の秋風さんの
コメントを見て以来、徐々に私の中で定着してきているものです。

ただ、これはあくまで「視点」の問題であって、結局の
ところはこの文脈以外の範囲も含めた総合的なコンテクストの
構成に秀でた作品が常に支持されてきたのかな、と
思うこともあります。このこと自体は、1999年頃から
大して変化していないとも読めるわけで。ただ、技術の
投入が進めば、一層「文脈以外のコンテクスト」が
コンテクスト全体に占める割合が上がってくることが推測されるので、
「文脈というよりも状況」という言葉に近いコンテクストという
表現がお似合いになってくる可能性が高いとは言えるかもしれません。
あくまで視点、の問題だとは思います。
しかし、このような視点のほうが恋愛ゲーム当世事情を
説明しやすい状況がやってくるのかな?
とは思うことがあるわけなのです。

※この点で、EVER17がどうなのか私未調査なので知らずに
書いてます。すまんです。

Posted by: シロクマ : 2004年05月17日 11:54

なるほど。「コンテクスト」に「文脈」以外に「状況」という訳語があることがまず知りませんでした。

属性がゲームのコア足り得たことはもともとほとんどなかったと思います。目立ったのはシスプリぐらい?
というのも、あらゆる要素はパターン化・再利用されうる訳ですが属性は中でももっとも再利用しやすいものと言えます。文脈に関係なく、シナリオ上の制約が少ないためです。それゆえに、差別化要素としては決定力にならない。

次に、「文脈」ということにおいてもシナリオパターンというのがありますが、佳作レベルではいいとしても、飛び抜けて高い評価を受けるものというのは、単なるパターンの組み合わせを超えた全体としての何かを感じることが多いですね。そういったところに今後文章以外の要素の果たす役割が大きくなる、というのはその通りだと思います。

Ever17は気がつけばシンプルだけど壮大なトリックがキモですかね。CLANNADはイマイチ食指が動きませんが、どうなんでしょう。

Posted by: 秋風 : 2004年05月28日 12:03

こんにちは、またブログ覗かせていただきました。また、遊びに来ま~す。よろしくお願いします
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Posted by: モンクレール ダウン : 2013年01月14日 20:24
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