Back Numbers | Home

Columns: Partner Style

一億総恋愛社会から恋愛階層化社会へ

Partner Style | Society

先日、当サイトで、

2004年、"恋愛バブル"も崩壊する…?
バブルが崩壊した後っちゅーのがイマイチイメージできないんですが。要は「一億総恋愛社会」から勝ち負けのはっきりした「恋愛階層化社会」になるってことでしょうか。
と取り上げたが、これに関連して、実用ベースのコミュニケーションスキルについて研究されているシロクマ氏の汎用適応技術研究さんで【恋愛バブルの崩壊、という記事によせて??恋愛において普遍的に有効な適応戦略についての小考察】という記事が書かれており、興味深く拝見させて頂いたので、遅ればせながら若干追記しておく。

シロクマ氏の

実際に恋愛にコミットし得る大多数の男女にとっては1980年代も現在も“恋愛階層社会”であり、持てる者と持たざる者の連続的なヒエラルキーは確実に存在している。
という指摘は、率直に言って「その通り」だと思う。ただし、「一億総恋愛社会」という言葉に込められたニュアンスについては補足しておきたい。「一億総恋愛社会」は言うまでもなく高度経済成長時代からバブル期に至る「一億総中流社会」をもじった言葉(*)であるが、「一億総中流社会」は、言うまでもなく、大多数の家庭が平等であったことを「決して意味しない」。

(*)他のエントリを読んで頂いてもお分かりのように当サイトでは度々恋愛/結婚活動を経済活動のアナロジーで説明する。これは恋愛/結婚活動が明示的にカネに換算されないだけで、その実が自らの資源を武器にした「物々交換」によるある種の市場経済における活動であると捉えているためである。

確かに平均的な経済的豊かさは向上したかもしれないが、そこには「連続的なヒエラルキー」が歴然と存在していた。市民はあたかも自分たちが「中流」であると「勘違いしていた(させられていた)」だけである。何のことはない、右肩上がりの時代が過ぎ去ってみて分かったのは、大多数の家庭が「下流」でしかなかったという事実である訳だ。そして現在、「勝ち組」と「負け組」で年収が平気で100倍変わってくる「階層化社会」への道を着実に進みつつある(*)。

(*)ひきこもりの問題に精力的に取り組まれている上山和樹氏のFreezing Pointさんからの又引きによれば「アメリカの上位1%の資産合計は、下位95%の資産合計を上回る」らしい。

村上春樹やトレンディドラマが牽引したらしい「一億総恋愛社会」もまた、この「一億総中流社会」のニュアンスを継承している。つまり、大多数の男女が平等に恋愛できることを意味するものでは「なく」、そこには指摘されているような「連続的なヒエラルキー」が常に存在する。にも関わらず、誰もが「自分だって恋愛できるはずだ」「(相応の年齢になれば)誰もが恋愛をするのが当然/自然だ」、あるいは「恋愛してから結婚するものだ」という「常識(同調圧力)」がある社会である。…そんな社会への違和感を冒頭のお2方は言いたいのではないかという推測がこの言葉にはこめられている。

一方「恋愛階層化社会」という言葉はこの「常識」が「勘違い」であることが明確になる、という意図で使用している。パートナへの要求水準が厳しくなり、経済格差ならぬ恋愛格差がはっきりとした恋愛市場では、市場競争に参加できない、全く恋愛に縁がない人の割合が増加する(出会わない系も参照)。また、階層間の移動も困難であり、そこではヒエラルキーはもはや「非連続的」になる。要は、小谷野氏は「誰もが恋愛できる訳ではない」、だから「別にあくせくして恋愛しなくてもいいんだよ」ということを言いたいのではないか。

ただ、「別にあくせくして恋愛しなくてもいいんだよ」というのが非モテ系の人にとって、慰めになるのかどうかは疑問であり、単に恋愛シーンから疎外された非モテの自己正当化に感じられてしまうきらいがあるのは否めない(ラブハラスメントの「発見」も参照)。シロクマ氏が「もてない男」の筆者である小谷野氏に対して

1980年代以降の恋愛シーンに乗り遅れた事に対するルサンチマンをどことなく感じてしまった
というのはその意味でツボをついている。「恋愛バブルの崩壊」は予測というよりは、お2方の「希望的観測」に読めて仕方がないのである。

なお、

異性との交際に関する個人の適応を視座の中心に添えた場合、現在の恋愛シーンがどう変化するか・現在の恋愛シーンが誰によって引っ張られたものかといったことを教えてもらってもあまり“実益がない“と感じてしまう。
私がこのサイトで重視する視点は、個々人が現在そして将来の恋愛(及びその他の適応)シーンにおいていかに有利な適応を達成するかの方法論の模索にあるわけだが、このテキスト及び『もてない男』からは個人の恋愛適応に関して役立ちそうなエッセンスがあまり抽出できなかったのだ。
という点については、当サイトも個人より社会を重視する傾向が強いので、次回はたまには個人レベルのスキルの話題について書こうと思う。

Posted: 2004年05月13日 07:01 このエントリーをはてなブックマークに追加
Amazon Search(関連しているかもしれない商品)
コメント

 ああ、やはりそうでしたか、得心しました。
というか、私のつっこみかたは、秋風さんの
このようなご意見をある程度類推したうえで
なおも二行コメントにもの申してしまったわけで、
少々いじわるだったと反省しております。

 あなたが「本気で」「平等な」一億総恋愛社会などを
想像なさっているとは思えませんもの。あ、関連
文章で書いてある教育の平等についても、なんか
似たような事を感じますね。

 いいことか悪いことかはおいといて、表面的社会主義
の化けの皮がはがれかけている時代に私達はいる
のでしょうか。どちらにせよ、ヒエラルキーの下位から
上位への以降は恋愛でも経済でも教育でもいっそう
厳しくなっていくでしょうね。...精進したいものです。

Posted by: シロクマ : 2004年05月13日 23:51

いえ、シロクマさんの記事がなければ私も突っ込んでエントリを起こすこともなかったと思いますので。フォローありがとうございます。「一億総恋愛社会」をシニカルな意味合いで使うのは、まぁ、私の普段の調子をご存知な方には自明かもしれませんね。(笑)

「関連文章で書いてある教育の平等」というのはFreezing Pointさんでしょうか? (「Bulkfeeds: Similarity Search」は日によって変わるので見ているものが違うかもしれません。)

経済的に豊かな家庭でなければ、子供によりよい教育を受けさせられないため、経済的階層が再生産されていく、という話は確か「不平等社会日本」という本で読みました。東大の学生を子供に持つ家庭の年収が平均よりはるかに高いとかそんな話。

Posted by: 秋風 : 2004年05月16日 08:14

今日は~^^またブログ覗かせていただきました。よろしくお願いします。
MONCLER ダウン http://www.japan2moncler.com

Posted by: MONCLER ダウン : 2013年01月14日 20:27

こんにちは、またブログ覗かせていただきました。また、遊びに来ま~す。よろしくお願いします

Posted by: モンブラン ボールペン : 2013年04月17日 02:47
コメントする









名前、アドレスをブラウザのcookieに登録しますか?