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Columns: Society

「大切なもの」はあるか

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[society] 「酔って暴れない。大切なものがあるから。」JRがポスター - MSN産経ニュース

最近JRで見かける「酔って暴れない。大切なものがあるから。」というポスターに、どうにも落ち着かないものを感じていたが、どうやらこの感覚は必ずしも自分だけではなかったようだ。

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「暴力それ自体が罪」なのであって、何かを理由にすべきでない、ということもあるが、もう1つ「大切なもの」がないと思っている人にとっては適切なインセンティブにはなりえないということがある。そして、ここでの「大切なもの」とは「守るべきもの」とも言い換えられるだろうが、今後の日本社会は、「大切なもの」「守るべきもの」を持たない層が増えて行くことが予想されるからだ。

従来の一般的な人々にとって、「大切なもの」「守るべきもの」は、このポスターで挙げられている家族や、仕事(職)、それ以外では恋人・友人、地域社会や近所との関係(世間体)、といったところだろうか。

言うまでもなく都市部を中心に地域社会の繋がりは弱まっているし、恋人・友人はともかく、「家族」については、非婚化や一人っ子化が進むことで、両親が亡くなるとともに、家族の繋がりがなくなる人たちは増えて行くことが予想される。

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「仕事(職)」についても、少し前にテラ豚丼やG揚げが騒がれた事件が記憶に新しいが、終身雇用がなくなり、非正規雇用が増えることで、企業への帰属意識は失われている。それはそれで企業として新たな人材マネジメントやリスクマネジメントに取り組んで行く必要があるが、一方の被雇用者にとっては、「仕事(職)」を失う事をそれほど恐れることもなくなる。

もちろん、「大切なもの」「守るべきもの」を持たない層を危険視することはそれこそ危険な考え方である。ただ、少なくとも、大切なものを失うということが反社会的な行動を抑制するインセンティブにはならなくなる。雇用環境やセーフティネットが崩壊し、人間的な生活が築けない中で、微罪を繰り返して刑務所に入りたがる人の話があるが、社会不安をもたらす一要因になる可能性はある。「大切なもの」に頼らない、新しいインセンティブの設計が必要なのではないか。

Posted: 2007年12月21日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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