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2006年11月24日

ニュースメモ(2006/11/19-2006/11/25)

News

【2006/11/24】
[business] 資生堂の社員の成長と会社の業績を上げるワーク・ライフ・バランス
ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいるから業績が上がるのか、もともと優良企業だからワーク・ライフ・バランスに取り組める余裕があるのかと言ったら後者の要素が強い感もありますが。あとは、ビジネス構造の特性にもよるでしょうね。人の頭数がそのまま売上に直結している労働集約ビジネスでは長期休暇がそのまま売上減に繋がってしまいます。

[partner style] 稼ぐ女はセクシーか
山田昌弘先生によれば日本でも同じ階層の結婚が増えているようなんですが、まだまだ上方婚の要素が強いのでしょうか。

【2006/11/22】
[society] 自国民であることの誇り
世界で最も自国民としての誇りを感じていない日本。「愛国心」も気持ち悪さを感じますが(何故感じるのかということにも疑問を持つ必要があるかもしれませんが)これはこれで不思議ですね。

[work] 雇われない生き方を選ぶべき10の理由
主張は大筋首肯するけど、日本だとどうかなぁ。

[partner style] 格差恋愛と理想の結婚 / 女の理想 VS 男の理想
小倉千加子先生の講演「格差恋愛と理想の結婚〜少子化・晩婚化・格差社会をどう生きるか〜」(pdf)のポイント。いつもの御主張のよう(いや、実際その通りなんだと思いますが)。

[communication] ツンデレ男子
そんなエサに釣られクマー。てか照れ屋なのは普通な気もしますが…。

[subculture] 恋愛のテンプレート
面白い。ゲームだと普通にバカップルがあるけど、あれも性愛のテンプレートか。

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2006年11月21日

「サービス」は「サービス」か

Business | Society

これまでsocioarcでは「サービス化する社会」「ホスピタリティ・DNA (続・サービス化する社会)」で社会のサービス化について、また、「消費者天国のカラクリ」では消費者がサービス提供者に対して想像力のおよびにくい原因となる、消費者と提供者の非対称性について書いてきた。

近年、日本においてもサービス産業への産業構造のシフトが進む中で、サービス産業の生産性が他の国より低いとされ、経済産業省ではサービス産業の生産性向上が課題として挙げられている(*1)が、その一方で、日本のサービスレベルは概して異常なほど高いように感じられる。列車の時刻表に対する正確さへの要求がしばしばアバウトな欧州諸国に比して非常に厳しい事は、JR西日本の福知山線脱線事故の際にも指摘されていたことであるし、コールセンターの中国移転がきっかけでDELLのユーザサポートの満足度が低迷しているのに対して、上位を獲得している国内ベンダのPC事業の収益性は低いままになっており、何のためのユーザサポートなのか分からなくなっている。ハイレベルな顧客サービスのレベルはどの国でも高いだろうが、日本では、大衆向けのサービスレベルがかなり高いのではないだろうか(そしてそれが恐らく海外からの参入障壁になっている)。

(*1)「新経済成長戦略」として発表されている。

そもそもサービスでは何を持って「生産性」を定義するか自体が難しい。サービス生産性の定義としては労働投入に対して生み出されたサービスの価値ということになるのだと思うが、サービスの価値はあくまで顧客との関係の中で生まれる(≒顧客満足)ので、顧客のサービスへの期待値が高過ぎると、当然ながら同じサービス品質でも価値が低下することなり、「生産性」も低くなってしまう(*2)。

(*2)もっとも、業種によってサービスの中にも機能や技術、モノ的な要素がある割合で含まれており、その部分について改善の余地は大きいのは確かだし、貧弱なマネジメントやムダの多いプロセスといった原因もあるだろう。

提供する機能や技術(機能的価値)での差別化が困難になる中で、時に差別化のポイントとして安易に顧客満足度なるものに頼ったこともまた難しい問題を引き起こしている。高いレベルのサービスや、ホスピタリティのお手本として、リッツ・カールトンのような高級ホテルや、ディズニーランドなどの事例がしばしば出ている(*3)が、これらの企業では採用の時点からも、他人を喜ばせることに最上の楽しみを見い出せる、適性のある人材を集めるとともに、十分な教育や高いサービスを支えるシステムや制度によって高いサービスレベルの実現している。当然、かかっているコストも大きく、それは顧客への対価ということでサービス料金に反映されている。

(*3)ディズニーランドのお子様ランチなど。

一方、他の企業がそうしたホスピタリティや高いサービス満足度を真似しようしてもそう上手くは行かない。より低価格なサービスでは、教育・人材育成の仕組みも十分ではなく、人間的なハイタッチのサービスの向上に追加の投資ができないということになりがちであり、ともすると、サービスレベルの向上は、現場の担当者の自助努力に頼らざるを得ない。言わば、サービス(=無償)残業ならぬ「サービス・サービス」の場が生まれてしまうのである。実際、日本ではしばしば「おもてなし」の精神や、「お客様は神様」といった言葉で「サービス・サービス」によって支えられてきた現場が少なからず存在していたと思われる。

しかし、そうした現場はサービス向上の過剰要求や法務リスクの増加によって破綻の兆しが見えつつある。医療・教育といった生活の質を高める上で重要なサービスにおいて、ここに来て様々な問題が噴出しているが、これは決して一時的なものだったり、個別の問題ということではなく、現場での努力がもはや限界に来つつあることが指摘されている。もともと人のためにすることが好きな人が多く仕事に就いていると思われるが、それゆえに顧客の無理な要求に悩まされるやすい。加えて、少子化により1人1人の子どもに対する期待値が高まっているため、子どもの命にも関わってくるこれらの仕事は訴訟と隣り合わせとなり、極めてリスクの高い仕事になりつつある。民事訴訟の損害賠償は保険によりリスクを外部に移転する方向だとしても、「医療崩壊と少子化」のように、刑事訴訟沙汰になりとしたら管理不可能な個人の残余リスクが高過ぎて割に合わないだろう。

医療・教育サービス以上にスケールが効き難い(=1人のサービス提供者で多数の利用者にサービスを提供することが難しい)介護サービスも同様だ(特に施設型でなく訪問型の場合)。従来家庭内の無償労働で支えられてきた介護は、子どもに頼らない風潮によって「介護の社会化」が進行中であり、非婚化によるシングル高齢者も増加の一途とあって、介護サービスへのニーズがますます高まる一方だが(*4)、「高いレベルの感情労働」 + 「生命に関わるリスク」といった医療・教育サービスと同じ要素に加え、更に「介護等における市場競争」「景気回復と労務管理 その2」などで示されている、需要超過でも賃金水準が上がらないという低賃金水準コンボがある。

(*4)「成長続ける介護保険市場」「 「伸びる産業」として注目に値する高齢者介護事業 」(pdf)など。

こうした中で、供給者が市場から燃え尽きなどにより退出、もしくは若者が参入を避けるのは無理もなく、残されたサービス提供者が需給ギャップによる過剰労働でますます苦しくなって離脱せざるを得なくなってくというスパイラルが発生する可能性がある。インターネットによって情報の共有が進む中で、その業界の破綻度合いは若者の志望度にもますます現れやすくなる。サービスの崩壊を食い止めるには、リスクや労働負荷に見合ったサービスの対価が支払われるようにすることや、ワークシェアリングによって1人当たりの負荷を軽減する事が1つだが、モノとは違い、労働集約色の強いサービスではスケーラビリティが効き難いため、少数の消費者で1人の供給者を支える形にならざるを得ず、そうなると一般の人が対価を支払うのは難しくなる。

教育の私立志向が進み、都心を中心に公立の学校が崩壊しつつあるように、医療や介護においても一部の富裕層にしか支払えない私立のサービスと、必ずしも十分は言えない公的サービスへの分化が進んでいくことになる可能性は十分にあるのではないかと思われる。「サービス」はもはや「サービス」ではない。

【参考url】
[society] 新経済成長戦略
[society] 現代日本産業論: サービス業

[society] 医療制度改革と施設介護サービス
公的介護と私費介護の2つに分化して行く可能性。

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2006年11月20日

「見える化」

Partner Style

まとまった時間が取れなくてどうもタイムリなエントリが書けず申し訳ないですが。

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最近、一部の魅力的な男性でなければセクハラ扱いされるリスクの高い恋愛に関するアドバイスがWebに掲載され、物議を醸していたが、恋愛格差社会化を背景に、近年しばしば見かける女性の恋愛アドバイザから男性への噛み合わない「アドバイス」を巡る問題においては双方の歩み寄りが必要なように思われる。

基本的に、商品スペック(容姿、性格、価値観、カネ、仕事など社会的地位、といった恋愛主体が所有するリソース)や市場環境(学校や職場、その他コミュニティなどの環境。特に年頃の男女比率は大きい)が異なれば適切なマーケティング戦略や営業戦略が異なるのは当たり前である。むしろ誰にでも有効な銀の弾丸的アドバイスを求める方に無理がある。

その意味では読む側が自分に役立たないと思われる記事をスルーする「スルー力」こそが必要なのだが、あとは書く側として、「一定のルックスや性的魅力があることが前提です」とか「恋愛偏差値55以上の人を対象にしています」といったアドバイスの前提条件を記載することが、アドバイスの有効範囲という意味では誠実ではあるかもしれないが、本当に良いのかということである。

だが、より本質的な問題として、そもそも本来恋愛に関するアドバイスを必要としている不可視層へのアドバイスが可能かということがある。特に異性によるものの場合、普段視界に入っていない(物理的にはたまには視野には入っているのかもしれないが全くアテンションが注がれていない)人にアドバイスすることはそれほど容易ではないだろう。そこには想像力の絶対的な欠如がある。

例えば、この1年間、家族や店員、仕事以外の異性とは1回も話したことがない、とか、この30年間誰とも付き合ったことがない魔法使いです、とか、恋愛以前に同性の友人も余りいません、というような状況を果たして想像しきれるか、ということである。得てして、自分の身の回りにいる(一応見えている)異性を想起しながらアドバイスを組み立てるために、本来関心の強い層(「降り」ている層は別だが)には何の役にも立たない頓珍漢で的外れなものになってしまうのである。

ではその想像力を高めるための不可視層の「見える化」とはどのようなものだろうか。ここでは不可視層側の一定の努力も必要そうである。もともと「見える化」はトヨタを初めとして行われており、不確実性や流動性がますます高まる中で、現場の「見える化」や業務の「見える化」が企業において一種の流行言葉にもなっているが、「見える化」というよりも本来「見せる化」が正しいのだという。誰だって悪い情報、興味関心の薄いは見たくないものだが、見たくなくても否応なく目に飛び込んできてしまうような状況を作り上げることこそが「見える化」の本質なのだ。

であるならば、不可視層の「見える化」とは、まさにその「現場」から、生々しいルックス、スペック、境遇などをテキストやグラフィックを駆使してまとめ、一部の人にしか役立たないアドバイスをしている人に恋愛相談として送り続けることではないだろうか。「見えない」のではなく「見せる」のである。もちろん、それは個別のコンサルティング費を頂きますとか、単にスパムやキモメールとしてゴミ箱に直行するだけかもしれないのだけど、あくまでも懲りずに送り続けることである。

アドバイザ側も、プロであるならば、一段と視野を広げて頂くことが期待される。どうも、単に「こうなって欲しい」という、異性に対する要求とか要望にしか読めないテキストが散見されるからだ。「自分と未来は変えられるが、他人と過去は変えられない」のだから、単に他人の努力を期待するだけでは何も変わらない。一般的なコンサルティングの場面にも通じるが、行動を変えるのはあくまでも本人であり、だとしたらアドバイザができることは、気持ちよく行動を起こせるようにし向けることであるはずだ(いくら立派な提言でも何の具体的なアクションにも繋がらないのでは意味がない)。そしてそれは決して反感を買うような挑発的なスタイルではない。

「生理的に受け付けない」層や、普段周囲にはいない(見えていない)層を含めて現場の実態をよく見ること、そこからしかクライアントに届く言葉は生まれないのだと思う。その点、例えば「ひきこもりのための外出マニュアル」は「ゼロベースで考える」ということがどういうことなのか、ということを学ぶ意味でも有用だろうし、「くすぶれ! モテない系」は恋愛格差の「見える化」として成功しているのではないだろうか。

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2006年11月13日

ニュースメモ(2006/11/12-2006/11/18)

News

【2006/11/13】
[society] 【給与のデフレは止まらない】「日雇い派遣」急増 携帯で連絡、低賃金・補償なし
[society] ホームレスですら世代断裂する社会
異なる環境にある人への想像力を働かせるかがいかに難しいかということを痛感します。2012年の団塊世代引退によって社会保障のコストが跳ね上がる時期にちょうどシニアフリーター問題が一段と顕在化することが予想されます。

[society] 将来の年金「現役収入の50%」困難、厚労相が示唆
挫折早っ。明らかに現実的な数値をベースに組み立てるべきだと思うんですが…。

[mental] 逃げこめる世界がなければ永遠に逃げれない。
家庭・地域社会が「世界」として機能してない中での第4世界として。フィクションということではビデオゲームとかももっと没入しやすい訳ですが、ただどちらがリアルな世界かという主従関係がひっくり返ってしまったり、戻って来れなくなる可能性もありますのでご利用は計画的に。

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2006年11月11日

ニュースメモ(2006/11/05-2006/11/11)

News

【2006/11/11】
[society] 格差から希望へ
玄田先生が(socioarcでは)久しぶりに登場。職場の出会い機能低下は非正規化が理由というよりは、1)プライベートに不干渉になり世話をする人がいなくなったため、自分からは積極的に動かない人がシングル化した、ということが最大の要因で、次に2)こじれるとセクハラ認定されるリスクが高くなり職場恋愛を避けるようになった、3)男女の賃金差がなくなり同じ職場では「上方婚」にならなくなった、というところかと思われますが。

[society] 安倍政権「再チャレンジ」政策の中身―正規・非正規社員ともに厳しい時代―
分割統治的ですが、既得権の解体ということでもあります。

[socioety] 労働時間規制の見直しで残業代がなくなる? 議論沸騰中の「労働法制改革」を読み解く
[society] 残業代なし1千万人に 労働時間規制見直し試算
消費者の財布が軽くなる中で消費者向けビジネスはますます辛くなりそうです。ある意味では産業間のカネの移転と言えるでしょうか。

[society] ユーキャン『独身会社員 意識調査』
さすがに小遣いは多い。

[society] 出生率「1.8」で人口推計 「子育て層」もベース
…ま、「成功イメージ」を持つことは必要かもしれません。

[business] 団塊世代のキーワードは「民族大移動」と「恋愛世代」
財布を握っているのは誰か。

【2006/11/08】
多忙のため更新頻度が落ちています。

いよいよ「いざなぎ超え」を迎えて「景気」関連をまとめて。今回の「景気回復」の正体が見えてきました。

[society] 日本経済の欠けた鎖 (pdf)
実質賃金の低迷により個人消費が伸び悩み。

[society] 日本経済 ~いざなぎ景気を超えて~ (pdf)
景気回復が転換点を迎える可能性があるのは2007年度後半以降?

[society] 毎月勤労統計(2006年9月)~ 伸び悩む賃金 ~ (pdf)
「景気回復」が家計部門まで波及していない。
関連: [society] 一体誰が景気いいんだ!?

[society] 「正社員」化に対する問題提起~正社員化を促す基盤づくりは、むしろ企業内改革から~ (pdf)
年金と同じ構造ですね。正社員の人口分布を考えると、昔からある大企業は苦しい。

[society] 8割が「いざなぎ景気」超えの実感なし~ 実感を持てない要因として、4割超が「業績改善の遅れ」を指摘 ~ (pdf)
「おきざり景気」は上手い。

[society] 日本経済に「最後の黄金時代」が到来か
黙って右肩下がりを受け入れる企業はないはずですから、供給より先に需要が減少する気もしますが。
関連: [society] セブン-イレブンの月末の売り上げが落ちる 好況でも中間層の生活が楽にならない米国社会

[society] 日本の社会状況-分野別の改善・悪化の国民意識
あくまで「意識」ですのでメディアに操作されてる部分も多分にあるでしょうが、景気・雇用が改善し治安・外交が悪化。

[society] 生活定点2006~生活者の新構造を読む~「気ぜわしい女、気づかう男」 (pdf)
男女関係の変化と、マーケティング視点からの世代分類。まとめ方にやや強引感もありますが、下流社会とかと同じようにこれぐらいの割り切りが分かりやすさということでは必要か。

[business] ワークライフバランスと管理職の役割 : 制度から運用へ
長期有給休暇が取れる仕組みになっているかどうかでも対応度が分かる。
関連: [business] 男性の育児休業取得はなぜ進まないか―求められる日本男性のニーズに合った制度への変更― (pdf)

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