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恋愛市場主義とは何か

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近年、恋愛至上主義ならぬ、読みが同じで別の文字を当てた恋愛市場主義という言葉を聞く。恋愛至上主義は恋愛の価値を何よりも上に置くということで、「ラブハラスメント」を招きやすいものの、理解しやすいのだが、恋愛市場主義とはいったい何だろうか。

似たような響きの言葉に本田透の提唱する「恋愛資本主義」があるが、こちらは恋愛市場における競争を煽る形で資本がカネを集めている状況を指しており、恋愛のビジネス活用とか恋愛のビジネス化と呼ぶべき現象を指している。ただ、いま恋愛において競争優位性を生み出しているものは、コミュニケーションとしてのファッションは別にすれば(特に若いうちは)カネやモノよりも人間的な魅力そのものであり、「なんとなく日経をdisってみる もしくはディスコミュの溝は金で埋まるのか」などにあるように、どちらかというと一世代前の感覚のようにも感じられる。

一方、恋愛市場主義は、文字通りに考えると、結婚も含めて恋愛市場というものがあって、そこで恋愛対象となる商品(人間のことだが)が取り引きされており、それらの商品価格(本質的な価値ではなく)が市場的に決定されるということを意味している。株式投資において「美人投票」という言葉があり、これはみんなが買っているものが値上がりすることを期待して、みんなが買っているものを買うという戦略があるが、それと同じことが恋愛・結婚市場においても起こっている可能性がある。ある種ロマン主義的な恋愛においてはパートナの選択基準はあくまでも自分の好みであり相性であったものが、(自分の好みや相性ももちろんあるとして)加えて(自分が属するグループの)みんなが良いと思っている人が良いという価値観である。

恋愛・結婚市場においてパートナを獲得する際の対価となるものは通常、自分自身である(一部の国際結婚を除いてはカネで買える関係を今のところ余り恋愛とか結婚とは呼ばない)。ということは、市場価値の低い人をパートナにしてしまうと、周囲から自分自身の市場価値を低く見られてしまうリスクがある。そのため、恋愛至上主義的な世界では、とにかくフリーでいることが奇異の目で見られることに結びつきがちだったが、恋愛市場主義的な世界では、単にパートナがいることではなく、恋愛市場価値の高いパートナがいることが重要ということであり、恋愛市場価値の低いパートナであればいない方がマシということになる。

もっとも、もとより恋愛が市場競争のものになかった試しはない。市場恋愛に対して計画恋愛の世界というのはあまり想像したくない。ただ、グローバル化や流動性が高まることで市場化が加速したことに加えて、結婚でリカバーされることができにくくなったり、「「恋愛資本主義」へ、ようこそ」にあるように恋愛の価値が相対的なものになる中で、かつての恋愛至上主義は力を失い、恋愛市場主義にとって変わられていくということが考えられる。

恋愛市場主義は必然的に一部の人に更に人気が集中する影響をもたらし、恋愛・結婚市場の2極化を一段と進行させるインパクトがある。加えて、一般的に自分の市場価値は他人がそう見るよりも過大評価しがちであるため、「いい人がいない」状況を容易に生み出す。「独身男女の結婚意思と異性との交際状況」に見られるパートナにおける格差拡大は、そうした恋愛市場主義が浸透しつつある1つの結果と言えるかもしれない。

【関連url】
[misc] KISS第123号「美人投票」
「価値」と「価格」のお話。

Posted: 2006年10月08日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント

 まぎらわしくて時に誤解しそうな部分をまとめてくださって激しくGJですね。価値観の相対化と恋愛市場の2極化が同時に進行するとすれば、恋愛市場にへばりついている人は不幸な気分になる確率が高い→他のことしよう が促進されるはずです。生物学的縛りはあるにせよ、皆がある程度恋愛の相対化できるんであれば、恋愛市場から脱出する人たちを観察できると推測しますが、どうもオタ界隈以外にはそういう人が少ないような感じを受けます。あと、知人の女性をみてても。

結局市場への執着からは逃れられず、不幸気分が蔓延しやすくなっちゃうのでしょうか?

Posted by: シロクマ : 2006年10月10日 08:45

シロクマさん、どうも。

鉄道とかミリタリとかはよく分からないですが、少なくとも萌え系については、結局のところ恋愛・性愛を重視する価値観の延長にある訳ですから、市場から逃れられないのは当然だと思います(仮に逃れられてる人がいるとしたら多分萌えコンテンツにも興味を持たない)。

一般の人についてはどうでしょう、恋愛市場価値というよりは人としての市場価値にまだまだ恋愛がしっかり組み込まれているということはあるでしょうね。

Posted by: socioarc : 2006年10月11日 08:00

お世話になります。とても良い記事ですね。
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Posted by: モンクレール ダウン : 2013年01月12日 05:21
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