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CSRとしての雇用と人材育成
Business | Societyイオンの人事担当者の「40代以上の日本人男性社員はもういらないんですよ」という発言がネットで話題になっていました。
[society] はてなブックマーク - 「40歳以上の日本人男性はいらない」:日経ビジネスオンライン / 別url
経営陣に向かって同じことが言えれば度胸があるなと思いますが、ものづくりなど熟練した技術を必要とし、長期雇用を堅持している企業を別にすれば、これは経営者や人事部長の本音なのかもしれません。「自分以外の」40歳以上の日本人男性はいらない、と。
実際のところ、タイトルこそ過激ですが、海外展開にあたって現地の人材を雇用するのは自然ですし、多様な海外人材のマネジメントに対応できない人材は不要というのは決して間違っている訳ではありません。ただ、現時点で対応できないとしても、グローバル化の流れに対応できるように戦略的な人材育成を行っていくことが、人事部門に期待されている仕事なのではないでしょうか。それで時間をかけて育成してもどうしても対応できない人は仕方がないかもしれません。
昨今、CSR(企業の社会的責任)ということが言われますが、「企業は社会の公器」と言う言葉を持ち出すまでもなく、本業で雇用を創出し、社会に企業理念に基づく価値を提供し、きちんと儲けを出して納税するだけで十分に社会的責任を果たしている訳です。最近のニュースであれば、築地銀だこの東北への本社移転と現地人材の雇用の話がありました。
[society] はてなブックマーク - 「築地銀だこ」石巻に本社移転、100人雇用 新工場も :日本経済新聞
はっきりしてきたのは、日本企業が成長することと、日本の生活者が豊かになることが、必ずしも一致しなくなってきていることです。企業という仕組みは特定の国に縛られませんから、6重苦(高い法人税、円高、雇用規制、環境規制、自由貿易協定の遅れ、電力問題)とも言われる事業環境の厳しい日本から出ていくのは避けられませんが、だからこそ日本で雇用を作ってくれる企業は重要です。
社会保障システムを維持するため、年金支給開始年齢を引き上げる上で、希望者の65歳までの雇用を義務付ける形になっていますが、これも多くの企業にとっては厳しい雇用規制のように受け止められることになるでしょう。そうした中で、中高年の能力を活用できるようなビジネスの仕組みを作っていくのか、どのように事業環境の変化に対応し価値を提供し続けられる人材を育成していくのか、国から見れば減っていく生産年齢人口の人的資源をどう高めて行くか、ということは、むしろCSRの本流であっても良いのではないかと考えます。
Posted: 2011年09月09日 00:00 ツイート