「自分の頭で考える」人は結構面倒くさい

Business | Communication

企業の競争環境が厳しくなり、環境変化が大きくなっている昨今では、経営者やミドルマネジメントが常に正しい答えを持っていて、適切に指示をすることができるわけではありません。そのため、従業員ひとりひとりが主体的に自分の頭で考えて、自分から行動することが期待されていると言えます。実際、日本経済団体連合会の調査でも、企業が新卒採用で、選考時に重視する要素として、万能な「コミュニケーション能力」の次に「主体性」が挙げられています(*1)。

(*1)新卒採用（2012年4月入社対象）に関するアンケート調査結果の概要

一方で、自分の頭で考える人は、マネジメントする側からすれば、「いいからやれ」と問答無用で指揮命令することができないため、時に「面倒くさい」と感じることがあるかもしれません。根本的には上司が信頼されていない、尊敬されていないということがあるようにも思いますが、部下が自分の方がより良くできる、と考えていると、面従腹背で言うことを聞いてくれないということになります。頭のいい人が多い職場ほど、よりそういう傾向が強まると思われます。

トップダウン型で体育会系の企業や、上司の指示、指揮命令系統が絶対の外資系企業では、解雇や減俸といった人事権をチラつかせて言うことを聞かせることができるかもしれませんが、下手に民主的な企業では、マネジメントに人事権がなく、権限に基づく命令ができません。

こういう時に、みんなにやる気になってもらうには、ある程度、やり方が成熟しているように思います。

• なぜその仕事が重要なのか、仕事の目的や背景を共有する。
• 最終的なゴールと、その中でその仕事がどういう意味を持っているのかを共有する。
• かつ、その仕事をやることで、本人の成長にどのように繋がるかを説明する。

といった具合です。

あるいはそもそも、人は他人に言われたことをやるのは、モチベーションが上がらないのです。子どもの頃に「勉強しなさい」と言われても、全然やる気にならないのと同じです。逆に、自分でやると決めたことであれば、モチベーションは高まります。

ただ、なんていうんだろ「言われたことをやる」っていうところに楽しみはあんまりないんだけど、自分から働きかけて、その結果としてなにかが変わる、というのはなかなかに楽しいことだと思う。俺の場合は「売れるんじゃないか」と思った単品をぶち込んで売り込むことだし、売り込むための工夫をすることでもある。自分の持ってる権限（予算とかの金の問題も含む。要は可動範囲みたいなもの）の範囲で「こうなんじゃないか」「だとしたらこれができるんじゃないか」「なるほど、できた」という一連の流れそのものにはおもしろさがある。
――自分で自分の仕事増やして自爆していたらしい - ２４時間残念営業

そこで、

• 目標のみを共有し、具体的なやり方は自由に考えて貰うか、サポートを求められれば一緒に考える。

というやり方がより有効と言えます。その究極が、達成すべき売上・利益予算だけを示し、予算の達成方法は任せるということになるのですが、そこまで行くと、単なる上司の責任の放棄であり、丸投げでしかないので、やる気がなくなってしまうかもしれません。

さて、ここまでは、ある程度対応方法の定番パターンがある、ビジネスコミュニケーションなのですが、問題は、そもそも指揮命令系統下にない、上司や他部門(場合によっては顧客も)に、どのように期待したように動いていただくか、です。部門が異なると、利害関係も異なりますし、事業の部分最適と全体最適のズレの問題もありますから、更に大変です。もちろん基本的には提案あるいは交渉ですから、

• 相手の言葉で、相手にとってメリットのある提案をする。

というのがベースとしてはあるのですが、何しろ「自分の頭で考える」方たちなので、人から言われたことはやりたくありません。

• 共通の上司をまず説得して、トップダウンで対象に落としてもらう。

ことで、通ればシンプルなのですが、上司であろうと人から言われたことはやりたくないわけで、トップダウンで落としてもらっても、面従腹背の状態で、ダメです。今のところ、

• 意思や主張を一切入れず、ロジカルに考えれば、同じ結論に行き着くファクトだけを淡々と集めて提供する。

ことが、時間がかかりますが、最終的に、相手に期待していた行動に繋がっているように思います。もっと良いビジネスコミュニケーション方法があるのであれば、知りたいところです。

Posted: 2013年09月16日 00:00 ツイート