恋愛の格差…?

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恋愛の格差 村上 龍 おすすめ平均 同意見です。 男性的な視点 恋愛を取り囲む環境を大きく扱ったエッセイ Amazonで詳しく見る

タイトルがもう煽り文句のお手本な感じで、文庫落ちして安かったので購入してみたが、これが羊頭狗肉。確かに随所に恋愛という言葉が散りばめられてはいるものの、その内容は、市場経済社会化、経済格差、人生モデル/幸福モデルの崩壊、世間の消失、パラサイトシングル、フリーター、引きこもり、「普通」という言葉の多様化、マジョリティとマイノリティ…と言ったところ。無関係とは言わないが、広く経済や社会に関する話で恋愛本とは言いがたい。

村上龍がつまらなくなったと言われて久しいが、こういうのを書いていれば当然だろう。村上龍は近年、経済や社会についての問題意識から、格差に直面せざるを得ない時代に自立して生きるということに対してまるで自覚の足りない私たちに、一貫して危機感を持つことの必要性を訴えてきた訳だが、大半の(負け組側の)私たちにとって、こういった話題が面白いはずがない。村上龍が退屈というより、現実はいつも退屈なものなのである(こういった平和ボケなところこそが攻撃されているのだが)。

「はじめに」の中では、

この本は、格差について書かれているが、格差を言い立てて、不安を煽るのが目的ではない。現代日本の「格差を伴った多様性」の中での、恋愛の可能性について書かれたものだ。

と予防線を張っているが、結果的には、率直に言って、「格差を言い立てて、不安を煽る」本になっていると思う。ついでに言えば辺見えみりの「解説」のズレ感もまた何とも言えない微妙さを醸し出している。不安を煽られてみたい人はどうぞ。

Posted: 2004年06月30日 00:06 ツイート