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Columns: Society

「ミスマッチ」の2つの理由

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昨今「高学歴ワーキングプア」という言葉も登場した一部の高学歴者の就職難、厳しい業種や中堅以下の企業における求人に対する応募不足、晩婚化・非婚化といった社会現象の背景にはしばしば需給の「ミスマッチ」があるとされる。

需給のミスマッチ
また、男女とも、お互いを結婚相手としてみなせない、という意識もある。現在の日本では女性が経済力を付ける一方、子育てのサポートが十分ではないために、女性の多くには子どもを産むと仕事を辞めざるを得ず、男性の収入を当てにする上方婚志向(収入・年齢・階層の高い者との結婚を希望する)が根強い。男性からすれば「給料は頭打ちなのに、女性は金がかかる。子ができればなおさら。」女性からは「今の日本の社会で女性が自立して生きるのは不安。(子どもを産むために)早く結婚したいが、(女性の上方婚志向を満たす)いい男性がいない。」という、意識のミスマッチも、原因だと考えられている。 未婚男性側の結婚相手に求める基準も高くなっている側面もある。男性は自身の年齢が高くても女性に若さや容姿を求める傾向が強い。 しかし、若い女性の人口自体が減っている中で「若さ」や「高い容姿基準」を求めれば男性の未婚者は増大する。
晩婚化 - Wikipedia (2008/07/31 00:00:00時点)

socioarcではよく「ミスマッチ」と括弧付きで皮肉的に表現しているように、そもそも高過ぎる希望が条件の不一致(=ミスマッチ)を生んでいるのではないかと思っている(たいしたことない待遇で応募者に対する期待が高過ぎる企業、など)訳だが、ではこのミスマッチが起きる理由は何かと考えると、2つの理由があるだろう。

1つ目の理由は、「情報が十分でない」ということである。特に学生の場合、よほど能動的に活動していないと、学校を出て企業に新卒で就職して、といった「標準ルート」以外の方法を知ることが難しいのではないか。「はてなブックマーク > 京大からはそうみえているのか - 雑種路線でいこう」や「はてなブックマーク > 404 Blog Not Found:学校ってバカを治療してくれんのか」の指摘はもっともで、いくら企業は高学歴者を評価し、受け入れるべきと言っても、企業側の需要なくしては始まらない(企業の本音としては恐らく、企画・研究の場面では独創的な人が欲しいが、営業や技術の実働部隊としては「10年泥」「せめて実直な精神」の人の方が多数欲しいし、安く雇えるならそれに越したことはない)のだが、バックアッププラン、多様な選択肢の考慮を全ての学生に期待するのは厳しい。企業の側も、マイナス情報はできるだけ隠し、いいところだけを応募(候補)者に見せようとするから、ミスマッチが起きるのは当然である。晩婚化・非婚化で言えば、どこかにいるはずなのに仕事が忙しい等で接点がない「いい人」ということになるだろうか。

一方で、もう1つの理由は、「情報が多過ぎる」ということである。「情報が十分でない」のに情報が多過ぎるとはどういうことかという話だが、この2つは矛盾するものではなく、ミスマッチを引き起こす情報、選択を迷わせる情報が多過ぎる、ということになる。就職支援ビジネスがますます隆盛だが、大企業の情報や、成功した人の話ばかりを怒涛のように流せば、自分もそうした企業に就職できるのではないか(もしくは就職したい)と思うのは無理もない。年収600万円以上の未婚男性の比率は3.5%(「“モテ”と“キャリア”の歴史その2」等)であっても、実際インターネット上では年収1000万円以上と結婚している人もたくさんいるのだし、「出会わない系」でも書いたように、フラット化で「いい人」が可視化されやすくなり、恋愛経験が増えれば目が肥え、過去の恋人より低ランクの人と結婚しようとは考えにくくなる(今や一部の人にとって現実以上に「リアル」な2次元も同様な影響を及ぼす可能性がある)。

まさに「情報のミスマッチ」とでもいうべき状況の中で、どうすればいいだろうか。個人のサバイバルとしてはもちろん自助努力が一番重要だが、社会からの最適化視点が不要な訳ではない。自由で選択肢の広い大手結婚情報サービスや大規模データベース型マッチングサイトよりも、比較的少人数の会員を持ち、世話焼きおばさん(おじさん)に近い個人経営的な結婚相談所が意外と成果を出しているという話からは、むやみに提示する選択肢を増やし過ぎることなく、希望やプライドの方を「適正化」したり(「折り合いをつける」)、そもそもの売り手側の魅力を高めることを支援する、ある種の「カウンセリング」が有効な可能性が考えられる。就職においては、かつてはその役割を果たしていたのが学校における「パイプライン・システム」であったのだが、それが壊れた今、カウンセリング機能を担えるのは就職支援企業ではないだろうか。

関連: [society] ものづくりの担い手

Posted: 2008年07月31日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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