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晩婚のリアルオプション
Partner Style | Societyはてなブックマーク > 学院標語と結婚の条件 (内田樹の研究室)
「異性が10人いたらそのうちの3人とは『結婚できそう』と思える」のが成人の条件であり、「10人いたら5人とはオッケー」というのが「成熟した大人」であり、「10人いたら、7人はいけます」というのが「達人」である。
Someday my prince will come というようなお題目を唱えているうちは子どもである。
いつもながら手厳しい内田先生で納得するところ多々(自分も「子ども」なので)だが、単身高齢者の増加や人口減少のリスクに対する社会保障の持続可能性の向上という意味での政策は、「子ども」が大人にならないといけない、という個人の問題に帰すよりも、「「人を見る眼」を自分自身が信用していない」「子ども」であっても、結婚や子どもを持つ方向に繋がる仕組み(例えば税制・社会保障システムのようなインセンティブ構造)である方がベターだろう。
結婚市場における市場価値としては、男女を問わず若さが好まれる日本では(その他にも例えば生涯年収という意味でも)、基本的には年齢が上がるほど市場価値が下がることになるので、パートナーがいることが前提ではあるが、一見、結婚を先延ばしする意味はない。それでも結婚を先延ばしするとすれば、結婚を人生における重要な投資プロジェクトとして、意思決定を先延ばしすることに何かしら(例えば、内田先生も仰っているような、より理想的な相手が見つかるのではないか? という期待)の価値があるということになる(逆に、理想的な相手が、他人に取られてしまうリスクもある)。ここで想起するのはリアルオプション理論だ。
リアルオプションの考え方を晩婚・非婚や少子化の解決(仮にこれらが問題であるとして)に適用している記事がないか、と検索してみると、確かにあった。
財務・会計 第10回 恋愛行動とファイナンス理論~結婚の決断をNPV法で~
財務・会計 第15回 戦略的赤字とは?~人口減少を食い止める施策~
一読して少々ずっこけた。斉藤先生によれば、結婚の正味現在価値は大体マイナスで、でも子どもができればプラスになるよね、ということで、「子どもが欲しいから結婚する」という肌感覚にも近い話ではあるのだが、そうであるならば妥当な「投資行動」は、子どもを持つまで結婚の意思決定を先延ばしにする、恋愛関係を続けて子どもができたら結婚する、ということになるような気がする。でき婚はファイナンス理論上、最適行動だったのだ。
結論として、例えば、子どもを持つ世帯への経済的な保障、教育費等の負担軽減、育児支援の強化、ワークライフバランスの推進、といったすでに部分的には取り組まれている政策によって、子どもを持つことの価値を高めることが必要である、というのは、その通りなのだが、結婚の正味現在価値がマイナスで上げられないのであれば、結婚するしないに関わらず子どもを持つ(養子を含めて)個人の不利益を軽減し、支援を強化する方がより良いのではないだろうか。
一方で、結婚の正味現在価値を上げるとすれば(そもそもマイナスなのか、という疑問はあるが…「精神的な充足感」の割引率が相当高いのか)、期待される精神的な充足感の割引率を改善する、つまり、結婚前の同棲を推奨することで、期待はずれのリスクを減らしたり、もしどうしても合わなかった場合の離婚時の清算をシンプルにするために、結婚前に生活費は収入の割合に応じて双方で出し、別居や離婚後は互いの財産に干渉しない、といった夫婦財産契約を締結することを一般的にしていく、ということが考えられる。
Posted: 2009年04月10日 00:00 ツイート