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2005年04月21日

ニュースメモ(2005/4/17-2005/4/23)

News

【2005/04/21】
[society] 「日本21世紀ビジョン」に関する専門調査会 報告書が公開。
3つの戦略として「生産性向上と所得拡大の好循環をつくる」「グローバル化を最大限に活かす」「国民が選ぶ「公」の価値を提供する仕組みを築く」が掲げられています。具体的な活動についてはリンク先を参照。
関連: 四半世紀後の経済成長1%持続へ 「21世紀ビジョン」

[society] 再浮上した成熟化の問題

[society] 阪大理論社会学 フリーター調査報告書
「常識」…か。数年経って分かる労働市場の硬直性は、言ってみれば、後出しじゃんけんならぬ、後出し自己責任、ですかね。

【2005/04/20】
「ご近所の底力」の「架空請求」の再放送を見ていたら、「ダマされやすさ度チェック!」というのがあったんですが、この「心の弱さ」って単に「騙されやすさ」だけじゃないような気がします。で、「NOと言えない」の改善訓練が「買い物で値切る」、「ストレスに弱い」の改善訓練が「知らない人に挨拶する」ということでなるほど、と。

[partner style] 「向こう側」と「こちら側」の断絶
まさに、「自分と違う境遇の人に対する想像力」という話…ですね。

[misc] 増殖とダイバーシティ
無性生殖の方が多様化する、という話。とても面白いですね。社会的淘汰が強く働く人間だとどうかな。

[society] ニート対策の若者自立塾、就労へ合宿効果期待——厚労省、今年度から設置
同じようなタイプの人ばかりでは成長もないですから、いろんなタイプの人がいることも重要だとは思いますが、1つ1つ着実にステップを踏んで行くことが大切。

【2005/04/19】
[society] 少子化 個人の生活スタイルに介入してほしくない
タイトルはその通りですが、「特定のライフスタイル」に対する公的な支援と「ライフスタイルによって差別されることのない社会の実現」は何だか矛盾しているような気がしないでもないです。

[partner style] 今は「女は家にいろ!」なんて言ってると結婚できないんだぞ(笑)
そもそも、一部の裕福な家庭以外では女性も働くのが普通になっている訳で、問題の次元がすでに「家事・育児をどれだけ分担できるか」に移っているからなんじゃないかなーと。そんなのも周りの狭い範囲だけから判断した感覚なのかな。まだ4割近くも伝統重視群が残っているのが結構意外。

【2005/04/18】
[society] カップめんを年収で選ぶ時代に生まれて
スーパー安売り100円でも十分安いと思うけど、どういうのなんだろ。ちなみにカップ麺はかっぷめんblogさんが有名ですが、個人的には140円クラスなら「横浜もやしそば」が、300円クラスなら「GooTa 中華海鮮菜麺」が好きですね。

[mental] 1日5時間以上のパソコンで増える"心の問題"
そもそも最高の集計枠が5時間以上なのが釈然としませんが。15時間以上とかだと、どうなるんだろう…どきどき。

[partner style] 「出会い」ビジネスに転機 良縁求め親同士の見合いやネット活用
親の代理見合い記事は度々出てきますね。これほど普通の人には不可解なものはないかも。…ま、普通の人には見えないからこそ「不可視層」な訳でして。
(via 親のお見合い? 子のお見合い?)

ついでにまとめて。
関連: 定員80に300件の希望 「代理お見合い」が大盛況 (2004/03/17)
関連: 現代の結婚事情と少子化 (pdf)
関連: 現代のお見合い事情
関連: 「見合い」の復権なるか (再掲)
関連: 少子化と男女共同参画に関する専門調査会(第2回)議事録
情報サービスは、「見合い」でカウントされているらしい。
関連書籍: 追って追われて結婚探し (→目次はこちら) 最後の方に代理見合いも。

[society] 若年無業者に関する調査(中間報告) (pdf)
先日の元ネタが早速pdfに。素晴らしい。
(via sociologbook)

[society] 需要サイドの問題
学問的な裏付けはないでしょうが、景気が良くなればいいだけじゃん、って話は昔からありますね。ただ多分起こりうることは、景気はいつまで経っても「踊り場」のままだったり、仮に良くなっても企業にとっては更に人件費を圧縮したい以上、雇用状況はそうそう変わらない、ってことなんだと思います。

【2005/04/17】
[society] 個性という隠れ蓑
ファッション誌の分化と島宇宙の乱立。

[society] “一人っ子”に手を焼く中国
日本とは比べものにならないほど地域格差が大きい訳ですが、内陸の農村の場合はどうなってるんでしょう。

[partner style] 心、他者というものの経験…
とりとめがなさそうでいて含蓄のあるエントリですね。記号化ということでは、人工を模倣する恋愛と家族とも繋がる? 過剰に意味を必要とする時代…ということなのかもしれません。

[misc] なぜ人はセカイ系になるのか
少し前のエントリですが。…これってつまり、完璧主義、ってことですね。あるいは、あるべき自分とかありたい自分を想像して、逆からそこに辿り着くためにやることというのを決めて行くという方法がありますが、そのあるべき自分が余りに今とのギャップが大き過ぎて何から手をつけて良いか分からなくなってしまうというのか。

Posted by seraph : 02:57 | Comments

2005年04月16日

ニュースメモ(2005/4/10-2005/4/16)

News

【2005/04/16】
[business] グローバル化が進む非製造業の新たな展開―これからの企業戦略 II―
基本路線としては当然規制緩和を、ということですが。

[edutaion] ほんとうの「考える力」とは何だろう?
「文脈力と段取り力」「コミュニケーション力」「総合力」の3つが取り上げられてます。Z会がほんとうの「考える力」…ねぇ。あの変態的に難しい問題を解くのは楽しいっちゃ楽しいですが、受験は結局答えがある問題しかないですから、「パターン認識」の域を出ない。矛盾だらけで答えのない現実の問題とは同じには行きません。

[mental] 心の病抱える社員 半数の企業で「増加」
現状はタフな人頼りになっている面が多々あるでしょうが、業績の維持向上のためにも否応なく取り組まざるを得なくなってきています。

【2005/04/15】
[misc] 身内に挙式の出席を拒まれた人のお話
ネタっぽくもありますが、「兄弟は他人の始まり」とも言いますし、「家」より「個人」を単位とする時代には、あってもいいかもしれません。

【2005/04/14】
[society] かしこい主婦の幸福術 #1
モリタクBLOGで新シリーズが開始。

[society] 日経:「ニートが生まれるのは、むしろ経済的に苦しい家庭」(東京大学、玄田有史助教授)
話としてはすでに10年前から「大衆教育社会のゆくえ―学歴主義と平等神話の戦後史」とか「階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会へ」とかで散々語られていることではあると思いますが。
いわゆる「雇用のミスマッチ」には「そんな企業で、そんな仕事を、そんな給料でやりたくない」という面が多分にあるのでしょうけど、偉い人は、それの解消を市場に任せるのではなく、「教育」で何とかしようとしてるんでしょうか。

[society] 人口減少社会における「採るべからざる対応策」
政策の急転換が問題を深刻化させる、と。「自然増」は頑張っても急転換しないでしょうけど、「社会増」はありえます。

[education] 本質つかむ知養え

皆さんの世代はゲームなどで1人の世界に閉じこもるようになってきている。人とのかかわりこそ人生を豊かにする

写真とのギャップが煽り臭いなぁ。

【2005/04/12】
[society] 充実した時間を過ごす豊かさ。
明るさを取り戻すには。森永卓郎氏ではないですが、ラテン系の明るさは悲観主義大好きな(自分もそうですが)日本人に必要なエッセンスかも。

[society] 読者投稿: Q605: 若年層はバブルの後始末の犠牲者か?
昨日の続き。

[work] 「失恋休暇」制度
恋多き人は得ですねー。証拠を示しようもないから自己申告だけで取得できるのかな。って、普通の有給休暇すら消化できなかったりする訳だから実際に使えるかどうかはまた別ですが。

[misc] ライブ中継
いつ見ても寝ていらっしゃるようですが、本当に15秒ごとに更新されているんでしょうか…とか。いや冗談ですよ。

【2005/04/11】
[society] 若年層はバブルの後始末の犠牲者か?
結構厳しい意見が多いかも。

そういえば、いつの間にかバックナンバーが全て公開に。紹介しやすくなってますね。以前は(仮に紙で出版しようとした時に)Webに載っていては売れないと思われていたのが、実はクロスメディアが結構アリだってことになったのかな。

[society] 日本では金持ちは幸せになれないのか
日本は所得格差が小さすぎる、と。カネはある意味で使う方が難しいし、使い方にこそ差がつきますね。

[business] 株式会社NEET設立に向けて
社会が求めるサービスを提供できることが前提ですが、有り余るパワーと市場とを上手くマッチングできるのであれば、大きな可能性が開けるかもしれません。

【2005/04/10】
天気も良いので新宿御苑で散歩&ひなたぼっこ。花見客が凄いですね。

[society] アイディアマン・山田昌弘
学者は思いつきでものを言う、とか…違うか。ネーミングセンスというか、煽りセンスというか、は確かに切れる。
2極化うんぬんについては、実際には第3極、第4極や、不可視層がいるんだけど、メディア的にはどこかの市民参加型番組ではないですが、2項対立の絵しか描けないのでむしろその方が都合がいいんでしょうね。
関連(?): VaRショックに見る情報フローと意思決定

「テレビって、”3つ”になるともうキツいんですよ。
『ホリエモンvsフジテレビ』というように2つの対決だと絵としてまだイケるんですが、北尾さんが出て来た時点でもうアウトですね。(笑)」

[society] 「ダーリンは外国人」で一気にソリューション
ぽむ(なるほど)。じゃあ男性も「ハニーは外国人」で…ってありえねー。(非婚化対策としてはもちろん大いにありえますが。) 選択肢が多いと迷う悩みがありますが、やはりある程度は多い方がいいみたい。

[misc] 総務省統計局 世界の統計 2005年版
様々な分野の世界の統計情報がまとまっています。

[society] 「各論全員否定」の社会学
努力は正しい方向に向けて。…ま、正しい方向に向けても何ともならないから(もしくは正しい方向が分からないから)こそ別の方向に向けだすのでしょうけど。毎日新聞の元記事を読んでないためか、エントリタイトルの意味が今ひとつ飲み込めてません。

[misc] 「社会への配慮とは、“身だしなみを整える”ことである」(千宗室)
心に留めておきたい言葉です。

Posted by seraph : 20:51 | Comments

2005年04月14日

恋愛におけるセールス・マーケティング・バランス

Partner Style

前回は重い話だったので今回は軽い(?)、loveless zeroっぽい話で。

ネットでは、いつも「モテ/非モテ」の話題に事欠くことがないが、個人的にはしっくりこないものを感じることが少なくない。というのも、いわゆる「非モテ」に属する人の多くは、モテ(*1)たいというよりも、大切なパートナが1人いればそれでいいと考えているのではないか、そしてその大切な1人が見つけられないことに悩んでいるのではないか、と思うからである(*2)。考えるに、後者は「モテ/非モテ」の水準ではなく、むしろ「可恋愛/不可恋愛」の水準なのではないだろうか。

(*1)ここでは「モテ」の定義は、「特に積極的にアプローチしなくても、皆(あるいは意中の相手)から好かれる状態」としているので、もしこれがズレていたら、もちろん話は違う。恐らく、世間で使われている「(広義)モテ」は「可恋愛」のことを指していると思われる。
(*2)って小谷野敦も同じこと言ってなかったか。

女性が積極的になった時代にあっても、(カルい人間に見られることを避けるという)戦略的なものか、女性から男性にアプローチするよりも男性から女性にアプローチする場合の方が、今なお多い。こうした状況では、この「モテ/非モテ」と「可恋愛/不可恋愛」の水準は、男女で非対称的な様相を示すことが、容易に想像される(図1)。つまり、女性においては「モテ/非モテ」と「可恋愛/不可恋愛」は比較的近い水準にあるが、男性の場合は、大きく異なる水準なのだと考えられる。

モテ/非モテと可恋愛/不可恋愛の関係
図1 モテ/非モテと可恋愛/不可恋愛の関係(クリックで拡大)

ここで、おもむろにタイトルの「セールス・マーケティング・バランス」の話になるが、

「マーケティング」=見込み客を集めること。
「セールス」=見込み客との商談をまとめること。

と考えると、「モテ」と「恋愛(成就)」の関係は、「マーケティング」と「セールス」の関係に対応しているということが言える。世間では、営業活動と恋愛活動の類似性がしばしば指摘されているが、上記の基本定義に照らし合わせれば、「見込み客」を集めることが目的の「恋愛マーケティング(=モテマーケティング)」と、「商談」をクロージングに持って行くことが目的の「恋愛セールス」とでは、違う次元の話であることが分かる。

もう少し掘り下げてみよう。ある人からある人への気持ちを全く知らない状態から、恋人状態まで段階的に示したのが図2である。

恋愛関係の発展段階とマーケティング/セールスの役割

図2 恋愛関係の発展段階とマーケティング/セールスの役割

「恋愛マーケティング」では、まず、「見込み客(=恋人候補)」そのものを探すことから始まる。職場・学校のような身の回りに加えて、昔であれば地域や結婚相談所、今なら出会いサイトやその他のネット、出会いパーティなど出会いの場所は増えている。次は、知って貰う段階(電話番号やメールアドレスの交換)、それと並行してファッションやコスメのような身だしなみや、普段の会話や振る舞いを磨くことで好感を持って貰うことがある。ターゲットは次第に絞り込まれて行くにせよ、基本的に「1対多」の活動である(*3)。「恋愛マーケティング」は、大体、最初のデートに誘ってOKを貰うところまでが対応すると考えられる(*4)。

(*3)最近は「ワントゥワン・マーケティング」なんてのも重視されているが、これも何気に恋愛に適用可能か。
(*4)ただ、前述のように「口説く側」「口説かれる側」の非対称性ゆえに、この時点で男性→女性の好感度はそれなりに高くなっていることが多いが、女性→男性はとりあえず乗ってみる、というフェーズであってそこまで好感度が上がっていないこともあるだろう。それでも、好感度がマイナスに振れていたらOKは貰いにくいと思われる。

一方、「恋愛セールス」は、デート以後口説いてOKを貰うところまでなので、ほぼ「1対1」の活動となり、言語的・非言語的なコミュニケーションの中でお互いの理解を深め、感性や趣味、あるいは性的な相性を確認しながら、自分とつきあうことが相手にとっても良いことであることを納得して貰うことが目的となる。「仮説営業」の重要性も共通している。

この、恋愛における「マーケティング」と「セールス」はどちらが欠けても成果に結びつかないが、図1の非対称性から、女性と男性とでは、「マーケティング」と「セールス」とでの重視すべきバランスに違いが生じてくることが想像される。(もともとの「商材が強い」場合と、「商材が弱い」場合では、必要な「マーケティング」や「セールス」の活動量に大きな差があることは、恐らく性別に依らないだろうが。)

すなわち、女性においては、「マーケティング」の重要性が非常に高いので、いつの時代もファッションやコスメに関する関心が強いのもうなづける。一方、男性においては、「マーケティング」も必要だが、「セールス」の重要性がより高くなっていると考えられる。「オシャレな何とか、目指します」、とか言ったような話は、もちろんお洒落であることは前提であって、「マーケティング」のフェーズで大事なことではあるが、それだけでは次のフェーズに進めないことには気をつけておく必要があると思われる。

【関連: マーケティングと恋愛の関係について】
マーケティングと恋愛の関係性について〜共通点と相違点の考察〜 非常にもっともで、納得。
恋愛マーケティング論 恋愛寄りのエントリ。
恋愛マーケティングのススメ 恋愛寄りのエントリ。
マーケティングはラブレター マーケティング寄りのエントリ。
恋愛で覚える・恋愛に使える驚くほどマーケティングが身につく本 (Amazon.com)

【関連: セールスと恋愛の関係について】
恋愛・営業比較論 「恋愛では当たり前のようにやっていることが、営業では全然出来ていないこと。」
恋愛にまなぶ営業学、第3部、超モテない男が言い寄ってきたらどうする?
世界のトップセールスに聞く【1】 恋愛の話は出てきませんが、面白い。

Posted by seraph : 07:25 | Comments

2005年04月11日

マイクロテロリズム待望論

Society

昨年末からの多忙月間も一区切りついたので、久しぶりにニュースでないエントリを、最近1文コメントしか書いておらず、まとまった文章が書けない身体になっているので、リハビリがてらひとつ書いてみる。

一昨日、「 国民の心配「治安の悪化」が48%…内閣府世論調査」という記事を見かけた。

半数近くの人が治安の悪化を感じていることが、内閣府が9日に発表した「社会意識に関する世論調査」結果で明らかになった。

「悪い方向に向かっている分野」(複数回答)として、「景気」や「雇用・労働条件」を抜いて初めてトップになり、国民の治安に対する不安感が浮き彫りになった。

朝日新聞でも、「刑法犯の認知件数は02年をピークに減る傾向だが、肌で感ずる「体感治安」は悪化の一途をたどっている。」としている。「体感治安」の悪化は、非合理的で一見理解不能な事件が度々発生していることが原因なのだろう。

3ヶ月ほど前、「マイクロ・テロリズムの時代」で書かれた「マイクロテロリズム」という概念が静かに広がりを見せている。つい最近には「テロルの時代と大学の使命」という印象的なエントリを書かれたumeten氏によってはてなのキーワードにも登録された(→「マイクロテロ」)。マイクロテロの意味は、早速このはてなキーワードから引用させて頂くと、

対象や場所や時間を選ばずに、相手を害したり、物を破壊したりすること。偶発的犯罪行為。

個々の事件に直接の関連性はないが、メディアや口コミを通じて連鎖的に波及し、社会の関係性を破壊していく犯罪行為。暴行や殺人などの自分より力の弱いものに対する危害や虐待、社会的マナーの欠如などが、その例である。

また、対象も場所も時間も選ばないそれは、一見して「目的も動機も不明な犯罪」として受け止められ、結果、「漠然とした社会不安」となって蓄積する。

ということである。必ずしも個人の問題だけには還元しきれない、社会構造の歪みが持たらす様々な格差や閉塞感が(一見)不可解な犯罪を引き起こしている現象を一言で表した言葉と言える。(ちなみにGoogleで"micro terorrism"を検索すると結構ヒットするが、上記のような半ば比喩的な「テロ」でなく、単に小規模のテロとして扱われていることが多そうなので、ある種の和製英語かもしれない。)

テロリズムはもともと市場主義やグローバリゼーションに対する抵抗手段として機能しているが、そもそもマイクロテロが「マイクロ」であるのは、個人主義が浸透して価値観や属性が細分化されている上に、既成の枠組みの中でも成功している人とそうでない人が出てきているため、かつてのようには多数が一致団結することが難しくなっていることがある。大きな構造として世代間格差というものがあるにせよ、正社員になりたくてもなれない若い人が増えている一方で、中高年になってリストラに遭遇したり、20代でも「個人の努力によって」ベンチャー経営などで成功している人もいるから、単純に世代間格差という言葉で片付けられない。正社員と非正社員という括りにしても、同じ正社員でも差があり過ぎるし、フリーターも望んで選択している人と望まないのに選択せざるを得ない人ではまとまらない。男性社会が根強く残る中で苦しむ女性がいる一方で、成功する女性も続出している。いきおい、「テロリズム」の活動も、マイクロ(小規模)にならざるを得ない。

ただ、こうしたマイクロテロやより消極的だがそれゆえに一層深刻な「サイレントテロ」が社会不安を増長し、社会の維持コストを高めることで、いわゆる負け組だけでなく、勝ち組にも住みにくいものになってしまう可能性は十分に考えられることである。

一方で、マイクロテロやサイレントテロに属する事件を「それ見たことか」と(まるで嬉々として)扱っていくことは、ひねくれた見方をすればマイクロテロリズムを待望しているようにも見えなくもない。

新たな階級社会が現出する中で、日本には、「ノブリス・オブリージュ(*1)」という思想が発達していないため、経済的・社会的な成功者がそうでない人を自発的に支援するという方向は期待することが難しい。少なくない意識ある人たちからは、これからの格差時代において、人々が安心できる豊かな社会を築いて行くためには、「自分とは異なる立場・境遇の人に対する想像力」が大切なことを指摘するが、合理的な理由がない限り、強者にとっては、何も弱者の境遇に想像力を働かせる必要もない訳である。

そこで、機会格差の是正やセーフティーネットの構築、何度でも再挑戦できる社会の実現が、あくまでも成功者にとってもメリットがあり合理的なことを訴求していくことが必要となる。その意味で、マイクロテロは自分に被害が及ばない限りにおいて、都合の良い動きですらあると言えなくもない。つまり、テロを起こした本人は当然罰を受けるだろうし、被害者は理不尽な不幸に見舞われるが、直接関係ない第三者からすれば、それは社会の成功者に対して、無力な自分の手を汚すことなく社会構造の歪みを是正する重要性を訴えるための格好の材料にもなるということである。

(*1)選ばれた者に伴う義務。田坂広志氏の文章から引用させて頂くと、

「高貴な人の義務」という意味の言葉であり、高貴な身分に生まれついた人間には、人々に奉仕し、献身する義務があるという、その思想を表した言葉です。

http://www.hiroshitasaka.jp/cgi-bin/tayori.cgi?81

ということ。

格差をより積極的に肯定しようという方向に向かっている日本において、今後マイクロテロやサイレントテロに類する事件がより増えていくことは恐らく間違いない。しかしこれらの「扱いやすい」言葉の使い方には十分注意する必要があると自戒すると同時に、マイクロテロを待望しなければならなくなる時期が来るのではないかと危惧するのである。

【関連: 治安に対する不安感について】
内閣府 社会意識に関する世論調査 (4/10時点ではまだ平成17年版は掲載されていないが、まもなく掲載されるものと思われる)
治安に関する世論調査

【関連: ノブリス・オブリージュについて】
欧州系多国籍企業のリーダー開発「六つの視点、三つの真実」
新しいノブリス・オブリージュたちへ

Posted by seraph : 00:54 | Comments

2005年04月09日

ニュースメモ(2005/4/3-2005/4/9)

News

【2005/04/09】
[partner style] 結婚制度の多様化を
シングルマザーが日本を救う。

[partner style] 好きになってくれるから、好きになる
承認欲求(マズローでいうところの第3〜第4)が十分には満たされていない場合に、こういった感覚になるのは分かる…気がします。ただ素人考えでは、相手にとってみるとそれじゃあ「誰でもいい」みたいで自尊心が許さなそうな気がしないでもないです。

[subculture] 社会生活シミュレーションとして注目される『Second Life』
心理的な補償装置としての役割が期待されますね。

【2005/04/08】
[society] ★少子化とSEXと資本主義
かなりの読み応えでしばし読みふけってしまいました。余り表では語られませんが、性の自由化も少子化に与える影響は少なからずありそうです。
(via ARTIFACT@ハテナ系)

[society] NHK: 刑務所誘致に必死な地方自治体
刑務所誘致は2,3年ぐらい前に話題になっていましたが、決まってたんですね。人口が増えることで地方交付税が増えるのが狙いのよう。
関連: 奇策! 刑務所町おこし
関連: 全国で繰り広げられる激しい誘致合戦

[society] BB2: 現実を受け入れる世代
関連: 妻に「専業主婦」を望む男性は約3割 親のアドバイスを聞く女性は6割以上 (pdf)

[partner style] もう1つの2007年問題
外で遊び歩いているような人には同情も湧きませんが、家計を支えるためにひたすら身を粉にして働いている方の場合は複雑な気分…かも。ともあれ、ワーク・ライフ・バランスを大切に。
関連: 主人在宅ストレス症候群
関連: 亭主元気で留守がいい

[partner style] 加害者大国にっぽん
「普通の幸せ」を得ることもしばしば難しい時代ではある…のかもしれません。

[misc] ホリエモンの拝金主義とは?

堀江貴文にとって、お金というものは「無色透明なフェアな基準」あるいは「この世のルール」として存在する。堀江の言動の表層的な部分だけをとらえて、「拝金主義」と批判する人々の多くは、堀江が「おカネ」に対して感じている聖性を理解できない。そこには田中角栄の失脚のきっかけとなった、賄賂を意味する「ピーナッツ」という言葉が持っていた薄汚さはない。

【2005/04/06】
[society] 機会拡大: 積極的な社会政策は、いかに我々の役に立つか (pdf)
タイトルが直訳調ですが、「積極的な」という意味合いは、要するに結果に対する補償よりも、機会を増やすための投資を、という話。「最近までOECD加盟国の全てで所得格差が拡大していた」らしい。世界各国のデータが比較されているので参考になる。原文はこちら

[economy] 日本経済ウォッチ<2005年4月号> (pdf)
中心的な話題は「人口減少・少子高齢化が個人消費に与える影響」。

[work] 女性事務職、中途採用じわり広がる——派遣から切り替え、戦力として再評価が背景
コミュニケーション、営業・マーケティングセンス次第で、ということでしょうか。

【2005/04/05】
[education] 今の性教育は行き過ぎか
性教育については、小学生の頃ビデオだったかを流している時に、生徒が(照れからか)そういう場面で笑っていたところ、普段は温厚な先生が、大事な話なんだぞと真面目な顔で怒られたのが妙に強く印象に残っています。昔も今も、大半の先生方にとっては、やりにくいものなんだろうなぁ、と。

[society] 中高年フリーター、2021年には200万人突破
フリーターと言うとすぐに税収減を心配したがる訳ですが、素人考えでは、企業のバランスシート改善の取り組みが一段落すれば、人件費を圧縮できる分利益を延ばせるのだから、法人税から取れるのでは? と思うのですが。もちろん、企業の個別最適化の結果として「カネは天下の回りもの」の回る起点(の1つ)となっている消費者の原資が減れば、全体としての経済規模は縮小する方向に働くという合成の誤謬が発生しうるのでしょうけど。
関連: 平成15年版 国民生活白書

【2005/04/04】
[partner style] 少子化社会における結婚の経済学 (pdf)
雑誌向きの煽り文句なのでしょうが原題の「『結婚はしない方が得』の経済学」の方がインパクトはある。
結論としては経済的障害の解消をという話。逆に言えば、経済的以外の障害の場合は、公的には助けてくれませんので、若いうちにクリアしておかないといけないということですね…。

[society] 世界から取り残された日本経済 (pdf)

[society] 年金自己責任の落とし穴
世間でリッチニートが何も言われないのは、将来、ニートが高齢化して一斉に生活保護に群がり、社会保障制度が破綻することには加担しなさそうだから、というのがあるでしょうね。最低限の生活保障は前提の上で、今のような自己責任を徹底していけば将来結局他の人に返ってくることが目に見えていますが、生活保護を頼りに始めから確信犯的に年金未払いを選択することもできる訳で、そのフリーライド感が庶民感情を逆撫でしているのだと思われます。究極の自己責任で「餓死すれば?」と言い切れる人はなかなかいないでしょうが、個人主義が更に進むと段々そうなるのかも。

[business] CSRは企業戦略そのもの (pdf)

昨日に続いていくつかメモ。はてな多いな。
[society] 「日本の、これから」ライブ感想
[society] 「希望格差」と「犯罪」の関係
[society] 社会制度が生み出した不公正は社会が解決すべき
[society] 異質な他者への"想像力・思いやり・情"の重要性
[society] 高等教育は成功への切符か
[society] キャリアウーマン考

[misc] ホリエモンNHK生激論、貧富の差当然

[misc] 8380円
全体的な密度が薄いからこの方だけが印象に残った人も多いかも。「出演料に格差はありません」笑った(ゲストは違うのでしょうが)。

Posted by seraph : 01:01 | Comments

2005年04月02日

ニュースメモ(2005/3/27-2005/4/2)

News

【2005/04/02】
今日の「日本のこれから」は、1回目なので現状の情報共有だけでいいのかもしれませんが、感情論ばかりで(それぞれの立場で発言すれば当然そうなりますよね)具体的にどうするのか、というのが弱いのがイマイチかな。今後に期待。

関連エントリ。
[society] ホリエモンと金子勝の対決
[society] 安易な視聴者参加

[education] 子供の教育費に無理してお金をかけるのはやめましょう
身の丈にあった教育をってことで上のNHK番組とも関係するかな。いい大学行ったからといってもはや何の保証にもならないけど、しばしば足切りにはなってしまうところが今の中途半端なところです。

[partner style] 怒れるOLの昼休み
[subculture] スペシャルインタビュー「真実の愛を求め、俺たちは二次元に旅立った!」
対比すると一層面白い。

[society] 再度少子化を整理する。

【2005/04/01】
[society] ★平成16年版 働く女性の実情
高学歴の方が35歳以上で労働力率が低いのは、裕福なパートナを見つけやすいのか、責任が大きくやりがいのある仕事が少ないのか、その両方ということか。

[society] 企業の合計特殊出生率
分母は女性だけでいいのかな。もちろんそうでなければ男性が圧倒的に多い職場では凄いことになりますが。

[society] 女性・高齢者の労働参加 (pdf)
M次型労働力率の改善によるソフトランディング化が期待される、と。そのためには男性の家事・育児参加が不可欠ですが、月400時間労働とかが普通の産業の場合はどうなるんでしょうね。

[society] 仕事を安く競り落とすドイツの就職斡旋サイト
(posted by anomyさん)
未だに労働分配率が高いらしい日本にも導入されたりしますか。
商品やサービスではコモディティ化したものが価格以外に競争できるものがなくなってしまったりすることは至極普通ですが、労働の場合は…?
関連: 労働分配率は下げ止まるか−低下を続けるわが国の労働分配率の行方 (pdf)
関連: 2002年闘争ミニ白書 では日本は低いと主張されてますね。

[communication] 恋愛におけるトーク上手とは
わはは。オリーブの牧杖(セプトル)さんの場合は全然問題ないようにも思われます。

[misc] 立花隆氏の連載を読んで想う「オープンな社会」と「21世紀の新たな闇」
アクセスされない情報は、公開されていないのと同じ。
そういう意味では、多くの人は単なる数字・単なる事実にはあまり興味持たない訳で、そこに何らかの解釈なり、物語なりを付加してあげることによって初めて興味を持たれるということであり、ネットの普及によってマスメディア以外のメディアが生まれたことはまずは歓迎すべきことなのかなと。

【2005/03/31】
[society] 日経:全国84万人のニートは新しいビジネスチャンスを生む!
派遣社員を安価に調達したい企業、職歴をつけたい人、そしてマッチングを提供する企業でWin-Win-Winな関係は築けるか。

[society] 階層化=大衆社会の到来
言葉を変えれば、たまたま良い大学に入ったぐらいでは序列は変えられないってことなんですね…。

[society] 東京の雇用情勢
数字を見る限りは、やはり「雇用のミスマッチ」なんでしょうか。

[partner style] おひとりさまの限界
…ってほとんど普通の人の限界は突破しているような気が。
何でも自分だけで決められるところが良い(?)ところではあるかも。

[partner style] 授かり婚(出来ちゃった婚)が増えたのは何で?
人生の、あるいはパートナの選択肢が増えて迷いやすい中で、踏み出すきっかけとして重要なのは間違いありません。ある意味「子はかすがい」。

[partner style] 勝負は30分以内!
30分1本勝負。

[mental] ただ誰かに
心の年齢の話。

[misc] 女性誌の情報量
素直に考えれば広告主の商品・サービスの消費ドライバー(動機づけるもの、推進するもの)として最も有効だから…ですか。とすれば、先日の「仕事」or「消費」のように、「仕事」や第3,第4の選択をしていく人が増えれば内容も変わるのかも。

【2005/03/29】
[society] ジェントロジー (pdf)
耳慣れない言葉ですが、「いかに美しく年を重ねていくか」ということのよう。

[society] カイシャは変わるか・少子化対策調査から(4)実効性、問われる本気度
総論賛成、各論反対。(1),(2),(3)も合わせて。

[society] あのニート君の出所となったテレビ番組のニート特集その2
丁寧に起こされていて番組を観ていない人には助かります。

何か他人の良い意味でのおせっかいがないと、自分の力で変われと言っても変われないんですよ。

って近所のおせっかいおばさんがいなくなった結果の非婚化現象と同じ構図ですか。

[business] 事業会社の企業統治—フリーキャッシュフローが拡大 トリックスターが登場—
個人のブログでも散々語られたことではありますが改めて。「トリックスター」って、もちろん(2)の意味ですよね。

[education] 世論調査:ゆとり教育6割批判 「詰め込み」復活は望まず
ああ言えばこう言う辞典さんではないですが、世論に翻弄される先生方の姿が目に浮かびます。読み書き、英語、コンピュータ、フィナンシャルリテラシにコミュニケーションと、現代社会で必要なものにフォーカスすれば無駄はないと思いますが、小学生ぐらいは「詰め込み」でもいいんじゃないかなーと。

[subculture] 「やわらかフェミニズム」とも言うべきものに対する痛烈なカウンター
まーお互い様、でしょうね。

[subculture] 「萌え」文化
文系ポリティカルコンパス、(というかカルチャラルコンパスとでも言いますか)、なんてのもあるらしい。

ところで、「moetan 2 (下)」が発売されたので眺めてみたんですが、社会人には若干、簡単過ぎるみたい。大人買いできる層をターゲットとするためにも、ビジネス英語版を要望する。

【2005/03/28】
[society] 近代社会システムの揺らぎとNEET人口増加の問題
心理的側面に依らない非就労者の定義の必要性。こころはどうにもならんけどとりあえず働け、ってことか。

[mental] 変わるべき個人と変えるべき環境・他者との原因帰属を巡る葛藤
全てを個人の心の問題に帰することの危険性。

[society] 「仕事での自己実現」と「消費での自己実現」しかないという思い込みをやめよ
(via NaokiTakahashiの日記)
スローライフの理解には「スロー・イズ・ビューティフル―遅さとしての文化」が良いです。

TrackBackされてる、

自己実現のまえに、所属欲求とか承認欲求とかが満たされないまま放置されているのが一般的なひとびとの状況なんでないの。

も鋭い突っ込み。

[partner style] 生活レベルが落ちないだけの財力があったら夫と別れたいか
20%以上が「別れたい」。
(via finalventの日記)

[education] 社会での生きる知恵を教える重要性
社会で必要な知恵・スキルは本当に「学校では教えてくれないこと」ばかりですねぇ。

【2005/03/27】
[society] 2030年の理想像…健康で80歳・借家100平米
若い人の多くが将来に明るい未来を描けなくなっている中、こうしたビジョンを示していくことはもちろん重要だと思いますが、単なる「希望的観測」に終わっては意味ない訳で、もっと期待されているのは社会システムを、企業を、教育を、どうしていけばそこに到達できるのかという具体的なプロセスですね。オリジナルサイトはこれ(日本21世紀ビジョン)ですか。そのうち具体的な資料が公開されるかな。

見落としてましたが中間報告案は以前に出てますね。しかし抽象的なビジョンに比してこの「避けるべきシナリオ」の具体性は何とも。

[misc] 貧乏結婚のゆくえ
こういうブログを読んでいると心が暖かくなってきますね。

[subculture] ★オウム事件から10年、映画「カナリア」が問いかけるもの
ある意味で、強く信じられるものを持つ人は幸い、なんでしょう。

Posted by seraph : 22:48 | Comments