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Columns: Communication

恋愛マニュアルの是非

Communication

先日、こころの「マクドナルド化」について書かれた本について触れたが、マクドナルドなどのようなファーストフードやコンビニ等で行われる接客の「マニュアル化」は、「画一的である」「心がこもっていない」など、通常良い語られ方をしない。一時期ブームになったスターバックス(求人情報を参照)などは、こういったファーストフードの無機質な印象を与えるマニュアル接客を改めカフェ体験を高付加価値化するため、「ノン・マニュアル接客」を掲げ、スタッフのオリジナルな感性・人間的魅力に任せる戦略を取ってきた(*)。

(*)近年伸び悩んでいるが、店舗拡大の中で、スタッフの質を揃えにくくなり、かつ創業者の情熱が末端のスタッフまで行き渡らなくなってきていることが理由の1つとして考えられる。ここは企業を分析するページでないので深くは突っ込まないが。なお、マニュアル接客が必ずしも悪い訳ではなく、内田樹氏が無印の悪いおじさんで指摘しているように、コンビニ店員の機械的な対応が逆に快適である場合がある。消費者って難しい。

恋愛のようなより高度なコミュニケーションにおいても、スキル不足で悩んでいる人は多いらしく、『モテる技術』『すべてはモテるためである?「キモチワルイ」が「口説ける男」になる秘訣』を初め有象無象の恋愛マニュアル本が出ており、たくさんのカモ読者がいる。とっかかりやすいのが、ネットでも無料で利用できるサイト『恋愛攻略サイト「マニュアル男ですが何か?」』で、タイトルにも、マニュアル人間に対するサイト作者の自己否定的なニュアンスが見て取れるが、こうした恋愛マニュアルを所詮マニュアルだから、とあなどるのは間違っている。加えて、このサイトは、必ずしも恋愛だけでなく、ビジネスシーンでもほとんど共通で有効なスキルを扱っている。恋愛のコミュケーションとビジネスコミュニケーションには驚くほど通じるものがあることが分かる。

もちろん、一字一句真似てれば必ず上手く行くというものでは全くないし、そもそもフツーに恋愛ができる健常者にとっては無用の長物かもしれない。しかし、恋愛を苦手にしている人の場合、マニュアルをただ軽視して自己流にこだわるのもまた愚行だろう。

そもそも、マニュアルとは、上手く行っている人の行動を観察してノウハウ化したものであり、今の言葉で言えば、暗黙知を形式知に変える、ナレッジマネジメントの走りである。マニュアルを学び、実践することで最低限のスタートラインに立つことができる訳だ。自己流の個性豊かなコミュニケーションスタイルは、基礎がクリアできている上で初めて差別化ポイントとして有効に機能する。まるで基礎ができていないにも関わらず、マニュアルを見下し、「個性」という名の自己満足スタイルにこだわるのは危険極まりないのではないだろうか(*)。

(*)年齢を重ねると、わざわざ自分を変えるのが億劫になってくる。そして、今の自分を受け入れてくれなければ、付き合って貰わなくても結構、という態度に出てしまう。これが一番良くないのだと思う。「属性と交流分析」にもあるように、「他人(社会)を変えることはできない」のだから、自分を相手に合わせるしかない。

ただ、この手のマニュアルは、通常恋愛の達人が書いているものが多く、凡人どころか、恋愛が困難な人には到底真似できなかったりするのはご愛嬌。エリート営業マンが書く営業ハウツー本と似たようなものだろう。当然持って生まれた素質もある。女性の顔と身上相談

女性の顔を見ずに、本当にその人のためになるような的確なアドバイスなんて出来っこない。メールで相談を持ちかけられて、それに答えたとしても、それはあくまで平均的な女性を仮定しているのだ。美人と不細工では、与えるべき処方箋が違う。
なんかは割と笑えない話だ。

いずれにしても、「なるほど」と納得して読んだはいいが、読んだだけで満足して実践に移さなければ意味がないのは、やはり恋愛もビジネスも同じようである。

【その他のマニュアルサイト】
いちからはじめるファッション入門マニュアル
ひきこもりのための外出マニュアル

Posted: 2004年05月18日 00:36 このエントリーをはてなブックマークに追加
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