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Columns: Society

家庭のサービス化と残される課題

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socioarcではこれまで「サービス化する社会」「ホスピタリティ・DNA (続・サービス化する社会)」「モジュール化する社会」といった一連のエントリで、社会の様々な機能がサービス(言うまでもなく「無料」ということではなく、「サービスビジネス」として、ということ)として提供されるようになるということ、そしてそういう時代に必要になるであろう資質や能力について書いてきた。

社会の構成単位である家庭にもまたサービス化の波は進行しており、かつてのような家庭が様々な機能を抱え込む形態は、現在は困難になっている。男性の収入が伸び悩む中で、専業主婦はもはや豊かな家庭にのみ許される「贅沢品」のライフスタイルとなり、ダブルインカムでようやく家計が成立する状況が広がりつつあるし、また、人口減少社会による労働力不足という点からもで女性の労働力を活用していくことはごく自然でもある。

そして、こうした中では家庭のサービス化の流れはますます不可避となるだろう。労働力維持のため夫婦がフルタイムでかつ長時間の残業を行うことが当たり前になっていくと、単純に、家事や育児といった家庭に割く時間や身体的・精神的余裕がないのである。実際、中食・外食といった炊事の外部化に加え、掃除・洗濯といったサービスが現実的な価格で利用可能になりつつあり、育児サービスの時間的拡大が合わさればより負担は小さくなる。

[society] 働く妻「家政婦雇いたい」―妻、週末の掃除洗濯は嫌、夫、留守の家に他人は…。

カネとカオの交換の時代(*1)から仕事も家事もフィフティフィフティになる中で結婚の意味合いが変化するのは当然で、どうしても結婚しなければならないモチベーションは低下し、結婚は容姿や人間的魅力に優れた「選ばれた人々」の中で、かつパートナを欲しいと思っている人だけの限られたものになっていくだろう。人の考え方はそんなに急に変わるものではないから、(いい人がいれば)結婚したいというニーズ、人生のパートナが欲しいというニーズ自体が激減することは恐らくないだろうが、「いい人」を見つける事は困難になる一方であり、そうした意味で非婚率の上昇は避けられそうにない。

[partner style] はてなブックマーク > 深く考えないで捨てるように書く - では誰も結婚しないかというと

(*1)山田昌弘氏は「少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ」などで男性の低所得者層が増加している事が未婚率の上昇を招いている(つまり「カネとカオの交換」色は依然として強い)と指摘しているが、生活手段としての結婚の必然性が薄まれば、パートナに期待する水準として「是非結婚したい」という積極的水準は変わらないとしても、これまでの生活を変えてまで「結婚してもいい」という消極的水準は極端に高くなるから、いずれにせよ同じ結果になりそうである。

もちろん課題もある。1つは血の繋がった子どもが欲しいというニーズにどう応えるかで、結婚はしたくないが(というよりできないが)子どもは欲しい人は少なくない。しかし、精子バンクや卵子バンク+代理母には否定的な意見も大きい。その意味で、子どもが欲しいと言うニーズが特に日本では非婚化に対する最大の歯止めになっている部分もあるが、人口減少への対策としては、非婚化が問題であるというよりも、本来は少子化の方が問題であるのだから、将来的には不妊治療という枠を超えて精子バンクや卵子バンク+代理母のサービスへの道が開かれる事になるかもしれない。

また、弱くなりつつあるとは言え、社会的圧力は当分根強いし、職場における不利益(結婚していないと昇進できない)といったこともあるかもしれない。また、税法上の不利や非婚化対策としてより積極的に「独身税」的なものが科せられることになる可能性もある。こうした不便に対する「サービス」としては、互いの生活に一切干渉せず(顔も知らない)、財産契約や相続も全くいじらない(ように契約する)、純粋に法律上だけのペーパー結婚契約(*2)を提供するマッチングサービスが考えられよう(現状、夫婦別姓の問題はある)。

(*2)現在でも海外滞在や国籍取得などのためにそういったサービスはあるようだが。

しかし、目下待ったなしの最大の課題はやはり医療や介護だろう。超高齢化に伴う医療・社会保障関係費の急激な増加を何とか押さえたい国としては、ベッド数の削減、在宅介護や介護予防の重視などによってこれらの機能を家庭に押し込み返そうとしているようにしか見えないが、これはもはや今となっては現実的ではないのではないか。冒頭でも書いたように、夫婦がフルタイムで働くことが当たり前になる中では介護などに割く余裕がなくなっているのだから。

[society] 医療制度改革と施設介護サービス

労働力確保の観点から家庭のサービス化の流れが必然だとすれば、従来型の家庭、特に主婦/主夫が高齢者を世話することを前提にした医療・介護システムでは容易に破綻しかねない。夫婦フルタイム共働きの家庭、シングル単位の家庭を前提とした制度設計が求められているのではないだろうか。

Posted: 2007年06月21日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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