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Columns: Society

社会現象のハイプ曲線(2006-2007)

Society

socioarcでは2004年2005年と、年末に「社会現象のハイプ曲線」というエントリでその年のsocioarc的トピックを振り返りながら、今後話題になりそうなトピックを挙げてきたが、2006年末は起し損ねたため、もうすでに2007年も3週間過ぎてしまったが、ここで取り上げたい。なお、社会現象のハイプ曲線とは、念のため繰り返すと、様々な社会現象においてメディアを中心に騒がれ話題になる時期と、実際に社会に大きなインパクトを与える時期にズレがあることを表現しようとするものである。

社会問題のハイプ曲線(2006-2007)

【社会】
2006年11月には「いざなぎ超え」ともされた「景気回復」が言われているが、主に大企業の輸出や設備投資上の話であり、大半の生活者は余り恩恵にはあずかれていないし、個人消費は引き続き伸び悩んでいる。これは労働分配率の低下とフリーターや派遣などの非正規雇用の増加によるものとされており、この点については今後も当面改善する見込みは薄い。山田昌弘氏の「希望格差」に端を発した生活者の「希望」についての問題意識は玄田有史氏の「希望学」、そして経団連の「希望の国」提言に繋がるが、肝心の生活者にはシラケムードも漂っている。

(参考)2006年の関連エントリ:
格差意識格差

より長いスパンで、「少子化」「人口減少社会」ということでは、国立社会保障・人口問題研究所からより現実的な将来人口推計が提示され話題になった。出生率は「景気回復」の影響か下げ止まり傾向も見せつつあるものの、社会的な育児・家事支援環境が貧弱でシングルマザーへの理解が低い日本では出生率を大幅に上げることは難しく、人口減少を前提として、外国人の導入を含め、少子高齢化に伴う急激な人口構造の変化に対してソフトランディングを目指すことが必要となる。年金を始めとした将来への漠然とした不安感も消費へのマイナス影響が大きいと思われ、その意味でも将来に向けた社会の姿を描いて行くことが重要だろう。

今後のトピックとしては、2006年も産婦人科をはじめとし、医師の現場から切実な声が上がり始めた「医療崩壊」が一段と深刻さを深めていくことは間違いない。同様に、「介護問題」についも、国は社会保障費の抑制のために介護の家庭内化を意図しているが、収入的に共働きが前提になりつつある家庭の現場では現実味が薄れており、低い介護労働環境による介護従事者の逃散、労働力不足と合わせ、今後多数の介護難民が生まれる可能性もある。

(参考)2006年の関連エントリ:
「サービス」は「サービス」か

【雇用・労働】
2006年の主なトピックは「ワーキングプア」と「ホワイトカラー・エグゼンプション」であった。「ワーキングプア」は、NHKが2つの特集を組んだことで言葉が広く知られ、Google Trendsでも分かるようにネット上で大きな話題となった。「再チャレンジ」を掲げた安倍政権も「フリーター」対策では大幅にトーンダウンし実行性のある施策を打ち出すには至っていない。「就職氷河期世代」とか「ロストジェネレーション」とか言われたい放題の今の25-35歳代だが、正社員ですら35歳を越えると転職が難しくなり、アルバイトや派遣でも35歳を越えると仕事が探しづらくなる中で、この5-10年で本格的にこの世代の経済問題が浮上してくることになる。

(参考)2006年の関連エントリ:
流動性と「即戦力」の関係
モチベーションと職業教育

一方秋から冬にかけて議論が沸騰したのが「ホワイトカラー・エグゼンプション」(Google Trends)である。これはマスコミによる「残業代ゼロ法案」などといった誤解を招く煽り文句が飛び交う中で世論がおかしな流れになり、最後は安倍首相の「少子化対策にもなる」といった生活者の労働の現場がまるで見えていない発言でジエンドとなったが、非正規雇用者と正規雇用者との格差解消とセットの話でもあり、参議院選挙後に改めての議論となる。理念は良いものの、労働力が「定額制」になればいかに使い倒すかという方向に行くのは避けられないため、まさに「少子化」への影響も大きい長時間労働の管理、「ワークライフ・バランス」の真の実現がポイントになるだろう。

(参考)2006年の関連エントリ:
ホワイトカラー・エグゼンプションに必要な2つの条件

【恋愛・結婚・コミュニケーション】
「非婚化・晩婚化」が一段と進行している。適齢期層の結婚願望自体はそれほど変わってはいないものの、結婚しないことのデメリットや社会的圧力が小さくなる中で、妥協までして結婚する気はなく、パートナへの要求水準は上がる一方であり、非正規雇用の増加や男性収入の低下に伴い、マッチングがますます難しくなっている。シングルが「標準世帯」形態になるという話もあった。もっとも、単に「シングル」といっても、恋人がいるか、親しい友人がいるか、といったところで事情(他人に承認されているという感覚)は全く異なり、その意味で「非モテ」「非コミュ」はクリティカルなテーマではあるが、ネット上では答えが出ているというか出ていないというのかやや堂々巡りの感がある。

(参考)2006年の関連エントリ:
恋愛市場主義とは何か
「見える化」

今後のトピックとしては、2007年4月の年金分割待ちにより離婚控えが起きているとされる「熟年離婚」がどのような動きを見せるかが1つある。また、「熟年離婚」や「非婚化」とも関連の深い「孤独死」問題もじわじわと広がりを見せていくことが予想される。

【ビジネス・その他のトピック】
社会構造やライフスタイルの変化に伴うビジネス動向(富裕層、高齢層、少子化、シングルなど)や、サービス・ホスピタリティ関連のマネジメント、マーケティング、イノベーション、生産性といったトピックを引き続きフォローしていきたい。

(参考)2006年の関連エントリ:
ホスピタリティ・DNA (続・サービス化する社会)
消費者天国のカラクリ

Posted: 2007年01月23日 00:00 このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント

認知症予防のための脳のトレーニングは「深夜のシマネコ」の文脈では「ネオ公衆衛生思想」ですが、
socioarcの文脈では要介護状態にならないための自己防衛の戦いなんですね。
http://www.sankei.co.jp/kyouiku/fukushi/061217/fks061217000.htm
にあるような感じですが、
現役世代1.4人で高齢者1人を支えるという状態が現実にあるとき、
その時代の現役世代が自分たちの食い扶持を確保し高齢者が生きていくための年金・税金を払い、
さらに子育てをしながらその上に介護という負担をしなければならないとしたら、
「それは無理」と結論付けることも仕方がないと思えてしまえるのが現在の状態。
篠原菊紀先生は自身が脳トレ商品を売りまくっているのに「ボケて何が悪い」と言ってしまえる良心の人。
この最低限度の良心を失って、高齢者向け福祉を「素直にあきらめる」選択を現役世代が取ったとすれば、どうなってしまうのでしょうか。
#「素直にあきらめる」以外の選択肢は「子供を増やす」「メイドロボットを作る」「外国人労働者を受け入れる」などがあるが、
#前2つは実現可能性に疑問があり、後者は実現可能性以外の問題点が多いと思われる。

Posted by: anomy : 2007年01月24日 22:01

産経の記事を見ましたが、現役1.4人で1人を支えるってのはかなりショックな数字ですね。社会科で「少子高齢化」を習った頃は確か5人で2人、とか2人で1人っていうことだった記憶がありますが、この15年で本当に状況が変わってきたのだな、と。

1つはやはり「現役」「高齢者」の定義を変えることですね。将来定年(希望者に対する雇用義務)を70歳、75歳、という風に引き上げ、福祉機能を企業に転化することが予想されます(企業側は当然激しく反発するでしょうけど)。ただこれだけだと健康を害し要介護になると酷いことになります。

あとは以前若干言及したことがありますが物価の安い国への「介護移民/移住」でしょうか(一般には、「介護移民/移住」は介護サービスが良い自治体等に引越しすることを指すようですが)。国レベルで大量移民ということになると「姥捨て山」批判されそうでウルトラCな解決策ではありますが…。

(参考)海を越える日本人高齢者~老後をフィリピンで暮らす
http://www.hurights.or.jp/newsletter/J_NL/069/09.html

Posted by: socioarc : 2007年01月25日 06:36

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