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2005年06月25日

ニュースメモ(2005/6/19-2005/6/25)

News

【2005/06/25】
[work] 「成果主義に関する調査」結果の発表 (pdf)
人事と一般社員の認識ギャップ、経営者自身の「成果主義」適用の認識ギャップなど、まずまず想定内の結果となっております。長期的な取り組みや、協力的な関係への影響はないとのことですが、これは何か別の相関がありそうな気も。

[partner style] さすが、オナゴ様は言うことが違う ~『見られる性』への男女意識格差~
今が過渡期で20代半ば以降の人はもう仕方ないとして、10代の男性はかなり変わっているのでしょうかね。そうでないとそれこそ非婚化社会からの脱却など難しいでしょうし。

[subculture] ゲームと犯罪
ゲームも色々、と。そりゃあそうだ。中にいる人にとってはその多様さが分かるのでもどかしい一方で、外から見ている人はどれも同じように見えてしまう、といういつもの奴ですかね。

【2005/06/24】
[partner style] 「一流商社では社内結婚の比率が9割に上る」(高任和夫)
へぇ。先日の話で社内を避ける傾向があるらしいのとは逆ですね。でも15年も経つと変わってるかも。

[partner style] 妻という他人 反響編/上 「期待はしない」自分に言い聞かせ
農村はともかく、結婚の社会的圧力は弱まりつつありますから、だんだんこういうことも減って行くかもしれません。

[society] 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005
相変わらず「人間力」の定義はよく分かりません。基本的には、昨日の話のような「対人能力」と考えて良いんでしょうけど。

[work] ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言
裁量労働の更なる拡大と深夜・休日割増の撤廃に向けて。

【2005/06/23】
[communication] 「知の創出」のコモディティ化への戸惑い
「対人能力」は「人間に対する興味」と同義…と。なるほど。好きでなければなかなか能力も身に付かない訳ですね。耳の痛い言葉です。

[society] 新入社員意識:5人に1人が就職活動の「負け組」と認識
むしろ77.1%も「勝ち組」だと認識しているのなら、全然希望が持てます。3年後に同じ人に調査をしたらどういう回答になるかですが。

[society] 「希望の仕事あれば働く」5割超、親は就労にこだわり
またここでも「希望」ですか。(意味は違いますが。) そもそも仕事は与えられたり準備されたりしているものじゃなく、自分で創るものと考える必要があるのかなと。元ネタは「青少年白書」。

[society] 増税は不可避と政府税調は言うけれど。
[society] 構造改革の「成果」
[society] 小さな政府は政府依存を高める
[society] サラリーマンのバリュー
[society] 個人所得課税改革の課題 子育て・就労・教育サポートを
所得税改正関連で。

[soicety] 未曾有の少子化時代の行方 出生率最低も地域格差
事業企画・マーケティング系や偉い人用のまとめ記事?

[education] 教員の「2007年問題」を解決するために〜「競争」から「協創」に、地域と一体となった学校づくりの核となる教師の育成を
教員免許があってもなかなかなれなかったのが状況が変わってきているらしい。

[misc] 被疑者ノート
経験がない人が多いでしょうから見ておくのも良いかもしれません。
(via もし逮捕されたら…)

【2005/06/22】
[partner style] 労働組合が出会いを支援する時代
男女が別の日、というのが面白いですね。そりゃま、こじれた瞬間に即セクハラになりかねないのでは辛いものがありますけど。

[society] 東大卒の2割がニートに!?
元記事(PJ)は恣意的な解釈っぽいですね。実際は司法試験受験者とかが多そう。
関連: [society] ニート:中学卒や高校中退者ほど高率 厚労省研究機関調査

[society] 人口ボーナスとその効用 (pdf)
「人口ボーナス」という言葉は初めて知りました。日本はこれからどんどん借金直行ですが。

[economy] ファンド資本主義の現実 (pdf)
んー。「他山の石」って他人の悪いところ、劣っているところを参考にする、ってことですが、文脈からは単に参考にする、ということでしょうか。

【2005/06/21】
[business] 「市場原理主義」が日本で根づかないもう一つの理由
「退出」イデオロギーが希薄というか、「出る(出させられる)」方は流動化しながらも「参加する」方は余り流動化してないというところもあるでしょう。ただ、もう少し広く見ると、ある種の「退出」は少しずつ増えてきているような気もします。

[society] 左翼アレルギーの克服
レッテル張られを避けたがる、というのは確かにありそうです。

[education] 教師の重要性:有能な教師の獲得、能力開発、定着 (pdf)

【2005/06/20】
昨日は森美術館の「秘すれば花、ストーリーテラーズ展」の最終日と、下の階で始まったところの「フィリップス・コレクション展」に行ってきました。時間の都合で駆け足だったのが残念。

[society] 勉強少年の受難
学校内における子どもたちの格付けも社会のそれを反映していると言えるかも。

[partner style] 種馬婚のススメ
事前に契約内容を明確に合意しておくことが重要でしょうか。

【2005/06/19】
[society] 「幸せの意識総中流化」社会
これまでの「常識」はもう「常識」ではありません。

[society] 「希望格差社会」における「内なる希望の格差」
[society] 不釣合いなイメージ、そぐわない実態
「格差」は「同類のものの間の差」なのでどちらかというと「落差」の方がしっくり来ますが、主旨には特に影響なく、「格差社会の希望マネジメント」に繋がる話。幸福は(自己イメージ-現実)の関数になりそうですね。

[education] 就職率で選ばれる大学
「社会化装置」化する大学」でも取り上げた話。社会の変化に合わせて大学に求められるものも変化する、ということかもしれません。

[mental] 心の問題は現代の文化の問題とは言えそうだが
昨日の話と繋がってそうです。

[subculture] 『萌え』市場 夏の予感
取り上げ損ねていたので。…にしても、森永氏のコメントが更に容赦なくなってませんか。

Posted by seraph : 01:24 | Comments

2005年06月18日

ニュースメモ(2005/6/12-2005/6/18)

News

【2005/06/18】
[education] 心のノート 中学校
掲示板とも関連するところで。全然知らなかったんですが、最近はこのようなものが配布されているらしいです。のっけから「自分さがしの旅に出よう」ですか。まさに「心を商品化する社会—「心のケア」の危うさを問う」や「自己コントロールの檻—感情マネジメント社会の現実」の世界ですね。昔から斜に構えた子どもだったので、処世術として良い子を演じつつもうんざりしてそうです。
関連: [education] 「心のノート」の教育法・教育行政上の問題点
いずれも「心のノート」の効果的利用法より。

[society] 子供が「ニート」親はどうする、専門家の提言——孤立を避ける、1年したら対策
40—50代と接点って、この世代と20代は余りに仕事に対する考え方にギャップがあるからかなり難しそう。30代以下だとある程度通じそうですが。

[soicety] 働いても働かなくても結果にはあまり影響しない
それを言っちゃあ…

【2005/06/17】
[society] 理屈でモノを考えると少子化が進む?!
とはいえ、考えるな、感じるんだ、ってのも何だか変です。

[society] 働き方、多様性を・「少子に挑む」本社シンポ
「多様性」、ねぇ。明らかに「一律で」労働時間に上限を設定しない限り、長時間労働者の有利は変わらないのでは。ワークシェアするより、少ない人数で長時間働いて貰った方が得ですから。

[society] 希望のない本「希望のニート」
「希望」の捉え方次第ですね。

[society] 企業とNPOの協働(パートナーシップ)の在り方
事業型NPOの発展により、従来型の企業社会を変えていく可能性が期待されます。

【2005/06/16】
[soicety] 子どもへの不審な「声かけ」禁止条例案 奈良県が提出へ
「声かけ禁止」などと言われるとぎょっとしますが、挨拶など、常識的な配慮は一応されているようです。

[work] 英国・若年失業者対策 迷える若者よ「ビートルズ」を目指せ
「夢追求型」を支援する対策。「アフターフォロー」も重要かと。

[work] Works No.70 人材マネジメント これまでの10年 これからの10年
閲覧にはJavaが必要。個人的にはAdobe eBookの方がベターですが、ともあれWebで読めるのは素晴らしい。

[work] 仕事と生活、両立支援「残業なし」から——強制し一定の効果 割増賃金の低さも課題
「ノー残業デー」が機能している会社もあるんですね。

【2005/06/15】
[society] 少子化対策・児童手当、現行の3倍に
[society] 少子化対策、まずは「カネ」
ライフタイルにもとづく、ある種の所得移転施策が進められつつあるようです。
関連: 少子化問題・「子育て世代」の85%が危機感

[work] 国会職員の「乱闘手当」廃止
仕事・企業の選択において、給料だけでなく、福利厚生、各種手当に注意するのは基本ですね。
関連: 年収ランキング

[partner style] 恋人・友達・知り合いもいない独身者の週末
…何か涙出てきた。
(via プリキュア様崇拝日記)

[partner style] 逆パカ
最近の若者言葉は本当に分かりません。

[communication] 対人恐怖症の治し方を一緒に考えませんか?
[communication] ブサイクがかわいい女とやる技術
たまにはこういうのも。

【2005/06/14】
[partner style] なら出会いセンター(なら結婚応援団)
以前に記事になってたような気がする奴が具体的に稼働し始めてます。

[work] 日本のソフトウェアエンジニアは不幸か...?
[work] 日本とアメリカの違い
日本型プロジェクトマネジャー(顧客の要求を蹴れない、メンバに明確なアウトプットの指示が出せず暗黙に期待する)と、欧米型開発者はお互い不幸になる最悪の組み合わせ…でしょうね。逆だとお互い幸せになれそうですが。毎日15,6時間も働いてればそりゃ感覚も麻痺します。とはいえ日本ではエンジニアだけが悲惨という訳ではないでしょうし、やはり結論としては「日本で働いたら負け(一部除く)」でしょうか。

[society] ニートが増えていることについての原因を考察
順列のある「個性」。そんな「多様性」なんてもうたくさん。とはいえ、サービス消費社会化している中ではどうしても必要数に偏りが出てきてしまいます。それもギャップのひとつなのかなと。
関連: 結局、世の中はこれ?

[society] 大学生の不登校
学業面での「燃え尽き」もあるにはあるでしょうけど、強制的な集団活動がなくなるので、純粋に個人のコミュニケーション力が問われてしまうこともあるのかな、と。

[misc] はてなQ 愛を下さい。(一番愛をくれた人ひとりにポイント)
自分が自分がという人でも、年齢を重ねることで少しずつ変わって行くものもあるのではないか…最近は、そう感じてます。

[misc] 「無口」からかう生徒狙った犯行か−山口高校爆弾事件
「ゲームのキャラクター」キター。…でも考えてみると、何だか「サッカー選手」とかいうのと余り違う気がしません。
(via プリキュア様崇拝日記)

【2005/06/13】
昨日は映画「電車男」見てきましたが、普通にイケメンだし登場人物にどうも人間臭さが足りないんだよな。電車男のキョドリ具合はいい感じですが。それなりに面白いとは思います。

[misc] 東京12ch:田舎に第二の人生を、というのは超クサイ!
基本は「隣の芝生」なんでしょうけど、都会育ちだと田舎のウェットなコミュニティは確かに厳しいかもしれません。仙人のように下界と交流を断つぐらいまで徹底すればいいですが。

【2005/06/12】
[soicety] 意思主義とネット人格・キャラ選択時代
むしろ昔以上にキャラの使い分けや空気を読むことが重要な時代なんですね。

関連…してると言えるか分かりませんが、ここでは取り上げたことがなかった気がするので。
[soicety] ★若者は夢を失ったのか-現代社会の若者像 (pdf)
[soicety] 若者の自殺・引きこもり-なぜ社会と隔絶するのか (pdf)
[soicety] 現代社会の若者像ーフリーターとニートー (pdf)

[misc] 闘争か平安か
「変える」話。
(via hotsumaのURLメモ。)

[society] 子育てから見た護憲と改憲
日本文化を守るために国を棄てる、という言葉が強く印象に残ります。リスクヘッジとして海外で生きる力をつけるということは個人的にも意識にある訳ですが、この国にはもっと悲観的なシナリオが待っているのでしょうか。

Posted by seraph : 03:06 | Comments

2005年06月11日

ニュースメモ(2005/6/5-2005/6/11)

News

【2005/06/11】
[society] 知識人の役割 その1
これから経験することになる更に大きな痛みに向けて、痛みに慣れさせておくこと、麻痺させておくことが必要ということなのかもしれません。

[society] 日経:若者の「逆国際化」、島国根性再び
安全志向の一環か、右傾化の一環か。将来を考えるとそういう環境に慣れておく方がどちらかというと安全な気がしないでもないですが。

[society] 最も有効なニート対策は若年雇用のミスマッチ解消 〜ミスマッチを解消すればニートの新規発生を30万人抑制できる〜 (pdf)
ミスマッチの原因は企業の求めるスキルと志望者のギャップ、なので解消はそれほど容易でもなさそうです。

[society] 扶養控除に年齢制限、ニートなど対象外…政府税調方針
取り上げ忘れてました。いよいよ政府も必死だな。

[society] 平成16年高年齢者就業実態調査結果の概況
業種によってかなり異なることが分かります。

【2005/06/10】
[society] ★流動化する仕事と家庭の混乱にこそ
数年前の記事ですが今でも面白い。

【2005/06/09】
[work] 「子供たちの健全な成長と就業への移行」に対する教育界と産業界の協力のあり方に関する調査研究(2):上場企業と青年会議所の回答比較調査分析
ギャップが面白い。これから就職される方は読むべきか。

[society] 日本のこれから第2弾「人口減少社会」
[society] ピークが迫る日本の人口 ~よくわかる日本の人口1【総人口の推移と人口転換】~ (pdf)
人口減少社会への転換点。

[partner style] ビジネスマンの子育て 純真なころを一緒に楽しむ
父親の育児参加によっても格差の再生産が進む?

[partner style] セックスしているセックスレスカップル
久しぶりに更新されてます。
関連: あなたにとってセックスとは

【2005/06/08】
[partner style] 離婚率の低下について
離婚率の低下にも経済的原因が?

[society] コミュニティの崩壊とネット右翼
人を信頼する力、というのは大きくなってから身につけるのはなかなか難しいです。

[society] 「法廷ショー」の時代?
検事や弁護士もカオの時代へ。ま、すでに政治はある面そうなってますし。

[society] 「あなた見られてます」
治安悪化マーケティング、という奴。公表される数字の裏には常に何らかの意図があると考えるべき、ですね。

[society] 日本の富の矛盾
豊かさとは何か、ということになりますが…。

[society] 均等法20年女と社会はどう変わった(上)消費パワーで席巻、人生の選択肢も広がる
3回に分けて、ということらしいので、まずはポジティブな面…ということかな。
関連: 職場にて 「当世F1談義」〜激走する派遣労働者

[misc] 普通の幸せを
おめでとうございます。

子育て系ブログとしては、「 くすくす〜すくすく ・・・地域に子育ての輪を広げたい・・・」などいかがでしょうか。

【2005/06/07】
[society] 「中小企業における若年労働者に関する調査研究」結果概要
ネットリサーチなのでやや結果が偏ってるかな…?

[business] パソナ、農業への人材派遣に進出・株式会社参入にらむ
いよいよ農業もですか。

[society] 「晩婚化・非婚化:人生80年時代の男と女と結婚」参加者募集
論点は面白そうなのですが…平日ですか。ま、レポートを待ちましょう。

[mental] 技術者を襲うストレスとうつ、原因と対処法は
健全なもので、リラックスしてください。

【2005/06/05】
[society] 高齢社会白書で何が変わるか?
そういえば、ある会である省庁の偉い人が、「高齢者を社会保障の対象にするのではなく、もっと働いて税金を払って貰わないといけない(意訳)」と仰られてましたね。もちろん場を和ますためのジョークだった訳ですが…結構本心なんじゃないかな。
関連: 90歳以上がなんと100万人突破

[society] 再起させられる不安
相対主義ってもあらゆる選択肢がフラットである訳ではなさそうですからね…。

[partner style] 恋愛における男女不平等とその原因
長っ。もっとシンプルに、原因は「男がバカだから(それでも女性を必要としているから)」でいいんじゃないですか。

[partner style] 市場化する人間関係への違和感
[partner style] 人間関系市場を逆手にとった、男性版フェチ市場に関するブレインストーミング
[partner style] 「コンビニエンス」な八方美人
八方美人が「有利」というのは違和感があったんですが、マーケットを読み誤ってたのかな。前回で「有利」と書いた時に頭にあったのは、市場で高値のつく人、もしくは個人的に好みな人、に合う性格、というつもりでした。

Posted by seraph : 00:02 | Comments

2005年06月09日

格差社会の希望マネジメント

Society

『社会化装置』化する大学」、「『ゲームのルールを変える』ゲーム」と2つ関連するエントリを続けたところで、補足的なエントリを起こしておきたい。それは、格差/階級社会化(*1)が進むこれからの日本において、施政者が市民を支援する名目で打ち出す政策や調査報告が、多分に「希望マネジメント」の側面を持つことになる、という話である。

(*1)これも、結局のところ限定された価値観軸のもとでの格差/階級である訳だが。

言うまでもなく、ここでの「希望」は、「大辞林 第2版」では「(2)将来によせる期待。見通し。」と書かれているものであり、村上龍に「この国には希望だけがない」と書かれた「希望」であり、様々な物議を醸し出す発端となった「希望格差社会」(山田昌弘)で取り上げられた「希望」である。

山田氏は「希望格差社会」の副題で「『負け組』の絶望感が日本を引き裂く」とし、主要な価値観軸(仕事、カネ、恋愛・結婚)において、2極化が進行することで、社会不安が拡大することを指摘した。こうした見方は、一応の説得力を持ってはいる。仕事や家族を守ることは、個人が反社会的行動や非社会的行動を起こすことを食い止めるハードルになりうるが、雇用の流動化や非婚化が一層進んだ将来の日本社会では、守るべき職や家族を持たない人がかなりの割合を占めるようになることが想定される。

もちろん、守るべきものを持たない人がすべて犯罪者予備軍になる訳ではなく、リスクテイクがしやすく、旺盛なチャレンジ精神と組み合わされば素晴らしい成果を上げることも期待されるから、一概に危険視するのは論外である。ただ反面、「さぁ俺を殺せ。日本。」ではないが、ひとたび自暴自棄に陥ったり、ネガティブな意味合いでの深い諦念に囚われると、歯止めをかけるものがないため、「マイクロテロ」や「サイレントテロ」の温床になる、という可能性は必ずしも否定できない。そのため、施政者や、すでに比較的安定した生活を享受できている既得権益層からみれば、多くの人が適度に希望を持っていられることが望ましいということになる。

しかし、限定された価値観軸のもとで自由競争を行えば、特定の目標に希望が集中し、そこからあぶれることで希望を持てなくなる人が大量に生まれてしまう。そこで、希望マネジメント——すなわち、社会・政治・経済システムの維持・発展を意図し、人々の希望を適切にマネジメントすること——の出動となる。

具体的に、希望マネジメントには主に2つの方法で進められると考えられる。

1つ目は、「『社会化装置』化する大学」で書いたような、学校教育その他教育を通じた「身の丈」「健全な諦め」「社会化」の刷り込み路線である。「希望」とは努力により目標が達成されることが実感として持てることで生まれるというのが山田氏の指摘だったが、であるとすれば、目標自体が個人の「身の丈」に合っていなければ不幸になるということである。

「ゆとり教育」がエリートと一般人を峻別しエリートが一般人を導く社会を志向していることを批判的に指摘したのは「機会不平等」(斉藤貴男)が詳しいが、サービス大量消費社会は、残念ながらエリートだけでは回らず、安価で黙々と働く多数のワーカーを必要とする(*2)。その他にも、社会が機能するためには、多様な産業、多様な職業が必要だから、施政者には「職業に貴賎なし」を刷り込ませる強い動機がある(*3)。山田氏は学校の「クールダウン」機能が失われたとし、職業カウンセリングの必要性を主張しているが、今後の教育の見直しについてもこういった機能を復活させることを意図する方向、例えば若年からの職業訓練色の強いカリキュラムの構築に進むのではないか。

(*2)最近では「アマゾン・ドット・コムの光と影—潜入ルポ」が話題になったのが記憶に新しい。
(*3)そもそも実際には「職業に貴賎」があるからこそ先のような言葉が生まれたのだろう。

そして2つ目が、ご想像の通り、「『ゲームのルールを変える』ゲーム」で書いた、価値観変革型の自己肯定化路線である。そもそもの階級社会や2極化などという現象が起こるのも、主要な価値観軸数が貧しいためであり、多種多様な価値観軸、多種多様な夢が全く並列に存在しているのであれば、「オンリーワン」だらけで総体として他人と比較しようがなくなる。ただこれは敢えて明示的な政策として推進されることはないかもしれない。積極的に推進しなくとも、市民側から勝手に上がってくるものを上手く取り込んで後押しして行けば良いのだから。それはちょうど、積極的な社会参加を望む市民が活躍する場としてのNPOが、「三位一体の改革」でますます収入がなくなりコスト削減に悩む自治体から、「市民参加型」を題目に、いつの間にか安価なアウトソース先として都合良く期待されてしまってるような状況に近いかもしれない。

例えば、(何度でも出てくるが)収入の2極化をラテン系で乗り切ろうとする森永氏や、昨年当たりからぽっと出てきた「萌え」文化だか「萌え」市場だかもこの「意図的な多様化」という点では結構疑わしい(ただ単に特定の文化庁担当者や経済アナリストの個人的な趣味のような気もしないでもないが)し、匿名掲示板やSNSのようなオンラインコミュニティも、高ストレス化する労働環境のガス抜きシステムとして有用だろう(*4)。ただし、経済活動からの完全な退却についてだけは恐らく受け入れられないと思われる。ただでさえ高齢者の手も借りたいほどに必要な社会保障費と徴収する税金のバランスが破綻しかけている状況なのだから。

(*4)そういう意味ではこのブログエントリ自身ガス抜きな訳で。

このように、経済活動のようにどうしても譲れない部分は、教育やカウンセリングでコントロールしつつ、市井の人々の中から生まれてきたオルタナティブなはずの選択肢を「想定の範囲内」として社会システムの維持に活用していくのが、希望マネジメントの1つの完成形である。

それではこのような希望マネジメント下において、私たちは何ができるのか。答えはない。オルタナティブな選択肢の提示そのものが希望マネジメントに取り込まれてしまうので、それでも健全な反骨精神、批判的精神を維持し続けるのは容易ではないが、社会をより良くしたいという強い想いを持つ個人の1人1人のゆるやかなネットワークに、今は期待したい気持ちである。

【関連】
[society] 『希望格差社会』他書評
[society] 夢見る機会不平等
どちらもとても面白いのでおすすめ。

Posted by seraph : 08:03 | Comments

2005年06月04日

ニュースメモ(2005/5/30-2005/6/4)

News

【2005/06/04】
[society] 高齢に「不安」が8割 長寿医療センター調査
セレブはアンチエイジング、庶民はジェントロジー、というところでしょうか。
関連: ジェロントロジーが創る豊かな長寿社会 (pdf)
関連: 「節目」は何歳? 男より人生複雑なのよ

[society] アダルト・チルドレンの10年 精神科医・斎藤学
人類皆AC。

[partner style] 「歴史法則主義の貧困」とフェミニズムの射程
[partner style] 時代の変化と市場原理
新しいとか古いとかいうよりは時代の変化に対応できているか、ということですが、実際は変わる気がなかったりすることがしばしばなのかなと。それこそ「あきらめて女性が変わればいいのにな(ぽわわ」だったり。
関連: ★縁は異なもの

[subculture] マイスイートホーム もえるーむ
ホテル・旅館業界もなかなか大変です。

【2005/06/03】
[soicety] 公務員よ、自殺するな 人事院が防止マニュアル
公務員もなかなか大変です。
関連: 経済・生活苦の自殺8千人 04年、総数は3万人超す

[society] ニートなお高止まり・厚労省、就業施策に反映へ
仕事離れ、ねぇ。
関連: 実務経験があることでしか食っていけない
関連: ひきこもり・ニートのための保険加入代行業

[society] 勉強するとお金持ちになれない?
もちろん努力は必要だけど、努力の方向性が重要、と。そういえば有名な「はくしが100にんいるむら」は紹介してなかったですかね。

[society] 出生数最少の111万人 人口動態統計、少子化止まらず
でも東京都が少しだけ改善した(昨年は1を切っていた)ところを見ると、将来的には全体が1.00前後で落ち着きそう、ということかも。

[partner style] 「プロポーズに“も”縁なし」 男性7割、女性は5割
そもそも、ある程度つき合って可能性が見えた段階でするから、独身者に聞けば自然とそうなる、ということのような?

[partner style] 恋人との年齢差 理想と現実
もう1つ、オーネットのアンケートから。

【2005/06/02】
[society] 日本人の仕事観、生活観−勤労意識はどう変化したか
実は社会の方だけが変化しており、人の側は余り変化していないらしい。

[society] フリーターの増加と労働所得格差の拡大 (pdf)

[work] 残業問題解決〜仕事のスタイルを変える〜
残業のための残業は論外だわな。

[communication] 「伝える力のない子はキレやすい」(文部科学省)
言葉で伝える力を。一応、学校によるコミュニケーション教育と言えるか。

【2005/06/01】
[society] 「外部」を志向することの困難
難しいのが好きな方はこちらで続きをどうぞ。

[society] 自殺総合対策の実現に向けて (pdf)
これも特に中高年の場合はマクロ経済の側面がありそう。

[society] 名古屋嬢パック
名古屋が元気ですね。あと名古屋嬢と言えば、「名古屋嬢の謎—勝ち犬の法則36」も笑って読む分にはいいです。人によっては割と憤慨モノかもしれませんが。

[partner style] カオはココロより重い
人間は内面だから、というのは基本的に慰めの言葉ですから…。もちろん、総じれば有利な性格、不利な性格はあると思われますが。

[education] 「早稲田にはオタクっぽい学生が集まりやすくニートになりやすい」(和田秀樹@AERA)
また凄いこと仰られます。大学の「就職力」が問われる時代には致命的ですし。

[work] 見つかる・見つける

関連したところ(?)では「30歳からの成長戦略」の「アウトプット志向」(アウトプットを決めてからそれに必要なインプットを行う)もおすすめかと。私自身30前ですが、25歳からでも決して早くはないです。

【2005/05/30】
[education] 末は博士かホームレスか
ポスドクと法科大学院の話。努力が報われるようにすることが希望を持つために大事だというのが山田氏の言ですが、これはどうなのかな…その先の席の数が十分でないのに、入り口だけ広げればギャップができてしまうのは当然な訳で。
関連: 司法試験制度改革に関する暴論

[society] ニート問題にマクロ経済学者が関われない理由
昨日に続いて。確かに、集めてるメンツでどんなアウトプットが出てくるか検討がついてしまいます。

Posted by seraph : 00:07 | Comments