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「気づき」の仕組み
Book | Communication | Technology現代は、コミュニケーションにおいて、高度な「気づき」の能力が必要とされる時代である。コミュニケーションにおける「気づき」とは、すなわち、言語化されていない想い、バーバルな会話では明確にされない人の気持ちを、言葉の行間や微妙な表情・仕草から察することを意味する。あらゆるところで旧来の共同体が壊れ、価値観ベースの共有が困難な中では、何一つとして「常識」とか「前提」とかいったものを想定することができず、容易に人と人との気持ちのすれ違いが発生する。コミュニケーションを潤滑にするためには、表層的な言葉だけでは到底足りない(メールや掲示板によるコミュニケーションが難しいのも無理はない)。
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「いま、言わなかったことはなに?」情報(むしろノイズ)過多の時代にあって、本当に大切なことは明確には語られない。それは「気づく」しかないのである。ビジネスの分野でも、こうした情報洪水の中から真に重要なことを情報化し、人間の「気づき」を助けるための「アウェアネス」(訳せばそのまま「気づき」)の研究が進められている。友人とファミレスに行き、となりのカップルの会話を盗み聞きします。ただし、声に出して言っていることではなく、「本当は言いたいのに話せていないこと」を聞き取ります。カップルが帰ったら、彼らが本当はしたかった会話を友人とやってみます。
男性「眠そうだね」→(オレといるのに、なにつまんねぇ顔してんだよ)
女性「そう? 最近いそがしかったからね」→(そろそろこいつとのデートも飽きたなぁ)これをやってみると、本音が聞こえるようになります。
多くの会話では本音が話されません。このファミレス訓練をとおして、ふだんは出てこない本音が見え、自分たちが会話の中で言葉以外のなにをコミュニケートしているかに敏感になれます。
コミュニケーションに話を戻すと、身近な恋愛(や結婚)の場面で、従来「気づき=アウェアネス」を助ける仕組みになってきたのが、「マリッジリング」であることは間違いない。左手の薬指にはめられた(*1)指輪は、パートナとの絆を確認するガジェットとして機能するとともに、第3者に対して、「私にはパートナがいます(なので言い寄られても無駄です)」ということを相手に気づかせる役割を持っている。それゆえに「指輪を外す」という行為が象徴的な意味合いを持つ。好みのタイプの人がいると何気なくその人の左手薬指をチェックしてしまう人もいるのではないだろうか。
(*1)国や宗教によっても異なるようである。世界の宗教と結婚リング参照。
しかし、冒頭に書いたように、現代は、高度な「気づき」の能力が必要とされる時代である。そして、高い「気づき」の力、非言語コミュニケーションのスキルを持っている人が恋愛も上手く行っているのだが、必ずしもそういったスキルに恵まれない鈍感な人も少なくない訳で、この非婚時代にあって、「マリッジリング」という1bitの情報しか持たないガジェットだけでは決して十分ではなくなっていると考えられる。無論、より多くの人が、「気づき」の力を身につけるに越したことはないのだが、現実には容易ではない。コミュニケーションにおいて、不快感を軽減し、最適なパートナの発見を促進するために、より強力な「気づき」の仕組みの開発が期待される。
例えば、昔懐かしいアニメ風に、「恋愛能力(恋愛経験値)スカウター」というのがあってもいい。恋愛において相性が一番重要なのは間違いないが、一般的には恋愛能力が高い(あるいは恋愛経験値が高い)人とつき合う方がより楽しい確率が高い訳だから、情報としては有用である(何をもって恋愛能力を測るかはともかくとしても。あるいは、恋愛の様々な能力のうち、何を重視するかを選択できれば更に便利かもしれない)。言うまでもなく、恋愛能力(恋愛経験値)が高い人は競争も厳しいので、あえて自分に見合ったセンを選択するという場合もあるかもしれない(*2)。そういった戦略的判断に利用できる。
(*2)恋愛経験値に限っては、通常女性は恋愛経験値の高い男性を好むが、男性は必ずしも恋愛経験値の高い女性を好む訳ではない、という非対称の現象が見られる。これは恐らく男性のプライドが原因だが、結果的に、男性では、恋愛経験値の高い人と低い人の格差が年齢を重ねるに従ってどんどん拡大していくのに対して、女性では、恋愛経験値が高い人から低い人へ比較的なだらかに並ぶ傾向がある。
もっと相性や個人の気持ちに着目した例としては、シミュレーションゲームではないが、「好感度スカウター」というのも考えられる。嫌われていることが分かっていても特攻してしまう無粋な人を除けば、「身の程をわきまえる」こともできるし、逆に多少なりともプラスに振れていれば、声をかけやすくもなろう。会う人会う人の好感度がことごとくマイナス振り切れてばかりという冷徹な現実を数値で見せつけられて絶望に打ちひしがれる人が続出してしまうかもしれないが…。あらゆるデバイスにコンピュータが搭載されるユビキタスコンピューティングの世界では、こういったことも可能になるかもしれない。
数値ばかりの例になってしまったが、それ以外にも、例えば自分の趣味・興味その他のプロフィールを一定範囲で無線により公開し、共有できるツールというのは、すでに一部では登場してきている(これがオンラインであれば、orkutやGREE、mixiのようなSNS(=Social Networking Service)になる訳)。これによって、同じ趣味・興味を持った人の出会いが促進される。これも、ある種の「気づき」ツールである。コミュニケーションをテクノロジやガジェットでサポートする「気づき=アウェアネス」の世界は、まだ始まったばかりだと言えよう。
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はるか昔から恋zeroさんのお世話になっている為でしょうか?
実は恋愛に限らないコミュニケーションスキルスカウターの開発を、
CGIを使って2000年頃に作ろうかと思ったことがあります。当時は
下位分類として「言語表出」「言語理解」「非言語表出」「非言語理解」
「外向/内向度」「共感志向」「経済的背景」
なんかを用意してたんですが、精神科的なアイテム
(YGテスト、WAIS-Rテストといった、表面的ソーシャルスキルや、
言語性/非言語性IQを測定するための道具)でもかなりの
所までクライアントのプロフィールを描きだせるということ、限定的な
スカウターならすでに自分も実装していること、等から捨てました。
しかし、このようなスカウターをどうやって実装するのか・実装する為の
条件は何か・性能アップの方法は何かはよく判りませんし、
自分自身のスカウターの性能も完全にはほど遠いのが現状です。
低レベルな性能アップの手法としては、精神科のSST(social skill training)
が近いような気がしますが、大人の恋愛のような高度な
情報戦には到底対応し得たものではありませんし、世のオタク達の
需要を満たすとも思えません。
たぶん、精神科医も含めて誰もがそのようなスカウターパワーアップの
実践的方法を待望していると思います。なんかいいお話とかあったら、また教えてください。
...尤も、このスカウターパワーアップの方法がどのようなものであれ、
実践には金や時間や精神的コストがかかりそうな予感がします。
きっとそれは仕方のないことなのでしょうけれども。
すでに2000年にですか! loveless zeroがいかに進歩してないかってことですね。(苦笑)
今回の記事は、人の鈍感さはなかなか直らないから技術で何とかならないすかねぇ、ということな訳ですけど、もちろん、技術に頼ることなく素で高度な気づきができれば、それに優る者はありません。
相手に最大限の興味を持つこと、できるだけ多くの異なるタイプ、異なる背景を持つ人と接することで身につけていくのが一番着実なんでしょうけど、きっとストレスたまりますよね。やはり似た者同士な方が居心地が良いので…。
Posted by: 秋風 : 2004年06月23日 22:38ちょうど「空気の読めない男」の記事にも関連した事が書いてありましたが
なかなか治らないからこそ技術があればいいですねぇ。
特に、似たもの同士のほうが居心地が良いというご指摘は、
まさにオタク(に限りませんが)たちのなかでもコミュニケーションが
内側だけに停滞している人たちにもみらえる所で本質を見抜いているような
気がしてなりません。これを、機械的なテクノロジーで補佐するとなると、
とても便利な気がしますが、問題はどうやってやるのか...。
甲殻機動隊のような脳にアクセスしあえる世界になれば、ホントに出来そうな
気もしますが、いったいいつになるのやら。
また、実現したらしたで怖いような気もします。
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