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Columns: Partner Style

「婚活」ブーム、ホント?

Partner Style | Society

社会学系のネーミングセンスに長けた山田昌弘氏が名づけた「婚活」だが、本当にブーム、なのだろうか。J-CASTニュースのコメント欄には男性と思われる怨嗟の声が怒涛のように連なっており少々引くが、「あなたの魅力のせいじゃない!――恋の悩みNo.1「出会いがない」を解決!」を見ると、これは要は結婚情報サービス会社のマーケティングじゃないの、とも思わせられる。

確かに、少子化で若年層が減少する中で、人数的にボリュームのある30歳代を後押しすることは、結婚市場への参加者を増やすことに繋がり、ビジネス上も、少子化対策という点でも有効であろうとは思われる。ただ、それが最適な打ち手なのかどうかはよく分からない。施策の妥当性はその目的、「何のため?」を一旦上に上がって考えた上で、その目的を達成するための他の手段はないか、を考えて、その上で、各手段の投資対効果を考えてみれば良い(下図)。


図 "婚活"ブームの目的-手段マップ(クリックで拡大)

ビジネス面から見れば、「婚活」ブームは、著者たちの印税収入や知名度向上を別にすれば、結婚市場への参加者増が目的であり、更にその目的は結婚情報サービスの利用者増であり、更にその目的は結婚情報サービスビジネス自体の維持・拡大である。ではこれは利用者増によってしか実現できないかといえば、(一般には)利用者が増えなくても単価を上げることでもでき、そのためには例えば出会いイベント自体を高付加価値化する、という仮説が考えられる。もちろん、アラサー・アラフォーでなく、中高年層の再婚を積極的にサポートすることで利用者を増やすなど、他の方法もいくらでもあるはずである。

一方、日本という社会の面から見れば、結婚者数の増加が目的であり、更にその目的は少子化解消であるから、それは既婚者の子どもを増やす、ということでも実現される。いずれにしても、方法は色々とあり、それらの投資対効果を比較して、より有利な手段を選ぶことが必要、ということになる。

そしてこれはもちろん、個人でも当てはまる。実際、可視化していないだけで、恋愛・結婚もしくは「婚活」の投資対効果が低いであろうと思っている人は、恐らく意識的・無意識的に、その上位目的を達成するための、別の手段を選んでいるのである(*1)。

(*1)ただし、ある特定の人と人生を共にしたいということ自体が最上位の目的である場合には、代替手段はないが。

今起きていることは、「婚活」でも指摘されている、経済面や社会・世間体面の圧力の低下から、妥協してまでも無理に結婚しなくてもいいという認識が浸透していることであり、それゆえに、相手に求める条件(*2)を下げることは基本的にしない。国立社会保障・人口問題研究所の調査で「半数以上が適当な相手にめぐり会わない」を挙げているのも、恐らく機会(出会いがない)だけの問題ではないのではないだろうか。

(*2)なお、先の日経WOMANの記事でもそうであるように、山田氏はしばしば年収の問題を挙げているが、身の回りで3.5%の人が大量にあぶれていることを考えると、経済力よりも「ルックスが良く、コミュニケーション能力が高い」(WLBがとれていて家事育児支援ができる、も)方が優先と思われる。

むしろ、本来(様々な要因で)結婚に向いていない人までもが経済的な理由や社会的圧力から結婚していた時代に比べれば、「適正」な水準に向かっている(向いている人の割合自体は多分昔から変わっていないのではないか。要求水準が上がっていることはあるかもしれないが)ということであり、ライフスタイルの多様化という点で、はるかに良い時代になっているのだと思う。

Posted: 2008年09月11日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント

結婚は他人だった人と生活することで、お互い人間的に大きく成長できると思います。

Posted by: 結婚相談所 情報 : 2008年09月11日 15:42

もちろん人間的な成長ということでは、それはそうだと思います。
最近は、男は結婚するべきではない(http://wiki.livedoor.jp/marriage_2ch/)となどということも言われていますが、恋愛できる人が結婚しないのは勿体無いと思います。

Posted by: socioarc : 2008年09月12日 02:11

恋愛や結婚生活に向いてないヒトは、もうムリに他人とくっつく必要ないということですね。

よく分かります。

Posted by:   : 2008年09月12日 20:40
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